スーパーロボットファイター 作:白薔薇(ロサ・ギガンティア)
時刻は深夜2時を既に過ぎた頃。
場所は東京都三鷹市のとあるアミューズメント施設。
1階は既に電源が落とされている事もあって、天井の照明は全て消えており、設置されているビデオゲームやプライズゲーム、メダルゲームに写真シール自販機といった遊技設備も、営業時間が終了している為か、稼働は停止している。
静寂と暗闇に包まれた1階であるが、2階へと続く階段からは、照明の灯りが漏れていた。
「……」
「……」
「……」
2階は1階とは異なった設備になっており、天井からは100インチを超える大型モニターが、どこからでも観る事が出来るように、4台がそれぞれ違う方向に向けられて吊り下げられており、その画面には灰色の映像が映し出されていた。
それ以外にも、冷蔵庫数台分ぐらいの大きさはあるスーパーコンピュータが何台も設置されていて、それぞれのスーパーコンピュータにはある程度の太さがあって頑丈そうなケーブルが何本も接続されており、離れた場所に複数設置されている直径2メートルほどの球状の筐体と、それぞれ繋がれていた。
それらの内の2つの球状の筐体は起動しているようで、片方の筐体からは青い光の筋が、もう片方の筐体からは赤い光の筋が放出されている。
そのような状態の2階には、10人を超える大人の男性がおり、ある者は稼働しているモニターを注視していて、ある者は持参しているノートパソコンのキーボードを叩いていた。
『こちらプレイヤー1。シミュレーター空間へのダイブを完了。これより、起動テストを開始します』
スーパーコンピュータの稼働音が響く空間に、青い光を放つ筐体とケーブルで接続されているモニターのスピーカーから、男性の声が聞こえてきた。
『こちらプレイヤー2。無事にダイブ完了しました。ただいまより、起動テストを開始したいと思います』
もう片方の赤い光を放つ筐体も、ケーブルによってモニターと繋がれており、そのスピーカーからは女性の声が聞こえてきた。
「了解した。プレイヤー1、プレイヤー2。起動テストを開始せよ」
モニターを注視していた男性が合図を送ると、灰色の映像を映し出していた各モニターに変化が生じた。
全高18mのマジンガーZの姿が表示され、次に全高38mのゲッター1の姿が、他にも全長57mのコン・バトラーVや全高120mのダイターン3、全高22.4mのダンクーガ、さらには頭頂高200mのガンバスターなどといった、大小様々なスーパーロボットたちが次々と表示されていき、横一列になって並んで立っていた。
《マジーン、ゴー!》
全てのスーパーロボットが表示されると、男性の声がした方のスピーカーから、別の男性の声が聞こえてきた。
その声は、マジンガーZのパイロットである兜甲児(CV:石〇博也)の声で、モニターに表示されたマジンガーZが前方へ移動を開始すると、ZのテーマのBGMが流れた。
《ガンバスター、発進!》
女性の声が発せられたスピーカーからは、トップをねらえ!のタカヤ・ノリコ(CV:日〇のり子)の声が聞こえてきて、直後に腕を組んで仁王立ちしていたガンバスターが移動を開始、こちらからは作戦開始のBGMが流れてきた。
「うーん……これは……」
「そうですね……ちょっと……」
「同じ画面に映すと、バランス悪く見えるな」
他のスーパーロボットから離れた場所へと移動したマジンガーZとガンバスターが、背中合わせで並び立った状態で停止する。
設定通りにした為、2機の大きさには10倍以上の差があり、その様子をモニター越しで眺めていた者たちは、複雑な表情を浮かべていた。
「これ、マジンガーZだからこの程度の差ですけど……」
「485シンのリューナイト・ゼファーや3.6mの飛影、205cmのマグナムエースとかになると、もっとひどい差になるよな」
「機体の大きさについては、改善の余地ありだな」
モニターには表示されていない、まだ作成されていないが作成の可能性はある機体の名前をあげて、それぞれ大きなため息をついた。
バランス調整をはじめ、考え事は尽きないが、起動テストはそのまま続行された。
マジンガーZとガンバスターを挟むかのように、離れた場所に現れたのは、髑髏の形をした頭部に、両耳の部分に鎌が付けられた機械獣ガラダK7と、クモやカニのような姿の宇宙怪獣・兵隊であった。
ガラダK7も宇宙怪獣も攻撃できる距離ではない為か、マジンガーZとガンバスターの方へと少しずつではあるが、近づいてくる。
『プレイヤー1。マジンガーZでガラダK7を迎撃する』
『プレイヤー2。ガンバスターで宇宙怪獣への攻撃を開始します』
マジンガーZはジェットスクランダーを装備していない状態の為、ガラダK7へと向かって走り出し、ガンバスターは両肩のバーニアから青白い炎を噴射させて、宇宙怪獣へと向かって飛行を開始する。
ガラダK7を攻撃できる位置まで移動したマジンガーZは、左手を握り拳の形にすると、
《ロケットパーンチッ!》
兜甲児の声と同時に、左腕の前腕部をロケット噴射で飛ばした。
『ガオオオオオン!』
マジンガーZのロケットパンチが見事にガラダK7に命中すると、獣が吠えるような効果音がスピーカーから流れてきた。
ロケットパンチの一撃で破壊される事はなかったガラダK7は、お返しと言わんばかりに、両耳に着いた鎌を左右の手でそれぞれ握ると、ブーメランのようにマジンガーZに向けて放り投げた。
『クッ……損傷軽微。戦闘続行』
2本の鎌がマジンガーZの胴体にそれぞれ命中するも、超合金Zの装甲を切り裂くまでには至らなかった。
《ブレストファイヤー!》
マジンガーZの両手が頭の上に広く振り上げられると、胸部の放熱板から3万度の熱線がガラダK7に向けて放射された。
《ダイジョブダイジョブダイジョブ……!》
大丈夫というSEとは異なり、ブレストファイヤーの威力に耐えられなかったガラダK7は、爆炎の煙に包まれて、破壊されるのであった。
《バスタァァァァトマホゥゥゥゥクッ!!》
左肩に収納された斧を右手に握りしめたガンバスターは、猛スピードで宇宙怪獣へと接近し、上から下へと振り下ろし、左から右へと斬りかかった。
十文字に斬られて、断末魔の叫び声を発して爆発する宇宙怪獣。
あまりにもあっさり倒されてしまったからか、さらに多数の宇宙怪獣・兵隊が現れた。
現れたのだが、
《ホーミングレーザァァァァッ!!》
両手の掌から無数の光線が放たれて、途中で扇型に拡散され、多数の宇宙怪獣を殲滅していく。
「マジンガーZとガラダK7は、アクションゲームの括りで大丈夫だろうけど」
「ガンバスターのあの強さだと、完全にシューティングゲームですね」
「強さについても、再調整だな」
開発陣による調整は数か月にわたって続き、各機体の性能の調整だけでなく、表示する大きさについても、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズ、LLサイズといった具合に分類して、多少デフォルメさせる事で、違和感を少なくした。
そして、遂に稼働が開始した。
タイトルは、
【スーパーロボットファイター】
仮想現実にダイブしてスーパーロボットのパイロットとなり、機械獣やメカザウルス戦う1人プレイモードと、スーパーロボット同士が戦う複数対戦モードが存在。
操作に慣れるまでは1人用で、慣れてからは対戦プレイを行われる事が多かった。
使用可能なスーパーロボットは、Mサイズに設定されたマジンガーZ、グレートマジンガー、グレンダイザー、プロトゲッターロボ、ゲッターロボ、LサイズのゲッターロボGと、そこまでは多くなく、故に、プレイ人口も多いという訳ではなかった。
そんなゲームにおいて、マジンガーZと出会い、ゲームにハマった少年が、この物語の主人公となる。