I-TYPE   作:どんぐりあ〜むず、

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はい、皆様お待たせ致しました、どんぐりあ〜むず、です。実は今回投稿するにあたって、相当ショックを受けたことがあります。

実は、お気に入りが一つ減っていたんですね。めっちゃ辛かったです。なんか分かるようになりました…、お気に入り消された時の感覚って、なんかこう、何の気力も湧かなくなるんだって。でも‼︎今回で名誉挽回したいと思いますので皆様、どうか目を通して下さい‼︎特に今回は名前は出てこないけれど一夏の正体が判明しますんで‼︎てな訳で、今回も元気にすたーと、ゆあえんじん‼︎あ、因みに今回も一万字越えしたんで気を付けて読んで下さいね。


第3話 箒、覚醒。一夏、目覚める。

「人の血を流す者は人によって自分の血を流される。何故なら人は神をかたどって造られたからだ。」

➖創世記第九章、及びノアの契約より➖

 

///////////////////

 

この日の夕方、私は一夏と、残りの班の男子や女子たちと放課後の掃除当番をしていた。だが、正確には私と一夏の二人だけ(・・・・・・・・・)が真面目に掃除をしていた。女子を主とした他の連中と言ったら、サボって何処かに遊びに行ってしまい、唯一残った三人の男子はと言えば、

 

「おーい、男女〜。今日は木刀持ってないのかよ〜」

「……ああ。だが、正確には木刀ではなく竹刀だな。」

 

…いきなり私に話しかけておいてこの有り様である。正直な話、私にとっては鬱陶しく、頭痛の種になっていて堪らない。何故私にいちいち突っかかって来る必要があるのだろうか?真面目に掃除でもしておけばいいものを。私のような奴なぞ、どうでもいいことだろう。前に、人間のようなある程度の社会性を持った生物は部族内での自分の地位を守る為に自分を筆頭として部族内にいる数少ないマイノリティーを排除しようとする習性があると聞いたことがあった。そんなこと、やったって何の得にもならないし、返って反感を招く愚か者の考えなのに未だに虐めを続けている奴は多いという。奴らは何故学ばないのだろうか?やはり、人間が愚かであるということの現れなのだろう。そう考えた時、そういえば、アヤナも毎日此奴らみたいな奴らに虐められていたな、ということを思い出した。彼奴らみたいな匂いが、此奴らからは漂っている。どうせならあの時の彼奴らみたいに嬲り殺してしまおうかと考えたが、そもそも記憶を取り戻していない一夏がいて動きが取れない上に、怪獣の力を取り戻してもいないので流石に殺すことはできないだろう。まあ、後の方はわざわざ怪獣にならなくとも剣道やそれ以外のトレーニングなどで鍛え上げた持ち前の馬鹿力があるため➖怪獣だったおかげか、結構早くに効果が出てきた➖、別段殺せないことはないのだが。

 

「ああん、喋り方可笑しい癖に生意気だな、お前。お前みたいな男女には武器がお似合いなんだぜ〜、知ってたかよ。」

「へっへ、そういや確かに喋り方も変だもんな〜」

 

私は生意気な愚か者どもに苛々しながら、適当に雑魚➖此奴らの名前なぞ心底どうでもいいのだが、取り敢えずそれぞれ”デブ原、チビ崎、ガリ松”と呼ぶことにした➖をあしらうことにした。このままでは、掃除が滞ってしまうからだ。

 

「…掃除の邪魔だ、他に言うことがないならさっさと自分の持ち場に戻れ。…それも私の目が黒い内にな。ほら、さっさとしないと痛い目を見るぞ。それが嫌なら坊や達三人はママのおっぱい吸いにでも帰れ。いいな。」

 

私は殺気を少し滲ませながら、脅すように言った。すると三人は、それも恐らく自分の身長と同じくらいの意志しか持ち合わせていない小心者のチビ崎は、たったそれだけで肝を冷やしたらしい。次に彼ら➖特にチビ崎➖から紡がれた言葉は若干声が上擦り、震え掠れていた。

 

「な、な、なんだよ。急に態度か、変えやがって。お、おお、おと、男女の、くく、癖に、な、生意気だぜ。」

「お、おう。一体何のつもりだよ、男女。てめー、一体全体俺たちをどうやって痛い目に合わせる気だよ。出来んのか?ええ?おい。」

「へっへ、無理無理。此奴にそんな力ないって。たかが女一人だろ。何が出来んだよ。強がり言うのも大概にしな、男女。つーか、マジで聞き捨てなんねぇ、ママのおっぱい吸いに帰れとか。おい、弁証しろよ。つか謝れ。」

 

チビ崎とデブ原は少しばかり怯えたが、どうやら能天気者のガリ松には通用しなかったようだ。だが、そのせいでデブ原とチビ崎はつい先程までの自信を取り戻して私に喚き散らし始めた。

 

「おう、そうだ、男女。謝れよ俺たちに。悪うございましたってなァ‼︎」

「そうだよほら、さっさとはいちまえよ!自分が悪かったってよォ‼︎」

「そうだそうだ、男お…へぶっ⁉︎」

 

チビ崎の恫喝は其処で突然途切れた。何故なら、奴がはやし立て始めたまさにその時に、顔面に一枚の濡れ雑巾が叩きつけられたからだ。そしてその犯人は勿論、

 

「……ったく、うっさいわね。あんた達暇なら箒の言う通り帰んなさいよ。それが嫌なら手伝いなさいって。え?先生言うわよ。」

 

我らが織斑一夏だった。どうやら彼女も、此奴らの、私に対する意味不明な攻撃に業を煮やしていたらしい。それも、わざわざ濡れた雑巾を顔面に叩きつける程の怒り様だ。私も流石に目を丸くした。頭の悪い、猪突猛進型とはいえ流石にやり過ぎだろう。もう少し穏便に済ませたらどうなんだと私が思うと、やはりというべきかデブ原達三人の男子が騒ぎ出した。

 

「おいっ‼︎てめぇ、織斑‼︎何のつもりだよ、此奴はよォ‼︎お前此奴の味方のつもりかよ⁉︎」

「おまけに人様の顔面に雑巾叩きつけるたぁ、どういう了見だ、あぁ‼︎」

「ハッ、どうせこの男女のことが好きなんだろ。や〜い、このレズ夫婦〜。つってもだからって、やっていいことと悪いことの区別くらい付けろっつーの。てか、先にこっちの方から先生に言いつけるぞ、織斑が顔に雑巾投げつけてきましたってなァ‼︎」

 

だが、それらの雑音を気にも留めず、一夏は続けた。

 

「言ったでしょ。邪魔なの、掃除の邪魔。ていうか、女子の胸倉掴んで何言ってるのよ。先生言われるのそっちの方でしょ。」

 

そう言われてみれば、確かに私の胸倉をデブ原がその穢らわしい手で掴んでいた。此処まで接近を許してしまったことに、私は後悔した。何故今の今まで気が付かなかったのだろうか。無駄なことを考え過ぎたせいだろう。今度からは悔い改めないとなぁ、と思うと、

 

「へっ、所詮そんなことを示す証拠なんかねぇだろ。おまけに真面目に掃除なんかしてよー、バッカじゃねーの。しかもムキになりやがって。お前らだけじゃ俺たちには勝てねぇって。」

 

と言うとデブ原はチビ崎とガリ松に顎でしゃくって、二人で一夏を羽交い締めにした。

 

「ちょっ…、何すんのよ‼︎」

「へっ、決まってんだろ。さっきの雑巾のお礼だよ。痣ぁ、出来ない程度にいたぶってやっからよォ、覚悟しな。」

 

デブ原はそう言って、指を鳴らしながら羽交い締めにされている一夏に近づいた。だが一夏は、羽交い締めにしているガリ松の太腿に蹴りを入れて自由の身となって反撃し始めた。いつも私に負け続けの一夏だが、流石にあの織斑千冬に鍛え上げられているだけあって男子三人に引けを取らない戦いぶりを見せた。大体チビ崎に裏拳をかましてデブ原にパンチした後ガリ松には一本背負いと言った感じだった。だが。

 

「ふざけやがって、女の癖に‼︎」

 

殴り飛ばされたデブ原が立ち上がって、一夏の髪を鷲掴みにして蹴り飛ばして教室の隅に迄吹っ飛ばした。

 

「きゃっ…‼︎」

 

吹っ飛ばされた一夏は悲鳴を上げて気を失った。

 

「⁉︎…貴様‼︎」

 

私は飛び掛かってデブ原に掴み掛かった。だがその後でガリ松達に引き剥がされ、一夏と同じく教室の隅に迄滑っていった。頭が壁にぶつかった。その時何か生暖かい液体の様なものが頭から流れてきた。触るとそれは赤黒い色をしていた。それを見てその液体が一体何なのかを理解してしまった途端、私の中の何かが壊れた。何かが黒い爆発を起こしてしまった。私は傍らで気絶している一夏を一瞥すると、先程とは比べ物にならないくらいの殺気を解放した。今の今まで黙っていれば、つけ上がりおって…。見逃してやろうかと思ったがもう我慢の限界だ、貴様らには…、他の奴の手で八つ裂きにされてしまう方がマシだと思えるくらい、拷問しながら嬲り殺してやる…‼︎

 

そして、服を突き破って私の背中から触手のような何かが飛び出してきた。それは、私にとっては懐かしいものだ。私はそれに、全く出てくるのが遅いぞ、と心の中で声を掛けた。そして、三人に向き直る。三人は私の禍々しい程の殺気はおろか、私の背中から生えた”テンタクランサー”を前に、みっともない泣き声と悲鳴を上げていた。挙句、殺さないでくれ、ママ助けてなどと言い出す始末であった。

 

「ひっ……‼︎な、な、なな、なんだよそりゃあっ‼︎」

「おお、お、お、おいっ‼︎ち、近づけんなよっ、そんなの⁉︎」

「ひっ、ひえぇぇぇぇぇッ‼︎た、助けてくれよ母さぁぁぁぁぁんッ‼︎死にたくない‼︎死にたくないよぉぉぉぉぉ‼︎」

 

三人はそれぞれ、言いたいことをポンポンとその穢らわしい口から吐き散らしながら私から、教室から逃げ出そうとしたが私はそれを許さなかった。教室の扉や窓を全て開かないように私がサイコキネシスで細工し、悲鳴も漏れないように”アンチ・プラズマフィールド”を応用した結界で音や声は完全に聞こえないようにした。

 

つまり、今この教室は完全なる密室なのだ。そして此奴らの、哀れだが恐怖に打ち震える甘美な悲鳴を、今私は独り占めにしている訳である。私はうっとりとした。何故なら、今からこの彼等の最期の断末魔の悲鳴を前菜にして彼等を私の糧にしてやるのだ。但し、只では殺さない。自分達が否応なしに私の糧となることと痛みに苦しみながら、私に喰らわれるのだ。その時の絵も言われぬ快感を想像して私は感動と快感に打ち震えた。私は近づきながら言った。

 

「助け?助けなんてもう此処にはきやしないさ。何しろ、お前らは私を怒らせ糧となり消える口実を私に与えてしまったのだからな…。さあ…、教育してやる…!豚のように泣き叫べ…‼︎」

 

私が近づいてくるのを見た彼らはたちまち半狂乱に騒ぎ出し、ホウキやらモップやらバケツやらで私に立ち向かおうとした。私はそんな蟷螂の斧の滑稽さにほくそ笑んだ。馬鹿め、そんな安物の木の棒なんぞで何が出来る。もう運命は決まったというのに何時まで抗う気だ?確かに運命に抗うことは大切だ。だがそれは時には…、タイミングにも寄ってくる。要するに間に合ったか合わないかで命運が決まるのだ。今の彼らは後者だった。もう手遅れだ。お前達は命懸けの勝負に負けたのだ。今更抗うという選択肢など…、存在しないッ‼︎

 

「うっ、うっ…、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎」

 

デブ原がモップを手に私に叫びながら突っ込んできた。私はそれをかわして奴の足に触手を引っ掛けて転ばした。そして、

 

「正直お前らのような輩の肉なぞ喰らいたくも無いが…、まあ、我儘は良くないからな。早速、頂くとしようか…‼︎」

 

直後、テンタクランサーが無慈悲にデブ原の体に刺さった。残りの二人も私から逃れようとして、やはりというべきかテンタクランサーの餌食となった。その為、未だにテンタクランサーから逃れようと足掻いている。無駄だと言うに。後数分、いや、もっと悪ければ後数秒で此奴らはミイラと化す。また、例えテンタクランサーから無理矢理逃れたとしても今度は失血死だ、どうせ助かることはない。反撃の心配は無いから私は久しぶりに”怪獣としての”食事に歓喜した。だが、私はそれ迄一夏のことを完全に忘れていた。私が結界を張ったことと、先程の攻撃で暫くは目を覚ますことは無いだろうと踏んで気にも止めなかったからだ。

 

 

 

…まさか、あのような姿を彼女が晒してまで三人を助けようとするとは思わなかった。

 

///////////////////

 

織斑一夏は箒達が繰り広げている、”食事”とは無縁な場所➖つまり、気絶した時の微睡みの中だ➖にいた。その中で眠りこけながらも、やはり彼女は一夏のことを心配していた。確かに彼女は自分と比べる迄もないくらい、強い。それは自分でも認めている。恐らく姉の千冬でも怪しいところだろう。だが、今自分が心配しているのは彼女が男子達に痛めつけられることではない。強いがゆえに、其奴らが許せないが為に彼女が誰かを傷つけていないかを心配しているのである。前に箒は「力を誰かの為に使い、そのせいで他を傷つけたというのならまだ許せる。多少の犠牲は致し方のないことだからな。だが、誰かを傷つけるだけで力を使うのならその罪は重い。当然其奴ら因果応報論の名の下に滅びて然るべきだ。」と言っていたことがあった。確かに彼女の言っていることは正しい。あんな奴ら、死ねばいいのに、と思うことはよくある。だがそれでは幾らなんでも酷すぎではなかろうかと考えられるのだ。そんな奴らでも反省さえすればきっと分かり合えると思ったことがその理由だ。だがどうやらそんな考えは甘かったらしい。諦めかけていたその時、彼女は誰かの叫び声を聞いたような気がした。いや、したのではなく聞こえたのだ。一体誰がと思った次の瞬間、一夏の潜在意識の中にある現在の状況のイメージが飛び込んできた。体から触手を生やした箒が触手の先端を三人の男子達に突き刺してその体液を吸い尽くしている光景だ。間違いなくあれは現実だ、自分が何とかして止めなければ、と彼女は動きかけたがあんな化け物の箒をどうやって止めるというのだという声の前に実行するのを躊躇った。無理だ、絶対に今の彼女を止めるのは不可能だろう。だが、かといって三人の男子がこのまま嬲り殺されていくのを黙って見ている訳にもいかなかった。一夏はすぐにでも目を覚まそうとした。だが、それはできなかった。何故なら、突然謎のイメージが浮かび上がり、そしてそれを見た途端、彼女は記憶と本能という名の蜘蛛の巣にがんじがらめに絡め取られてしまったからだ。そして彼女が見たものとは、かつての前世の記憶を失くした彼女にとっては意味不明な、三日月型の巨大な角に鼻の上に白い角を持ち、太く長い尻尾や岩のようにゴツゴツした腹部が特徴的な、”過去の自分”の記憶だった。最初は南の島。眠っていたところを人間に叩き起こされ、今度は勝手に眠らされて誘拐同然に島を連れ出され、目を覚ましたら全く知らない場所で帰りたいと訴え続けたにも関わらず赤と銀の巨人や人間達に受け入れて貰えず、結局彼らに退治されてしまったことが自分の、あるいは他の世界や時代の自分や同族達の、苦難に満ちた果てしない運命と宿命の旅の始まりだった。それらの大半はあの時の赤と銀の巨人と同じ存在に倒されるという、全く良くないものばかりだったが、一つだけ違うものがあった。唯一人間達とあの星(・・・)を戦い抜いて脱出したという記憶だ。あの時の人間達のことは、今まで見た全ての記憶は知らない筈なのに此ればかりはよく覚えていた。否定的な者が居たとはいえ、みな善人だった。そして勿論”彼”のことも…。

 

「レイ……。」

 

知らない筈の青年の名を口にする。だがその顔はノイズのようなものに覆われ、良く見えなかった。彼女は顔のない青年を必死に呼びかけた。だが、彼女は、”怪獣としての記憶を少なからず持った”人間の少女は、織斑一夏の意識は其処で途絶え、代わりにその、有るのか無いのかわからないような記憶の中に出てくる恐竜のような怪獣(自分)が、箒を止めようと彼女と入れ替わった。意識が完全に途絶える寸前、一夏はその怪獣に箒を助け出してくれるように祈って、そのまま深い意識の底へと沈んでいった…。

 

///////////////////

 

私は突然横から飛んで来て、私に当たりかけた光線➖超音波メスのようなものの類だろう➖に気がついて、素早く”食事”を中断して光線を避けた。全く誰だ、私の食事の邪魔をする奴は。喧嘩でも売るつもりか?そう考えた私は光線の飛んで来た方向に向いた。確かに結界は張ってはいたが、万一何らかによって結界が破られた可能性もあるからだ。だが次の瞬間、私は驚いた。何故なら其処に居たのは、

 

「…………一夏?」

 

私は顔を俯かせて佇んでいる一夏を見た。まさか、今のは…。

 

「一夏!あれは…、ついさっきの光線は…、お前がやったのか?」

 

一夏は答えない。低い唸り声を上げて此方を睨んでいる。対する私も、黙って彼女を睨み返した。すると、彼女はいきなりすざましい叫び声を上げた。

 

 

 

ーキシャアアアアアアアアアアアァァァ‼︎‼︎‼︎

 

 

 

すざましい叫び声に私は思わず驚いた。そして私は見た。彼女の背後。まるで実体を持っているかのように怪獣の姿をしたオーラが湧いていたからだ。怪獣は全体的に茶色の体色をしていて、三日月型の角と鼻の上に白い角を持ち、立派な太く長い尻尾に、其れこそ岩のようにゴツゴツした腹部が特徴的な、トリケラトプスを二本足で立たせたような姿をしていた。そしてその目は、私に対する怒りが燻っているように思えるくらいに、私を睨み付けていた。やがて怪獣のオーラは一夏と同化し始めた。対する一夏も容姿や服や、髪型までもが変化し出した。美しい黒髪はショートの銀髪に変わり、顔つきも何処か凛とした雰囲気を放ち、何故かスクール水着に先程の怪獣の脚部や腕部のようなデザインの、それも爪のついたブーツと手袋をつけ頭には先程の怪獣の三日月型の角のようなカチューシャと鼻の上の角が額に付けている。おまけに目つきや気配まで千冬に近いものを感じた。恐らく並みの強さではない。下手をすれば怪我どころでは済まないだろう。そう考えた時、姿を変えた一夏が額の角から先程の光線を放って来た。私はミイラ化寸前の男子三人を放り出すと、素早く光線を避けながら一夏の懐に飛び込んだ。そして目にも止まらぬ速さで右手で気管に手刀を叩き込み、左で胸に肘を打ち込んでもう一度今度は右で顎に拳骨を食らわせる「ブルックリン式握手」を決め込んだ。流石にこれには一夏も応えたらしく、暫くフラフラ歩き回った後、ぱったりと倒れた。私はホッとため息をついた。これで一先ずは安心して良いだろう。大それたことにならずに済んで良かった…。

そして私は今度は教室の隅に転がっているあの三人を見た。邪魔が入ったせいで此奴らを食らう気はもう失せた。それにそもそもこんな屑を食らうこと自体、間違っていたのではと思っていたのでむしろ丁度良かった。最後に私は吸い取った体液の四分の一は、ちょっとした細工を施して奴らの中に戻しておいた。記憶の改竄と万一思い出しても言おうとした途端に”ある生物”に変貌してしまい、人間としては死んでしまうという代物だ。つまり、ある種の催眠術と自爆装置という訳だ。之の目的は奴らが誰かに今日のことを言ったり思い出したりしないようにする為だ。また、そればかりでなく会話も細工が効かない旧式のテープレコーダーに録音されている。最初デブ原が話しかけて来たときには既に起動させていたから、万一思い出した上で自爆装置が作動しなくとも大丈夫だろう。

 

一通りの隠蔽工作が終わったその時、久しぶりにマオが話しかけて来た。彼女はずっと私に話しかけても全く反応がなかったことと、男子三人の惨状を見て酷く狼狽し、私が勝手なことをしたことを悟って、それに対する怒りで声を震わせていた。

 

『箒‼︎お前、まさか彼等を…、手に掛けたのか⁉︎何てことをしたんだ、バレでもしたらどうする。それに酷ければお前がやられていたかもしれない。どうしてなんだ?え?何か理由でもあるのだろう。一体何なんだ?』

 

怒り狂うマオに私は少したじろいだ。確かにやり過ぎたのは事実だからだ。私は謝罪と同時に理由を述べた。

 

「すまなかった。確かに自分の感情に身を任したことには謝る。だが、嗚呼でもしないとむしろ私も一夏も危なかった。それに私は此奴らを始末する気なぞ毛頭ない。ただ、ちょっとしたお仕置きをしただけだ。」

『………本当だろうな?』

「ああ、そうだ。信じられないなら力を貸すのをやめるか?」

『……いや、やめておこう。お前には助けて貰ったし、何よりお前から離れることは出来ないからな。だが、次からはやめてくれよ?』

「承知した。」

 

私はそう言うと、一夏達を家に帰そうとまず彼女を抱き抱え、残りの連中と荷物をテンタクランサーで引きずりながら教室を後にした。

 

///////////////////

 

その帰り道だった。腹に自分ランドセルと、背中に一夏をおぶって歩いていた時にマオが話しかけて来た。

 

『…ところで箒、お前とうとう覚醒したんだな。先程は怒っていたから気が付かなかったが。どうやら私も人のことは言えないようだ、私も気をつけるとするか…。』

「そうだな。せいぜい気をつけることだ。だが、お前のおかげで彼処で踏み留まることができたから、正直感謝はしているぞ。だから、ありがとう。さっきは。」

『…///、いや、別に、いい…///。』

 

 

 

…其れから暫く沈黙が続いたが、再びマオが語り掛けて来た。束達のことと擬似ISのことだった。

 

『箒、此れからどうする?少し力が戻ったということは”アローヘッド”の製作が可能になったということだろう。もう帰ったら工房や材料集めでも始めるか?』

「そうだな。だがマオよ、実は工房に関してなんだが…、ん?」

 

その時何故私が其処で会話を中断したのは、今の今まで眠っていた一夏が「んんぅ…。」という声を上げて目覚めたからだ。一夏は呑気に欠伸なぞしながら私を見た途端、何かを思い出して慌てたように聞いてきた。

 

「へあっ⁉︎ほ、箒ぃ⁈何でぇ!何でこんなことを…ってここどこ⁉︎てかあい…むぐぐっ‼︎」

「少し落ち着け。先ずここは何処なのか、そしてお前が何故私におぶらるているか言ってやる。先ず、ここは何時もの通学路だ。次にお前はあの時男子どもにかっ飛ばされただろう?其れからお前はずっと気絶したままだったから、置いていくのも気が引けたからおぶって帰っているんだ。因みに忘れるところだった、彼奴らはこてんぱんにして家に帰した。まあ、彼奴らが何を言っても無駄だがな。なんせ此方には奴らに対して非常に有利な証拠を持っているからな。」

 

私は彼女の目の前で旧式のテープレコーダーをちらつかせた。それを見た彼女は「何時の間に⁉︎というか怖っ!どうやって録音したんだよ!」とでも言いそうな、驚いた表情を浮かべた。

 

「そうかぁ…。彼奴ら帰ったのかぁ。でも大丈夫?男子三人なんか相手にして。大変だったでしょ?」

「いや、そこまで労する迄も無かったぞ。彼奴らは口先だけの、ただの臆病者だ。遅れをとる訳がない。」

「あ、あはは…。けちょんけちょんに言うんだね…。」

 

其れから暫く黙っていたが、私は先ず一番聞きたい理由二つの内の一つを訊くつもりでこう言った。

 

「……しかし、お前は馬鹿だな。」

「は?何がよ。馬鹿じゃないわよ馬鹿。」

「そうは言ってもあんなことをすれば、後で面倒になるとは考えないのか?」

「ん?ああ、あれ。そうね、考えないわ。許せない奴はああしてやるのが一番よ。何なら殴ったって良かったのよ。」

 

私はふと、前に一夏がついさっき私がそれぞれの家の玄関ポーチに転がしておいたあの男子三人とは別の、別の女子に手を上げた愚か者を叩きのめした時の話を思い出した。あの時、織斑千冬にこっぴどく叱られたらしいが、どうやらその時から考え方は変わっていないようだが、おそらく其処が奴の長所だろう。考え方を曲げないことには、確かに良いだろう。だが、そのせいで暴走しがちなのは頂けないことだが。

 

「だいたい、徒党組んでいるのが気に入らないの。群れて囲んで陰険って、男として最低でしょ。」

「そうだな。」

「だから、あんたも気にしなさんなよ。後、リボンとポニーテール、似合ってたわよ。またしなさいよ。」

「黙れ。私がリボン付けて髪型をポニーテールにするのは私の勝手だ。自分のことを決めるのは自分自身。お前じゃない。それに私は命令されたり指図されるのは嫌いだ。頼まれるならまだしも、自分の立場をわきまえない大馬鹿者に指図される言われはない!」

 

それを聞いた一夏は声を上げて抗議した。当然だろう。励ましておいてこの言われようなら誰でもカッとなる。だが、奴にはそれ相応の罪と罰があった…。

 

「はぁ⁉︎何それ‼︎人が励ましておいてそれはないじゃない!幾ら何でもひどすぎるわ‼︎」

「黙れ。お前に非道いと言われる筋合いはない。ついさっき私に隠しておいて、その上で何をしたのか忘れたとは言わさんぞ。え?知っていること全て、洗いざらい吐いてもらおうか?」

 

私は彼女の胸倉を掴むと、そのまま金網のフェンスに彼女を押し付けた。彼女は「きゃっ‼︎」と悲鳴を上げ、苦しそうに言った。

 

「い…、一体……なんのことよ。………私、何も、してない!」

「嘘をつけ。ついさっき私にあの姿を見せて殺しにかかっただろう。”アレ”は並みの人間が出せるものじゃない。お前はそこらの奴とは違うんだ、織斑一夏。もう一度だけ言う、”貴様は何者だ”?」

 

私は彼女を下ろして返答を待った。だが彼女は弱々しく言った。

 

「嘘じゃないわ…。本当よ……。だって、記憶にないんだもの。思い出そうとしても彼処で気絶したところしか覚えていないのよ。本当よ。お願いだから信じて。」

 

彼女はぺたりと座り込んで私を見上げた。確証はないが確かに、何も知らないようだった。何となくだが、今は彼女を信じてやることにした。

 

「………良いだろう。信じてやろう。但し、今のところは、だ。分かったな。」

「ええ…。」

 

 

 

…やがて、私達は途中で別れ、家路に向かう一夏を見届けた。何とも後味の悪い別れ方だったが、明日には何とかなっているだろう。そして、マオが再び話しかけて来た。

 

『私はあの時の教室でのことは眠っていたから分からなかったが…、一体何があった?』

「ああ。彼女が本物の怪獣が転生した存在だという確証を得たのさ。しかも、人間から怪獣への移行段階、つまり「半覚醒化」していた。だがそのせいで彼女は暴走を起こしていたから、それで止めてやったんだ。」

『そうだったのか。だが、それなら何故奴をこのまま帰した?仲間に引き入れても良かっただろう。』

「ところがだ、彼女は何も覚えちゃいなかったのさ。おそらく能力は戻っていても記憶を戻していないんだ。だから今はまだ保留という形で監視を続けることにしたんだ。」

『そうか…。まだ、仲間には出来ないんだな。』

「ああ、残念ながらな。だが、その代わり良いニュースもある。工房を見つけた。」

『!それは本当か‼︎』

「ああ、十数年前に東北辺りで震災があったこと、お前も覚えているだろう?あの時地震が原因で起きた原発事故のせいで住民が居なくなった際に、震災の前日にオープンした自動車工場があったんだ。だが震災のせいで操業は出来ずじまい。だが、被害は其れ程迄も受けなかったから何時でも使えるぞ。まあ、その前に掃除をしなければならないがな。きっと、道場とは比べ物にならんだろうなぁ…(遠い目)。」

『やるじゃないか、箒!まあ、これで二つ問題は片付いたな。』

「いや、三つだ。材料集め。これでゴールドとチタンの合金を手に入れることが出来る。」

『ああ、そう言えばそうだな。で、いつにする?明日か、それとも明後日か?』

「いや…、今だ。」

『何?』

「だから、”今だ”と言っているだろう。さあ、準備しろ。出発するぞ。」

『ちょっと待て、箒⁉︎まさかお前、今から東北から宇宙空間に…っ‼︎』

 

 

 

「その………、まさかだ………っ‼︎」

 

 

 

私はランドセルを電柱に引っ掛けると、そのまま秒速208キロで大気圏を突破した。かつてのマッハ9くらいでは不安だったからだ。

 

 

 

 

 

数日後、新聞の記事にやれ「デブリや古い人工衛星を盗む謎の宇宙人」とか、やれ「東北や関東にUFOが出た」とかそんな騒ぎが載せられたが、世間はそんなものはただの妄想癖の強い愚か者の戯言だと片付けてしまい、忘れ去られていった。

 

 

 

 

 

 

 

………もし、この段階で気付けたものがいたら、後世の歴史は大きく違っていただろう。だが誰も復活した”異世界の邪神 イリス”と”擬似IS アローヘッド”、そして”R-9A アローヘッド”に気付いたものは➖織斑千冬や篠ノ之束も含めて➖誰一人としていなかった。だから歴史も変わることなく、順調に時間を進めていった…。

 

 

 

 




はぁぁぁああああ。やっと終わった………。実は5日以内に終わらせるつもりだったんですよ、今回。何でこうなったんでしょうね、本当に。でも最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます‼︎此れからもこのどんぐりあ〜むず、をよろしくお願いします‼︎

あ、何時も通り感想、批評、評価、質問受け付けますんで、どうぞ、気軽に声をかけて下さい‼︎では、皆様。またのお越しを。
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