I-TYPE   作:どんぐりあ〜むず、

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※どういうわけか、最後の文章にてバグが生じております。「…乗るさ。お前の(ry」のところで今回のお話しは終わりですので、どうかその辺りをお気をつけて。


第7話 白騎士事件 第三幕

「不合理とは、何かの存在があり得ないのではなく、状況があり得ないことを言う」

➖フードリッヒ・ニーチェ➖

 

///////////////////

 

「くっ!」

 

グリーン・インフェルノ タイプ・ミューテーションの上にいるマイホームダディの機関砲攻撃をギリギリで躱す。だが今度はそれを見たあの怪獣➖ビースト・ザ・ワン ベルゼブア➖の胸部の波動砲攻撃を諸に喰らいそうになる。此れではイタチごっこだ、キリがない。白騎士こと織斑千冬を抱えているせいで動きが鈍っているとはいえ、この私に反撃の機会を与えないとしている限り、練度は向こうの方が上か………。

 

「チッ……、如何出るべきかな…、これは…。」

 

私は舌打ちした。幾ら波動砲を積んだR-戦闘機の能力と邪神イリスの力を引き出すことの出来る、ISとは全く性質や構造、次元の異なる空戦用パワードスーツであるFAと言っても、こうまで弾幕を張ってくる敵に対して全く手出しが出来ないという訳ではない。だが、こうも攻撃の瞬間を与えないとなると、些か面倒だった➖其の上織斑千冬を抱えているのもあったので尚更であった➖。此れではまるでイタチごっこだ、キリがなさすぎる。どうするべきか…。

 

『箒、R-9だ!』

 

その時、マオの声が響いた。

 

「何⁉︎」

『前に防衛用とFA研究用や非常用として作ってあっただろう!アレを呼び寄せるんだ今すぐに‼︎今のプロトタイプFAの「アローヘッド」のシステムでは決定打に欠ける上に織斑千冬を抱えている以上、我々に勝ち目はない‼︎』

「だがどうやって呼び寄せる気だ?幾ら援軍として呼び寄せたとしてもパイロットがいないと話に………、あっ⁉︎」

『そうだ、”彼奴ら”に操縦させるんだ。外見はああでも、ああいった類との戦闘経験は皆無だが実際の練度は私と同じだ!きっと使える筈だ‼︎』

「…確かにな。この状況下で利用しないという手はない。だが呼び寄せたとして…、上手くいくのか?」

『分からん。だが賭けてみるしかないのは確かだし、このままでは膠着状態に陥ってしまうのも確かだ。少々不安ではあるのだが…、彼らに委ねよう。』

「そうだな、だが今はこの事に集中するぞっ‼︎」

 

私は再び飛んできたグリーン・インフェルノ上にいるマイホームダディの苛烈な機関砲攻撃をすんでのところで躱した。その間にも、マオがエネルギー体入力コマンド➖要するに魂のみで私の体内にいるマオが、自身の魂に内包された生体エネルギーを使ってシステムに干渉しているということだ。因みに、今の彼女は短時間なら私から抜け出して様々な活動が出来るまでになった➖を使って、無線で遥か彼方の日本の東北地方にいるぎゃっぴーズのいるピットガレージにスクランブルを発令する。此れで良い。後は…。

 

「彼奴らがっ!」

 

チャージしたスタンダード波動砲をグリーンインフェルノの上にいる艦橋を背負ったマイホームダディに向って放ち、

 

「来るのをっ!」

 

ビースト・ザ・ワンの胸部のチャージされた波動砲をギリギリで躱し、

 

「待つっ!」

 

スタンダードフォースとサイビットを飛ばし、グリーンインフェルノの本体であるマイホームダディの背負った艦橋にフォースをぶつけて破壊し、ビースト・ザ・ワンをサイビットで撹乱させ、

 

「だけだなっ‼︎」

 

フォースから赤と青の螺旋状の対空レーザーを薙ぐように発射してグリーンインフェルノとビースト・ザ・ワンを攻撃する!

 

「…さて、調子はどうだかな?」

 

もうもうと立ち昇る煙を見やり、呟く。だが刹那、煙の中から一閃の光が襲い掛かって来たのを見て、直ぐに足止め程度の効果しかなかったことに舌打ちした。くそう、流石に試作機ではやはり効果薄しか、そう考えた時だった。

 

『危ない、箒っっっ‼︎』

 

マオの切迫した叫びに、私は驚いて思わず前を見た。見ると、何時の間にか、あのトカゲ擬き➖胸に波動砲を備えたあの忌々しいビースト・ザ・ワンだ➖が、両腕を大きく伸ばして私を捕まえて来たのだ。当然、反応が遅れた私は、織斑千冬共々、ザ・ワンの手中に収められてしまった。右手で私を、左手で織斑千冬をしっかりと捕まえている事の他にも、軽く光速のスピードを出すことのできるFAが此奴の手から逃れられないのを見るに、恐らく奴がアローヘッド以上のパワーを持っているというのはほぼ間違いなかった。そして分かったことがもう一つ、

 

 

 

「ぐっ…、かなり不味いな………。」

 

 

 

………逃げられずに2人纏めてまともに波動砲の一撃を喰らう羽目になるか、このまま握り潰されるかももしれないということだ。今スタンダードフォースやサイビットはグリーンインフェルノの相手で手一杯だった➖普通ならあれらが有ればこんなことにならなければ、このようなミスを犯すことはない筈だが、強力な敵が二体いる上に、人間”篠ノ之箒”としての初陣でもある為にこのような事態を招いてしまったのは言うまでもない➖。正直、不味い状況だった。其れも、外食に来て食べた後で財布がない事に気付いた時ぐらい不味いものだった。然も、背面武装の波動砲やミサイルは捕まった際にエネルギーパインダーや格納容器のフタが潰れてしまい、応急修理しなければ数発すら撃つことが出来なくなってしまい、捕まった所為で修理すらも出来ず、また衝撃で太刀をはたき落とされてしまったのも相まって、事態は予想を遥か斜めを上回る最悪の事態を招いてしまっていた。

 

「ぐはっ、クソッ、くそくそくそっ‼︎不味い、かなり不味いぞっ!」

『落ち着け!今慌てて如何する‼︎』

「だがそうは言っても‼︎」

『大丈夫だ、後数秒で彼奴らが来てくれる‼︎其れにまだ武器だってあるぞ‼︎』

「何がだ!武器なんてもうある筈がっ………はっ‼︎」

 

そこで私は気がついた。キャノピーのようなヘルメット、そういえば”アレ”をそれぞれ装備していたことを完全に忘れていたじゃないか。波動砲やフォース等以外で装備され、波動砲やフォース以外で多くのR-戦闘機やパイロットの命を救って来た”アレ”を………!

 

「…”波動レールガン”掃射‼︎」

 

途端にビースト・ザ・ワンの顔面目掛けて、頭頂部にセットされた波動レールガンが火を噴いて殺到する。此れにはさしもの野獣1号も悲鳴を上げて私達を手放す。身体をぐったりとさせた織斑千冬が海面に落ちてゆく。だが、千冬の身体はコンクリートの地面のような白く波打つ海面に激突することはなかった。すざましい速さで突っ込んで来た何かが、彼女をその内部に収容したのだ。そしてその何かは、機体の両端からレールガンを連射し、ビースト・ザ・ワンとグリーンインフェルノにそれぞれ強力な弾幕を炸裂させた。遂に待ちに待った援軍の御登場だった。

 

「全く………、遅いぞ…。”矢頭”。」

 

私は息を整えながら、乱入してきた”ソレ”に向って言った。

 

 

 

”矢頭”…、「R-9Aアローヘッド」。

 

 

 

この世界で最初に誕生したR-戦闘機であり、R-の系譜の頂点に立つ存在である。矢頭は、この機体の愛称でありそして、

 

<もピッ!>

 

………パイロットの2人のぎゃっぴーの名前でもある。こんなマスコットキャラのような可愛いらしい二頭身の妖精紛いの姿をして、実際の戦闘能力や知能は私と然程変わらないのである。そして何より彼女らの強みは高度な車両・船舶・航空機等の操縦能力や設計・製作・整備能力にある。これらの能力は、元々はマオが人間➖其れも、凄腕のパイロットと凄腕のエンジニアという、只者ではない人間であった時の彼女だ➖だった時から持っていたスキルで、私もその恩恵によって此処までの能力や知識を有しているのだが、其れはぎゃっぴーにも活かされているのである。

 

2人のぎゃっぴーは元気に無線に応えて、私➖正確には私達だが➖の隣にR-9Aを上昇させて近づいて来た。

 

コクピットの中の彼女らは誇らしげに、その小さな身体で自慢げに胸を張って鼻の穴を拡げて其処から、フンス、と息を漏らしていた。見ると、複座型のコクピット➖この世界での最初のR-戦闘機であるこのタイプのR-9Aは、第一次バイドミッション時や、その第一次バイドミッションと第二次バイドミッションの間に起きた「サタニック・ラプソディー事件」などの際に大量投入されたモデルで、一部の後期型と違いちゃんとした人間が乗れるようになっている。特にこの複座型は、第一次バイドミッション当時に伝説的な功績を残した、とある偉大なパイロット2名が乗っていた試作型と同タイプで、マオは其処にあやかってこの世界で最初のR-戦闘機は複座型のR-9Aにしたのだと言う➖の、ナビゲータ・シートの裏側にある非常用物資保管用トランクの蓋が開けられており、そしてその中には、物資の代わりに何時の間にやらテンタクランサーでぐるぐる巻きにされてコクピット内を転げ回ったり飛び跳ねたりしない様、トランク内に括り付けられた織斑千冬の姿があった。

 

R-9Aの対G対策が全くといって良いほどされておらず、またシートの裏側のトランクなんてあまりにも非常識過ぎる上に、余りにも危険な場所に知らぬ間に転がされている辺り、私は彼女に対して少し憐れみを抱いたのは言うまでもない。まあ、この高さから落ちればコンクリートの地面のように硬くなっている海面に落ちて、そのまま魚やカモメの餌になるよりは戦闘機に乗っていて死んだ方がまだマシであったであろう。

 

「………、まあ、くれぐれも、程々にな?」

 

私がそう無線で声をかけると、ぎゃっぴー達は顔をキラキラと輝かせて、ピシャリと私の方へ向けて敬礼してきた。あの様子を見て、安心して良いものかどうかは分からないが、恐らく織斑千冬は碌な目に合わないことだろうということは目に見えていた。

 

「はあ…、まあ、先が思いやられそうだな………。」

 

私はそう呟くと、一旦R-9Aにグリーンインフェルノとビースト・ザ・ワンの牽制を任せてその場から離れ、空中にて波動砲の応急措置を取った。それでも速射効率が約15%程落ちてしまっていたが、戦闘には殆ど問題は起きない筈だ、そう考えて、改めて戦う相手が増えたであろうグリーン・インフェルノと、ビースト・ザ・ワンに向き直った。

 

ビースト・ザ・ワンの方はダメージと疲労が蓄積しているらしく、動きにキレが無くなりつつあるように見え、またグリーン・インフェルノの方は動きが鈍い為か攻撃の殆どが集中し、彼方此方から煙を上げだしていた。スタンダードフォースやビット達は、後から駆けつけたR-9A同様、与えられた仕事を完璧にこなしてくれたようだ。だがそこで私は、何もフォースやビットがいたのならわざわざR-9Aを呼び寄せる必要がなかった事に気がつき、フォースやビットを使えば良かったなと後悔した。だが、其れはもう良かった。どうでも良くなっていた。

 

もう後は此方の番なのだから。

 

「………さてと。じゃあ………、私の、いや、私達のターンかな?」

 

そう呟き、私は素早く修復したスタンダード波動砲の砲口をグリーンインフェルノとビースト・ザ・ワンに向けた。ビースト・ザ・ワンとグリーンインフェルノが撃ってくる。だがグリーンインフェルノの機関砲はどれも全て、当たらずに明後日の方向に飛んでゆく。どうやら散々破壊された所為で照準機能が低下したらしい。絶好のチャンスだ。だが、その時。

 

ビースト・ザ・ワンの放った波動砲の一撃が、R-9Aへ向かっていることに気がついた。

 

「っ!避けろ、お前らっ‼︎」

 

だが、私の叫びも空しく、反応の遅れたR-9は右舷のブースターをの一部を吹っ飛ばされて、海面に真っ逆さまに錐揉みしながら(然もその時のコクピット内のぎゃっぴーズは衝撃で”うっかり”失神してしまっていた)墜落していく…、かに思われた。

 

突然、錐揉みしながら海面に落下しかけていたR-9が海面スレスレの部分から上空へと急上昇すると、レールキャノンで3点バーストをザ・ワンに決め込んで逃げるヒット&アウェイ方式でザ・ワンを翻弄した。だがその動きは何やら何処かぎごちなく、頼りなさの感じられる、お世辞にも上手いとは言えない機動だった。まるで最初にR-9を動かした私のような動きで、明らかにプロのパイロットに勝るとも劣らない、ぎゃっぴーズの操縦ではない、何かが可笑しいということは手に取るように分かった。

 

-…どういうことだ?

 

私は訳が分からず、無線で、恐らくコクピットに乗っているであろうぎゃっぴーズに呼び掛けた。だが、応じて来たのは、あまりにも意外過ぎるも、予感がしていた人物だった。

 

 

 

 

 

///////////////////

 

織斑千冬は、身体に掛かる、今にも押し潰されそうなすざましい重さと、胃袋を下から突き上げてくるような断続的な衝撃(お陰で、聞いただけで吐き気を催す”げっぷ”が出たうえに、口の中に何とも言い難い、不快な酸味が広がった)と、自分が入れられている、このまるで安っぽいクローゼットのような暗く、そして狭いこの据えたような匂いのする空間がビリビリと強風が吹き付けて震えている窓のように振動していることに気づいて目を覚ました。今、自分が何処にいるのかは分からない。あの時、突如現れたあのISのような何かが放った得体の知れぬ強烈な光と爆風の衝撃を受けてから、全くと言っていいくらいその後の記憶が無いからだ。だから千冬はもがいた。せめて自分が今置かれている状況や立場を理解しなければならない(勿論、自分の周りに絡みついた、薄く粘り気のある粘液を纏った細長く、生暖かいホースのようなものから早く逃れたいという思いも多分にあった)。そう考えた千冬は、暗闇の中に生じている薄く、枠状の光を放っている長方形の、天蓋か何らかの扉らしきものを思い切り蹴り上げた。瞬間、強烈な陽射しが千冬の目を真っ白に貫き、やがて霧散すると目の前に青い海が、キャノピー越しから飛び込んできた。如何やら何らかの航空機のコクピット内にいることは確かなようだが、パイロット(どういうわけか二頭身の、明らかに人間には見えない生き物ではないか!)は気絶しており➖一応、呼びかけてはしたが返事はなかった。が、息はあった事は幸いであった➖、おまけに海面まで真っ逆さまに墜落しているという事実を、千冬は認識した。

 

まだ何が起きているのか掴めていない千冬だったが、少なくとも、今の彼女にはダイビングをする予定は入ってはいないことだけは確かだった。ならばやるべき選択肢は➖少なくとも考えつく限りでは➖まず二つ、

 

「おいっ、しっかりしろ!このままじゃ、海に落ちるぞっ‼︎」

 

パイロットを叩き起こすか、

 

「クソッ、なら白騎士はっ⁉︎」

 

白騎士でこの航空機から脱出するかである。

 

だが、白騎士のシールドエネルギーの残量値を見たとき、千冬は絶望した。まだあの時から3割も回復していない。このままでは、この二頭身程の大きさのこの奇妙な生き物を連れて飛び立つことすら叶わないだろう。まして、例え抱えて飛び立てたとしても、敵からすればいい的になってしまう筈だった。ならば、パラシュートを使えば良いという話があるが、この状況下では白騎士以上に使用することは危険な上に、この内装からもう見たことのないようなこの航空機にそんな便利なものがついているのかどうかも怪しかった。ならば、最悪この方法を使わねばならないかもしれない。正直あまり考えたくはなかった事についで、勝手が分からず不安だったのもあるのだが…。

 

 

 

 

 

「…済まない、今は非常事態だから其処を退かせて貰うぞ。」

 

千冬は努めて冷静に、素早く前方のメイン・コクピットに移動すると直ぐに気絶していたメイン・パイロットのぎゃっぴーを後部のナビゲータ・シートに投げ出すと➖途中、何かしらの悲鳴のようなくぐもった声が聞こえたが其れどころではなかったため気にしなかった➖、そのまま操縦席に腰を下ろした。そして素早くコクピットの電子機器や操縦システムがどんなものかを確認した。少なくとも、テレビや漫画ですらついぞ見たことのないものだ。そんなものを、ただの車さえ運転したことの無い自分が操作出来る筈が無い(然し、現に白騎士は操縦してはいるが)のだが、最早状況は、当たって砕いて乗り切らなければならない事態にまで悪化してしまっている。ならば、

 

 

 

「やらずに後悔するより…、やってから後悔した方がマシだあぁぁぁーーーっ‼︎」

 

 

 

次の瞬間には、千冬はメイン・コクピットの席の両側に突き出している、先端に赤いボタンのついた操縦桿らしきグリップを握って其れを後ろに向かって思いっきり動かしていた。途端に、機体が急上昇する。R-9A「アローヘッド」は、海面スレスレに飛行すると再び戦場であるハワイの、血と炎で穢された青空へと舞い戻った。

 

 

 

「ぬぅおおおおおぉぉぉー‼︎‼︎」

 

 

 

叫んで、グリップの先にある赤いボタンを押した。何となくではあるが何らかの攻撃手段の一種ではないのかと考えたからだ。すると、機体の両脇からレールガンらしき弾丸が発射され、胸に巨大な、光る機械の大砲を付けたトカゲ型怪獣に次々と命中していく。そのうち攻撃は目に当たり、怪獣は怯んで悲鳴を漏らした。怪獣はまた自分を攻撃しようと此方を見据えてきたが、其れを見越して千冬はR-9を急上昇させた。急な動きで機体がガタガタと揺れるが、構わずその場から離脱する。怪獣は、かなりの弾幕を張ってくるものの、弱っているのか其れとも先程の攻撃で怯んでいるのかまるで当てずっぽうな攻撃しかして来ない。また反撃出来るかもしれない、千冬がそう踏んだ時だった。突然、室内スピーカーから声が聞こえてきた。何処かで聞いたような声の気がしたが、今現在R-9の操縦と置かれている状況に手一杯の千冬にその声を判別しろというのは、些か酷な話であった。

 

<其処のR-9、聞こえるか?其れを操縦しているのは多分ウチの”ぎゃっぴー”ではないだろう?さあ、どうだ死んでないならその辺のディスプレイで点滅しているパネルを押してみろ。応答が出来る筈だ。>

 

言われるままに、千冬はパネルを押した。すると、キャノピー部のガラス投影型ディスプレイの一番右上の表示が、

 

「SOUND ONLY」

 

という画面に変化した。どうやら此れで交信出来るようになったらしい。千冬は、マイクの向こう側にいるであろう人物に訊いた。

 

「………、取り敢えずお前が誰で何が目的でこの機体やあのパイロット共は何なのか、そして何故私を助けたのかという野暮な質問をしたいところだが…、状況が状況だから今は置いておこう。色々あり過ぎて突っ込む暇がないからな。」

<おや?意外だな。てっきりしつこく訊いてくるものかと思ったが。>

「今やるべきこととそうでないことの区別がつけられない程、私は愚かではない。」

<なるほどな、だが…、お前には出来るのか?…其れを操り、モノにすることが出来るのか?戦闘機なぞ操縦したことなど一度も無いと思うが?>

「…例え何も出来なくとも、何もしないよりはマシだ。確かに戦闘機を操縦したことは無くとも似たようなもの➖白騎士だな➖を動かしているから、大体は勘で出来る。其れに、私が居なくなればこの機体は間違いなく海に墜ちる。そうなった時、誰がこのバケモノ共を止め、誰が人類を救い、誰がこの機体の生き物達を救うんだ?お前か?いいや、少なくとも例えお前が百戦錬磨の戦士であったとしても其奴らバケモノの相手は充分手に余る筈だ。其れに、果たしてお前が人類を救ってくれるのかどうかも怪しい…。」

 

其処で一旦間を置いて、千冬は口を開く。

 

「だから躊躇っている暇は無い、例え何も出来なくとも、例え負けるようなことになったとしても、最後の瞬間まで…、足掻いてみせる…‼︎」

 

<…分かった。だが無理はするな。其れは人間が使うにはまだまだ課題が多すぎる。身体にかかる負担は尋常じゃない。だから不本意かもしれないが出来る範囲で私がアシストしよう。その代わり…、>

「その代わり?」

<お前も私の言うことには従って貰おう。その方が、”物事”を円滑に進められる。>

「”物事”?」

<見れば分かることだろう?>

 

謎の機体の女は、向こう側の化け物共を指し示した。まだ先程の戦闘で混乱しているか、回復中であるらしく➖然し、それはビースト・ザ・ワンのみの話であって、グリーンインフェルノタイプ・ミューテーションはこの際含んでいない。当のグリーンインフェルノは若干修復中のようだが戦闘に支障を来さない程度にまで回復しているのは目に見えて理解出来た➖、今の所攻撃は未だにして来てはいない。叩くのであれば今しか無いだろう。再び、女が口を開いた。

 

<…其れともう一つ。必ず、生きて帰れ。死ぬ気であっても絶対に死ぬな。>

「?其れはどういう…?」

<‼︎来るぞ、私に続け!>

「⁉︎」

 

無線の向こうの声がそう告げた直後、胸に青く輝く水晶のような機械パーツをはめ込んだ巨大なトカゲ型の怪獣(この時の彼女は知る由も無いが胸に波動砲を携えたビースト・ザ・ワンの事だ、奴は既にその強靭な回復力でつい先程迄の活力を取り戻していた)が、口から青い破壊光線や胸の機械からの光弾を連続で発射してきたのだ。堪らず、千冬は当てずっぽうに操縦桿を動かして何とか謎の女の機体に続く。白騎士での操作をそのままこの戦闘機にトレースしただけの、ぎごちない軌道ではあったが其れでも真っ直ぐにしか飛べない下手な艦載機よりはまだマシであると言えよう。

 

<私の隣に来い、織斑千冬!一緒にあの化け物共を倒すぞ‼︎>

「何っ⁉︎だとしてもどうやって…。エネルギーも満足するほど無い筈なのに…。」

<良く見ろ。いいか、奴等は今私達の直線上に化け物共がいるだろう?此れはまたと無い好機だ、いいな?今から一度だけしか言わないから私の言うことを良く聞け。良いな…。>

 

極秘回線を使って女は今から起こそうとしている作戦を千冬に話した。其れを聞いて、千冬は思わず難色を示した。

 

「馬鹿な…、そんな方法、絶対無理だ。いや不可能だ。第一そう簡単に上手くいく筈が…。」

『いや、可能だ。』

「⁉︎何だ?」

『ああ、勝手に割って入って済まない。だが状況が状況だから自己紹介はまた後にしてくれ。取り敢えず、此方と其方の機体と”此奴”、其れと一瞬のタイミングさえあれば可能だ。』

「だが…。」

『いいか織斑千冬。お前が見ず知らずの赤の他人で、幾らかちょっかいをかけられたうえに勝手にこの戦場に割って入ってきた新参者の我々を信用することが出来ずに躊躇うことぐらい分かっている。無理強いをしている訳でもないからな。だが今、この局面を共に乗り切らなければここに居る全員どころか全てが終わる。貴様が一番守りたいもの、大切なものがたちどころに消えてなくなることになる。え、今私達に協力せずに彼奴らに突っ込んでいって犬死にして、世界を滅ぼされてしまった挙句に死んでも背負いきれないくらいの後悔と絶望に押し潰され無間地獄で苦しみ続けるか、其れとも協力したことで全てを守り通すことができ、妹…、織斑一夏と再び元の日常に戻れるかは全てお前自身にかかっている。尤も、我々としては何方の選択肢を取ることについては勝手だが…、もしお前に守るべきものがあるとするのならば…、取るべき選択肢は一つしかないよな?』

 

ク、と千冬は歯軋りして拳を握り締めた。確かにこの正体不明の人物達の言う通りだ、従うしかないだろう。だが其れでも千冬には気になることがあった。

 

「分かった、いいだろう。だが一つだけ聞かせてくれ。何故…、何故私に其処まで執着する?其れに一体何の為にあんな化け物と戦う?一体何故なんだ?」

 

すると、スピーカーが一瞬だけ沈黙してから、久方ぶりに機体の女が口を開いた。

 

<…私は別に訳がある訳ではない。只の、…気まぐれだ。>

「………あまり納得のいく答えではないが…、一応、そういうことにしておこう。其れとお前もなのか?ええっと…。」

『マオ。マオでいい。源氏名だが取り敢えず今はな。』

「…承知した。で、取り敢えず、今言った方法でいくのだな?」

『ああ、不可能かもしれないが現実的には此れしかない。改めて聞くが、”覚悟はあるか?”』

「……今の状況下で、否定するもしないも、覚悟があるのないのだの、我儘は言ってはいられんよ。其れに、さっきは否定したが、お前らの言う作戦とやらはどうも面白そうな気がするんだ。」

<其れはつまりお前は…、>

 

「…乗るさ。お前らの賭けとやらに。」

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ、なら白騎士はっ⁉︎」

 

白騎士でこの機体から脱出するか、である。

 

だが




今回も無事に終了しました。本来ならもっと書きたかったのですが、どうしても2万字を超えそうになってしまい、断念せざるを得ませんでした。読者の皆さんを待たせているうえに情緒不安定に陥っているこの私が、其処まで書けるかっつーの‼︎

さて、茶番はここまでにして。

少し大事な話をしたいと思います。主に本作に関してです。

前話の後書きにて、本IS世界に転生する予定の怪獣の一覧を載せたと思います。その際にあのレギオンもいたのは、皆さんもご存知と思います。ネタバレになりますが、本作のレギオンは、このIS世界でラウラ・ボーデウィッヒに転生することになります。

え、何故ラウラだけネタバレ?

実はラウラの影が私の場合薄く感じる所為で趣味嗜好や性格が、どうしても掴み辛くなっているのが主な原因なのです。主にシャルの所為で。

え、其れより鈴がわかり辛いし、彼奴の方が影が薄い?

いやいやいや、これを読んでる其処のアナタ!そんなことないですよ、鈴は転生させた怪獣の特性や、本来付随していたセカンド幼馴染という設定ゆえに一番キャラが作りやすかったんです。だから鈴はほぼほぼ問題はない。其れに、彼処まで目立つキャラがどうして影が薄いなんて言えようか。

対してラウラは?正直なところシャルとセットのところしか見たことがないです。原作でもあまり触れられていないラウラ単体の話を此れから書くであろう(然もガメラ最強怪獣の一角、レギオンだから尚更)自分としては大変厳しい課題なのであります。ですので、後日幾つか活動報告を投稿する予定なのでありますが、その際にこのレギオンラウラの設定について要望を募りたいと思います。また、今回の冒頭の前書きにてお話しした内容についても、詳細について活動報告にてお話ししたいと思います。明日の夕方から毎日一個ずつ投稿していきたいと思いますので、その際はぜひ宜しくお願い致します。では、今回はこれにて。
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