I-TYPE   作:どんぐりあ〜むず、

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久方ぶりに投稿します、どんぐりあ〜むず、ですっ‼︎今回は箒達の目的の一部が明かされます‼︎では、どうぞ‼︎


第2話 道場にて

「どんなにみっともなくても、生物は最期の瞬間まで生きようとしますよ!」

➖長峰真弓➖

 

///////////////////

 

午前中に姉の束とマジンガー全作品を見て過ごした後、私は午後の剣道の稽古のために篠ノ之神社の隣にある篠ノ之道場へ歩いて向かった。篠ノ之道場は神社の境内の中にあって、言ってみれば、その全てがぱっとしなくて、みすぼらしく、何処にでもあるような剣術道場だった➖板張りの内装などは特に➖。道場に着いた私は、その小さな身体をよろけさせながら、まず道場の窓を全て開けて塵や埃取りに雑巾掛けなどの掃除をした。それらが終わると、今度は脚立を使って神棚の水を変えて礼をする。この、一見危なっかしい一連の作業は最早私にとっては毎日の日課になっていた。最初はあまり気の進むものではなかったが、慣れさえすればどうということはなく、また人間達に私が普通ではない(・・・・・・)ということを悟られないようにするには常に真面目で大人しく、そして人当たりが良いように振る舞うことが先決だと言うマオの意見もあって今ではもう、こういうことは慣れっこだった。

 

 

 

やがて掃除も終わり、私は更衣室へと向かい剣道着に着替えた。そして道場の隅で目を閉じて座り込み、織斑千冬と織斑一夏が来るまで暫く待っておく。何故この二人の名前だけ出したのかと言うと、実は、この道場で剣道の稽古をしているのは私と、フェアリー曰く「この世界の鍵を握る」織斑姉妹(・・)だけだからだ➖そんなことぐらいなら剣道の稽古での道場の運営なんてするなと言う話になるが、それはこの際置いておこう➖。……やがて、

 

「ん?ああ、篠ノ之か。もう来ていたとはな。相変わらず感心するぞ。その年に似合わず早くに来て掃除までして、おまけに神棚の水まで変えて稽古の準備とは…。お前と同い年の我が()も、少しは見習って欲しいものだな。」

「千冬姉ぇ〜、そんなこと言ったって()にも出来ることと出来ないことくらいあるよぅ〜。」

「馬鹿者、私が言いたいのは礼儀とやる気(強さ)の問題だ。礼儀と強さを重んじる者、この二つを両立させてこそ初めて日頃の鍛錬にものを言わせるのだ。分かったか?」

「うう…、分かったよ千冬姉…。」

「相変わらず情け無い返事をするな、お前は。まあ、今からこういうことを始めるなら問題は無いと思うが。」

「分かったよ、今度から箒と同じくらいに来て掃除の手伝いとかするよ。其れで良いでしょ、千冬姉。」

「その通りだ。良く言えたな、一夏。だが、だからと言って私や箒に対して付け上がるような真似だけはしてくれるなよ。」

「うん、分かった!じゃあ箒、今度から宜しくね!」

「良いか、篠ノ之?」

「あ。ええ、構いませんよ。丁度掃除の人手が足りなくて困っていましたから、助かります。」

「そうか。じゃあ今度から妹を頼むぞ。それと今日の稽古は私達が着替えてから始めるぞ。2人とも良いな。」

「「はい‼︎」」

 

///////////////////

 

という訳で、今私は織斑姉妹と剣道の稽古をしているのである。元々私は掃除と同じく、最初からこの修練に乗り気であった訳ではなく、こんなことが本当に来るべき戦い()に備えるためにこの修練も必要なのかと思ったが、マオ曰く「カタログスペックも大事だが、最終的に物を言うのはそれを扱う者自身の経験と実力だ。だから、私としては稽古を受けることには賛成だな。勘が鈍ってそれが障害になってしまっては元も子もないのは事実だ。それにそれが”カモフラージュ”に繋がるのなら尚の事だしな。」という助言がきっかけで、この”剣道”という物の修練を真面目に行うようになった。お陰で、怪獣としての知能や勘、そして本能を、人間となってしまった今でも損なわずに済ませている。また、その副産物として人間達との関わりや信用も得ることが出来た➖それも、この世界に於いては最も重要な立ち位置にいる姉の篠ノ之束に彼女の数少ない親友である織斑千冬と、その妹である一夏の姉妹にだ➖。そういう訳で私は剣道という競技が好きになった。もちろん、単に戦いに備えることと好きであるという理由だけではなく、前世で受けた屈辱と戦えないことに対する鬱憤晴らしもあるのだが。

 

「…相変わらず、箒には負けっぱなしだな。しかももう53戦目だぞ。もう少し、鍛え過ぎと言われるくらい、稽古を積んだらどうだ。一夏よ。」

「いたたた…。けどそんなこと言うけどさ千冬姉っ‼︎箒馬鹿みたいに強過ぎなんだもん‼︎こんなの幾ら鍛えたって無理だよ〜‼︎」

「そんな情け無い事を言うな。お前はこの私の妹なのだぞ。もっと自信を持て。」

 

「………別に人それぞれだから関係は無いだろう。人間とは一人一人の考え方も生き方も違うのだから………。」

 

「ん?何か言ったか、篠ノ之?」

「あ、いや、別に何も。」

私は思わず本音が出てしまったことに内心焦った。何をしているんだ私は。よりにもよってこの織斑千冬に聞かれるくらいの独り言を呟いてしまうとは…。

 

此処で、織斑姉妹の説明をする必要があるだろう。まず、この私の目の前にいる、私の姉の篠ノ之束の親友である女子高生ぐらいの歳のこの女の名は”織斑千冬”と言い、剣道を嗜んでいる「良く言えば生真面目な察しの良いそこそこ優等生タイプ、悪く言えば頭が固く、何かと嗅ぎ回っては何かを見つける厄介な現実主義者」で、私が束以上に警戒している人物だ。唯剣道を嗜んでいるのなら可愛いのだが、あいにく彼女が怪しいと思ったものは彼女によって全部文字通りの結果をもたらしている➖例えば、この前など近所を彷徨き回っていて妹の一夏に話しかけて来た不審者をねじ伏せたところ、指名手配されていた連続幼女誘拐犯だったという話だ➖。だが私はもし間違えていたら大惨事だったろうに。幾ら一夏のためでもやり過ぎだろう、甘々もいいところだ。だから妹も駄目になり掛けている。もう少し厳しくなれないのだろうか?そして、

 

「あー、もしかして箒、今千冬姉の悪口言ったんじゃないだろうね!言ったら言ったで、あたし許さないからね!」

「だからそんなことは言っていないだろう。話聞いてたのか?」

「そうだぞ一夏。一体何を聞いてそんなことを言ったんだ?何も言ってやしないじゃないか?」

「へあっ?そうなだったの?……う〜ん、なんか納得しないけど…、ごめんね箒。変な勘違いして。」

「いや、いい。もう気にしてない。」

 

私は突っかかって来たこの少女を見てそう答えた。この、私と同世代の少女は織斑一夏という。織斑千冬のたった一人の家族だ➖理由については今は敢えて伏せさせてもらう。それなりに深刻な問題だからで、後にした方が説明し易いからだ➖。彼女はそれなりに素養のあり、どんな奴にでも分かり合おうと手を差し伸べるタイプなのだが、いかんせん姉で保護者の千冬が甘やかし過ぎるせいでそれらを意味がないと言わんばかりに打ち消してしまっていた。要するに「能力はあるのに姉のせいで上手く使いこなせていない」という奴だ。おまけに、それに輪を掛けて傍迷惑この上ないものが彼女にはあった。あまりの空気の読め無さとくだらない駄洒落のことだ。流石の私も何かの病気か何かかと思った程だ➖。正直其処だけは本当に治して欲しいものだ。だが、何故本来の私なら切って捨てるであろう存在である筈の彼女とその姉たる織斑千冬にこの私が此処まで付き合うのか疑問に思った輩もいるだろう。実は、此れにはそれなりの理由がある。それは………。

 

 

 

///////////////////

 

「彼女が怪獣か或いは何らかの存在が転生した存在である可能性?」

「ええ、恐らくですが、私は彼女は元々怪獣だった存在乃至は別の存在が魂を残してそれ以外を全て変えた形で➖性別も然りです➖転生した存在であると考えています。そもそも織斑一夏は殆どの並行宇宙に於いては”男性”であることが多いんです。だからこのようなイレギュラーな事態から彼……いや、”彼女”には何かがあるという考えに至ったんです。」

 

3日前の深夜0時過ぎに、私はこれからの戦いに備える為に月明かりだけの薄暗い部屋でマオと共にフェアリーとの話し合いに望んでいた。その時私は、何故この姉妹がこの世界の鍵を握る存在なのかと問うた。すると姉の千冬は兎も角も、妹の一夏に関するこのような答えがフェアリーの口から語られたのである。それを聞いた私はもし一夏が男だったらと想像してみた。恐らく、今以上に空気の読めなさや御節介焼きが加速するだろう。想像したせいで頭が痛くなったので、私は思わず想像してしまった事に後悔した。

 

『だとしたら彼女は何者だ?怪獣かそれ以外であるというのならどんなに隠してもそのような兆候が現れてくるものだろう?なのに彼女からはそんな気配は微塵も感じられないぞ。おまけに、何も知らないみたいだしな。』

「どのような存在であれ、外見だけで判断するのは自殺行為だぞ、マオ。人畜無害に見せかけて誤魔化している可能性もある。それにもしフェアリーのいうことが本当なら詳しく確かめればいいだけのことだろう?」

 

マオがこう言ったのを聞いた私は彼女にこう返した。彼女はバイドではあるが、人間であった性分、こう言った考えに辿り着く迄が結構長い。仕方のないこととはいえ、もう少し賢くあって欲しい。其れに慢心は禁物だ。事実、私はそれでガメラに敗れたのだから。

 

「それで?お前でも何の怪獣か、或いはどんな存在かは流石にわからないんだな?」

「ええ、其処までは幾ら私でも…。だから、貴女方にお願いがあります。篠ノ之束の他に彼女達…、織斑姉妹の動向を探っていただきたいのです。今宇宙の方で問題が起きてまして、私はそれに対処する為に動かなければならないので。引き受けてくれますか?」

「ああ、構わんが……、まさかベルサーやバイドか?」

「はい、恐らく。彼らの艦隊が火星の近くから迫っています。飽くまで私の予測ですが、後一か月乃至は二か月後には地球(此方)にやって来るでしょう。」

『つまり、後一、二か月がタイムリミットと言ったところか。だとすれば時間が無いな。しかし艦隊の相手まで私達でするのか?』

「いえ、ベルサー艦隊は私が相手をしておきます。こう見えて私、戦闘は得意な部類に入るので。お二人はベルサーの地上部隊をお願いします。どうやら地上部隊が先に送り込まれたらしいので。なので充分に注意されて行動と準備をして下さい。ベルサーが何処にいるのかなんて分からないし、もう何が起こっても可笑しくありませんから…。」

 

 

 

///////////////////

 

 

そんな事があった為に私は彼女らの護衛も兼ねて、戦闘準備として彼女らの鍛錬に付き合っているのである。おかげで、怪獣だった頃よりも勘も鋭くなり、束や織斑姉妹を主とした人々からの信用を得ることができた。そういう点では本当に感謝している➖まあ、それ以外で何か彼女らと付き合い続ける理由はないのかと訊かれたら、もちろん嘘であるがその事を話すのはまた次の機会としよう➖。

 

それから暫くして、千冬が稽古の時間が終わりに差し掛かっていることに気が付いて、今日のところは一旦お開きとなった。そして、そんな時だった………、

 

千冬が私に話しかけて来たのは。

 

「篠ノ之、ちょっと良いか?」

「……何ですか?」

 

私は少し警戒しながら彼女に訊いた。一見、いつもの蛇の(まなこ)のような瞳と冷たい物言いなのだが、今日は少し違っていた。なんと言うか…、悲しい決断を迫られた者の様に見えなくもなかった。あの時のガメラの様に…。

 

「ん?千冬姉、箒に何か用事でもあるの?」

「あ。ああ、一夏。その通りだが少なくともこれはお前に関係のある話じゃないからな。だから、先に着替えて待っていてくれるか?後で私も篠ノ之も追い付くから。」

「ええ?何で?」

「なあ一夏、頼むから。待ってくれ。直ぐに済むから。」

「う〜ん……、分かったよ千冬姉。じゃあ先に着替えて来るね。」

「ああ、そうしてくれ。ああ、私の携帯のゲームで遊んだりするなよ、お前はまだ勝手を理解できて無くて何かと危なっかしいからな。」

「は〜い…って、酷いよ千冬姉!ちょっとぐらい良いじゃ〜ん。」

「駄目だ、遊ぶなら私が来てからにしろ。良いな。」

「うう…、分かったよ…。」

 

そう言って一夏は更衣室へと向かっていった。千冬と私はそれを見送った後、それぞれに向き直った。

 

「彼奴、この前何を如何したのか知らないがゲームからうっかり風俗サイトに繋げてしまってエライ目にあったばかりでな。わざとじゃないのは分かっているのだが、全く何をしているのやら…。」

「ええ、本当に先が思いやられますね……。ところで、話とは何ですか?千冬さん?」

「ああ、そうだな。じゃあ改めて。(咳払い)篠ノ之、実はな…、お前に…、話が…、あるんだ…。」

 

 

 

///////////////////

 

翌朝、私は学校の通学路を歩きながら昨日織斑千冬から聞いた話を思い出していた。マオも、黙ってはいたが同じ事を考えているようだった。そして暫くして、私に今日初めて話しかけて来た。

 

『………箒、昨日の件、お前はどう思う?』

「…そうだな。やはり未来へ向かってその様子を見てきたフェアリーから聞いた通りだ。奴が最初止めたがったのも無理はない。だがどうやらこの世界にとっては必要な進化だった様だし、彼女ですらターニングポイントとなる”白騎士事件”とベルサー艦隊の出現時期が重なるとは夢にも思わなかったようだからな。本当に何が起きても可笑しくないな。」

『そうだな。そしてそのおかげで、ただでさえ時間がなかったのに、余計に準備を急がせなければならなくなってしまったな。私としては、それが結構腹正しいが。』

「同感だ。早くしないとこのままじゃ、”コレ”の完成迄に間に合わないだろうな。何としても急がせなければな。」

 

 

私はポケットに手を入れて、中に入っていたものを取り出した。”赤く、蒔絵風の模様が入った、端子カバーの白い鈴のついた”USBメモリだ➖但し、波動力学のデータの入ったものではない。アレは”全体的に白く、雪模様の入ったタイプ”だ➖。それを眺めながら、私とマオは昨日織斑千冬と話したことを思い出していた………。

 

 

 

///////////////////

 

「………実は束からは”この事はお前には話さないでくれ”と頼まれたんだが、お前は一夏と同世代であるにも関わらず振る舞い方が私達の世代の人間とよく似ているし、中々の博識だから、お前にだけは伝えようと思ってな。…誰にも言わないと約束出来るか?」

「ええ、構いませんよ。それで?何ですか、話とは?」

「ああ、話せば長くなるがな…。」

 

織斑千冬は私に全てを話した。私の姉、篠ノ之束が宇宙開発用に極秘裏に開発していた”在来の兵器は一切無効化するが、本体の「コア」と呼ばれる部位の製作方法が不明で、しかも女性にしか扱えない”などという沢山の欠陥を抱えたマルチフォーム・スーツ、「無限の成層圏(インフィニット・ストラトス)➖通称、IS➖」という一世一代の発明品を今から2週間後にとある学会にて発表するつもりなのだと言う。だが、束は肝心のコアの開発方法を明かすつもりは毛頭無いらしい。私もマオも、其れでは学会の科学者達からは、たかが十代の小娘の戯言としか捉えないだろうと考えた。正体不明の兵器をおいそれと使う程、彼らや他の人間は単純ではないからだ➖と言うより、常識だ➖。しかし、どうやら束は其れを見越した、あるとっておきの”隠し玉”を用意しているのだという。

 

「その、隠し玉とは?」

「分からん。だが奴のことだ、とんでもない仕掛けを用意しているかもしれん。そして恐らくそのせいで私と束は世界を敵に回すことになってしまうだろう。何故なら私も開発に協力はしていたからな。」

「………つまり、もうどうしようもないことなんですね。それは。」

「ああ、そうだ。だから、それを承知の上で、頼みたいことがある。」

 

ス、と千冬は着替え終わり、更衣室から出てきて玄関から出る直前にてを振って来た一夏に向き直って同じように手を振った後、また、ス、と私に向き直って言った。

 

「もし私に何かあったら…、一夏を…、私の妹の面倒を…、親御さんやお前に、頼めないだろうか?」

 

此れを聞いて私は暫しの間、沈黙した。まさか、彼女から織斑一夏の面倒を頼み込まれるとは思わなかったからだ。私が沈黙を続けていると、千冬は理由を話し始めた。

 

「確かに黙ってしまうのも無理はないかもしれない。だが、私にも相通ずる何処もあるとはいえ、彼奴にはもう頼れる家族が、私以外にはいないんだ。分かるだろう。」

 

それを聞いて、私は無言で頷いた。そう、2人には家族がいない。一夏の物心がつく前に捨てられたとのことだった。その頃のことを、千冬はあまり語りたがらない。彼女自身にも、余程辛い記憶だったのだろう➖前に一夏が、彼女に両親のことを聞いても「お前の家族は私だけだ」の一点張りであったというのが、主な理由だ➖。私は、アヤナは違ったのになぁ、と思った。あの瞬間まで、確かに私はアヤナに愛されてはいたからだ。それから暫くして、私は結論を出した。

 

「分かりました。もし貴女に何かが起こったら、私から両親に伝えておきます。ですが…、本当にそれでいいのですか?本当に彼女に貴女以外に頼れる家族がいないのであれば、束姉さんの言うことなぞ聞かなくても宜しいでしょう。一緒に居たいのなら、それでいいではありませんか。」

 

私は織斑千冬にそう言った。何故なら彼女が私に妹を託すと言いながらも、その瞳の奥に悲しみの明かりを灯していたからだ。そして、何時も放っている冷徹な武人のような気配を全く感じさせることもなかった。むしろ、私にはずっと一人で自分にとってかけがえのない、”たった一人の家族”たる織斑一夏を支えてきた、一人の女の姿を映った。なのに何故、離れたくないという思いを揉み消すようなことをする必要があるというのだ。一緒にいてやればいいだろう。そう思って私は彼女に、こう訊いた。すると、

 

「確かにお前の言う通りかもしれない。だが…、私には、この私には、束に返さなければならない貸しがある。もう、ずっと昔のことだ。私がまだ中学だった時に近所で覚醒剤を打った際の副作用の所為で暴れていた不良を止めようとして重傷を負わせてしまったことがあったんだ。あの頃の私は、今の一夏のような猪武者みたいな奴でな。今でも取り返しの付かないことをしたと悔いている。」

 

千冬は、何時の間にか暗くなった外を、道場の窓から眺めた。その様子は、何処か昔のことを懐かしんで、但し確かにその時のことを悔いているようにも見えなくもなかった。それから、千冬は続けた。

 

「その時、不良の親から治療費を請求されてな。今思えば其奴は相当理不尽な大馬鹿者だとは思ったが、少なくとも其奴の子供を私が傷付けたことに変わり無いからな。払うことにしたは良かったが、とてもバイトで稼いでも、払うには到底無理な金額に、仕方なく枕営業で稼いで払おうと考えたこともあった。だがそんな時だった………、束に助けて貰ったのは。」

 

千冬は言った。彼女はかつて私を、そして私の妹である一夏を助けてくれた。だったら、今度は自分が束を助けなければならない。借りたものは必ず返す。這い蹲ってでも。そして其れが例え、どんなに血で汚れ、自らの命を投げ出すようなことになったのだとしても、私はパンドラの匣を開ける覚悟を決めている。だが、一夏だけは絶対に巻き添えにする訳にはいかない。だから、

 

「約束してくれ、篠ノ之…いや”箒”。必ず、必ず一夏を幸せにしてくれと…。」

 

 

///////////////////

 

「そうは言ったは良いが、遺された者の気持ちぐらい、考えてやったらどうなんだ…。」

『そうだな。其れに、万一の場合に備えて奴は死ぬ気でいるかもしれない。おまけに、隕石が地球に衝突するくらいの確率とはいえ、バイドやベルサー艦隊と鉢合わせしてしまうかもしれない。丁度時期も重なっているしな。…此奴はもう完成しているのか?」

「この中に入っているそれぞれ2つの設計図と青写真ならもう出来上がって、全てこの中に入れた。後は材料と組み立てる場所、其れと…、」

『再び怪獣になれれば、だろ?だが時間は待ってくれはしない。そろそろ諦めた方がいい。』

「だが、そうでもしないと”コレ”を作ることが出来ない。必要な装甲のゴールドとチタンの合金を安易に手に入れるには、宇宙空間にある古い人工衛星やデブリでしか無理だ。幾らハッキングでも、此ればかりは怪獣の力無しでは出来ない。」

『…分かった。なら、後もう少しどうしたら元に戻れる方法があるか、探してみよう。だが、あまり時間は掛けられないぞ。』

「…ありがとう、マオ。」

そう言って私は、手に持っていたUSBメモリをポケットに戻して、元の「通学路にて登校中の小学生」に戻った。

 

USBメモリの中身には、今の織斑千冬と篠ノ之束を救える、唯一の方法が記されている。何としてでも”コレ”を完成させなければならない。昨日の話から、恐らく千冬は死ぬつもりだろう。其れに先程のマオの台詞では無いが、もしかしたら天文学的な確率で、千冬の言う「ISを使った壮大な隠し玉を行う」その日にベルサーやバイドが現れないとも限らない。そうなれば、彼女達が生き残る確率は、いよいよ低くなる。だが、このUSBメモリの中身と私の力さえあれば、彼女達を救うことが出来る。いわば、全ての鍵を握っているのだ。そして、そのUSBメモリの中身とは…、

 

異相次元戦闘機「R-9A”アローヘッド”」と其れを元にしたいわば「擬似IS」或いは「戦甲機➖英語名、ファイター・アーマー。通称、FA➖」の「アローヘッド」の詳細な設計図に必要な部品に技術リスト、そしてそれらの青写真である。

 

 

 

…私は空を仰ぎ見た。設計図は完成した。後は組み立てる場所と材料、そしてそれらを探すことの根本を成している私の力が戻りさえすれば良い。だがもうマオの言う通り、時間が無い。何とかして元に戻れる方法を探そうと決意を固めた。

 

 

 

 

 

 

 

……………まさかその時、今日の午後、事態が大きく動くことになるのだとは夢にも思わずに……………。




いやあ〜、長い…。でも、何か達成感があって良いです‼︎本当に今回も無事に終わって良かったぁ〜☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆本当小説書いて良かったです。此れからも続けていきたいですね。あ、じゃあ今回のところは此処で、さいなら〜(・ω・)ノ
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