Pretty Cure Trapped in CUBE 〜この中に入ったら、さようなら。〜   作:vic.

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1st Phase:「アンジュの最期」

少女は、ゆっくりと瞼を開け、目を覚ました。

 

そこは謎めいた立方体の部屋。パネルは、中央のドアの周りを囲むように並んでおり、□にバツを付けたような線の幾何学的な模様が浮かび上がっていた。そして、その線は水色に光っており、その少女を照らし出している。

 

「う…なっ…何…ここ……?」

 

少女が起き上がりながら呟く。

その少女とは、キュアアンジュだった。

しかし、それは薬師寺さあやとしての姿ではないーー

彼女の髪は、キュアアンジュのボリュームのある水色のロングヘアだ。しかし、彼女のもみあげの先にあるはずの髪飾りと羽飾りのついたカチューシャは取られている。そして、イヤリングも取られていた。

そして、着ているのはドレスではない。

すでに、制服に着替えさせられている。そして、左胸には「ANGE」と刻印されていた。

 

彼女はそれに気づいた。

アンジュが鏡に映る自分を見なくても、反射物に映る自分を見なくても、髪の感触の変化と、視界に入る髪、そして、袖を見て彼女は普通にわかった。しかし、その時アンジュの中でふと疑問が湧いた。

 

「私…ここに来る前…変身してたのかな…?まさか…戦ってる途中に連れてこられたってこと…なの…?」

 

自分に対し呟いて疑問を投げつけるアンジュだが、自分の周りには誰もいない。当然、投げつけた疑問の答えも返ってこない。

 

そんな時アンジュは、壁の中央にあるものがドアだということに気づく。

 

アンジュは壁のドアのハンドルを時計回りに回し、半周分回すとロックが解除される音がした。アンジュはそれを前に引いてみると、ドアが前に動いた。

同時に、アンジュは下にスライドできるような気がした。

 

アンジュはそのドアを下にスライドし、その先を覗いた。

 

その先には、また別の部屋がある。

 

その部屋は、パネルの模様が先ほどの部屋と同じだ。さらに、光っている色は赤色。アンジュは壁に埋め込まれた梯子を登り、ハッチからその部屋の中を覗き込んだが、この部屋にまた別の部屋が繋がっていることに大きく動揺し、アンジュは「ダメ…。なんとなく不穏な気配がする…。」

と、結局ドアから、梯子を下って離れてしまった。

 

アンジュがそのドアから離れてしばらくすると、ドアはブザー音を鳴らし、自動で閉まる。

続けてハッチのハンドルが、アンジュが回した方向とは逆ーー

つまり反時計回りに半周分自動で回り、ロックされた。

 

アンジュは、(あの部屋は不穏な気配がする。これとは別の部屋を確認した方がいいかな…)とふと思った。

 

アンジュは、今度は床の中央にあるハンドルを、時計回りに回す。

 

ドアを開けると、その先にはまたパネルが光る青い部屋があった。

 

ーーしかし。

 

その部屋の色は、恐怖を煽るかのように真っ青だ。これには流石のアンジュも(ダメ…。こっちも無理かな…。)と動揺した。

 

アンジュは動揺した拍子に、そのドアを閉めてしまった。

 

その後アンジュは、また別の壁のドアのハッチを開ける。

そこは緑色の部屋。

 

アンジュは「ここなら…入っても大丈夫そうな気がする…。」と言い、周りを確認すると、その部屋の中に入った。

 

アンジュは緑の部屋に入ると、後ろのドアが自動で閉まった。ハンドルも自動で反時計周りに回転し、半周分回ったところで、ドアはロックされる。

 

アンジュは、一歩ずつ慎重に進んでいると、壁のパネルの上に何か点滅するものを見つける。

 

ーー光だ。多分センサーか何かだろう。

 

アンジュがそう思ったその時!

 

「うっ!?」

 

アンジュは突然鋭利な二等辺三角形の柱で胸を貫かれた。

 

柱は前の壁のパネルの模様から突然出てきたのだ。おそらく収納されていたのだろう。

 

しばらくして、柱は後ろの壁に収納された。

 

アンジュは息遣いが荒くなると、自分の身体から二等辺三角形の抉られた、三角柱のような肉塊が落ちる。

肉塊には衣服の生地が張り付いていた。

 

トラップにかかり胸に穴を開けられてしまったアンジュは、そのまま床に倒れ伏してしまう。

 

ーーアンジュは不注意で死んだのだ。

 

不穏な気配をしない部屋でも、アンジュは判断を慎重に下すべきだったというのに。

 

しばらくして同じ頃。

 

もう1人の少女が、白く光る部屋で目を覚ました。瞳の色は水色ーー

 

キュアフローラだ。

 

フローラは、

「…なに…ここ…」

と、思わず呟く。

呼吸は荒く、フローラにはなぜここに連れてこられたのかもわからない。

 

その時、聞き慣れた声がした。

 

「あっ…はるはる…!良かった、あたし、生きてるのかどうかずっと心配してたよ…。」

 

その声は天ノ川きららのものだった。

しかし、フローラの視界に入ってきたのは、本来のきららではない。

変身後の姿であるキュアトゥインクルだ。髪もクアトロテールで、後頭部のツインテールは黄色いシュシュで縛られている。そして前髪にはワインレッドのメッシュがあった。

見ての通り、イヤリングもティアラも、全て取られている。

しかし、着ているのはドレスの代わりに囚人が普通着るような、藍色の制服。刻印には「TWINKLE」と書かれている。彼女の変身後の名前と全く同じだ。

 

フローラは「えっ…!?」

と驚き、思わず壁に後退りしてしまい、

「きららちゃん!?変身してるのになんでそんな格好してるの!?」

と、思わず叫んでしまった。

 

普通なら、自分の姿がどうなっているかも知らないプリキュアなら、何が何だかわからなくなるーー

いわゆるパニック状態になるだろう。

 

トゥインクルは「ていうか、はるはるもキュアフローラの髪になってて変な格好だし…。まあ、その話は後にして、先客がいるの」

と遮るように言い、トゥインクルのすぐ近くにいる少年を、トゥインクルは自分の手全体を使い、示した。

 

ーーキュアウィングだ。

しかし、彼も制服を着せられている。

 

フローラはウイングの姿を見ると、こう言った。

「あの…前に一緒だった…『ツバサくん』って子だよね…?」

 

フローラは、この部屋に入れられる前の、あの『シュプリームの世界』で、アンジュやフェリーチェ、そしてこの心を閉ざしている少年ーーキュアウィング、そしてその『エル』と言う幼いプリンセスと共に「ウイングチーム」として行動したことを、記憶を頼りに話しかける。

 

彼は口を開き、

「ボクは…前の世界で…他の人から…プリキュアの1人1人の好みが分かれたような批判を受けていたんです…。」

 

と事情を打ち明けたが、まだフローラやトゥインクルに対しいまだ心を閉ざしているだけだった。

 

「ボクが強い言い方をしたせいで…ソラさんやましろさん、あげはさんやエルちゃんが全員、ネットで炎上することになるなんて…思いもしなかったのに…。」

と彼は続けて言う。おそらく、彼は入る前から自己嫌悪に陥っていたのだろう。

 

「ツバサくん…。」

フローラは悲痛な面持ちで言った。

 

その時、フローラは変身アイテムーープリンセスパフュームとドレスアップキーと、パフ、アロマのことを思い出し、

「それより…変身アイテムは!?ドレスアップキーは!?パフは!?アロマは!?」

 

と叫び、自分のポケットの中に手を入れ確認しようとしたり、自分の衣服の上着の中も見やったり、身体を触って探したりしたが…見つからない。

 

トゥインクルも、持っていないことを告白するように「ごめん…。あたしも持ってない。ずっと部屋の中を探してみたけど、変身アイテムも、パフも、アロマも見つからなかった…。」

と言った。

 

ここには、本当に変身アイテムも無い。そのうえ妖精も不在だ。

 

トゥインクルとフローラは、とうとう壁と床のパネルが連結している部屋の縁に座り込んでしまう。

 

トゥインクルは「なんだかここ、あたしたちみたいなプリキュアばかり入れられてる。何というか…『プリキュア刑務所』みたいな感じかな?」

と冗談交じりに言う。

 

その時、フローラは床の色彩に違和感を覚えた。

彼女が視線を向けたのは、先ほど、自分が目覚めた場所。

(…あれ?)

 

彼女は1本の、毛先に向かいピンクにグラデーションしているブロンド髪を見つける。

それは本来の茶髪でない。キュアフローラのウェーブヘアの一部、そのものだ。

 

「これ…私の髪…。」

 

そう自分の落ちていた1本のブロンド髪を拾いながら呟く、フローラ。

 

もう、彼女の姿は本来の姿ーー春野はるかではないのだ。

ここを仕組んだ管理者がこんな姿に変えたのか、またはここにいる限り変身後の姿は解けないのか。

 

時間をかけたって、いくら考えたって、答えはわからない。

 

しかも、プリキュアの姿に変えられているのはフローラだけではない。

 

本来なら、変身アイテムが奪われている状況で変身後の状態にはなれないはず。

しかし何故か、ここにいる3人は全員プリキュアの姿として入れられており、みなドレスから着替えさせられているのだ。

 

部屋の隅で、他の部屋からの助けを待つかのように床に座り込んでいるトゥインクルは本来のきららとしての茶髪のツインテールではなく、前髪の両サイドにはワインレッドのメッシュが入っており、頭頂部に朱色のグラデーションがかかったオレンジ色の頭頂部の大きくて短めの部分と後頭部の長い2つ縛りで構成されたクワトロテールに変わっている。

 

さらに今だに心を閉ざしているウイングは、本来のツバサとしての渦巻き状のオレンジ色の髪ではない。

彼の髪は全体的にオレンジ色に変わり、前髪(返信前、左目を隠している前髪も含む)が短くなる上、後頭部からポニーテール状に結ばれた身の丈ほどもある長い髪を持ち、頭頂部の毛はトサカ状に立つようになっていた。

 

トゥインクルは「あたしたち、何か…した?」

と疑問に思う。犯罪か何かをしでかしたのか…。

 

その時、壁のハッチのハンドルが突如として回り、一同はその音に気圧される。

 

ドアが開くと、ハッチから靴が投げ入れられた。

 

その靴を投げたのはキュアマジカルだった。

制服も着ており、髪も紫色であり、キュアマジカルのダイヤスタイルの後頭部が翼状に広がったヘアスタイルだ。

 

マジカルはすぐに靴の紐を引き、「よし、この部屋は安全ね」と言う。

 

トゥインクルは「びっくりしたよ、突然投げてきて!それに『安全』って何を言ってるのさ!?」

と気圧されながら言う。

 

マジカルは問答無用で部屋に入る。そして彼女は靴さえ履いていない。

 

フローラはマジカルに立ち寄り「あの、ここって何処なんですか!?私たち、ここでずっと助けを待ってたんですけど…」と状況を慌てるように話した。

 

マジカルの入ってきたハッチのドアが、自動で閉まり、ハンドルが反時計周りに半周回転する。

 

マジカルは事情を話そうと口を開き、「ここは、全部立方体の部屋で構成されている場所なの。しかもここにはーー」

と言いかけたが、それを遮るように部屋に突然振動が走る。

 

振動が続く。

振動が来ているのは上からだ。むやみに動かなくても分かる。

 

振動が終わると、マジカルはすぐに壁に埋め込まれた梯子を上り始める。

 

トゥインクルはマジカルな行動の異様さに「どこに行くつもりなの!?」

と叫んだ。

そして、天井にたどり着くと、マジカルは天井にも埋め込まれている梯子をまるで雲梯のように使い、ハッチへと近づき、そしてハッチのハンドルを回し、開けたその瞬間!

 

突如、「何か」が落ちてきたのだ。

 

ウィングは「うわあっ!!」と叫び、反射的に顔を腕で覆ってしまう。

 

キュアフローラやキュアトゥインクルも顔を覆った。

 

落ちてきたのは、先ほどのトラップで死亡したアンジュだった。

名前はすぐにわかる。制服を見れば「ANGE」と名前が刻印されているからだ。

 

そして、アンジュの肉塊が上のハッチから落ち、床に落ちる。

 

トゥインクルはその無残にも胸をくり抜かれたアンジュの死体を見て「ひっ…!?死…死…死っ…死んでる!!!」

と思わず叫んでしまう。

 

フローラやウィングも息を呑んだ。

 

マジカルも「やっぱり…何か起きると思った…。」と呟く。

 

その時、トゥインクルの後ろのハッチが開き、別のプリキュアが姿を表す。

 

しかし、彼女はまだ見ぬプリキュアーー「シェイピィ・キューブ」だ。制服には「SHAPY」と刻印されていた。

 

しかし、彼女は突然異様な行動を見せる。

まず、フローラを見つめ瞬きし、次にトゥインクルを見つめ瞬きする。続けて、ウィングやマジカル、そしてアンジュの死体もそれぞれ見つめては瞬きし、全員分が終わると、「こんにちは。ところであなた達…何者ですか?」と聞いた。

 

それは入れられているプリキュアとしては、あまりにも異様な質問だった。

 

 

ーーPretty Cure Trapped in CUBEーー

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