私の魔王様(仮)   作:文才の無い本の虫/ひじきP

1 / 1
ラブコメです
よろしくお願いします


プロローグ/生き埋め

「・・・・寒いな」

 

冷たく重い雪の中で、独り呟く。音は周りの雪に吸われて反響もしない。

まるでこの世界に自分一人しかいないみたいだ。

窒息やら低体温症で死にそうだが。

 

―――どうしてこうなったんだろうか?

 

雪山に来ていた俺は、八合目あたりを登っていた時に吹雪に見舞われた。同時に山で何処かの馬鹿が爆裂魔法を使い、雪崩が発生。で、運悪く登山中の俺は雪崩に飲み込まれて生き埋めって訳だ。

背嚢は雪崩の中で岩にぶつかりそうになった時にクッションにしたせいで破けて中身が全損。武器は無事だったが、体は寒さで感覚が無くなってきてるし雪が重くて動けない。

 

残ってる感覚で精査してみた感じ上ではまだ吹雪いてる感じがする。

 

「あー・・・・これは・・・・詰んでんな」

 

飛行魔法か火系統の魔法が使えれば雪崩から逃げるなり生き埋めから脱出出来たんだろうが、生憎俺はそんな便利な魔法は使えない。

単純な身体強化を強度に全振りして雪の重さに耐えるので精一杯だ。

 

「残りの魔力だと半日も保たねえ・・・・その前に・・・・低体温症で・・・・死にそうだが」

 

ちらちらと昔の事を思い出す。

子供の頃の勇者ごっこ。

両親が死んだ時の寂しさ。

冒険者になった時のちょっとした感動。

旅を始めて見た絶景の数々。

 

「そう言えば・・・・山頂で、一泊して・・・・日の出を、見るつもりだったな・・・・」

 

―――走馬灯だなこれ。

 

体中がギシギシと雪の重みに悲鳴を上げている筈なんだが寒さで壊死してるのか何も感じない。

火系統の魔法が使えたら保温も出来たんだろうけどな・・・・あ、山で爆裂魔法を使った馬鹿は祟ってやる。

 

・・・・そろそろ意識を保ってるのも辛くなってきた。

 

「あ゛ー・・・・人生の、終わりが・・・・これか・・・・」

 

後悔だらけ、間違いだらけの人生だった。

親孝行は出来なかったし、俺の判断ミスで目の前で死んだ奴もいた。

 

「もし・・・・来世が・・・・あったら・・・・」

 

―――やっぱ、誰かの勇者になってみたいな。

 

「ま・・・・いまさら・・・・か・・・・」

 

意識が朦朧とする。

 

「生き残り?・・・・いえ、違いますね・・・・まさか、巻き込まれて・・・・?」

 

白い女が見える。

神様信じといてよかった、天使ってこんな綺麗なんだな。

 

「・・・・きれー・・・・だ・・・・」

「へ?!そ、そんな・・・・困ります・・・・って死にかけじゃないですか?!」

 

正直かなり好みだし結婚してくれたりしねえかな。いや、天使だし無理か。

 

とか思ってたら完全に感覚が消えた。

麻痺したのか壊死したのかはわからないが、意識が飛んだら身体強化が切れるから直ぐ死ぬな。

 

もう瞼を持ち上げる力も無く、目を閉じる。

そして直ぐに俺は意識を失った。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

目が覚めた。

 

「・・・・ここ、は」

「起きられたのですね」

 

透き通るような、でも同時に野営の焚き火の安心感と温かさを感じる声にどうにか首を回して横を向くと、枕元にやや小柄な全体的に白い女――よく見ると白に近い銀の長髪に、淡い水色の瞳をした氷のような美女――が正座しているのがわかった。

それはそれとして体中が痛む。

 

―――まさか、生きてる?

 

「・・・・君が、助けてくれた・・・・のか?」

「はい・・・・ですが、謝らせてください」

「なに、を?」

 

白い女は申し訳なさそうな表情をして言う。

 

「貴方様がこうなってしまったのは私のせいです」

「・・・・君、が・・・・爆裂魔法を、使ったのか?」

「いえ・・・・私は雪(・)女(・)で(・)す(・)の(・)で(・)」

「・・・・じゃあ、君の、せいじゃない。雪山で、爆裂魔法を使った・・・・馬鹿が悪い」

 

成程。

状況が読めてきた。

 

俺は初めて出会ったが、雪女は人類の敵対種と言われている。

雪(・)女(・)は(・)本(・)人(・)の(・)意(・)思(・)に(・)関(・)わ(・)ら(・)ず(・)周(・)囲(・)の(・)天(・)候(・)を(・)雪(・)に(・)変(・)え(・)て(・)し(・)ま(・)う(・)。

故に雪女は魔物とされ、街の近くで発見されると冒険者や傭兵による討伐隊が組まれ、討伐される。

要するに人類が生存の為に迫害している存在だ。

 

雪山で爆裂魔法を使った馬鹿は唯の馬鹿だが理由はあったのだ。

まあ雪山で爆裂魔法を使ったのは恨むが。

薬草採取の依頼で来てたので調べれば人が居るのはわかっただろうに。

 

「寧ろ、こちらが・・・・礼を言うべきだ・・・・君を攻撃したのは、人間だろう?」

「それは・・・・」

「だから、ありがとう」

 

俺は精一杯の笑顔で彼女に言った。

 

すると彼女は涙を流し始めた。

その涙に息が詰まる。

 

―――綺麗だ。

 

でも、きっと笑顔の方が似合うとも思った。

 

「ど、どうしたんだ?!」

「いえ・・・・誰かと話すことは久しぶりで・・・・ましてやお礼を言われたのなんて、初めてで・・・・どんな顔をしていいか分からなくて」

 

気恥ずかしさを押し殺し、痛む体に鞭打って彼女の涙を拭う。

ああ、クソ。

腕が思うように動かないのがもどかしい。

 

「じゃあ、笑ってくれよ。きっと、笑顔のほうが・・・・君には似合ってるさ」

「・・・・はい」

 

彼女は俺の手に手を重ねて、微笑んだ。

その笑顔は、息が止まるほど綺麗で―――正直惚れた。

 

我ながら単純だが、生きてて良かった・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。