お久しぶりです皆さん、お待たせ致しました皆さん!どうもどんぐりあ〜むず、です!漸くイリス箒最新話投稿出来ました!本当に長かった…(感動泣)
大学が忙しいのと精神的に余裕が無くてフラついていましたが、なんとか頑張りました…。此れも英気を養う為に見た、ガルパン、アキバのR-TYPEなどのシューティング、前期と今期含む深夜アニメ、其れにシン・ゴジラや君の名は。、アマゾンズやハンドレッド、シラスの釜揚げなどのおかげです!皆、ありがとう!
…後、ホラフキ◯先生。
また時間がいつ取れるかは分からないけれど、今度は早めに最新話を仕上げます!勿論、アマゾンズも、ですけどね!
実は後、ヴァルキリードライブを原作とした短編とかも考えているんですが、うーんどうしよー。ま、いっか其れについては次だ次。
と・に・か・く、今日でイリス箒再起動です!色々と忘れているから多分ツッコミどころがあるやもしれませんが、その辺りはご指摘して頂ければ幸いです。
今回も、感想、誤字脱字、評価、その他諸々のアドバイス等をお願い致します。
では、今回は最後にオマケも付いていますので、其方もお楽しみに!
最後に、ちょっと遅めの…
ハッピーハロウィン‼️
「素顔で語る時、人はもっとも本音から遠ざかるが仮面を与えれば真実を語りだす。」
➖オスカー・ワイルド➖
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ビースト・ザ・ワンは自らの細胞が傷を舐めて治していく感覚を感じながら、空中にいる小賢しい虫けら共を見つめた。戦い始めてからはや2時間弱。リムパック艦隊は壊滅にも等しい被害を被り、かの小さな空飛ぶ機械を纏った人間どもと、そのお仲間ののっぺらぼうのような空中に浮いている乗り物➖其れは織斑千冬のIS「白騎士」であり、篠ノ之箒のFA「アローヘッド」のことを指していれば、R-9も其れに当てはまると言えた➖は未だに直接的な戦闘のダメージを負ってはいなかった。
思えば、此処へ来る前に「あの巨人と機械の魚共に、得体の知れぬ怪獣共」からもっと力を与えろと言うべきだったな、とザ・ワンが考えた時だった。
機械どもが何かしらの打ち合わせと応急処置か何かをし、突如分散したのだ。白い人間は左手に、乗り物は右手に。
来るか。そう感じた時だった。
ザ・ワンの手前で再び2機が交差したのだ。そして、
R-9のサイビットが、ザ・ワンの胸部の波動砲に殺到した。
苦悶の呻きを上げるザ・ワンを尻目に、R-9がスタンダード波動砲のチャージを完了させる。そして、
『今だ、撃てっ!』
パワードスーツを着た謎の女とは別の、もう1人の女の鶴の一声が、千冬の鼓膜を振動させた。
「うおぉぉぉっ‼︎」
操縦桿を握り締めながら、言われた通り赤いトリガーボタンを長押しする。
すると、キャノピーの正面から光が迸り始めた。そして其れは遂に光る濁流となってザ・ワンの胸部に殺到する。対するザ・ワンも、直ぐ様胸部の波動砲をフルチャージして打ち出す。2つの光流は交差し、其々が向かうべき場所へ向けて飛んで行こうとする。
『千冬っ!』
すかさず、箒が自らが装備していた球体兵器を、R-9の前部に向けて飛ばし、機体を光の濁流からガードさせる。光線は、岩を避けるサケのように全て横に逸れていく。
対してザ・ワンは、その巨体によって強力な光弾から逃れることが出来なかった。胸部の波動砲に、スタンダード波動砲の一撃を受けて海面に倒れ込み沈んでいく。千冬は、あのままやられてくれていたらいいが、と考えた。
すると、背後から機関砲弾が空を切る。振り向くとそこにはグリーンインフェルノの巨体が、豆をばら撒くように機関砲弾を乱射しながら接近してくる。
<デカブツの相手は私に任せろ、織斑千冬。>
すかさず、例の謎のパワードスーツを身に纏った女から通信が入る。
「バカな、あんな大きさの奴をどうやって…。」
千冬は訊いた。流石にあれほどの大きさのバケモノ染みた巨体の、あの空飛ぶ島のような兵器の塊を、落とせるというのだろうか。作戦を聞いてはいたが➖先にあのトカゲの化け物をギリギリまでフェイクを利かせて叩き、残りのあの戦艦を叩き落とすという、至極単純にして有効な作戦ではあった➖、あまりにも無理があり過ぎるのだ。だがパワードスーツの女達には、勝利を確信しているように見えた。
<目の前の球体、見たことはあるよな?勿論、あの球体の能力のことも、だが。>
女は、自身の目の前にあるあの球体状のエネルギー体を、顎でしゃくって示した。球体は静かに回っている。さも、主である女達の指示を待つ忠実な猟犬かのように。
「…ああ。」
『なら話は早い。此れには、お前が”今まで見たもの以上に強力な”ものをもう一つ持っている。ただ敵に喰らいついたり、弾除け以外にな。』
「本当か⁉︎」
『まあ見ていれば分かる。だからこそその代わりといっては何だが、あのデカブツの注意を惹きつけては貰えないか。…ああ、何もお前だけにさせるつもりはないぞ。ほれ、座席の後ろを見てみろ』
言われ、後ろを振り向いてみると、2匹の二頭身の妖精のような生き物が這い出してきた。まだふらついているのか、顔が青白くなっている。千冬はぎょっとしながらも訊いた。
「お前達は…。」
『容姿は兎も角、其奴らは私や箒のクローンのようなものだ。操縦もそこそこ上手い方ではあるから、ある程度頼りにはなる筈だ。』
「…気休め程度にならなきゃいいが…」
『おいおい、あんまりそんなこと言うなよ?其奴ら傷つきやすいから、そんなこと言ったら泣いてしまうぞ。』
「仕方ないだろう、いきなりこんな何処かの萌え艦船ゲームの妖精みたいなのが来ても…、というか、そもそもこいつらどうやって生まれた?どんな技術を使えばこんな生き物が生まれるんだ?」
<今はそんなことは重要じゃない、ぼけっとしてる暇があったら戦え!ほら言わんこった、また来たぞ!>
女の声に我に返って、正面を見る。見れば、砲弾を乱射しながら、グリーンインフェルノが此方に向かって来ている。
『兎に角、ウチのおちびさん達と一緒にあの”毒々モンスター”の注意を逸らしてくれ!倒すのは我々に任せろ!』
「ちょっと待て、何故”毒々モンスター”なんだ?」
<身体に悪そうな色をしているからだ!行くぞ!>
そう言うと、パワードスーツの女達は更に上空へと飛翔し、真上から奇襲をかける態勢に入った。
「言ってくれるな…、しかも簡単に…。まあ、昔束と一緒にエスコンで遊んだことはあったが、それも精々小学校までだぞ…。本当に大丈夫か…?」
そうぼやいた時、後ろから肩を叩かれていることに気がついた。千冬は振り返った。見れば、二頭身の生命体2匹が、まじまじと千冬を見つめている。此れから何をすれば良いのかと聞いて来ているように見えなくはなかった。
「(気の所為か…?こいつらの姿形、何処かで見たような…。ま、まあ今は良いか…。)…なあ、お前達。こいつの腕はどれくらい立つ方だ?」
すると、2匹は揃ってにこやかにサムズアップをした。が、今度はそのサムズアップした腕を顔の位置から少し下げてしまった。
「おい待て待て待て、其れはどういう意味だ⁉︎まさか”中の下”てことか?本当に其れで大丈夫なのか⁉︎」
千冬がそう言った次の瞬間、突如R-9は急加速からのインメルマンターンを繰り出しながらグリーンインフェルノを挑発し始めた。
「おああああああっっっ⁉︎どおおおおうしぃぃたあああああ‼︎ぃ一体ぃぃ何がおきたああああっッ⁉︎」
思わず叫んでしまった千冬だったが叫びすぎた余り己の舌を噛んでしまい、其処で言葉を途切らせた。口を抑えながら前を向くと、其処にはいつの間にか例の妖精型生物が千冬の太ももの上に座りながら、操縦桿を握って操っていた。何が起きているのか分からず唖然としていると、
「ナンダオマエ、ミカケトセイカクニヨラズマガヌケテリャウルセエンダナ」
確かにこう言ってきた。そう、
「………ぅほぉおああっ⁉︎
舌足らずに千冬は素っ頓狂な声を上げた。まさか会話も出来るとは。
「バカイウナヨ、コチトラタッタイママトモニシャベレルヨウニナッタダケダゼ。ダカラウチノアネゴタチモシラネェ。テレパシーデイママデカイワミテェナノシテタガ、アレジャアコッチガツカレルシ、オメーミテーナニンゲンニモワカリズレーカラナントカナラネーカナー、ナンテイッテタラナントカナッタ。イガイニイケルシスゲーモンダゼ☆」
「其れは果たして凄いのかどうか…。最早なんでもアリか…。」
「イッテルバアイカヨ。サッサトレバーヲニギリヤガレ。デネート、コンドハオメーノソノデケームネデ”タワワちゃれんじ”シナガラ『コブラ』カケテヤル」
「わ、分かった分かった!分かったから其れだけはやめてくれ!」
「…サッキカラキイテレバ、ワタシノコトハムシ?”サンゴウ”。」
ふと、後部シートから声がかかった。見れば、気怠そうな2匹目の生命体が
「ダレモワスレテネーヨ、”ヨンゴウ”。マ、トリアエズスマソダ。デモ”たいみんぐ”ノガシハオマエノ”でふぉ”ミタイナモンダトイマハアキラメトケー。」
「アーイ。ジャア、ココカライキテカエッタラ”ナマスパム”デテヲウツカラ、コンドカラキヲツケテヨー。」
「エー、アリャアタノシミニシテルブンダカラダメダゼ。セメテサンマノカバヤキカンニシテクレヨ。」
「ソウ、ナラソレデイイー。」
千冬は面食らっていた。このままこのかなり緊張感の無いカタコトの会話を聴き続けていたら自分の頭が可笑しくなってしまう➖或いはもうなっているかもしれない➖のではないだろうか、いっそまたトランクにでもぶち込むか、などと考えていた。
だが、其れと同時に、もう1匹も話せたのか意外だな、などという自らが出したとは思えないくらい至極平凡な感想も、同時に脳裏をよぎった。だが千冬は其れに構っているような暇が無いことだけは分かっていた。取り敢えず咳払いをすると、2匹は千冬を見た。
「…一先ず良いか?そんな話をしている事態では無いと思うが…。」
「オウ、ソゲダワ。」
「ア、ソッチヲワスレチャッタ。」
「忘れるな。というか、何故出雲弁なんだ?」
「コマカイコトハキニシナイ」
「ソウイウコトダ、ダカラモウイッカイヤルゾ」
「いやいやいや、ツッコミどころ満載かつ強引過ぎる回答だろおおおおっっっ‼︎」
操縦桿を無理やり握らされた千冬は、状況の急展開さと意味不明さに叫んだが、その叫びも、再び音速の彼方へと消えていった…。
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出鱈目だが少しも被弾していない有る意味才能のあるマニューバで挑発するR-9を見て、内心箒とマオは関心していた。パワードスーツの才能だけでない、あれだけのバケモノを相手に恐れているような口ぶりにも関わらず物怖じせずに立ち向かっているのだ。きっと将来は他のRシリーズは愚か、”ワイズ・マンシリーズ”のパイロットとしても役に立ってくれるかもしれない。だが其れに至るまでにはまだかなりの時間が必要だ。
其れに、勝利の美酒に酔うのはこの戦いに勝ち残った後だ。
「ま、常套手段だが真上から行くしかないか。」
『少なくとも其れが良い。装甲が薄いのも基本的には真上だし、砲台の数も比較的少ないからな。初心者向けではあるが…。』
艦橋が動き出し、内部に潜んでいたヤドカリが姿を現した。艦橋から大量の艦載機らしき”何か”を大量に放出してくる。明らかに航空機ではない肉塊と機械の混ざったような物体が此方に突撃をかましてこようとするのが見えた。
「ちょっと難しいか…。」
『まあ仕方なかろう。このクソゲーめいた状況なんだ、並みの初心者パイロットならフツーなら開始23秒、ゲームでのボスポジションに当たるA級やS級だと其れ以下の割合で死ぬ。だが今の我々は…。』
「運良く生き残っている、か…。」
『うむ。』
「其れを根拠にしろと?」
『其れだけを言いたいんじゃ無い、寧ろチャンスでもあるってことだ、”あの通り”にやれば…。』
「結局根拠にしてくれと言っているようなものじゃないか…。其れにしても、果たして本当に此れで良いんだな?此処まで来たんだ、もうどうなっても保証は出来んぞ?」
『言うと思ったよ。だが安心しろ…。与えられるダメージは相当なものだからな…。』
「ふっ、どうだかっ!」
スラスターを一瞬蒸した箒は、何とか回復した波動砲で上部甲板を焼き払いながら、一直線にグリーンインフェルノに向かう…振りをして、急加速しながら
此処で、改めてこのFA「アローヘッド」と、戦闘機R-9に搭載された推進システム「ザイオング慣性制御システム」について説明する必要があるだろう。
ザイオング慣性制御システムは一種のバザードラムジェットエンジンなのだが、その推進方法は主に以下の通り。
1、先ず、加速による運動エネルギーの減衰を一切無視する。 これにより一度速力を獲た場合、直接的な外力が働かない限りブースターによる速度維持は必要ない(この為、R戦闘機がスピードアップ及びダウン時などにしかブーストを吹かす必要はない)。
2、次いで、1により運動エネルギーのベクトルを捩曲げることが可能となる。つまるところ全速力の前進から急に後退やスライド移動が可能であるということになる(しかしながら元来制圧前進が当たり前な戦闘機としての性からかあまり多用はされたことはない)。
3、これらによりパイロットにかかるGは同じく搭載されたザイオング慣性管理システムで相殺できる為、パイロット及び機体含め問題なく航行することが可能(ただし、ある程度の限界はある。またこの場合、
またこれにより、秒速208km、換算により約マッハ600という驚異的なスピードを叩き出すことが可能になる…、といった具合になる。
そして其れが何を意味するのか。
既に波動砲の連射でボロボロになっていた装甲と甲板が、強烈な衝撃波によりグリーンインフェルノの艦橋とその周辺の装甲板ごと空の段ボールが強風にあおられて飛んでゆくかの如く千切れ飛び、そして其れらの残骸全てを全てサイビットが喰い尽くして行く。そして、
『今だ突っ込めッ!』
一瞬がら空きになった
「此れで最後だ、行くぞッ!」
『うむっ、一度きりのチャンス、逃しはせん!”スコアアタック”だッ‼︎』
ヤドカリに至近距離まで近づき、波動砲の充填をし始めた箒達は、マイホームダディが動き出すコンマ1秒前に”あるシステム”を起動させた。次なる”後継機”の為に、試験的にフォースとR戦闘機、そしてFA側にも搭載されている、強力な”業物”を➖其れも、”無秩序なる太陽の力”と呼ばれるものを➖起動、そのままヤドカリの中身に当たる、マイホームダディの本体パーツの球体部に炸裂させた。
「喰らえっ!”デルタウェポン、オーバードーズッ!ニュークリアッ、カタストロフィー”ッッッ‼︎」
『次いでだゼロ距離波動砲と一緒に喰らっておけえええええッッッ‼︎』
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強烈な空気の振動が、機体を揺さぶる。戦闘機群と交戦していた千冬は、何事かと身を乗り出した。
「っ⁉︎何だ一体!」
「アー、コリャヤベエゼ。オイオマエ。」
「せめて名前で呼んでくれ…、なんだ?」
「イマカラソコノすくりーんぱねるソウサシテ、イソウジゲンニツッコムカラチトショウゲキニソナエナ。」
「は?何を…、おいっ⁉︎前、前‼︎」
千冬が指し示した方向には、未だ生き残っているバイドが群がりつつあった。だが幾つかは女達のところへ向かおうとしている。
「アネゴタチニムカッテルヤツラハムシダ、メノマエノレンチュウヲフットバスダケニシトケ」
「いや、だが…!」
「ドウセヤツラガネエサンタチニヤロウトシテイルコトハ、ドウアガイテモムダデス。サア、ワタシタチハイソウジゲンニトビコンデヤツラヲタオシマショウ。」
「いやだから、倒すってどうす…。」
言い終わらない内に、”サンゴウ”が舌打ちをしてパネルの操作を➖其れも、ただタッチパネル上のボタンを押すだけの操作を➖完了してしまう。目の前に、薄い紅紫の巨大な光の膜が現れた。
そして、サンゴウは、その膜に向かって、
操縦桿を前に思い切り倒した。
「おわあ!またこれかあああああっ、ムグぅッ!」
千冬はまたしても叫び出しそうになったが、今度はぎゃっぴー”ヨンゴウ”の触手によって口を塞がれてしまった。
「むぐっ、むうううっ⁉︎」
「ナニヲスルンダ、トイイタゲデスネ。ダマッテイウコトニシタガッテ、トビコンデハドウホウノショウジュンヲアワセテ、ウッテシマエバイインデス。ソノキニナレバ、アナタナドワレワレノエサニスルコトナドヨウイナンデスヨ?エエ、ソレコソネエサンタチノキョカサエエラレタラ。ワカリマスカ?ドノミチ、アナタノ”セイサツヨダツ”ハワレワレカラモ、ソシテコノジョウキョウカラモニギラレテイルトイウコトヲ、クレグレモオワスレナキヨウ…。」
低い声でそう呟きかけてくるのを、千冬は黙って聞くことしか出来なかった。やがて、紫の膜へと機体は飛び込んでゆく。その分、身体にかかる重圧も上がりつつあるのを、千冬は感じた。このまま重圧が上がれば、自分は圧死するのだろうか?あわよくば、窒息だろうか。何にせよ、そんなことでくたばりたくはないな。
だが、千冬は其処で、自らが死にたくないと考えていることに苦笑した。やはり、自分は口先だけらしい。
「くく…、もう少し…、しょう、じ…ん…、しな、いと、いけな、い、な…。」
そして、紫の膜に飛び込む数秒前に、照準が敵の機体群に合わさるのと、背後の巨大な緑色の戦艦と周囲の化け物共が、青白い稲光に包まれるのを見ながら、千冬は、握り締めていた操縦桿を手放した…。
///////////////////////
…。
……波の音がする。
「…。」
「……。」
「………はっ⁉︎」
暁色の夕日の光が目に差し込み、織斑千冬は飛び起きた。あの後、強烈な重圧によって意識が飛んでいる。覚えているのは、自らの記憶が正しければあの化け物共は自分の放ったエネルギー波➖”波動砲”とか言っていたのは気のせいだろうか…➖と、あの赤く細長い光に包まれて、そして自分は…。
「お、目が覚めたか。」
背後からの声に気がつき、後ろを振り返ると、福の能面を被り、腰まである銀髪のロングヘアーをポニーテールにした、X字水着➖何処ぞのオンラインゲームなら、その水着をきっと”セクシービキニウェア”と呼んでいたことだろう➖と白いパレオを巻いた、スタイル抜群の美女らしき人物が其処にいた。
千冬は警戒するように、急いで立ち上がった。
「貴様…、何者だ…?」
『おいおい落ち着けよ、私達は共に戦った仲じゃないか。ま、取り敢えず色々と例は言うぞ。ありがとう。』
能面の女の背後から、琥珀色のピンポン球のような何かが千冬の前に現れて、
「あ…、お、お前達、まさか…。」
「そのまさかだ、織斑千冬。生き残れて良かったな、流石は篠ノ之束が見込んだ女だけのことはある。正直、彼奴らに対して使えるかどうか疑問だったが…、まあ、今のところは平均、だな。戦えるようになるまでにはもう少し時間が要るか…。然しまさかあのぎゃっぴー達が会話出来る程度にまで成長していたとはな…。」
『其れもそうだな…、ぎゃっぴーに関しては恐らくは私のバイドの因子の影響によるものが大きいのだろう。まあ、ぎゃっぴーにしろ織斑千冬にしろ、此方としては色々と助かったし、今は初戦を何とか生き抜いたことに関して反省と祝杯をあげるとして…。ん、おいどうした織斑千冬?何私を見て呆けたような顔をしてる?』
「…ン球が、飛んで、喋って、いる?」
『…ん、なんだ聞こえんぞ?もう一回言ってみ?』
「ピ、”ピンポン球”が…。」
『………おい。』
「えっ?」
『お前、今私を”ピンポン球”呼ばわりしなかったか?』
「えっ、いやあの…。」
『しなかったか?』
「いやだから…、」
『しなかったか?』
「…………してません。」
『フン、なら良い。』
千冬は少しばかり後悔していた。表情など全く分からない筈なのに、彼処まで凄まれた辺り、何か言い知れぬ恐怖を感じたからだ。だが、
(其れを抜きにしたって、何がどうなっているのか頭が追いつかんぞ…。)
そう。自分達はハワイの、太平洋のど真ん中で得体の知れない連中と一緒に謎の敵とドンパチをやらかしていた。だが、其れが今はどうだ、沈む夏の夕暮れの中、いつの間にか明らかに何処かの砂浜、其れも何処か懐かしさを感じさせる場所にいて、どういう訳か自分まで水着(能面の女のものの色違いのようだ。花も恥じらう思春期の世代である千冬には、幾分か派手に写り、耳が真っ赤に染まった。)を着ていて砂浜に寝転がされ、挙句の果てに気味の悪い能面を被った水着の女と、宙を舞いながら低い少女の声で喋るピンポン球に恫喝される。
まだ高校生である手前、流石の千冬も、思考が停止しかけるのは無理もなかった。
「思考が停止しかけてるな…。仕方ない。順を追って説明しよう。先ず、私達はあの戦いから生き残った。此れは分かるな?」
「あ、ああ、辛うじて…。どうやってかは覚えてないが…。」
『でだ、お前が気絶しているから、目覚めるまでの間、此方はお前の白騎士を解析してウチのFA➖つまり此奴の纏っていたパワードスーツだな➖に、待機形態に関する情報を組み込んで、今こうしてお前や此奴らと手間をかけることなく話せているという訳だ。』
「そうか…。ん?待てよ、そしたら其れはまるでお前自身がそのFAとかいうパワードスーツそのものみたいに聞こえるぞ?まさか…。」
『ああ、私こそこのFA”アローヘッド”のメインAIの”MAO”だ。宜しく。』
「まさか、本当にAIなのか…?」
『ああ、紛れもなく、な…。』
此処で、マオは一つだけ嘘をついた。もちろん、自身がAIなどという真っ赤な嘘のことだ。事実、アメリカ、ドイツなどの幾つかの企業は未だ一般レベルまではないとはいえ、まるで感情を持っているかのような
「まあ、其の後はハワイから此処、九十九里浜にまで自衛隊や各国軍にばれぬようお前を連れて来たわけだ。」
「な、成る程な…。ん?ということは私は一日中眠っていたのか?」
「いや。まだあの戦いから数時間は経過していないな。何せ、我々の装備は秒速208kmかそれ以上は出せるからな。」
それを聞いた千冬は後頭部をバットで殴られたぐらいの衝撃を受けた。秒速?秒速208km?約マッハ600だと?聞いたことないぞそんな数値、それに、
「衝撃波で諸々が吹っ飛ぶぞ!其れにお前達も無事では済まんだろう‼︎」
「ああ大丈夫だ、其処までの速度を出さなくても別にハワイには追いつくし、何より此れでもちゃんと対G機構も万全にしてあるからな。」
『うむ。詳しいことは言えないが、つまりはそういうことだ。分かってくれるな?』
「あ、ああ…。」
千冬は、何処か釈然としなかったものの、一先ずは応じることにした。今は詳しいことを聞き出すのは無理でも、今後から幾らでも聞き出す機会はある筈だ。根拠の無い自信だったが、今の千冬にはそのように思えた。
「…なあ、詳しいことは聞かないから、一つだけ教えてくれ。…”アレ”は、なんだったんだ?」
能面の女とピンポ…MAOは暫し黙っていた。だが女が暫くして口を開いた。
「………アレはバイド。我々が倒そうとしている、宇宙の敵にして…、我々の”計画”に邪魔な存在だ。」
「バイド…?宇宙の敵…?其れに計画とは、一体…?」
「詳しいことは聞かないと言ったはずだが?」
「い、いやそうじゃない、と、兎に角…、人類の、敵、で良いんだな…?」
『…お前がそう思うなら、つまりはそういうことだ。』
其れを聞き、千冬は頭を抱えた。つまりアレは、あの化け物は…。
「まあお前が考えていることがあるならそうだと思えば良い。ああ後、私はれっきとした地球人だからな。間違えてもエイリアン扱いだけはするなよ。」
千冬は顔を上げた。
「じゃあ、お前達は、何故アレを…。」
「言った筈だ、詳しいことは話せない、と。事情が複雑なんだ其れくらい察しろ。」
「アッハイ…。」
一瞬間が空いたが、今度MAOが口を開いた。
『ああ、そうだ。各国の政府には我々を含め、あの化け物共は全て篠ノ之束の発明とであると伝えたぞ。』
「はあああああッッッ⁉︎」
「死人が出ているとはいえ、各国にアレ…バイドの存在を勘付かれて警戒されては困るからだ。今は無理でも、せめて5年10年後までは耐えて欲しいことを篠ノ之束に伝えてくれ。」
「いや然し、束がそんなことを果たして認めるか…?そもそも前にお前達にしてやられたことに、根を持っているんだぞ?」
「其れを抜きにしたって、彼女は認めるさ。何せ、
其れを聞いて、千冬ははっとした顔になった。そうだ、白騎士の戦闘データなどにも其れに関するものも含まれている筈だ。なら其れを説得材料として活用すれば或いは…。
『まあ、ただで”篠ノ之束が犯人”にするつもりは無いぞ?”自分が発明した宇宙開発用の装備が事故で暴走したが、其れを止める為に、この”二体の白騎士”を向かわせて鎮圧させ、兵士達の命を救った、といえば、多少は反感を持たれてしまうが仮にも篠ノ之束は人類を救った英雄になる。悪くない話だろう?そもそも、世界に喧嘩を売っている時点で濡れ衣もクソも無いんだからな。』
「そう、なるのか…。」
「で、お前のアリバイも考えている。今日一日中お前はこの九十九里浜で海水浴兼潮干狩りをしていたといえばいい。その為の布石を敷いておいた。本当ならホノルルにしておきたかったが…、まあその辺りは色々と面倒だからな。」
「潮干狩り…?」
千冬は、能面の女の背後を見た。見れば食べきれないくらいの量のハマグリやマテ貝、バカガイなどが大量に詰まったバケツが2〜3個あった。
『交通費と祝杯用の食事も用意してある。今日は其れを食ったら貝を持って家へ帰れ。…生きている喜びを、大切にしろよ。』
「…そう、だな…。すまない、色々と助けて貰って…。」
「謝られる程のことでもない。こそばゆいからそういうのはやめてくれ。」
「然し…。」
『気にするな、お互い様だ。其れよりも腹が減ったぞ。早く飯にして、帰って寝よう。今は、休息しないといけないからな…。』
その一言に、能面の女と千冬は反応した。
「ああ、せっかくの料理が冷めてしまうな。早めに頂くか。」
「あ、そうだな…。…然し、喋る上に食事をするパワードスーツとそのAIだと…?益々意味が分からんな…。」
其処まで呟いて歩き出してから、千冬はふと思い出したように能面の女に訊いた。
「…なあ?何故能面なんて被っているんだ?」
「…何故か、だと?」
「お前はどう見ても私の知り合いではないのだし、せっかくだから…」
「済まんな、訳あってこの仮面の下の素顔は見せられんのだ。悪いがこれ以上話すことは出来ん。どうしてもな。」
「…どうしても、か…。」
「うむ。だが名だけなら教えられる。其れを覚えておけば、またいつか会った時には役に立つことだろうな。」
「そうなのか?じゃあ、なんて言うんだ?」
「ツキナ。ツキナで良い。」
月奈。能面の女➖篠ノ之箒は、咄嗟にかつて自分を育てた少女の名と、自らの記憶にある、美しい月の光を思い出しながら、その偽名を名乗った。
「そうか…、月奈、か。良い名だな…。」
「そうか?私としては普通なんだが…?」
その時、遠くから彼女達を呼ぶ声が聞こえてきた。MAO達だ。食事にしたいらしいのか、箒達を呼ぶ声は、ややキレ気味に聞こえなくもなかった。
「呼んでいる、か…。もう行かないとな…。」
「此れで、お別れなのか?」
「いや、私はお前や束達の身近なところにいる。だから、此れが最後だとは思わん。またいつか会おう。」
「身近なところ…。」
「そんな訳で、だ。」
「へっ?」
箒は、千冬を抱き抱えた。はたから見れば其れは所謂「お姫様抱っこ」とでもいうべきものだった。
「晩餐に遅れるから、急ぐぞ、姫。」
「だっ、誰が姫だっ///!お、降ろせ‼︎」
「フッ、嫌だ。」
そう言って、箒は駆け出し、千冬は真っ赤になった自分の顔を両手で覆った。
この後、織斑千冬は此れを機に、様々な宿命を箒達や束達とともに背負って行くことになる。だが、そんなことを感じさせない位に彼女の顔には、年相応の少女の恥じらいが浮かび上がっていた。
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東南アジア・インド洋近海➖
その海上にて違法操業していたマグロ漁船「グローリースター」は、1人の男を救助していた。明らかに長時間海に漂っていたらしく、身体の皮膚の彼方此方がふやけ、破けて傷だらけになっていた。だがそんな状態であるにもかかわらず、男は未だ意識があるように思えた。
「ひでぇ身なりをしてる割にゃあ、ピンピンしてラァ。いってえどうなってやがんだ?」
「其れに彼奴の着てたあの
「何?まさか奴さん、あの
インド語で議論をし合っていた漁師達だったが、突如その会話は途絶えた。議論の対象になっていた”水死体モドキのジエイタイの男”が、まるで幽鬼を思わせるような動きで立ち上がったからだ。
「…此処は?」
立ち上がったことは愚か、流暢なインド語に虚をつかれた漁師達だったが、1人が前に一歩進んで男に言った。
「あ、ああ此処はインド洋の近くだ。俺たちは此処で漁をしてたんだが…。」
「違う、
その気迫に押された漁師達だが、別の1人が口を開いた。
「だ、だいたい1週間弱くらいじゃねえか?な、なあお前ら?」
そう言うと、漁師達の間に引き攣った笑い声が広がっていく。だが、男は其れを面白くなさそうに、首を回しながら言った。
「……お前ら邪魔だ、
その言葉に、漁師達の笑い声は止まった。
「あ、そりゃどうい」
1人が男に向かって言いかけたが、まさかその言いかけの言葉が辞世の句になるとは夢にも思わなかったことだろう。
男➖有働貴文は、片手で漁師の上半身を後ろに向かってへし折った。身体を逆L字型に折り曲げられた漁師は、そのままドサリと倒れた。
次の瞬間には漁師達の叫び声と怒号が飛び交ったが、其れも直ぐに収まり、静まり返った。後に残されたのは、煌々と灯りを灯し、唯波に揺られるだけの鉄の塊と、その上に転がる肉片の山々と夥しい血の跡。
波と風の音と、冷たい空気の中に混じる鉄錆の匂いだけが、その静かな地獄の光景を支配していた。
オマケ「千冬の独り言」〜
「美味かったな…。やはり毒が入っているのではと考えたのは些か早計だったか…。然し…、まさか能面つけたまま食事をするとは…。あんなの初めて見たぞ…。無理やり能面の口をこじ開けるとは…。そんなに顔を見せたくないのか…。というか食べ難いはずだろう、アレは…。
然しだ、あの女のポニーテールにしているのに使っていたリボン、何処かで見たような気がするな…」