I-TYPE   作:どんぐりあ〜むず、

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久しぶりに更新します。どんぐりあ〜むず、です。いやあしかしやっちゃいましたよ今回1話につき1万字。ボリュームありすぎでしょこれ。回想シーンだけでも5千字ってどういうこと?って思いましたよ、私。と、言うわけで今回も元気に行ってみようッ‼︎

2016年9月12日、加筆修正。


篠ノ之箒
第1話 ”はじまり”


「私はガメラを許さない。お願い、ガメラを殺して。」

➖比良坂綾奈➖

 

///////////////////

 

夜空を飛んでいた。満月の綺麗な、美しい夜空だ。

 

普通なら、流石の私も美しいと思えただろう。だが今はそうは思えない。そんなことを思う時ではない。

 

 

 

 

 

 

私はしつこく追撃してくる人間達の造った空飛ぶ玩具(乗り物)と忌々しいガメラ➖さっきからずっと私に人間どもの乗り物を落とさせまいとしているだけでなく、アヤナと人間達の元へ行かせまいとしつこく追いかけている。その上、威嚇のためのものなのかどうなのか知らないが、口から火の玉を吐き出して此方に当てようとしてくる➖に対して、気怠さを感じていた。

 

-今私に構うな、相手なら後で幾らでもしてやる。だが今は、私はアヤナを欲している。アヤナも私を欲している。全てはお前とアヤナ以外の愚かな人間どもを倒すためにな、ガメラ。だから、アヤナの元へ行かせろ。それともお前と人間どもは”この後の楽しみ”が待てない間抜けなタイプなのか?

 

そう言って罵ると、ガメラは叫びながら、こう返してきた。

 

「いいえ、貴女とは此処で”私”と戦ってもらうよ。貴女はもうやり過ぎた。人間の愛に直に触れた幼かった貴女なら…、例えギャオスの守り神であっても人間を愛しようとした貴女のことなら…、黙って見過ごしてもいいと思ってた。だけど貴女は、私を倒すというアヤナの願いとはいえ、関係のない人間達や生き物達を殺すことは間違ってる。確かに僕も人間達を傷付けた。だけど多少の犠牲は仕方ないよ。人間達とこの星(地球)を守るためなら仕方のないことなの。だけど貴女のは違う。自分のためなら理不尽な暴力を振るうことを厭わない。君がしたことは罪のない人間達を…、特に無抵抗だった人間達を殺した、いわば”虐殺”だ。最早貴女はギャオス達と変わらない。貴女とアヤナが会ってしまったら、其れこそ何が起こるか分からない!だから貴女をアヤナ達のところに君を行かせる訳にはいかない‼︎」

 

-馬鹿め、お前が幾ら弁明したところで人間達はお前とお前の言う”多少の犠牲”なぞ認めようとはしないぞ。それどころか、アヤナのようにお前に対して憎悪を抱いている者が数多くいる➖人間以外ではもっとだ➖。結局お前もギャオス達と同じだ、ガメラ。お前と私達は➖目的は違えど➖同じ時期、同じ方法、同じ場所で生まれた。だから考え方も良く似ている。そんなことだから、お前も人間が憎いからお前自身の戦いに人間どもをわざと巻き込んで殺して来たのではないか?そもそもかつて我々はあの(・・)人間どものエゴによって生み出された。己の一族の自分勝手さに呆れたという理由だけで生まれた時からその精神を狂わされ、したくもないお前の言う”虐殺”という名の掃除を行う者の烙印を押され、今度は間違いを犯したとか言う人間どもの訳の分からない自分可愛さのために生み出されたお前に駆逐されてゆく。こんな理不尽な話は聞いたことがない。”自分のため”?では自分のためにこの星を長きに渡って苦しめて来た人間は何なのだ?”罪の無い”?むしろ罪が無いのは我々だ。ガメラよ、私がアヤナの願いを聞き入れたのは、”ギャオス達を守り、ギャオス達を生み出す”という私自身の使命だけではない。自分の罪を棚上げして理不尽な理由で生み出され、私達を裏切って冷淡に扱った挙句、まるで世界の害虫のように滅ぼそうとするお前と人間達を逆に滅ぼし返して正してやろうという、私自身の願いでもあった。それに確かに私は人間を愛してはいた。だがアヤナ(・・・)だけだ。アヤナ以外の人間どもは愚か者しかいない。アヤナを愛し、ギャオスから守れるのは私だけだ。だからアヤナのためにも私はこのままお前如きに黙ってやられる訳にはいかんのだ。それにお前は人間達に道具扱いされているとは思わないのか?これはお前にとっても屈辱的なことなのだぞ?

 

「なら人間達の代わりに”僕”を殺せばいい。僕が憎いんでしょっ!だったら、僕だけ殺して人間達には手を出さないで。アヤナのことを諦めて僕だけを殺せばいいじゃないか。それに人間全てが悪い訳じゃない…‼︎」

 

-抜かせ、この禿が‼︎お前がタダでやられるつもりがないことぐらい分かっている‼︎そもそも一度私を殺そうとした奴の言うことなぞ、信用してたまるか‼︎

 

「…やっぱり、分かり合えないようだね。…残念だけど、貴女をこれ以上生かしておく訳にはいかない。私と同じく、殺るか殺られる覚悟を…、決めてもらうよ‼︎」

 

-ほざけぇぇぇッ、この偽神無勢がぁぁぁぁぁッ‼︎

 

 

 

…そして、満天の星空の中で激闘が始まった。

 

まずガメラが私に大きく吠え掛かって体当たりした後、噛み付いてきた。私はその痛みに耐えかねて、思わず情け無い悲鳴を上げた。そして間髪入れずにガメラは再び体当たりしてそのまま頭と手足を引っ込めて空中て回転してまるで鋸のように私を切り裂こうとしてきた。だが、負けじと私も触手➖テンタクランサーのことだ➖の切っ先を回転しているガメラに向けて、ギャオス族特有の”超音波メス”を照射した。これには流石のガメラ自慢の甲羅でも耐え切れなかったらしく、緑色の血飛沫が飛び散ってガメラは身悶えた。その隙に私はガメラを振り切りアヤナの元へ急いだ。私は先程から彼女が弱りかけていることが気掛かりだった。完全体になるためには死体ではなく生きた依り代が必要なのはさることながら、私が新しい世界で生きて君臨するためにも彼女には私の側にいて欲しいという気持ちもあった。今の私の存在意義は彼女だ、彼女が居たからこそ、私はここまで来れた。だから生かして私との融合(一つになること)を無事に済ませなければならない、何としてでも彼女には生き延びて貰わなければならない。そんな時、ガメラがまた私に襲い掛かってきた。私は身構えたが、今度は人間どもが火矢のようなものを地上から発射してきてガメラに当てた。おそらく私も狙っていたのかもしれないが、人間達は優先的にガメラの方を脅威と考えたらしい。何にしてもアヤナの元へ向かう私にとっては、どのような形であれ千載一遇のチャンスだ、このまま彼等にあやかって先を急がせてもらうことにしよう。

ガメラはまだ追いかけて来ていたが、先程の火矢を受けたせいで若干私に遅れを取っていた。だがさっきまでと比べたら大分マシになりはしただろうと踏んで、アヤナの元へ向かった。

 

その”慢心”が私を追い詰めることになるとは夢にも思わずに…。

 

雲の下は嵐で、その上場所もあの人間どもの村と比べたら建物や人間達も多い街だった。だが迷わず私はその下に降り立った。アヤナが、もう私のすぐ側にまで居たからだ➖本当なら真下に降りても良かったのだが、ガメラや人間どものせいでそうすることが出来なかったことの他に、万一アヤナを踏み潰してしまわぬようにするための配慮でもあった➖。ガメラが私に追いついて火球を放ってきた。私はそれをテンタクランサーから発生させたアンチ・プラズマ・フィールドで全て払い除けた。火球が私の周りに墜ちて周囲を焼き尽くす。それを見て私はふと、今のでどのくらいの人間どもが死んだことだろう、私としてはそれで人間どもの注意がガメラに集中すれば本望なのだがと思った。だがあいにく人間の兵隊達はその場におらず、またこの嵐のせいで人間どもの空飛ぶ乗り物も近付けられないらしく、どちらにせよガメラに対する人間達の邪魔立ては期待出来そうになかった。やがて私の前にガメラが降り立って行く手を阻んで来た。その瞳の奥には、地球と人類を守るという使命の他に、明らかに人間達を嗾けた私に対する怒りや憎しみに似たものが燻っていた。

 

-…フッ、やはりお前も人間どもと関わっていくうちにその悪しき心に毒されたようだな。お前の目の中に憎悪が燻っているぞ?結局はお前も我々と同じ神ではなくまるでマナの器になる前の”意志を持った生き物”のようだな。

 

「⁉︎…違う‼︎僕はそんな存在じゃない!みんなとあの人(・・・)を守るためだって…、みんなに、言われて…。」

 

-……やはりお前如きにアヤナのことは任せられないな。ここは一つ、お前と旧世界の者共を滅ぼしてしまうに限る。

 

「それ、どういう意味…?」

 

-意味が分かっていないようだな。お前のせいでこの星はマナを枯渇し死にかけている。だがそれ以上に人類も自らの首を絞め始めている。結局お前達のやっていることは無駄な悪足掻きだ。だが生き残りたければ、アヤナのように我々と同じ新しい世界で我々と一つになることで生き延びられる。かつてのあの文明のように滅びずに済むのだ!だからこそ、お前達の沈みゆく船の上にいるアヤナのような者達をお前達から切り離す。だから黙ってアヤナを渡せ。今ならお前と愚かな人間どもは見逃してやってもいいぞ。さあどうする?

 

「そんなことは貴女の身勝手で傲慢な勘違いだ‼︎どのような存在であれ、最後の瞬間まで諦める訳にはいかない。どんな奴でもそんな傲慢な考えで殺されたりすることは以ての外だと考えるよ…。確かに貴女の理想は、数あるギャオスの中でも立派で、筋が通ったいいかもしれない。だけどそれは今を生きる数多の生き物を全て消してしまう最悪の虐殺だ!だから此処から先に貴女を行かせる訳にはいかない‼︎」

 

-ならば、滅び行く愚かな人間どもと共にくたばれぇッ‼︎

 

そう言い終わらないうちに、ガメラと私は動き出していた。2つの肉弾のぶつかり合うすざましい轟音が、燃え盛る人間の街に木霊した。ガメラは、もう一度私に噛みつこうとしたが、槍状に変型した私の腕の手甲➖スピア・アブソーバー➖で串刺しにされるとすざましい悲鳴を上げてアヤナ達の居る建物の中へと倒れ込んだ。その際にアヤナの隣にとっくのとうの昔に役目を終えた巫女の子孫らしき人間の雌と気味の悪い人間の雄に、ガメラの巫女だったらしい雌とその連れ添いが居るような気がしたが、ガメラを始末するついでに瓦礫の雨を降らせてやった。此れでアヤナと私の儀式を邪魔立てする奴はいなくなった。後は私と一つになるだけだと言う時だった。

 

 

 

…あの可笑しな喋り方をするおせっかいにも程がある愚か者のリュウセイが現れたのは。

 

リュウセイは、あろうことかあの洞窟の祠にあった玩具みたいな短剣➖刀身が萎びたキュウリみたいな情け無いデザインであることは今でも覚えている➖を私に投げ付けて来た。あんな短剣でも私を斃せるとでも思ったのだろうか。何にしても愚かとしか言い様がなかった。だが跳ね返った短剣がアヤナの頬を掠めたとき、何かが変わった。変わったのだ。だが分からない。それが何なのか、分からない…。

 

「綾奈‼︎」

 

リュウセイは私からアヤナを庇うように後ろに下がらせて、私に向かって頼り無さそうな外見の短剣の切っ先を向けて来た。正直言って、私は機嫌を悪くした。この死に損ないめ、あの時あの村のアヤナを苦しめていた愚かな人間どもと共にくたばってしまえば良かったものを…。よくもまあそんな情け無い短剣なぞでこの私に刃向かおうという気になったものだな‼︎

 

私は、アヤナのリュウセイに手を出すのを止めて欲しいという命令を無視してリュウセイを瓦礫の山に弾き飛ばした。アヤナはリュウセイの元へ駆け出そうとしたが、私はそれを許さなかった。何故だ、何故あんな訳の分からん人間の雄やガメラの巫女とその仲間なぞを選ぼうとする?私はお前の全てであり、お前の願いを叶えられる”唯一の存在”であり、お前自身なのだぞ?なのに何故拒否する?何故私から離れようとする?駄目だ、絶対に駄目だ。認めない。認めないぞこんなこと。アヤナ、私はお前を誰にも渡さない。絶対に渡さないぞ…………ッ‼︎

 

 

 

……そして私はアヤナを取り込んだ。

 

 

 

最初、私はアヤナにアヤナが理想とする世界と私がアヤナのためにして来たこと➖アヤナを苛めていた彼女の同級生の雌どもや、アヤナの憎しみに共感しなかった者共を始末した様子のことだ➖を見せてやった。

 

だが、アヤナはその様子を見て後悔と自責の念を抱いたらしい。おまけに今度はしきりに崩れる、止めてくれ、助けて欲しいなどと言い出した。どうしてだアヤナ?お前のために此処までしたというのに。お前のために命まで懸けたというのに。何故私を拒む?私の何処が悪いというのだ?

 

 

私がそう慟哭したその時、

 

 

突然ガメラが起き上がって、私の体内のアヤナを取り出そうと私の腹部を強く抉って来た。ただ幸いだったのはアヤナを奪われたというショックと止めを刺しておけば良かったという後悔の念のおかげで、抉られた痛みを感じなかったということであった。これでもし、痛みが伝わってこようものならまともに戦うことなど出来なかっただろう。だが、今はガメラに対する怒りが私の精神を支配していてそれどころではなかった。

 

-ぐはっ…………、キィサマァァァァァァァァッ‼︎よくも、よくも私のアヤナをォォォォォォォォォォッ‼︎こぉの、死に損ないめがァァァァァァァァァァァァァァァッ‼︎

 

だが、彼女はこう返した。

 

「…貴女は何故、アヤナが貴女を止めて欲しいと思うようになってしまったのだと思う?」

 

静かに、先程とは打って変わって冷静に言った。

 

「………彼女にとって貴女には僕だけを斃して一緒に暮らせれば良かったんだよ。だけど君はアヤナの負の感情に影響され過ぎたために関係のない人間や生き物達を殺してしまった。だから彼女は貴女を文字通りの怪物にしてしまったことを悔いて自分の罪を認めて誰でも良いから君を止めて欲しいと願っているんだ。貴女のアヤナに対する思い入れと言い分、理想は確かに立派だ。僕自身も君に対して一瞬怒りを覚えたりもしたから君の言っていることも正しいところがあるよ➖まあ、感情の無い存在なんて数に関してはたかが知れてるからね➖。だが、それは君がしたこととは全くの別物だ。アヤナは”私”…”僕”を憎んでいるみたいだけど、僕は貴女達を止められるなら構わない。確かに元々貴女達に罪はなかった。だけど君達が足掻けば足掻く程状況は悪くなった。貴女は自分達は悪くないと言ったけど、足掻き続けた結果がこんなことになってしまったんだ。貴女ももうこんな事態はもううんざりなんだ。だから貴女はいつまでも君達を止めるために君達の前に立ちはだかり続けるよ。例え…、例え差し違えることになっても…。それがあの人達の、もう出来なくなった自分達の過ちを正して欲しいという願いなんだから…。」

 

-くっ…、そんなことのために一億年以上も生きて来たとでもいうのか⁈くだらん、それにたった一人で何が出来る‼︎お前一人だけでこの世界を守りきれるとでも言う気か⁉︎

 

「一人じゃないよ…。貴女だけじゃなく、みんながいる。みんなが居てくれたから、僕も此処まで来れたんだ…。出なきゃレギオンが来た時に僕は死んでいた。だから…、僕は守らなければならない。此処まで僕を助けて、応援してくれた人間とこの星を、守らなければならない‼︎」

 

-黙れ!黙れ黙れ黙れ‼︎‼︎貴様の御託なぞ、聞いてたまるものかァァァァァァァッ‼︎

 

私はスピア・アブソーバーをガメラの右腕に突き刺した。スピア・アブソーバーが腕を貫通して建物の壁にまで突き刺さる。ガメラが悲鳴を上げた。

 

「ああああああああァァァァァァァァッ‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

-そうだ、痛みで悶えろ。体を斬り裂かれることに狂ってしまえ。私からアヤナを奪った罰だ。それに丁度いい、お前の遺伝子も貰い受けて干からびて情け無く死んで征く様を見届けることにしようか。くはははははははっ‼︎‼︎

 

私はアヤナを奪ったことへの罰を与える快感に狂気した。もうすぐテンタクランサーからガメラの火球を放つことができるようになるだろう。手始めにガメラで試し撃ちしてみようかと考えた時だった。

 

何を思ったのか、ガメラはスピア・アブソーバーで貫かれた己の右腕を火球で削ぎ落としたのだ。私は馬鹿な、と考えたが、拘束を解くためとはいえ自分の腕を削ぎ落とすとはなんと愚かなと思ってオーバーブースト・プラズマ➖ガメラの火球の真似したもののことだ➖を放った。

 

だが、一つだけ私は見落としていた。それは、ガメラが”火という元素を操ることができる”ということだ。

 

ガメラは火球をかつての己の右腕のあったところで火球を受け止めた。そして火球はまるで失った筈の右腕と同じような形に変化した。流石にこれには人間達はおろか、私でさえも驚いた。

 

-何…だと…‼︎火球を己の腕にした…⁉︎バカな、あり得ない、こんなことは出来る筈が…⁉︎

 

「”イリス”…、これが…、僕と人間達の思いだ…‼︎」

 

ガメラがその炎の右腕の拳を振り上げる。回避行動を取ろうにも場所が場所なのと、至近距離なのでもう間に合わない。そして拳は私の腹部の傷へ向かってそして…。

 

 

 

 

///////////////////

 

 

「………ちゃ……ん……。」

誰かの呼ぶ声が聞こえる。だが、誰だっけ?

「………ちゃん………、…ちゃ…ん…。」

煩いぞ、さっきから聞こえている。

「ほう…き…ちゃん…、ほうき…ちゃん…。」

だから分かっていると言っているだろう。何度も私を呼ぶなと…、ほうき?誰のことだ?私か?私のことか?それは違うぞ、私の名前は…。

「箒ちゃん!起きてよう、箒ちゃん‼︎」

 

 

 

 

私ははと、起きるように呼びかけてくる声で飛び起きるように目を覚ました。何かに頭をぶつけた気がしたがあの時の記憶をもう一度夢で見たことに対する腹ただしさであまり気にしなかった。またあの夢を見てしまうとは…。それにしても夢に出て来る頻度が高いな、もしかするとそれが今の私に対する贖罪なのだろうなと考えていると。

 

「あーイたたたた、酷いよ箒ちゃん‼︎呼んでもなかなか起きなかった上にいきなり起き上がって束さんの大事なオツムに頭突きだなんて‼︎脳細胞は叩かれると5千個も死んじゃうんだよ‼︎もう束さん、激おこプンプン丸だかんね‼︎すっごく怒っちゃうんだかんね‼︎」

 

頭に出来たタンコブをさすりながら、意味不明な単語をしっちゃかめっちゃかに並べて喚いているこの少女の名前は篠ノ之束。私、篠ノ之箒の姉で篠ノ之神社➖”神社”と聞いて私にはあまり良い思い出が無い➖の跡取り娘である➖但し、当の本人は継ぐ気は無いようである➖。正直な話、この女を一言で言い表すなら”頭の可笑しいバカ(天才)”と言ったところであろう。では、何処がどう可笑しいのかというと、その全てだった。例えば彼女の外見だ。彼女は常に奇妙な身なりでいることが多い。「一人かぐや姫」とか「一人白雪姫」とか訳の分からんテーマに基づいたファッションをしてはそれを楽しんでいる➖先週は「一人赤ずきんちゃん」、そして今週に至っては「一人シンデレラ」などである。正直何が何だか分からない➖。だが、そんな奇天烈な身なりに反して、学年や学校内に於いては常に成績が一位をキープし続けているくらいのがり勉らしい➖その2番手は近所に住む私の幼なじみの織斑一夏の姉で、束の数少ない親友の一人である織斑千冬であることは言うまでもない。ただ、成績に関してなら、私も束と同じくらいかそれ以上だろう。意識したことはないが➖。その証拠に目の下には常に隈を作っていて、それを見た私は歳の割にご苦労なことだと思った。寝不足は美容の大敵だと云うに。おまけに愛読書も年相応の少女が読むようなものが一つもなかった。例えばジェネラル・エレクトニッ◯社とかロッ◯ード・マーティン社とか言う企業➖どちらも、かつてパワードスーツの研究開発を行っていたらしい➖に勤めていたという技術者の書いたパワードスーツ専門書とか航空力学の用語辞典とか人間工学とロボット工学の世界的権威の書いた考察本など、側から見れば意味不明なものばかりだった。まあ、私とマオとしてはこの世界の技術レベルを手に取るようように知ることができるので、助かってはいるの

だが。だが、何故フェアリーは私をこんな女の妹という存在なぞに転生したのか。

 

その理由は、近い将来この女が世界を女尊男卑一色の社会に塗り替えてしまうある”発明”をしてしまうからだと言う。そいつはマオの言葉で言い表すなら、”パワードスーツの出来損ないな欠陥兵器”とでも言う奴で、後に「インフィニット・ストラトス➖通称、”IS”というらしい。あまり良い響きがしないのは気のせいだろうか➖」と呼ばれるようになるものを作り出してしまうから、それまで彼女の監視役をして欲しいというのが、もっともらしい一番の理由だった。だが、その他にも彼女にはある意味警戒すべき点が幾つも存在する。自分の妹たる私やそれ以外の親しい人物➖主に親友の織斑千冬や私の幼なじみの一夏の事だ➖以外とは全く話もしない➖但し、辛うじて家族とは二言三言話はする➖、親しい者には限度以上にべったりと餅みたいに張り付いてくる、などが殆どだが、私にはそれ以上に心の内に何か黒い物が巣食っているように思えてならない。そう、かつての”私”のように……………。

 

「んんっ?箒ちゃん、私の話聞いてる?」

 

その怒った様な束の声で私は現実に引き戻された。取り敢えず、私は束に返事をすることにした。

 

「へっ?…あ、ああ、おはようたば…束姉さん。」

「あ〜、また”束”って言おうとした〜‼︎それにまだ頭突きしたこと謝ってないぃ〜‼︎」

「ああ、ごめんごめん。全然気付かなかったよ。本当に済まない。だからお詫びに今日は2人でマジンガーでも見よう。今日は確か私の記憶の通りなら日曜日で、剣道の練習は午後の筈だから。」

「ええッ‼︎ホントに箒ちゃん!ホントに良いの⁉︎」

「ああ、良いさ。今日は父さんも母さんも”神社”の仕事で忙しくなるって言っていたし、剣道も午後の話だ。だから、久しぶりに今日の午前中は姉さんと一緒に過ごせる筈だぞ?」

「うわーい、やったやった〜‼︎今日は箒ちゃんと一日中遊べるゥ〜♪‼︎じゃあ、先に朝御飯、食べに行って来るね‼︎待ってるよ〜☆」

 

そう言うと束はすざましい勢いで私の部屋を飛び出して行った。それを見て私は相変わらず子供だなぁ、と思っていると、

 

『おはよう、箒。昨日は良く眠れたか?』

 

マオの声が聞こえて来た。マオは私と融合したが、魂だけは同化しなかったおかげで、存在自体を未だに保っている。今は私とフェアリーの頭の中でのみその声を聞くことができる。おかげで秘密の会話を聞かれるようなことは今までに一度も起きていない。今彼女の声が聞こえて来たということは、彼女もたった今目覚めたのだろう。

 

「良く眠れたも何も、夢の内容も目覚めも最悪だ。どこをどう取っても良くないな。」

『ふむ、それはもしや自分が殺られる夢のことか?実は私も自分がバイドになってしまった時のことを夢に見たのだ。確かに自分が殺られる様な苦い記憶を夢で見ると、目覚めは最悪だな。』

「それだけではないぞ、マオ。今日は束が私の部屋に来て起こしに来た。正直あの女に部屋に入ってこられるのは迷惑なんだが。」

『ふむ、束がか………。箒、パソコンは?』

「床下だ。」

『日本レ○ロジー学会出版の本は?』

「押し入れの奥だ。」

『波動力学のデータが入ったUSBメモリとハードディスクドライブは?』

「本棚の裏だが?」

『なら良し。』

「ああ………、って何なんださっきからっ⁉︎」

『いや、束がこの部屋に来たなら何かを取って行ったかもしれないと思ってお前に探させたのだが?いけなかったか?』

「いや、良い。むしろ済まない、心配をかけて…。」

『別に良いさ、細かいことは。それより急ごう、束を待たせる訳にはいかないだろう。』

「そうだな。」

 

私➖そしてマオも➖は、顔を洗いに洗面所へ向かった。そして顔を洗いながら、この世界の技術レベルが分かったのは良いものの、早急に解決しなければならない課題が幾つか出てきたことを考えた。まず、一つに波動砲の問題だった。原理や威力としては、この前束と一緒に見た「宇宙戦艦ヤ○ト」とほぼ同じらしい。だが、この時代の技術レベルではまず原材料が不足してしまっている。バイドを倒すためには必須な装備だけに、何とかしなければならないだろう。二つ目にフォースのことだ、あれを造り出して制御できるレベルに迄持っていかなければならない。他にも、R戦闘機の機動性を持つような戦闘機が造れるのかという問題もあったが、それ以上に問題であることがある。

 

 

 

非常時に人間の姿から元の姿である怪獣の姿に未だになれないということだ。確かに隠密行動は最優先事項だが、何かあった時では遅いのだ。フェアリーは世界の理の力がある程度働いているせいでなれないのだろうから暫くはこのままの状態で過ごして欲しいとのことだったが、正直人間の姿では脆いから早くにでも怪獣の姿にならなければならないだろう。何にしても解決しなければならない問題が幾つもある。地道にコツコツやっていかなければならないな、というように私は溜息をついて、私は束と両親が朝食を摂っている居間へ向かった。

 




ええっと、なんかグダグダなのとやや展開が強引な気がするのは気のせいでしょうか?別にお気になさらないなら宜しいのですが。まあ、今回も感想、質問、評価、批評、沢山受け付けますので、よろしくお願いします。それでは皆様、また今度お会いしましょう。
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