最高のヒーローになる幼馴染と戦場に響く歌声 作:適合者
日間の評価バー(透明)に至っては(編集時点で)5位!?
皆様本作を応援いただきありがとうございます!ご期待に応えられる作品だと私も嬉しいです!
シヅキ04374様(星9)、zel様(星8)、ほぐほくらぶ様(星8) 高評価ありがとうございます!
※今回は姫香の容体が良くない為、姫香の言葉を意図的に句読点で区切ってます。
前書きが長くなりましたが、それでは本編をどうぞ!
消毒液の匂いと、心電図が刻む不整な電子音が私の耳に響く。
「私……生き残ったのか……」
「死ななかったのは……運が良かっただけってだけだよね」
思えば
「姫香ちゃん……良かったよ。ようやく一般病棟に移れて本当に良かった」
「出久と爆豪が生き残れたなら私はそれで良かったよ。爆豪は素行不良ではあるけど、才能の塊だから潰れるには惜しい程の逸材だし、出久の善性は私以上にヒーローの素質がある。実は私ね……あの日1度爆豪を見捨てたの」
「姫香ちゃんが……見捨てた? だって姫香ちゃんはかっちゃんと僕を助けたじゃないか!」
「見捨てたよ。ギアを使うには場所が悪い。爆豪は優秀だからすぐには負けない。だからヒーローを連れて来るまで、大丈夫だと思ってた。でも事実として、私は爆豪を1度見捨てた。その事実は消えないよ」
いつもの私なら途切れさせる事がないタイミングで言葉を切っている。まともに会話する事すらもコレほどの苦痛になる……これが絶唱の反動だとその身で痛感している。
「私は言ったよね? ヒーローってどういう人間か。私は爆豪を見捨てた。出久は爆豪を救う為に飛び出せた。出久の行動が無かったら、私は爆豪を助けようとは、思わなかった」
少しずつ自分にも噛みしめるように私は自分の言葉で出久に伝える。だってあの場面でのヒーローは出久しかいなかった。彼処にいたのは
「でも姫香ちゃんが
「その気持ちは、嬉しい。でもその代償を、払ったらこの有様。せめてヒーローを名乗るなら、こんな醜態を晒せない。だから私は、ヒーローには成れてないよ」
「姫香ちゃん……」
「助けてくれたのは、オールマイト。あの人がいなかったら、私達はあのあと殺されてた」
「そう……だよね。ゴメンね姫香ちゃん……何か買って来るけど……何なら飲める?」
「変に気を使わなくても、大丈夫だよ。悩むなら、水でも良いから」
「うん……わかった……」
「姫香……言いたい事はあるけど今は休みなさい」
出久やお母さんが席を外して病室に静寂が訪れた。
「ここにいたなァ……ヒメェ」
バンっ!
その時だった。前触れもなく乱暴にドアが開かれた音が病室に響く。一般病棟とはいえ個室じゃなかったら迷惑以外の何でもない行為だ。
「ノックくらい、したらどうなの? 爆豪、ここは病人の部屋だよ?」
掠れた声と細かく区切らないと続かない言葉で苦情を吐きながら視線を向けると、そこに立っていたのは全身に痛々しい包帯とガーゼを巻いた爆豪勝己だった。酸素欠乏の後遺症か顔色はまだ優れず、腕にはヘドロの圧力による生々しい青痣が覗いている。それでも、その瞳だけは凶暴なまでにギラついていた。
「……けッ。死にぞ損ないが口だけは減らねえなヒメェ」
爆豪は不機嫌そのもののツラで部屋に入ってくると、足音を荒々しく響かせてベッドの脇まで歩み寄ってきてパイプ椅子に腰を下ろす。私の全身を這う点滴のチューブや、青白い顔面を一瞬だけ苦々しく見つめるとすぐに鋭い視線で私を射抜く。
「……生きててよかったね、
「ケッ。死に損なったテメェに心配される筋合いはねぇよ」
爆豪は吐き捨てるように言うと、ポケットに手を突っ込んだまま、圧迫感のある体勢で私を見下ろした。沈黙が落ちて機械の電子音だけが響く中で爆豪が低く、地鳴りのような声で口を開いた。
「……テメェ、あの時何を歌った?」
「……何って、私の歌だけど? 胸に流れる、私の詠」
「ぬかすなァ!!!」
病室の空気が跳ねるほどの怒号を響かせて爆豪の額に青筋が浮かんでいる。少なくとも誤魔化した返答を見破る頭脳と長い付き合いの幼馴染にして良い返答では無かった。
「煩いよ爆豪。ここは病室、迷惑とかを考えろ」
「関係ねェ!」
爆豪の怒りが止まらない。かといってシンフォギアを説明出来る程に私が客観的に理解しているとも思えない。さて……どう説明したものか……
「吐血して、皮膚から血ぃ吹き出してただろうが! 視界が真っ赤になるまで力をブっ放して! あんなもん、自分の命削って放つ自爆技じゃねえか!! なんで……なんで俺のために、そんな真似しやがった!!」
激昂する爆豪の肩が、激しく上下していた。爆豪は頭が良いからこそ、私が放った『絶唱』が、通常の個性の枠を超えた
「『俺のため』……ね。爆豪らしくないことを、言わないでよ。寒気がするから」
私は点滴の刺さった手を僅かに動かし、息を整えながら言い返す。
「出久も爆豪も、殺されそうだった。あの狭い路地で他のギア……イチイバルを使えば、周りを巻き込む。ガングニールの打撃は、泥にすり抜ける。あそこで歌わなきゃ、私達は全員死んでた。それだけでしょ?」
「それが気に入らねぇんだよ死に損ないがァ!!」
爆豪は拳を力任せに握りしめ、歯が折れるほど噛み締めた。私に掴みかかりたい衝動と、自分の身体に残るダメージが爆豪の中で渦巻いている。
「デクのクソナードが跳び出して……テメェが血ぇ吐いて倒れて……! 俺が何もできねえで泥の中でヘラヘラ救われかけて……! オールマイトに助けられて終わりだぁ!?? ふざけんな……ふざけんなよ!! 俺が……俺が一番ダサくて惨めじゃねえかぁぁぁ!!」
剥き出しの屈辱と自責の念が爆豪の中で渦巻いている。そのプライドはあの日、路地裏でズタズタに引き裂かれていた。出久に庇われ、私に命を懸けさせ、結局自分は何もできずに助けられた。その事実が、爆豪を内側から焼き焦がしていたのだろう。
「なら、完遂してみる?」
「何が言いてェ?」
「そこの引き出しに、ナイフが入ってる。お見舞いのフルーツを、カットする為の、ナイフだけど。今の私なら、そのナイフでも、簡単に殺せるよ?」
「狂ってんのかヒメェ?」
「どうせ私は、いなくても、良い人間。なら命の使い道は、爆豪にあげても、良いと思えた」
「ざけんなァ! 勝ち逃げかヒメェ! 俺を何処まで侮辱すれば気が済むんだテメェはァ!」
私の提案に爆豪は激怒した返事をした。こんな提案を今されるとは考えなかったのだろう。
「出久に言ったじゃん。『来世に期待した、ワンチャンダイブ』だっけ? 今の私なら、抵抗できないから、させてあげられるよ?」
「まだ言うかよヒメェ!」
激昂する爆豪だけどナイフを手には取らない。少なくとも善悪の理解が出来ない程のところまでは堕ちていないのだと……信じても良いのかもしれない。
「……出久は凄かったよね」
「あぁん!?」
「無個性で、膝をガタガタ震わせて……死ぬほど怖かった、はずなのに。プロも私も、足がすくんでた中で、一番最初に、前へ踏み出した。……ねえ爆豪? 前に私が、出久に言ったことを、覚えてる?」
「知らねぇよそんな事」
「だよね。だから教えてあげる」
私は天井を見上げ、静かに言葉を紡いだ。
「『私にとっての、ヒーローは、誰よりも前へ、踏み出せる人』……あの日、あの場所で、一番のヒーローだったのは、間違いなく出久だった。力を持ってる私よりもね。出久が行動したから、爆豪は救われた。それだけじゃあ、不満?」
「……クソナードを……俺の前で褒めてんじゃねえ……殺すぞ……」
「殺す殺すって、うるさいなぁ。その機会は、今あげてるじゃん。そもそも爆豪は強いよ。才能も、戦闘のセンスも、私なんかより、ずっと上だ。だからこそ、なんでそんなに、心が小さいの? なんで無個性の、出久を蔑んで、自分の小ささを、隠そうとするの?」
「黙れ……ッ!!」
「嫌だね、黙らない。私に助けられたのが、そんなに悔しいなら、2度と誰かに、助けられるような不覚を、取らないくらい、強くなれば良い。みせなさいよ、最強の力を」
私は激痛に耐えながら、蒼白な顔で爆豪を真っ正面から睨み返した。爆豪の瞳に、激痛と狂気のような熱が宿る。私達の視線が、病室の空気の中で激しく火花を散らした。
「……言われなくてもそうしてやるよ」
やがて爆豪は低く、地獄の底から響くような声で呟いた。
「次にと俺の前であんな死にそうな歌うたってみろ、ヒメェ。次にそんな真似したら、テメェを首から上ブチ折る」
「……物騒な脅しだね」
「借りなんざ一括で返してやる」
「どうやって?」
「……雄英に入って、トップヒーローになってまず金を稼ぐ。そん時にこの借りを返す」
「入学してる訳でも、出来もしてない事を、絵空事のように話せるね。私や出久が雄英を、目指す可能性だって、あるのに?」
爆豪の瞳に再び怒りの炎が灯る。だけど言葉を1度飲み込んだのか意外な言葉が爆豪から出てきた
「億が一テメェ等が雄英に入学出来たなら、テメェのその死にぞ損ないの歌も、デクのヘタレも、まとめて俺が上から叩き潰す! 誰の助けも要らねぇ、俺が1番のトップヒーローになるんだよ!!」
それは、折れかけたプライドを力ずくで繋ぎ止めた、爆豪勝己の血を吐くような宣戦布告だった。
「……やってみなさいよ」
私は微かに唇の端を上げた。何が爆豪を変えたのかは分からない。死にかけて己の愚かさを理解したのかもしれないし、オールマイトに助けられて爆豪のヒーロー像に影響があったのかもしれない。少なくともあの日までの爆豪ならここまで煽った私の心臓にナイフを突き立てるぐらいはすると思っていた。だが現に爆豪は怒りを少しは飲み込み、言葉を選ぼうとしている。その努力を私が否定するのは筋が違うだろう。
「次は血なんて、一滴も吐かない。自分の体を、個性を研究して、アンタの雑な大振りも、私のギアで、何度でも受け流して、あげるから。傷が治って、ヒーロー科のある、学校に入学して、免許を取って、私はヒーローになる」
「……けッ。なら精々さっさと点滴外して立てや、ノロマが」
爆豪はフンと鼻を鳴らすと、乱暴に背を向けた。
「肝心の用件を忘れるとこだった」
そしてドアに手をかけた瞬間、手に持っていた白い紙袋を、ベッド脇のサイドテーブルへドサッと雑に投げ置いた。
「……何それ?」
「あぁん? 雑魚が食うゼリーと、血ぃ増やす栄養ドリンクだ! 賞味期限切れる前に飲み乾かせクソ歌女!!」
『バタン!』
荒々しくドアが閉まり、廊下を遠ざかっていく足音が響く。残された病室で、私はテーブルの上の袋を見つめた。
中を覗くと、高級な果物ゼリーと、ドラッグストアで売っている一番高価な鉄分・造血に良いとされるサプリがぎっしりと詰め込まれていた。
「……素直じゃないなぁ、ほんと」
私は小さく息を吐き、痛む胸を押さえながら、ふっと笑みをこぼした。
「姫香ちゃん……戻って来たよ?」
出久が戻って来たみたいだ。
「お母さんは? もしかして帰った?」
「えっと……主治医の先生にお話があるって。だからお見舞いならある程度は大丈夫って言ってたけど……」
「爆豪には会わなかった?」
「かっちゃんが姫香ちゃんの部屋に入ったのがわかったから……タイミングをズラしたんだ。だから多分かっちゃんは僕に気づかなかったとは思うけど……」
「トラブルが無かったなら、それで良いよ。今の私には、爆豪は止められない、から」
「姫香ちゃんは充分にがんばったよ。無個性の僕の為に……本当に……命を賭けて」
出久の目元は涙が溢れていた。あの時を思い出せば……そうなるよね。
「姫香ちゃんは……退院したらどうするの?」
「どう……ね。選択肢は色々と、あるから悩んでる」
「歌声を活かす仕事に就いたら? アイドルとか、配信者とか……姫香ちゃんの個性を上手く使えば活躍出来ると思うよ?」
「アイドル……ね。確かに
「別の事?」
「私もヒーローになりたい。でも出久も知ってるでしょ? ヒーローにも色々いる。戦闘力とカリスマで、皆を照らすヒーローの、オールマイト。圧倒的な火力で、敵を殲滅する、エンデヴァー。災害救助で、活躍している【13号】さん。他にも色んな、ヒーローがいる。だから最終的には、まだ分からないけど、まずはヒーローになりたい。まずはそこからだと、思うから」
「凄いね姫香ちゃんは。もうそこまで考えているんだね」
「でも……そうだね。強いて言えば、アイドルヒーロー……ってのも、ありかもね」
「姫香ちゃんのシンフォギアなら、きっとなれるよ。僕よりも凄いヒーローに……きっと成れる」
「それは……どうだろうね」
全く……世界は残酷だよ。私だって識ってるんだよ?
「じゃあ……僕も行くね。身体……早く治ると良いね」
出久がそう言って病室を出て行く。
「お見舞い、ありがとうね」
私の感謝が聞こえたかどうかは分からない。
「2度と、絶唱には頼らない。いや、絶唱しなければならないなら」
爆豪の不器用な怒りと、去り際の言葉が胸に刺さっていた。命を投げ出す覚悟なんて、二度と使っちゃいけない。自分の個性の限界を突き詰める必要がある。どうしても絶唱を使いたいなら、連続で戦えるようにするなら
「なら私が、自分の手で、完成させれば良い。無いなら作れば良い。それだけの、簡単な話」
レシピの詳細は分からない。適合係数だって自分の体感頼り。使い勝手の良いギアと苦手なギアの違いに、稼働時間の傾向と限界の測定。出せる火力や移動距離に動かせる範囲など調べるならば時間はいくらあっても足りないだろう。
「待ってなさいよ、爆豪……雄英で、絶対に追いついて、あげるんだから」
「姫香……入るわよ?」
「母さんごめんなさい……迷惑をかけて……」
「……」
謝る私を母さんは何も言わずに抱きしめた。
「姫香は今回の件を後悔してるの? 出久君を守る為に飛び出して、命の危機にひんして、それでもヒーローになりたいと、思ってるの?」
どうやら母さんは最後の方の会話を聞いていたらしい。でも伝えたい……私自身の言葉で。
「なりたいよ。どんな形かは決めてないけど、私もヒーローに、なりたい。今はそれだけじゃあ、駄目?」
「……少しだけ難しいわね。昔なら否定したわ。ヒーローなんて過酷なだけの道だと思ったから。でも今はヒーローは資格制。目指す事自体を否定する事は出来ないわ。資格制な以上制約や義務・努力は他の職業よりも厳しい。そんな過酷な思いを娘にさせたい親がいると思う?」
「思わない」
「でしょう? でもね……それと同時に娘がそれを理解して尚も目指したいと言うなら、親が止める事もまた違うと思うわ」
「それって……」
「決断しなさい姫香! ヒーローになるには並大抵の覚悟じゃあ成れない。どれほど素晴らしい個性……爆豪さんの勝己君程恵まれた個性でも優れたヒーローに成れる保障は無い。そういう意味では姫香のシンフォギアは適性だけなら向いている……
お母さんの言葉には含みがある。私には才能があると認めてくれている。だけどそれを理由にするなと言っている。つまり……
「私ね……あの時出久が飛び出して、気付いたの。私の理想の、ヒーロー像に1番近い存在を。出久の姿は、その理想像に、限りなく近かった」
「それならヒーローを支援する分野もあるわ。姫香の個性はそこでも発揮出来るでしょう?」
「それも考えたよ。でも決めたの。私はヒーローになりたい。どれほど過酷でも、私が胸を張れる、在り方でいたい。その為にもヒーローになりたい」
その言葉を口にしてフレーズが浮かんだ。
『何故私でなくてはならないのか?』
『ヒーローになんてなりたくない』
「私は雄英に行きたい。怪我を直して、リハビリをして、2度と倒れないように、準備して、そうして皆を救うよ。出久みたいなヒーローに、私はなりたい」
「出久君みたいに……ね。姫香は彼の背中をよく見ているのね。姫香の方がずっと強いのに」
「強いって言葉は、腕っぷしだけを、示す言葉じゃないと、そう思ってるから」
「キチンと理解しているのね……」
母さんはそこまで聞いて少しだけ目を伏せた。でもポツリと……呟いた。
「ならお母さんは止めないわ。背中を押したって良い。でも姫香……その選択は茨の道で、貴女の目指す答えは称号を手に入れるだけじゃあ手にはいらないわよ?」
「わかってる。その先の道のりも、難しさも」
今の私はそれで充分だ。
「それならやるべき事がたくさんあるわよ?」
「やり遂げるよ。何処までも……夢の為に」
静かな病室に、電子音だけが規則正しく響いていた。窓の外に広がる青空を見つめながら、私は自分の内に秘められた「新しい力」の可能性へ、静かに意識を集中させていくのだった。
【プロフィール】
名前 歌川 姫香
個性 【シンフォギア】
特徴 対応する聖詠を詠いギアを装着する。
※絶唱 自身の限界を超える過剰使用状態。使用後に著しい代償を伴う
今回は句読点を多用しましたが、次回からは通常の使い方に戻ります。今回が読みづらい方は申し訳ありません。
執筆モチベーションに繋がるのでよろしければ感想・評価・お気に入り登録お待ちしています!
姫香周りの恋愛関係
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姫香×出久の幼馴染ルート
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姫香×勝己の幼馴染ルート
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出久×姫香×お茶子のハーレムルート
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姫香は誰のヒロインにもならないアイドル!