I-TYPE   作:どんぐりあ〜むず、

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どうも!どんぐりあ〜むず、です‼︎久々に投稿します‼︎では皆様どうぞ‼︎



あ、後束さんゴメンなさい‼︎


第4話 ”ラウンド・フォース” 〜白騎士事件前夜の章〜

「奴らは…ボールなのか?彼は自らの胸に聞いた。本当にボールだという事が有り得るのだろうか…?(中略)奴らの目は未発達で凹み、ぼんやりとした歯は歯軋りをたてていた。奴らは食べていたのだ…世界そのものを。」

➖スティーブン・キング著「ランゴリアーズ」より抜粋➖

 

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…此れは、篠ノ之箒が、本来の力(・・・・)➖と、言っても本人からすればまだ2〜3割程度の、微々たるものだ➖を取り戻し、本来の姿に近い姿である、半覚醒化(所謂人と怪獣の中間形態のことで、側から見れば怪獣の擬人化コスプレに見えなくもないが実際は並の在来兵器程度の攻撃には結構耐え切れてしまえる)出来るようになってから、実に1ヶ月が経過してからの話である。

 

 

 

 

 

 

宇宙空間で国際宇宙ステーションの点検作業とスペースデブリの除去作業を行っていた宇宙飛行士達は困惑していた。理由はこうだ、彼らは何時も通り午前0時にマニュアル通りに点検とスペースデブリの除去作業を行う為に船外に出て来て作業を始めた。黙々と作業を開始した彼らは最初は直ぐに終えて船内に戻るつもりだった。だが一連の作業が終わったその時、一人の宇宙飛行士が遠くの方で見えたとても有り得ないくらいに恐ろしいが、とても美しい光景を見てしまったが為に彼らは凍りつき、混乱してしまったのである。

 

其れはステーションの近くのスペースデブリにいた。其奴は、言うなれば”天女”だった。そう、”天女”だ。腰まである長い銀髪に、紅白で一見スタンダードだが、金色の宝石のついたピアスが付けた臍が丸見えな、菱形の穴が開いた腹部に溢れそうな巨乳が目立つ巫女服。背中に生えている触手と、虹色に輝く絹のような膜の翼。首に下げた黒い勾玉は蒼く輝き、宇宙空間の暗い闇に隠れそうな凛々しい顔を映し出す。そしてその顔も優美なラインと曲線を描くスタイルも➖当然ながらその辺の美女とは比べ物にならないくらいに➖美しかった。宇宙飛行士達は船内外と性別問わずその虹色の天女に釘付けになった。あるものはカメラを取り出して写真に残そうとする者までいた。だが天女はそんな宇宙飛行士達には目もくれず、素早くデブリを触手で引き寄せると臍に付いた金色の宝石のピアスから光が放たれ、デブリは全てその中へと吸い込まれていった。宇宙飛行士達は驚いていた。先程まであった大量のスペースデブリが一瞬にして消えてしまったのだから、無理もないだろう。だが、天女はそんなことも意も貸さずにすざましいスピードでその場を去って行ってしまった。宇宙飛行士達があれが最近地上で噂になっている宇宙人なのだということに気がついたのはそれから船内に戻ってから数時間経ってからのことだった。天女は、彼らにそれくらいの美しさとインパクトを与えたのだった。因みに、このせいで国際宇宙ステーションの軌道が若干擦れたことは言うまでもない。

 

 

 

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ところ変わって、日本国「東北地方F県F市郊外」。

 

事故を起こしたF第一原発の近くに”其れ”は降り立った。天女だ。宇宙飛行士達を驚かせ、周囲のスペースデブリを全て吸い込んでその場を後にした後、彼女は最初に出発したこの地へと戻って来たのである。やがて彼女は周りに誰かいないかを確認して降り立つと、「ふぅ…。」とホッとしたような溜息をつくと、一瞬その身体は光に包まれ、1秒後には何処にでもいるような見た目が小学生程の美少女に変わった。

 

「……やはりまだ慣れないな。」

 

少女はあの篠ノ之束の妹であり➖そして、我々にとってはお馴染みの➖、この物語の主人公である篠ノ之箒だった。たった今”彼ら”から呼び出されたついでに材料集めの為にわざわざ宇宙空間までスペースデブリや古い人工衛星を集めに飛んで行って帰って来たところであったのだ。だが、やはり覚醒したといってもまだ身体が慣れていなかったことやまだ全力を出し切っていないこともあって、気怠そうに首を回したり、肩の関節を鳴らしたりしていた。そんな彼女に、体内にいるせいで姿の見えない相棒のマオが率直な意見を述べた。

 

『当たり前だろう。幾ら”半覚醒化”していても、身体がまだ人間から離れられていないんだ。身体に相当負担がかかるのも無理は無い。此れからはもっと控えめに行動しろ。戦う前にくたばってしまっては元も子もないだろう?』

「まあな。だが、私は大丈夫だ。そのくらいのことで死にはしない。ま、むしろ、慣らし運転には丁度良いくらいだ。別段、気にしてはいないんだぞ?こう見えて。」

『そう言うの何て言うか知っているか?慢心って言うんだぞ。かの大日本帝国海軍の一航戦だって、敗因は其処にあるんだ。だから頼むからあまり調子に乗らないでくれ、お前の身体どころかこっちまで持たなくなるから。』

「………バイドだから平気じゃないのか?」

『幾らバイドでもお前が完全に元に戻っていないばっかりは此方の負担も大きい。肉体的にしろ精神的にしろ、だ。それに私は元人間(・・・)だぞ。幾ら何でも限界がある。』

「はあ…。…やはりお前といい、人間といい、怪獣以外の他の動物といい、脆いものだな。本当にどうしてくれようか?またもっと頑丈になれるか試してみるか。」

『馬鹿者、それはもうやっただろう。”彼奴ら”を創った後何度試してもせいぜい大気圏をギリギリで突破して宇宙遊泳が出来る程度にしかならなかったじゃないか。今はそれでいいだろ、諦めろ。もう時間がないことぐらい、お前も理解している筈じゃないか。』

「むぅ…。そうだな、今は戦闘準備にかかる方が先決か。まあ、いい。今は兎に角”ガレージ”に向かおう。」

『ああ。その通りだ。確かに早めに行った方が良いな。見ろ、県警のヘリだ。』

 

そう言われて空を見上げれば、確かに空が白み始めた東の空の彼方の方角からF県警の「ベル 412 EP」の青い機体がサーチライトを照らしながら此方へと近づいて来ているのが見えた。くそう。箒は心の内で毒づいて近くの茂みの中に隠れた。ここ最近、立入禁止区域に指定されているこの場所で、よく何者かが徘徊していたりUFOらしき機影が目撃されているというニュースがあったせいで、夕方から夜明け前に掛けての夜間パトロールが強化されてしまったからだ(勿論其れ等は箒のことだ、これに対して彼女は、幾ら証拠隠滅をしてもばれてしまうものはばれてしまうから仕方ないとはいえ、何時の間にやら自分が飛んでいるところを勝手に目撃したという人物に対して腹を立てた)。その上、今では防護服を着た警官が、市内をパトカーで巡回している始末である。目撃した人物はおろか、辺りを見回し周っている警官達に対しても、箒は苛立ちを覚えた。だが彼女は、そのように苛立ちながらも根気強くヘリが遠ざかるのを待った。

 

 

 

…暫くしてヘリもいなくなり、日の出を迎えた頃に再び箒は行動を開始した。目指すはこの先のとある建物だ。今自分達が進めている計画は全て此処で行われている。そして何よりも自分を待っている仲間(・・)もいる。だからうっかり捕まる訳にもいかなかった。

 

 

 

やがて、目指していた建物が見え始めた。震災の前日にオープンしたが、結局地震と原発事故によって使われずに放置され、ただいたずらに古くなった自動車工場だ。この自動車工場はあのF第一原発に、程近いとも遠いとは言えない距離にある。だが、森や山に囲まれていることや箒達が設備の一部しか使っていないことに加え、警官達のパトロールであまり来ることのない場所であるだけに誰もここに注目しなかった。箒は、周囲に人影がないことを確認すると、裏口へ回って建物の中へ入っていった…。

 

 

 

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内部を進む内に、目的の部屋への入り口の、観音開きの鉄の扉の前に辿り着いた。ベルトコンベヤーのある、自動車の組み立てラインの部屋だ。ここを選んだのは、単にこの建物の中で最大で、尚且つ最深部である他にも、溶接用のマシンなどがそのまま此処に残っていたというのが最大の理由でもある。また、最深部なだけあって、誰も立ち入り禁止区域内にあるこの打ち捨てられた廃墟であるこの建物の中のここまで調べに来る愚か者は、まずいなかった。だから箒達は今この部屋を、ハッキングして極秘に入手した篠ノ之束のISのデータとR戦闘機の技術で作り上げた、篠ノ之箒自身が極秘開発した”コアが存在しないIS”である「擬似IS」もとい、「戦甲機(正式名称、ファイターアーマー。通称”FA”)」とR戦闘機工房として使っているのである。現在この工房にて箒達はFAの「アローヘッド」、及びR戦闘機の「R-9A アローヘッド」を絶賛製作中だった。だが、何も彼女一人➖そもそもマオは箒の胎内にいるため、助言くらいしかできない彼女はカウントされない➖でFAやR戦闘機を製作した訳ではない(工場の掃除や設備の点検、それに万一に備えての警備や武器弾薬の管理もまた然りである)。実は自分がここを留守にしている時のアシスタントに少しばかり手伝って貰ったのだ。もちろん人間ではない。箒が近くの森の中にいた動物などを、バイドや自身の力によって作り替えた存在だ。但し、どれもかなり有能で性格の良く、可愛らしい奴らばかりで、そんな彼らを、箒はさながら、実の妹か、娘のように可愛がっている。そのため、久しぶりにそんな彼らに会いたい(情報収集とマスコミと警察対策、そして両親と束の目が光っていた為、ここ3日間会っていなかったが、この前両親が福引きで海外旅行を充てたため、こうして家をまる2日間も空けることができた。最初家族全員で行こうと言う話だったが、束は知らないが両親には友達に泊まりに誘われたと言って断った。因みに、その束も何処かに出かけたきり、戻ってこないようだったので、家を空けられるチャンスと捉えることができた)一心の箒は、はやる気持ちを抑えて重そうな両開きの鉄の扉のノブに手を掛け、開けた。

 

 

 

…中は綺麗だった。箒がいつ帰って来ても良いように、彼らが綺麗に掃除したり、機械の点検を行ってくれていることの証拠だ。だが、今この部屋には誰もいない。きっと警戒しているのだろう。そう思って箒は手を叩いて呼び掛けた。

 

「おーい、ぎゃっぴーズ!いるんだろう。私だ、箒が来たぞー!出てきてくれないかー‼︎」

 

すると、何やら工房内がガヤガヤと騒がしくなってきた。見ると、工房の機材の陰から「二頭身も満たない、翼の生えた某艦船擬人化ブラウザゲームの妖精さんみたいにデフォルメされた箒」のような生き物が「ぎゃおー。」だの、「むあー。」だの「シッテルー。」だの「ほうきー。」などの鳴き声➖断定はできないが、彼女は恐らくそうなのだろうと考えた➖を発しながらひょこひょこと出てきた。この、「ぎゃっぴーズ」という一見可愛らしいだけで何の役にも立ちそうにない彼らだが、こう見えて箒達が設計したR戦闘機やFA、製作が難しい波動砲を製作し、この部屋の奥にあるものを守っている立役者なのである(但し、一部は箒達も製作している。元々彼らは其処彼処にいるただのリスや牛などの動物だったのだが箒が完成させるにはアシスタントが必要だと考えて自分のDNAをそれらの生き物に注入した結果、何をトチ狂ったのかこのようになった。だが掃除や整備、製作にはかなり役には立っているので、箒とマオは別段気にしてはいない。因みにこの前のいじめっ子達にも何かすればこの生き物に変わって”人間としては死んでしまうように”細工を施した)。箒は、近づいてきた彼らのリーダー格のぎゃっぴーをひょい、と抱き抱えた。

 

「おお、久しぶりだな。いつも此処や皆を守ってくれてありがとう。恩に着るよ。」

 

リーダーのぎゃっぴーは嬉しそうに羽をばたつかせた(余談だが、彼らは箒のDNAを使って造られたのでマオの声も聞くことが出来る)。それに顔を綻ばせながら、箒は宇宙空間から持ち帰って来たものを彼らに渡した。

 

「さあ皆、お土産を取って来たぞ〜、皆受け取れ‼︎」

 

箒は、何時の間にかデブリなどの鉄クズを用意していた。ロケットの燃料タンク、何かのブースター、太陽電池etc…。中にはソ連邦が打ち上げた初の人工衛星の「スプートニク1号」の姿まであった。すると、途端にぎゃっぴーズはその鉄クズ達に砂糖を見つけたアリのように群がった。鍛錬や食べることが一番好きな彼らだが、実は工作や発明も三度の飯ぐらいに好きな質でもある。そのため、箒は資材調達と新しい機体開発のついでに、彼らの喜ぶ姿を見るために、余分にデブリや衛星を拾って来ているのである。それに、彼らが新しい機体や波動砲などの武装を改良してくれるかもしれないという期待も、彼女の中にはあったのはいうまでもない。暫くの間、はしゃぎ回る彼らを見ていた箒は、ふと大事なことを思いだした。到着して一番に聞かなければならなかったことだ。箒はリーダーのぎゃっぴーに訊いた。

 

「!そうだ、”アレ”は?”フォース”はどうなったんだ⁉︎実験は成功したのか?」

 

すると、ぎゃっぴー達の顔色が変わり、ぎゃーぎゃーと騒ぎ始めた。そして騒ぎながら、何処かに向かって指を差したり、箒の服の裾を掴んで何処かへ連れて行こうとしている。

 

「お、おい⁉︎一体どうしたんだ皆‼︎」

『‼︎おい箒‼︎』

「一体なんだ、お前まで?一体何を『アレを見ろ‼︎』…‼︎おい、そんなまさか……⁉︎」

 

箒はその視線の先、”アレ”の培養用の水槽を見た。見ると、水槽は割れ、中のオレンジか琥珀色の液体が漏れ、➖液体だけなら➖空っぽになっていた。だが、肝心なのは其処ではない。その水槽の中、直径6cmぐらいの丸い球体に4つの金属棒を突き刺してあたかも先程のスプートニク1号のようにも見える、コードに繋がれた”ソレ”は、全体が灰色に染まり、ドクンドクンと脈打つ音を発しながら血管状の琥珀色の亀裂を生じさせていた。箒は傍らのぎゃっぴーから話を聞いた。彼女が此処に来る前の日、”ソレ”の管理をしていた時に突然”ソレ”が計器が大きく乱れるくらいの不安定なエネルギーを放ったらしい。あまりの乱れっぷりに流石の彼らも最悪死を覚悟したらしい。だが幸いにも、エネルギーが不安定だったおかげで工房がポップコーンみたいに吹き飛ぶことにならずに済んだことに今は皆安心しているらしい。ただ、

 

「待ち望んでいたものを完成出来なくて申し訳ない、か…。いや、良いんだ。兎に角お前達が無事でなによりだ。だが…。」

 

箒はもう一度割れた水槽を見た。中に燻んだ灰色に変わり、オレンジ色に脈打つフォースがある。割れた箇所から手を突っ込み、触れる。すると、フォースが脈打つ音のリズムがとても速いものに変わり、急に震えながら宙に浮かんだかと思いきや、爆発した。

 

「くっ…‼︎」

『うぉっ⁉︎』

 

箒とマオはその場でなんとか踏みとどまった。モッピー…もとい、ぎゃっぴーズはそのまま吹き飛んでいった。やがて視界が開けてくると、其処には唯の灰しか残っていなかった。

 

「…クソッ‼︎」

 

咳き込みながら箒は腹を立てて、壁に拳をぶつけた。何とも腹ただしかった。だがそれは、ぎゃっぴーズが目的のものの完成に失敗してしまったことに対しての怒りではなく、何時迄経っても完成することが出来ず、挙句拠点はおろか愛しいぎゃっぴーズまでも危うく失ってしまうところだった自分に対してのものだった。彼女は彼らにことを任せたことを恥じた。何故彼らに開発を任せてしまったのだろう?何故自分が戻って来るまで待たせなかったのだろう?何故何故何故?幾ら自問自答を繰り返したところで一緒だった。するとマオがこう言った。

 

『心配するな。何もお前のせいじゃない。自分を責めるのは後だ。大丈夫、私がついてる。今度こそ成功させよう。』

「…だが、次に開発してもまた失敗するかもしれん。”マナ”がバイドやフォースの力を阻害している以上、製作は無理だ。」

『なら、マナのエネルギーの大半をバイドやフォースに回せばいいだろう?』

「私やガメラ達にぎゃっぴーズの動力源は”マナ”だ。そんなことをすれば、私はおろか、ぎゃっぴーズもまともには動けなくなるぞ。」

『ならどうする?そんなことを言っていたらもう他に手はないぞ。』

「そうは言ってもだな………、ん?電話だと?誰からだ?」

 

その時、口論の最中に箒のスマートフォンが鳴った。見てみると、「織斑千冬 03-XXX-XXX」と表示されていた(しかも先程から鳴りっぱなしだったようだ)。箒は、何故か話すことに苛立ちを感じて電話を切ろうと考えたが、出ないと怪しまれると考えて躊躇いがちに通話ボタンを押した。

 

「はい、篠ノ之箒ですが。」

<ああ、やっと出たか…。もしもし、篠ノ之だな。私だ、織斑千冬だ。家に連絡を入れても誰もいないみたいでな。お前の親御さん達は福引きの景品の旅行に出かけているし、もしかするとお前も何処かに出かけているかもしれないからさっきからお前の携帯に掛けていたんだ。…今、話せるか…?>

「ええ、構いませんが…、今何処にいるんです?」

<ん?ああ、東大の安田講堂前だが。どうかしたか?>

「いえ、この前言っていた学会の件ではと思ったんです。もしかしたら姉さんも一緒なのではと思ったので…。其処にいます?」

<ああ…。だが、今話しかけるのは止めておけ。彼女、物凄く機嫌が悪いからな。>

「………学会は失敗したんですね。」

<そうだ、今奴は私の近くで気狂いみたいなことを言い始めた。私も出来うる限りのことはするが、もしもの時は…、分かっているな?>

「ええ、分かっています。一夏のことでしょう?あの後私の両親に事の次第を話しました。うまく誤魔化すのに手間取りましたが。」

<そうか。すまない篠ノ之。まだ小学生のお前に迷惑を掛けてしまって。>

「いえ、良いんです。私は構わないんです。ただ姉さんと貴女が心配で…。」

<私のことは心配するな。もう、覚悟は決めた。だから、もう何も怖いとは思わない。だから必ず帰る。帰ってくる。だから…、だから…、心配、するなよ…。>

「………分かりました。しかし、そんなに機嫌が悪いんですか?私の姉さんは。」

<ああ。学会にIS発表したらたちまち非難と嘲笑の嵐だ。怒らない訳がない。それに彼女はずっと機嫌が悪かったんだ。それも今日だけじゃない、ここ最近、ずっとだ。>

「どういうことです?少なくとも寝不足が原因ではなさそうですが…。」

<ああ、そうだ。最初、私は彼奴に『寝不足なのか』と聞いた。その時の私はお前と全く同じ疑問を持っていたからな。すると奴は『ちっが〜う‼︎ち〜ちゃ〜ん〜‼︎私は”一日を35時間生きる女”なんだよ?何でたかが寝不足如きにイラつかなきゃならないのさ⁉︎』と言われたんだ。じゃあ何に対してなんだって訊いたら…、”アレ”を見せられたんだ……。>

「”アレ”?何ですか、それは?」

<見れば分かる。携帯に写真を送っておいた、見てみるといい。>

 

一旦箒は電話の画面を開いて、件の写真を見た。だがそれを見た時、彼女の顔は驚愕に染まった。何故なら写真の中、本来ならこの世界に存在する筈のないものが映っていたからだ。

 

「⁉︎これは…‼︎そんなバカな………⁉︎」

 

写真には水槽が映っていた。何かしらの培養液を満たした水槽で内部に何かを保管しているらしかった。

 

<去年お前の家族と私達姉妹で九十九里浜に海水浴に行ったこと、覚えているか?あの時束が近くの岩場に行った時に見つけたものらしい。どうやら見つけた時から束には明らかに人工物だということは既に見抜いていたらしい。。それ以来、彼女はずっと解析を試みているようだ。だが結果は未だに不明…いや、それどころかまともな解析すらできないでいるらしいんだ。>

 

箒には織斑千冬の声は聞こえていなかった。何故なら、驚愕とあまりのショックで言葉が詰まってしまったからだ。しかし、千冬はお構いなしに話を続けた。

 

<なぜか訊いてみたら、どうやらこの物体にはとんでもない程の量の正体不明のエネルギーが内包されているらしい。下手をすればどうなるか分からないし、そのうえ何よりも…、そうだな、何というか、その…、そうだ。奇妙なことにこの物体に通したエネルギーなどの性質が全く別のものに変わったり、通した分のエネルギーの量が多くなったり、あの球体にありとあらゆる物質がまるでブラックホールのように吸収されてしまったんだ。…とても信じられない話だろうが全て本当の話だ。もう何が何やら、束はおろかこの私にも分からない。最初私も束の言うことには疑ったよ、『そんなものが存在してたまるか』、とな。だが私も見たんだ…、あの球体に超音波を照射した途端、球体を通過した超音波がレーザー光線に変わったところをな…。それに、調べようとしていろんな機器に繋ごうとしたら、大半の機器が取り込まれ、いや、”食われた”。そう、”食われた”んだよあの琥珀色の球体に。変な事を言うかもしれないが全部本当なんだ。だから私は「分かりました。」っ‼︎>

 

箒は其処で千冬の話を切らせた。これ以上彼女に”アレ”の説明をさせたら発狂してしまうだろう。また、肝心なことを話さない彼女に苛立ちを感じていたのもあったが、あまりのショックに疲れた哀れな織斑千冬を見るのは耐えがたいのも、多分にあった。

 

「姉さんの言うことは信用出来ませんが、貴女は嘘を言うような人じゃない。だから信じますよ。貴女が見たものを。他の人が信じなくても…ね。」

<篠ノ之…、お前…。>

「ところで、千冬さん。姉さんはこのことを学会で発表しましたか?」

<いや。何せあの性質だ、ある意味ISの弱点になりかねないからな。それに例え発表したとしても学者共の笑いのネタにされるのがオチになるのは目に見えているからな。>

「そうですか…。では、今これは何処にあるんですか?」

<ああ、それはだな…って、おい待て篠ノ之。そんなこと知ってどうする?まさかお前…。>

「いえ。貴女が思うようなことはしませんよ。ただ、其処に保管し続けるのは不味くないかと思ったんです。そんなに危ないものなら。」

<ああ。私も束に同じようなことを言ってみたが、何とか自分の技術に反映させようと躍起になっていてな。駄目だった。それに束はそれ以来私にも目が届かない場所に隠してしまった。だから正直な話、私にはもう何処にあるのかなんて分からない。ただ…、一つだけ言えるのは「アレ」は、今も束の近くにいるということだろうな。>

 

それから箒は適当に相槌をうった後、電話を切った。そして箒達は考え始めた。何故かは知らないが、まさか”アレ”が束の元にあるとは思わなかった。マオが尋ねる。

 

『此れからどうする?今の半覚醒状態では厳しいぞ。まさかお前、あの状態で突っ込む気か?それに篠ノ之束が今何処にいるのかなんて分かるのか? 』

「そんなこと言ったって、他に何ができる?今はもうそれしか方法がない。それに、私には束が今何処にいるかはなんとなく分かるしな。だから私は行くよ、”アレ”を返してもらいにな。」

『ならとても丸腰では行かせられないな。お前1人だけでは行かないぞ。』

「ならどうしたいんだお前は‼︎」

『前に言わなかったか。困った時は私を頼れと。』

「だから何だ?」

『私にいい考えがある。思い出してみろ。”アレ”を。フォースの代替案である”アレ”を。」

「⁉︎まさか”アレ”を使うのか!幾ら何でも無謀過ぎないか?」

『そのまさかだ。実際”アレ”だけでフォースが無くても事足りるんだ、専門家の私が言うんだから大丈夫だ。』

「…本当か?本当に大丈夫なんだな?」

『ああ。じゃあ、そうと決まれば今すぐ実行するぞ。』

「なっ…!今からだと‼︎だが準備が…。」

『準備なんてすぐに済むだろう?それに、あの初めて半覚醒化した時のこと、忘れたとは言わせないぞ。」

 

顔文字が浮かび上がりそうな笑顔でそう言った。箒はしばらく考え巡らした後、溜息をついて、呆れた笑顔を浮かべて、部屋の更に奥にある、ブルーシートで覆われた、其処にあるもの達を見つめた。

 

 

 

 

 

 

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関東地方の何処かにある、とある廃校に設置された極秘ラボ「我が輩は猫である(名前はまだない)」にて、篠ノ之束はさほどではないが激怒していた。今回の学会はあまりにも酷かった。どれほどのものかと言うと、一つはたかが十代の小娘だからという理由でまともに相手にされなかった。別に大したことではないが、何処か自分をむかつかせるところがあった。だが、それに輪をかけて腹が立ったのは自分の発明である「IS」を馬鹿にされたことだった。自分が馬鹿にされるのは➖実はそうでもないのだが➖構わないが、自分の発明まで馬鹿にされてしまうことだけは、どうしても頂けない。こうなったら実力行使しかないだろう。具体的にはこうだ、まずこの日本を攻撃出来そうな範囲内にある国の防衛システムにハッキングし➖アメリカの第七艦隊辺りがベストだろう➖、ありったけのミサイルを飛ばす(ただし巡航ミサイルだけだ、弾道ミサイルなんてISをも超越する秒速7㎞だから、扱いづらいどころかこっちがかなりの被害を受けてしまうからだ)。すると国内外は大騒ぎ。しかも停止出来ないとならば尚の事だろう。其処を自分が開発したISの「白騎士」に乗り込んだ親友の織斑千冬に全て撃ち落としてもらう。ついでに副産物として戦闘機や艦艇などの在来兵器などを戦わずして無力化させる。そうすれば自分はおろか発明品のISや織斑千冬の名を広まらせることができる。

 

完璧だ。

 

「ま、大体こんなもんかな〜。我ながら天っ才っ‼︎…けど、後は此奴だけかなぁ〜。」

 

そう言って束は部屋の片隅にある、円筒形の水槽に、椅子に座ったまま近づいて中を覗き込んだ。中にはあの琥珀色に輝く、明らかに人工物にしか見えないスプートニク1号もどきのような外観の、あの謎の球体が保存用の粘性の液体の中で浮かんでいる。ただ、この球体は拾った時と比べると、その大きさはかなり異なっていた。最初はビー玉ぐらい。それが今ではありとあらゆる物質を吸収したせいで➖勿論束のお気に入りだった何でもリサイクルできる機械仕掛けのリスも含まれる➖、今やバスケットボール4個分くらいの大きさにまで巨大化していた。

 

「う〜ん………、パックマン。」

 

何故かは知らないが束にはこの球体の性質に対してこのような印象を受けた。そして、束は考えた。おそらく此奴は”生きてる”。第一、ものを吸収して大きくなるなんて生きてるもの以外あり得ない。それにただ吸収するだけでなく吸収した物質を別の物質に変化させるなんて他のものでは出来ない。出来るとすればそれは最早魔法だ、だから束にはとても信じ難く、そして許せなかった。それは、何故自分以外でこんな凄い発明をするんだISが弱くなっちまうじゃないか、という全く理不尽な考えにくるものだった。暫く眺めた後、束はまるでその球体に向かって話しかけるように呟いた。丁度その時だった。

 

「お前一体何なんだ?もういい加減この天才博士篠ノ之束に全部話したらどうなんだ?」

「そうなって貰ったら我々としては困る。何故ならそれはお前のものではなく我々のものだからだ。」

 

驚いた束が後ろに振り返った時はもう遅かった。侵入者は束や織斑千冬の反応速度を上回る程のスピードで右腕を首にかけ、左腕で頭を押さえつけた。束はもがいて脱出しようとしたが、何分拘束がまるで万力のように固くて脱することができない。また、背中に柔らかいものが当たっているので女性であるということは理解できた。だが、女性で此処までの力を持つものでは千冬以外でいない筈であることに束は疑問と驚愕を感じた。もがき続けると、侵入者は、

 

「おっと、あまり暴れるなよ。その気になればお前の首なぞ、一瞬で折れるんだからな。」

 

と、脅迫してきた。確かこのまま少しでも力が入れば、自分はあっと言う間にお陀仏だろう。向こうに主導権があるのは頂けないことだが、ここは素直に従うより他ない。仕方なく束は彼女に何が望みかを訊いた。

 

「ええっと?何が望みなんだよ。え?IS?それともコアの製作方法?言っとくけど、どっちも御断りだぞ?」

「残念だがそのどちらでもない。間に合っているしな。だから先を急がせてもらうぞ。」

「ええっと、ちょっ…、何を…っ‼︎」

 

グリグリッ、という嫌な音がして、束は泡を吹いて震えながら白目を剥いて倒れた。

 

『あー、まさか殺したのか?』

 

心配になったマオは、半覚醒化した箒に訊いた。だが箒は、「大丈夫、少し眠ってもらうだけだ。まあ、起きた時かなり首が痛むとは思うが。」と言って、足元で伸びている束を跨いで、あの円筒形の水槽へ近づいた。そして中身の球体を確認すると、いきなり拳骨で水槽を割って球体を手に入れた。箒は呟いた。

 

「ついに…、ついに手に入れた…。お前が来るのをずっと待っていたぞ…”フォース”。」

 

そう。篠ノ之束が拾った物体、それはR戦闘機の鉾であり、盾である生体兵器”フォース”だった。何故かは知らないが彼女はこれを所有していた。一番の危険人物であり、姉である彼女から奪い取るのは気が引けたが、箒は奪取に成功したことに満足気だった。マオも嬉しそうだった。

 

『ああ。後は工房に帰ってから作ろう。それに一から作るよりも成功率は高い筈だ。』

「そうだな。それにFAに”アレ”を取り付けたのもある。そうでなければ今回のフォース入手は叶わなかった筈だ。ありがとうマオ。お前のおかげだ。」

『///い、いや、べべ別にそんなことないぞ…。私はただ…///。』

 

と、その時だった。周りに黒い人型無人機が5体程出てきた。束の護衛用無人ISだ、だが箒はそれを見るなり一瞬にして”あるもの”を呼び出した。

 

「…来いっ、”アローヘッド”ッ‼︎」

 

すると、一瞬光に包まれ、巫女服のような姿の半覚醒状態の箒の身体にまるでISのような外観のアーマーが装着された。全体的に流形線を描く美しく白い機体は束の”白騎士”を思わせる。実際確かに白騎士に似ていなくはなかった………………、顔を覆うバイザーが何処かの宇宙戦闘機のキャノピーを思わせる外観と右腕に装着された黒い砲身が目立つ「試作型波動砲」、極め付けはマオが装備させたフォースに代わる、全ての補助兵装の中でもフォースを除いて余りある攻撃力を持つ、「人の手によって造られた、人工のフォースの雛型」を装備していた。一瞬にして現れたFAにたじろぐことなく、無人ISは機械的に突っ込んでいって…一瞬のうちに破壊された。…犯人は、FAの周りに浮かぶフォースに似ているが、だが大きさの違う球体である”アレ(ビット・デバイス)”の中でも攻撃力が高いタイプである、「サイ・ビット」だった。

 

「行けっ‼︎サイ・ビットッ‼︎奴らを薙ぎ払え‼︎」

 

命令を聞いたサイ・ビットはまるで飢えた狼のように無人ISに喰らいついた。攻撃を無効化されるもの、取り込まれるもの、体当たりで喰い尽くされるもの…。やがて、ものの30秒もしないうちに無人ISは綺麗さっぱり無くなってしまった。

 

「………所詮はこの程度か………。」

 

箒は虚しそうにそう呟くと、手に入れたフォースと共にラボから飛び立った。後には何も残らなかった。

 

 

 

 

 

後に残された束は、異変に気付いてやって来た千冬に介抱されるまで気絶していた。後に千冬は束から犯人の特徴を聞いて彼女と共に捜し出した。だが、結局犯人に至る手掛かりは出て来なかった。だから千冬は束に諦めるように言った。だが、束はしつこく蛇みたいに捜し出してやる、何せ彼奴にはあの球体奪って私のラボを滅茶苦茶にした罪があるからなと意気込んで聞かなかった。やがて束はマッチポンプついでにあの女を捜し出して始末してやると言い出し、結局後に「白騎士事件」と呼ばれる事件は予定通り起こることとなる。だが、誰も気づかなかった…。其処に宇宙や異世界からの侵略者共が迫っていることなど…。

 

 

 

 

 

やがて、運命の日はやって来た…。果たして運命の女神は、どちらに微笑むのだろうか?それはまだ分からない。誰にも分からない…。

 




如何だったでしょうか‼︎実は今日から関東に住むんですよね私。大学生活のために。なので暫く執筆が遅れがちになると思いますが、どうか皆様私のこと、見捨てたりしないでね(不安)てな訳で、いつも通り、感想、批評、評価、質問、沢山受け付けますんでどうかよろしくお願いします。
てな訳で、皆様。また、お会いしましょう。ではでは。
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