I-TYPE   作:どんぐりあ〜むず、

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筑摩筑後オレ蓄のう症。

どうも、蓄のう症になってないのにクリスマスだった昨日の朝に、クリスマスのウキウキ気分を台無しにされる事態が起きて意気消沈して蓄のう症にでもなったような気分になってしまったどんぐりです。今日の仮面ライダーエグゼイドはマジで酷すぎる…、クリスマスにやる話じゃないこれ…。

そんなことなので、折角のクリスマス特別回なのに、昨日の仮面ライダー見たらもうヤケクソになってしまって、気づいたらこんなことになってしまいました。我ながら、昨日の仮面ライダーとやってることが変わんねーじゃねーかとは思いましたが…、やってしまった以上もう後悔は出来ません。原作箒、ごめんね。

まあ其れでも、読者の皆様が楽しめて貰えるのであらば此方としては幸いです。今はレーザーショックで駄目でも、必ず其れから回復して今日の残り少ないクリスマスタイムも存分に楽しもうと思います(もう終わったけど)!本当に、お待たせしました‼︎

感想、アドバイス、批評、お気に入り登録、誤字脱字などなど、どしどし送って頂ければ頂けるほど作者である私も元気になれるし励みになります‼︎なので送って下さい、皆様の、本作への愛を‼︎(←なんかどこかクウガっぽいな…

…えー、でははじめていきましょう。

では改めてお待たせ致しました、どんぐりからのちょっとしたクリスマスプレゼント、今年最後の拙作イリス箒最新話を、どうぞ‼︎



(因みに、FA「アローヘッド」の見た目は、略称繋がりの「フレームアームズ」に登場する「フレズヴェルク=アーテル」そのままのような見た目を、同じくフレームアームズの「ラピエールシリーズ」のような女性型にした感じです。)


第10話 這い寄る影 後編(年末・クリスマス特別編)

「WARNING!

 

A HUGE BATTLEMONSTER

 

”BEAST THE ONE”

 

IS APPLOCHING FAST.」

 

 

///////////////////////

 

 

琥珀色の夕陽が差し込み始めた篠ノ之神社に、1人の男の姿があった。

 

篠ノ之柳韻。

 

篠ノ之神社神主、篠ノ之姉妹の父親であった。

 

境内の通路に溜まりに溜まった枯葉を、1人黙々と掃除していた。そろそろ箒も帰ってくる頃合いであろう。束は…、恐らく心配するだけ無駄だろう。

 

「さて、そろそろ引き上げようか…。」

 

老人のように、えっこらせ、と声を漏らしながら、塵取りと熊手を近くの物置に仕舞うと、道場とは別にある、神社の裏手の篠ノ之邸に帰って行った。

 

///////////////////////

 

「ただいま〜、帰った、ぞ…。」

 

玄関に入ったところで、柳韻は違和感を感じた。家の周りどころか、その中まで異様に静かなのだ。例えて言うならば其れはまるで不気味な洞穴のような。異様なまでの静かさに、寒気さえも覚えた。

 

その上…、

 

「何だ、この匂いは…、ッ!、そんなまさか…」

 

土足のまま、足音を派手に立てて、静かな家の中に充満する、強烈なまでの錆びた鉄の匂いの元へと駆け出す。

 

 

 

居間への扉を開けた時、その最悪の光景は直ぐに飛び込んで来た。

 

 

 

居間全体が地獄絵図と化していた。砕かれた液晶テレビ、ひっくり返ったテーブル。ズタズタに引き裂かれたソファーや椅子にカーテン。粉々に割られた食器や窓ガラス。そして其れらの上や天井や壁に至るまでが、夥しい量の血飛沫で染まっていた。

 

 

そしてその中に沈む、辛うじてその形を保っている物言わぬ肉の塊。

 

 

其れはかつて柳韻の妻であり、篠ノ之姉妹の母親だったモノ。

 

 

その証拠に、血溜まりの中に沈む彼女の携帯と、千切れた手首の中に光る、柳韻が彼女に送った結婚指輪の姿があった…。

 

 

「あ、あ、あ、ああああ…。そ…、んな………、う、嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だっ!誰が、誰がこんなことをっっっ………‼︎」

 

 

そう言って柳韻は思わずかつて妻だったものを抱き締めて、声を上げて泣き出した。いきなり何が起きたのかも理解出来ずに、柳韻は泣き崩れる。

 

 

 

その時だった。彼の背後を通り過ぎる気配を感じたのは。

 

「……………っ‼︎誰だっ⁉︎」

 

勢いよく振り返るも、其処には誰も居なかった。だがこれだけは確実だった。

 

 

 

まだこの家の中に、妻を殺した犯人がいる。

 

 

 

警察に連絡しようにも、携帯は電池切れのうえ神社の事務所の机の上に、居間に据え置かれた電話機も叩き壊されている。妻の携帯も血溜まりの中に沈んでいる。此処から逃げ出すという選択肢もあったが、其れでは数秒で犯人に追いつかれてしまう危険性もある。近所や公衆電話とて、此処から約5分以上の距離にあるのだ。

 

 

「……やむを得ん。」

 

 

素早く、柳韻は隣の和室へと駆け込んだ。掛け軸の掛かった床の間にある得物を手にする。

 

 

代々より篠ノ之家に伝わりし日本刀の一つであった。

 

 

最早戦うしかない。そう腹に覚悟を決めて、柳韻は構えた。

 

 

「…出てこい。いるのは分かっている。妻を殺したのは貴様だな⁉︎姿を現せ‼︎」

 

 

すると、再び背後から何かが通り過ぎる。柳韻は素早く振り返り刀を振るう。だが其れも、ヒュ、と虚空を斬るだけで其処には何もいない。

 

だが確実に自分の周辺にいるのは確かだ。柳韻がそう確信したその瞬間、再び気配を感じて向き直った。

 

 

 

 

だが振り返ると同時に柳韻が刀を振るうことは最期まで出来なかった。

 

 

 

 

 

 

柳韻が見た最期の光景。其れは巨大なトカゲのような生物の、毒々しいまでに紅い、牙だらけの口の中だった。

 

 

 

 

 

 

///////////////////////

 

 

 

 

駅前近くの公園で、箒達は自動販売機で飲み物を買って其れを飲みながら寛いでいた。既に夕陽は地平線と乱立したビル群や山の陰に隠れ、空も次第に青紫に変わりながら明るく輝く宝石を瞬かせつつあった。

 

「……そろそろ帰るか。あまり遅いと”父さまと母さま”に叱られてしまう。」

 

まだ熱いままの飲み干したおしるこの空き缶を、見事なコントロールで狭いゴミ箱の入り口に向かって投げ入れながら箒は言った。

 

『んく…ぷはっ、お前が本人達のいないところで父親と母親をそんな風に呼ぶなんて珍しいな。明日は雨でも降るか?』

 

ベンチの上に置かれた空になったブラックコーヒーの空き缶の隣で、吸い上げるようにコーンポタージュを飲んでいたスタンダードフォースの模型(ミニチュア)に見えなくもない、FA待機形態の姿を取っているMAOが、ゴミ箱の中へと綺麗に吸い込まれる空き缶を見ながら揶揄うように言った。

 

「バカ言え、誰が好き好んでそう呼ぶものか。お前は皮肉の区別もつかないのか?」

『まさか。だが、”仮にもお前の両親”なんだ。あまり邪険にはしない方が良いぞ。例え、「家族」というものを当のお前本人には理解出来ないものだとしてもだ。』

「其れについてはまま理解はしているぞ。だが上手く誤魔化すのが面倒なだけだ。」

『お前なあ…。』

 

呆れたようにMAOが呟いた、まさにその時だった。

 

 

 

何処からともなく、強烈な血の匂いが風に流されてきたのは。

 

 

 

『……っ⁉︎箒っ‼︎』

「…分かっている。方角は間違いない、私達の神社の方向からだ。」

『それじゃあまさか…‼︎」

「………っ」

 

驚異的なスピードとジャンプ力で、一気に神社にまで飛ぶ。

 

 

 

やがて境内に辿り着いた箒達は、其処で生き物の気配が全く感じられないことに気がついた。

 

 

 

『可笑しい、周辺から生体反応が感知出来ない。いよいよ持って此れは…。』

「…チッ。家に行くぞ!」

 

境内を通り過ぎて箒達は裏手の自宅に行き着き、開きっぱなしになっている玄関から土足で居間へと駆け込むと、一瞬飛び込んで来た光景に思考が停止した。

 

 

 

血みどろの地獄絵図と化した居間と、その中に沈む、大小様々な肉の塊に、首の無い刀を持った宮司らしき壁に座り込むようにして倒れかけている死体。

 

 

血溜まりの中の肉塊は兎も角、刀を持った首の無い死体は紛れも無い、「篠ノ之柳韻」と誰が見ても明白だった。

 

 

 

だが其れだけではない、こんなものよりも酷い状態のものなど箒とMAOの2人は見てきているのだ。だからこそ問題なのはそんなことではなかった。2人が一瞬立ち尽くしたのは、其処にある篠ノ之夫妻の死体であると同時に、そんな柳韻達の死体の前に立っていた者がいたからだ。

 

 

メキメキ、と身体から音を立たせながら振り返った、黒い外套に身を包んだ其の男(・・・)こそ…、

 

 

「…チッ、何だよこいつらじゃなかったのかよぉ。まあいいや、どのみち見られちまったからには、キチンと()っておかねぇとなぁ…?」

 

 

有働貴文、いや「ビースト・ザ・ワン」だった。

 

『!貴様が篠ノ之夫妻を殺したのか‼︎』

「んあ?何だよこいつらは其処の嬢ちゃんの親なのかぁ。じゃあ安心しな、寂しくないように楽にしてやるからよぉ…。」

 

ひひひ、と三日月状に唇を歪めて笑う男に対して、箒は不気味な迄に黙っていた。

 

「んん?なんだぁ、怖すぎて言葉も出なくなっちまったかぁ?まあいいや、其処の変な喋るピンポン球みたいなのがいるみてぇだがまあどうだって良いなあ。此処はまず一緒に一捻」

 

り、と其処まで言いかけた時にザ・ワンは異常に気づいた。少女の様子が可笑しい。先程から少女と”変な喋るピンポン球”の気配が明らかに変わったのだ。そして、

 

ヒュッ、と一瞬何かが通り過ぎ、頰から何か温かいものが流れていることに気がつき、ザ・ワンはその流れ出ているものに触れた。

 

 

赤い。

 

 

自分が傷つけられたことと、少女の様子が変化したことにザ・ワンは困惑した。何故だ、何故この小娘は恐れもせず意味の分からない攻撃でこの俺を傷つけた?其れどころか一体どうやってこの俺に攻撃したんだ?

 

 

 

だがその理由も直ぐに判明した。少女の背中から、奇妙なものが生えている。其れを見てザ・ワンは迂闊にも、自らが探していた標的(・・・・・・・・・・)を挑発してしまったことに気がついた。

 

 

 

「…良くも私のモノ(家族)に手を出した挙句に無残にも壊し(殺し)てくれたな…?………これだけのことをしてくれたんだ、言っておくがまさか無事に生きて帰れるとは…、思ってはいないだろうな…?」

 

 

 

静かに怒気を孕んだ声で、箒は俯いていた顔を上げた。良く見れば、彼女の右目が琥珀色に変化していた。いや其れだけではない、髪の毛に身長、服装、体格までもが跡形も無く劇的に変化していた。

 

頭髪が美しい銀色に、身長も高くなり服装も露出の高い、肉と布で出来ていそうな、然し其れでいて神秘的な雰囲気を醸し出している巫女服に、体格も平均的な小学生の体格から、大人の女性らしい妖艶な色気を漂わせるものに変わっていた。

 

 

 

少女はその身を女神(邪神)へと変え、悪魔(ザ・ワン)と対峙する。

 

 

 

間違いない、此奴があの探していた”クズ野郎”なのだ、少女が人外の姿へとその姿を変え、臨戦態勢に入った様子を見てそう結論に達したザ・ワンは、一瞬間を置いたのち、そのあまりの展開の早さと棚から牡丹餅とも言える状況に、思わず高らかに、唾液を飛ばしながら哄笑した。

 

 

 

「…………っ、くっくっ、くははははははははははははっ‼︎こりゃあ傑作だぜぇ!まさかこんな幼女があの時の野郎だとはなあ!自分からノコノコ出てきてくれた挙句にこの俺をまたしても傷物にしてくれるとは、中々に愚かなくらい根性のある奴、いや、馬鹿な奴だなあっ‼︎てか、なんだよこの展開はよお!早すぎてただのギャグ漫画だぜえ‼︎」

 

其れにつられて、箒も鼻で笑う。だがその眼の奥には、冷たい憤怒の光を湛えたままで、その鼻で笑っている様子も、まるでそんなザ・ワンを侮蔑しているようにも見えなくもなかった。

 

「…そうだな。だが私としては全く笑えんな。仮にも其処に転がっているのは私の所有物(家族)だ。勝手にズタボロのミンチにされて、誰が喜ぶ?貴様の方が図に乗るな…、」

 

そして箒は、自らの背中の触手の切っ先をザ・ワンに向けながら、右手を銃の形にしながら、ゆっくりとザ・ワンに狙いをつけるように指を指して言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…この身の程知らずの愚か者が‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

其れと同時に、ザ・ワンも胸に波動砲を抱いた蜥蜴の獣人へと姿を変えて飛びかかる。

 

「こっちのセリフだああッ‼︎」

 

 

 

 

 

 

///////////////////////

 

 

 

居間の窓硝子を叩き壊して、2人は外へと飛び出す。

 

 

 

境内で、2体の人外による肉弾戦が始まった。拳の連撃や回し蹴りを繰り出すザ・ワンに対し、箒は腕や脚などでの防御や躱すなどの防戦を取りながら、背中の触手から繰り出す斬撃と其処から放たれる超音波メスでザ・ワンを攻撃する。

 

だがザ・ワンも間合いを取ることで其れらをギリギリのところで躱してしまう。

 

 

 

「ちっ、こしゃくな…。すばしっこすぎて狙いが定まらん。これではキリがないな。」

 

 

 

箒がそう呟いたその時、ザ・ワンの胸部の波動砲が瞬き始めた。同時に、トカゲの口からも光が収束しているのが見えているのも、箒は見逃さなかった。咄嗟に軌道と着弾点を予測し、身体を左側へと転がったその直後に、ザ・ワンの胸部と口から強烈な光線が、彼の咆哮と共に放たれた。

 

 

 

 

「グゥワオオオオオッッッッッ‼‼‼‼‼‼」

 

 

 

箒の背後にあった、篠ノ之神社の拝殿と本殿が、そしてそのまた背後にあった鎮守の森ごと消滅した。それと同時に、強烈な爆風が周囲を薙ぎ倒してゆく。その有様は、まるで小規模な核爆発か、隕石の墜落でも起きたのではと思われても可笑しくないくらいのものだった。

 

 

 

 

「…………うぅっ、いてて。ちぃとやりすぎちまったか~。ま、流石に此れだけやりゃあ、あの腐れ幼女モドキも…、ん?」

 

 

 

 

爆風のダメージを諸に食らったザ・ワンだったが、直ぐさま起き上がって状況確認をしようとしたその時だった。

 

 

 

 

盛り上がった境内の土の中から、箒が這い出してきた。全身が傷だらけでかなり手酷くやられているようだが、その傷からはもう既に血が止まり、傷自体も塞がりつつある。その上、未だに戦える程の気力があるように感じられた。

 

 

「んん〜?まぁだ生きてんのかぁ。ちっ、しぶてえ野郎だ。」

「…悪いが、しつこさにかけては自慢出来るレベルだからな。喜べよ?まだ相手にしてやると言っているんだからな。」

 

 

箒がそう言いながら拳を構えるファイティングポーズを取ったのと、琥珀色の球体が何処からともなく飛んで来たのはほぼ同時だった。

 

 

 

『おい、私を忘れるなよ!何で私を差し置いて先に突っ走っているんだお前は‼︎全く呆れた奴だな…。』

「済まんな、どうやら昔の癖でうっかり突っ込んでしまったようだ。まあ、良く良く考えたら今の状態で戦うより其方(・・)を付けて戦った方が良いな…。」

 

そう言った直後に、ザ・ワンが突進をかましてきた。だが其れを飛び上がることで回避した箒は、半壊している神楽殿の屋根に降り立った。

 

 

 

 

刹那。

 

 

 

 

箒の身体が青く輝く円筒形の光に包まれた。そしてその光の中に鎧のような機械のパーツが浮かび、

 

光の中の箒に合体、いや、”装着”された。

 

 

 

〈Fighter. Armor. ”ARROW HEAD”, starting completed.〉

 

 

 

ヘルメット内にその表示が現れ、箒はシステムが正常に機能していることを確認した。

 

『いけるな、箒?』

「言われなくても奴には借りは返すつもりだ。さて、ではそろそろ始めるか、先のことも含めた仇討ちと、」

 

 

 

 

 

 

「…私達の”スコアアタック”をな。」

 

 

 

 

 

 

青と赤、銀色に美しく輝く白いボディーを晒しながら、FA「アローヘッド」を、その身に纏った邪神が、半壊した屋根の上に立ち上がる。其れはまるで、天使とも、不死鳥とも言えるような存在が舞い降りてきたようにも見えた。

 

 

 

 

 

「へっ、今更本気になったところで一緒だっつうのおおおおおお‼‼‼‼‼」

 

 

 

ザ・ワンが再び胸の波動砲を乱射する。だが箒は暴風雨の如き波動砲の攻撃の中を、いとも容易く躱して行く。終いには間合いを徐々に詰められ、接近戦に持ち込んでしまった。

 

 

現時点では装着した反面、装着したことや、情報処理などの理由からテンタクランサーなどを用いた攻撃を行うことが出来ないが、その代わり動力源であるザイオングジェネレーターから生成される波動エネルギーによって強化されたパワードスーツ、「FA」の攻撃力や破壊力は苛烈である。

 

本来、この「FA」はR戦闘機の戦闘データに基づいて開発されたパワードスーツ、早い話が「R戦闘機の力を宿したパワードスーツ」である。

 

 

この「アローヘッド」の場合、全てのR戦闘機の始祖たる「R-9A”アローヘッド”」の戦闘データを用いている為、R-9Aの武装を、威力はそのままに小型化したものを用いるばかりでなく、波動エネルギーを微弱ながら腕部や脚部に纏わせて戦うことが出来るのだ。

 

 

 

それはつまり、

 

 

 

”波動エネルギーによって威力も速度も強化された通常パンチ力200tの拳と、通常キック力350tの蹴りを諸に連撃で受ける”羽目になるのである。

 

 

箒は、積極的に攻めながらも攻撃の手を一切緩めない、所謂「喧嘩殺法」で、拳と蹴りの連撃でザ・ワンを圧倒し始めた。

 

 

 

 

ザ・ワンにはバイドの持つ驚異的なまでの自己進化・再生能力がある為防御力や耐久力も高く、例え波動砲の攻撃を受けてもある程度は耐え切ることが出来る。

 

 

 

 

だが、幾ら波動エネルギーによって強化されているとはいえ、パンチ・キック力が共に200、300tクラスの、第二宇宙速度程では無いが第一宇宙速度よりも早く攻撃の隙を全く与えること無く繰り出される喧嘩殺法の前には、流石のザ・ワンも怯まざるを得なかった。例え顔面に右ストレートを叩き込まれて潰れたお面のように顔を凹ませても、ブルックリン式握手をその次に叩き込まれても、箒達の猛攻の前にはただ耐え切りながら、虫のような息を吐きまくることしか出来なかった。

 

 

 

 

右フックを3発打ち込み、とどめとばかりに右アッパーをザ・ワンの顎に叩き込んで吹き飛ばすと、箒はヘルメット内のモニターに表示された、亜空間通信に受信メッセージが届いていることに気がついた。

 

 

 

 

「通信?」

『準備が出来たか、ならそろそろあの不届き者には今迄の責任を取って消えて貰おう‼︎箒!衝撃に備えろ‼︎』

「‼︎‼︎⁉︎ っ、お前まさか、」

『そのまさかだ、「流星」部隊!今がチャンスだ、彼奴にとどめの一発をお見舞いしてやれ‼︎浴びせろッッッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎』

 

 

 

 

 

 

 

///////////////////////

 

 

 

 

-高度約35786km、宇宙空間・静止軌道上

 

 

 

亜空間通信を受け取った長大な”圧縮波動砲”の砲身と盾かマシンガンなどのドラムマガジンを思わせる小型の観測用レドームを持った単騎突入支援砲撃用R戦闘機、R-9D”シューティング・スター”及び、700ペタバイトの容量を持つ特徴的なレドームを機体に装備した早期警戒管制型支援機、R-9E”ミッドナイト・アイ”で構成された2機編成だけの”狙撃部隊”が行動を開始、R-9Eがザ・ワンの位置情報を収集後に僚機のR-9Dへとその情報を送信、多少の誤差修正の後、R-9Dは標準装備された「圧縮波動砲」の充填を開始し始めた。

 

 

 

「R-9D シューティングスター」は2163年の第一次バイドミッション後に企画され、第二次バイドミッション後にロールアウトが完了した、R-9Aなどの単騎突入型戦闘機の支援と一撃離脱での破壊力向上を視野に入れた長距離狙撃型波動砲ユニット”圧縮波動砲”搭載機である。

 

 

機動力ではR-9Aなどのような機体には劣るものの、機体下部に搭載されたライフルにも見える波動砲ユニットと、同じくその脇に標準装備された誤差修正を目的とした観測用ディスクレドームは、冷却機構の問題により引き出すことが出来ないが、スペック上ではその最大射程がおよそ「38万km」と言う驚異的な射程距離を誇っている。

 

 

対する「R-9E ミッドナイトアイ」は、第一次バイドミッションの際にR-9Aのデータを元に、本来は管制機として開発された早期警戒管制型支援機である。皿状の円盤型レドームを載せたR-9Aのような其れは、我々がよく見る現実の早期警戒管制機を思わせる。だがこのR-9E のレドームは900ペタバイトという驚異的な容量を持つデータディスクを128枚も搭載している為、戦地などにおける様々なデータを迅速かつ正確に、他のR機などに伝えることが出来る。

 

 

但し、MAOの人間(地球連合軍・TEAM R-TYPE)時代の後半になるまで、まともな武装がレールガンくらいしかなかった為に未帰還率が非常に高い旧型機として敬遠されていた時期はあったが(もっとも、敵を計測後に破壊する、情報収集システムと波動砲を融合させた「索敵波動砲」や、このR-9Eシリーズ専用に開発された「カメラフォース」により、このミッドナイトアイの悪評は多少なりは改善されたが)。

 

 

 

 

さて、何故この2機が存在し、この場所に待機していたのか。

 

 

 

 

実は此れらの機体は、かの白騎士事件よりも前に、フェアリーが異相次元空間に跳んだ際に回収してきたものの一つで、現在でも異相次元に入ることはできても、未だに体質などの問題で其れらに制限時間のある箒達に比べて、比較的自由に行き来出来るフェアリーが、恐らくMAOの時代から流れてきたであろうR戦闘機や艦艇などの残骸の一部を発見、そのまま回収してきたのだ。おかげで、未だ量産体制に入ることは夢のまた夢レベルではあるものの、通常装甲材と共に必要な3つの物質、一つに装甲などの強化に使用され、R機や艦艇の建造には必須となっている青い鉱石、ソルモナジウム、二つ目にフォースなどバイド兵器の原料で、バイド素子を含む化合物である赤い鉱石、バイドルゲン、そして最後、エンジンなどのエネルギー効率の向上に必須となっている緑の鉱石、エーテリウムの確保には一先ず悩まされることがなかったのである。

 

 

 

また此れらの残骸の中で、比較的損傷の少なかった一部の機体は応急修理という形で戦力となり、残りの部品などは地下深くや太平洋などに隠されることになった。

 

 

 

この2機も其れらの残骸から再建されたもので、普段は福島県の箒達の拠点の地下ドッグに待機しているが、先程箒が半覚醒化した状態でザ・ワンと戦っている間に、MAOが発した緊急発進信号(スクランブル・コード)を受けて両機は出動、ザ・ワンを確実に仕留めることや強力な圧縮波動砲を地球上で使用する訳にはいかない為に静止軌道に急行し、箒がFA装着した直後には既に静止軌道にてベストコンディションを形成し終わっていた。

 

 

 

 

そして、現在。

 

 

 

 

MAOの許可が下りたことにより、遂にR-9Dの圧縮波動砲が瞬き始めたのである。肉眼では見えないが確実に捉えているトカゲと人間を混ぜた悪魔に向けて、

 

 

 

「星の裁き」が、下されようとしている。

 

 

そんなことを知らない、地上のザ・ワンは怒りに身を任せて尚、箒達に戦いを仕掛けようとしていた。

 

 

「ぐうぅぅぅ…、ちくしゅ…、チクショオオオオオオオオオオオォォォォォッッッッッ‼‼‼‼‼‼︎ヤリヤガッタナアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッッッッッッッッッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

盛大に吹っ飛ばされたザ・ワンが最後の抵抗宜しく突進してくる。だが箒達はそれを華麗にジャンプして躱し、そのまま安全な場所にまで飛び去ってしまう。

 

「チクショオオオオオオオオオオオォォォォォッッッッッ、逃げるなアアアアアアアアアアアアァァッッッ‼︎」

 

 

 

 

そして、ザ・ワンが追いかけようと飛び立とうとした正にその瞬間、

 

 

 

 

空の彼方より一条の閃光が、ザ・ワンに直撃し、キノコ雲が湧き上がった…。

 

 

 

 

 

 

 

///////////////////////

 

 

「………すざましいな。」

『下手なサテライトキャノンよりも強力だ。例え無事だとしても…、ん?』

 

濛々と立ち昇る土煙と、雨のように降り注ぐ瓦礫の中にいるであろうザ・ワン、いや、ザ・ワンがいたであろう場所を空中より見ていた箒達だったが、其処でMAOがあることに気づいた。

 

 

 

 

靄の中に、人影が見える。

 

 

 

 

『まさか…、』

 

 

 

 

 

そう呟いた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「グゥワオオオオオッッッッッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

雄叫びと共に強力な閃光が煙を切り裂いていく。箒達は信じられない気持ちだった。アレだけの攻撃を受けているというにもかかわらず、姿形を崩しながらも、ビースト・ザ・ワンが生きていることに。右上半身が根刮ぎ無くなっていても立っていることに。だが立っていたのはほんの数秒程で、そのままふらついて地面に倒れ伏した。

 

 

箒達は地上へと降下すると、生死確認を開始した。

 

 

「………生体反応がまだある。半身を持っていかれてもまだ生きてるとはな…。」

『マジか此奴…、耐久力高過ぎるだろう…。バイドの再生能力様々とはこのことだな…。』

「其れは我々とて同じだろう、一丁前のバイドのお前が何を言っている。まあ躱した可能性もあるが、波動砲の一撃を喰らっても生きているか…、バイドの力だけでは無い、別の何かが此奴を救ったということか。だが後ひと押しすれば…。」

 

 

 

 

 

箒がFA内に収納されていたポンプアクション式ショットガン型のFA用スタンダード波動砲を取り出した瞬間だった。

 

 

 

 

 

突然何処からともなく銃撃を受けたのだ。

 

 

 

 

 

「なっ…、何処からだ…⁉︎」

『弾速といい、実体弾だといい、まるで此れは…。』

 

 

【レールガンのようだ、か?】

 

 

ボイスチェンジャーを通したくぐもった声が聞こえたのは彼女達の背後だった。振り返りながらその姿を見るが、その姿は、

 

 

 

「アローヘッド…?」

『いや、違うぞ。其れにこんな機体は作ってはいない。此奴、まさか…。』

【済まないが私は織斑千冬でも篠ノ之束でも無いぞ。寧ろ私にとっては彼女達の敵だからな。】

『何…?』

【お前達にはまだまだ面白い可能性がある、だからお前達が我々に立ち向かえる程の戦力を手に入れてからでも悪くは無いからな、今暫くの猶予を与えてやろう。期限は10年。それまでにきちんとした蓄えを備えておくんだな。】

「猶予、だと…?其れに、何だその姿は…。」

【答えてやらなくも無いが残念だがここまでだ、生憎自己紹介をする程の暇は無いのでな、またいつか、猶予が融けた時に機会があれば会おう。…其れと、其処にいる奴は貰っていくぞ。】

 

 

 

黒いFAのような存在はそう言うと、箒の持つポンプアクション式ショットガン型の波動砲と良く似たような武器を取り出し、シリンダーを二回動かして箒達にその銃口を向けた。

 

 

 

『⁉︎避けろ!』

 

 

 

瞬間、周囲に強烈な稲光と衝撃が奔った。稲光は箒達の周囲に着弾し、そして着弾した瞬間、FAのシステムも一瞬ダウンし、ディスプレイの電源までもの全ての電源が落ちてしまう。

 

 

「⁉︎しまった‼︎」

『落ち着け、直ぐに復旧する。メインシステム再起動』

 

 

再びパワードスーツ内の電源が復旧したが、辺りを見回すと、既に周囲には誰もおらず、燃え盛る瓦礫の山が、黒い煙を上げながら風に揺れ、燻っているだけだった。当然、あのトカゲ男の姿は影も形もなかった。

 

 

『………逃げられたか。』

「追跡出来るか?」

『…………無理だな、大気圏を突破した後、異相次元の更に向こう側にまで逃げたようだ。今の状態で追跡はまず不可能だ、其れに、上の連中とて追跡出来なかった筈だ…。』

 

 

FA形態を解除し、箒とミニフォース型となったMAOは既に暗くなっていた空を見上げた。周囲で燃えている炎に照らし出された星々が見える。この空の彼方の、更に向こう側へと逃げ去った後でも、箒達は先程の黒い「アローヘッド」のような存在に見られているような気がしていた。

 

 

「………10年か。それまでに備えられれば良いが…。」

『其れについては何となるだろう。其れにしても彼奴の攻撃、何処かで見た気がするが…。まあ良い、兎に角今はこの状況を何とかしないとな。』

 

 

そういって、MAOは周囲を見やる。既に篠ノ之神社とその周囲は、地形ごと原型を留めていない状態になっていた。恐らく山火事や地震でも、此処までの被害にはならないだろう。

 

その上…、

 

『箒…、そういえばお前の両親は…。』

「気になどしていない。元より我々にとって彼奴らは”ただの生みの親”だ。それ以上の特別な感情などは無い。」

『……そうか。』

 

瓦礫の山の向こう、恐らく焼け落ちたであろう篠ノ之邸のある方向を見て箒は淡々と言った。だがMAOにはその冷たい言動の中に、僅かに怒気や憎悪が含まれているかのように感じられた。

 

 

「其れよりもどうする?このようなことになった以上、2、3年後に予定されていた証人保護プログラムも、恐らくは1ヶ月もしないうちに組み込まれることになるぞ。もう既に”篠ノ之夫妻”は殺害されてしまったからな。」

『確かにな。だが、確かにお前の言う通りだ。”両親”が死んだ分、我々も”自由”になったんだからな。』

「…やはり、実行するか。」

『まあな。今は兎に角、この場から離れよう。話は其れからだ。もう警察や消防が集まってきた。』

「ああ。」

 

 

 

そう言って再び箒はFAを纏うと、名残惜しそうに壊滅した篠ノ之神社を眺めたのち、遠くから鳴り響くサイレンを尻目に上空へと飛び去っていった。

 

 

 

///////////////////////

 

その後、篠ノ之夫妻殺害事件は、表向きは白騎士事件の逆恨みとして篠ノ之神社を襲撃し自爆した自衛隊員などの犯行によるものとされるも、その実態はよく分からない謎の生命体と白騎士のようなISに似た人型兵器が暴れ回っていたという、謎の事件として処理された。

 

その後、篠ノ之箒は”偶々”その場に居合わせなかったことで難を逃れるも、一気に両親を失った悲劇の少女として世間から同情の声が寄せられた。

 

その後彼女は、親戚の家へと迎えられ、其処で過ごすことになった。だが、其れから一週間もしないうちに、篠ノ之箒の証人保護プログラム入りが決定。2021年12月25日に箒は親戚、織斑姉妹共々離れ離れになることとなる。

 

 

その為箒は、証人保護プログラム入り阻止と対バイド・レイブラッド一派の対策として、あの織斑一夏に監視兼役護衛役をつけることにしたのだった。

 

 

現在、箒は公園のベンチで一夏と待ち合わせしていた。そしてその隣には、

 

 

「然し面倒だな…。」

「マアソウイワネーデクレヤ、姉サン。アタシラ皆コウイウノハスキダゼ。ナア皆?」

「「「「ウィーッス」」」」

「………本当に良いのか?10年だぞ?耐えられるのか?」

「コーミエテ皆色々デキルカラ大丈夫ッス。タカダカヌイグルミノマネッコナンテ、オチャノコサイサイッスヨ」

 

キラリン、と何処かの戦闘機ロボットアニメの緑髪の女の子アイドルにようなポーズを、”3号”と呼ばれるぎゃっぴーが取るのを見て、どうやら大丈夫そうだなと箒は思った。

 

 

 

箒は監視役兼護衛役として知能が非常に高いぎゃっぴー5匹を、一夏への「クリスマスプレゼントのぬいぐるみ」として派遣することにしたのだ。この五匹は交代で一夏のぬいぐるみを➖材質変換などによって➖演じ、その間残りの四匹が連絡を取り合ったり、周辺の監視、補給などを行うという、或る意味では画期的な方法ではある。反面、バイドなどの戦力がまだ未知数なので彼女らだけでどれだけ対応出来るかということや、万一バレたらという可能性も、不安ではあったが。

 

 

 

暫くして、一夏がやって来た。箒は一先ず、クリスマスプレゼントとして「蝙蝠のような翼の生えた、何処か篠ノ之箒に似たぬいぐるみ」を一夏にプレゼントした。

 

最初こそ一夏は困惑したものの、見た目の可愛らしさと、箒からのプレゼントということで気に入ったようだ。丁寧にプレゼントを持参したナップサックの中に仕舞い込む。

 

 

 

やがて2人はベンチに座りながら、周りで遊んでいる他の子供達を見ながら話し始めた。その内容は勿論、明日の証人保護プログラムのことだった。

 

 

「……ねえ、本当に良いの?皆とも離れ離れになるなんて…。」

「平気だ、元よりお前達以外に親しい友人はいなかったからな。其れに、姉さんが彼処迄のことをやってのけた時から覚悟はしていたから、大丈夫だ。…まあ、両親が死に、お前達とも離れ離れになるのが辛くない訳は無い。悲しいんだよ、私だって…」

 

ベンチに座りながら体操座りしながら顔を俯かせ始めた箒を見て、一夏はもう一度ナップサックに手を入れた。

 

「…………ほら、元気出してよ。私だってさ、箒からこんなに凄いプレゼント貰って凄く嬉しいし‼︎あ、そうだ。私、本当に大したものじゃ無いんだけど、此れ、箒にあげる‼︎」

 

そう言って一夏は小さなクリスマスの飾り付けがされた、小さな小包を取り出して箒に手渡した。中身を開けてみてみると、其れは緑色のリボンだった。

 

 

「此れは…?」

「ほら、箒ってさ、髪型ってポニーテールが凄く似合うじゃん。だからね、私あの事件が起きる前にアクセサリーショップに行って此れを選んできたの!」

「………そうか。ありがとう。」

 

一瞬虚を突かれたような顔をしたが、直ぐに箒は微笑んで其れを受け取った。

 

「…………でも、此れで本当に最後になるのかな?」

「そうとも限らないんじゃ無いか?私としては、暫くのお別れになるだけと割り切った方が悲しまなくて済むと思っているよ。また何処かで会えるとな。」

「何処かとか、いつなの?それ?」

「其れは知らん。だが何れそういうことは起こるかもしれない、だから何があっても絶対に”さよなら”だけは言わないからな。」

「そっか……、なんか、強いな、箒と良い、千冬姉と良い…。正直羨ましい。私なんて、剣道も勉強も駄目駄目だし。女の子の友達なんて、箒くらいしかいないし…。」

「そうでもないぞ〜、私だって友達は少ない方だし、お前だって充分強ければ、男子とつるんでサッカーをしょっちゅうしているじゃないか。そのうえ何気に上手いしな?まあ、要はお前も私や千冬さんにすらない才能を持っているから、そんなことでいちいち落ち込むなということだ。」

「箒にも、千冬姉にも無い…、”才能”?」

「其れに気づいて、努力して磨き上げるかは結局はお前自身の判断と力だ。そのうえで、無駄な努力をしない。其れだけで、お前は私や千冬さんどころかお前の中にいるお前自身にだって勝てるのさ。」

「私の中の、私…。」

「ま、言いたいことはそれだけだ、そろそろ日も暮れてきたし、明日の準備の為にも帰ることにしようか。」

「…………ねえ、箒。」

「ん?」

「……箒が証人保護プログラムに入ったら、もう剣道は出来ないんだよね?」

「………そうだな。」

 

其れを聞いた一夏は、息を吸い込んでこう言った。

 

「私、決めた。箒が出来なかった剣道の試合や大会にいっぱい出て、箒を守れるくらい強くなる‼︎」

「……お前、其れ本気で言っているのか?」

「だって、箒は全国大会に出たかったんでしょ?でも其れはもう出来ないし、柳韻さんや神社はあんなことになっちゃったし…。だから、こんなこと、二度と御免だから!箒は私の、大切な”友達”だから‼︎」

 

其れを聞いて暫し眉をひそめ、箒は溜息をついた。どうやら本気のようだ。

 

「………そうか。ならお前がそう思うなら、その道を進んでいけ。だが忘れるな?一度自分が決めた約束は絶対だ。其れこそ針千本よりもずっと重いものだ。お前に、その覚悟はあるか?」

「平気!だって私の大好きな友達の、箒や私自身との約束だもん!絶対に忘れない‼︎箒も絶対に、私達のところに元気に帰ってきてよ‼︎絶対にだよ‼︎」

「ふむ、絶対だ。其れは私も同じだ。約束する。どんなことになっても、必ず帰ってくるよ。…此のリボンと一緒にな。お前も、其れ…ぬいぐるみのことを忘れるなよ?」

「そんなのっ、当たり前だよっ‼︎」

 

そう言って2人は抱きしめ合った。少なくとも、此れで一安心だなと箒は安堵していた。やがて、箒の腕時計が6時のアラームを鳴り響かせると、名残惜しそうに一夏は箒から離れた。

 

「…………じゃあ、元気でね。」

「……………ああ。お前もな。」

 

 

 

 

 

 

///////////////////////

 

 

 

『お前が全く持って言いそうに無い台詞の連続だったな。』

 

公園から去っていく一夏を見ながら、MAOが言った。

 

「半分は本音を言わせて貰ったよ。まあ、約束に関してはどうなるかは保証出来んが。」

『相変わらず酷いな。約束を守るつもりはあるのか?』

「最低限は守るさ。まあ、状況によるがな…。」

『流石は邪神様様だな。』

「言ってろ。さて、一旦雪子叔母さんの家に帰るか。」

『…他にすべきことは済ませたか?』

「まあな。夜明け前には家を出るぞ。」

『そう来ないとな。…其れと、あのFAらしいもののことで思い出したことが一つあるんだが。』

「何だ?」

『私の見た限り、あのFA用の波動砲みたいな武器から放たれたあの雷撃だが…、間違いない。アレ(・・)だ。』

「………”サタニック・ラプソディー”の、アレか。」

『どういう経緯であんな形で現れたのかは分からん。だがあの”番犬”が現れ、事実上の宣戦布告をされた以上、此方もいよいよ本気にならないといけないな。まあ、だからこそ…。』

人間の(・・・)都合には尚更従う訳にはいかないな…。」

『まあ、ぶっちゃけると私も人間だったがな…。』

 

 

顔があれば恐らく遠い目をしているであろうMAOに苦笑しながら、箒は昨日MAOと打ち合わせた、福島の拠点の閉鎖と、太平洋に隠した残骸の移動方法や、某所に作り上げた新しい拠点のことについて考え、其れと同時に、激化していくであろう戦闘と敵が繰り出してくるあらゆる策に対する対応、そしてあの見たこともないあの黒いアローヘッドのようなFA、いや、

 

 

 

 

仮称「ケルベロス」との戦いに対して憂いだ。

 

 

 

 

(正直今後はどうなるか分からん。彼奴らは後10年は手を出さないと言ったが、あんなものは飽くまで口約束に過ぎない。口約束程信用出来ない約束は無い。其れに彼奴は、腹ただしいことにあの忌々しいトカゲを助けたのだ。どんな理由であれ彼奴のやったことはこの私にとっては万死に値する。してやったかのようなやり方やあの尊大な態度も腹が立つくらいだ。だからこそ、次こそは奴を…。)

 

 

全てを失った、ように見える「邪神」であった少女は、煮え滾る憎悪と怒りを燃やしながら公園を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果的に言えば、篠ノ之箒が証人保護プログラムに入ることは無かった。夜明け前より滞在していた親戚の家から失踪したことが発覚したからだ。そして追跡も、捜索も不可能で各国政府や警察などは遂に彼女を見つけることは出来なかった。彼女の痕跡が跡形も無く消え去っていたことを考えれば、果たして其れは当選のことと言えた。

 

 

 

 

 

 

一夏のクリスマスプレゼントとして、彼女が渡した「ぬいぐるみ」を除けばではあるが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて、彼女が再び織斑姉妹に「篠ノ之箒」として再会するのは、

 

 

 

 

 

 

 

 

其れから10年後、世界を再び塗り替える出来事となったIS学園の「クラス対抗戦(リーグマッチ)」となるーーー。

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