新 時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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 「時空を超えて」(転移編)「続 時空を超えて」(遭遇編)の続編です。「新 時空を超えて」は(争乱編)になります。前編をご一読の後で、お読みいただけると幸いです。

 本作品はフィクションであり、実在する人名、国名、団体名、組織名、歴史上の人物などが登場するが、それらとは全く関係なく、中傷も賞讃も意図しません。

 挿絵は、海面上昇シミュレータ、ペイント、ChatGPT を使用して描いています。

 惑星暦504年、ガボリ共和国の独立を認めないカメリル国は、陸軍をツール地方に結集させていた。ガボリとカメリルの争いが始まる。


争乱編 第1章 1話

 惑星暦504年、ガボリ共和国の独立を認めないカメリル国は、トーベ征伐に派遣しているイマト大尉の部隊と首都カーレンの防衛軍を除くすべての陸軍をツール地方に結集させていた。

 ツール地方には地方軍がなく、地方軍基地もないため、セイルの屋敷内の集会館がカメリル陸軍の司令室になっている。その周りの広大な芝生の庭には兵たちの寝泊まりのテントが設営されツイク陣地と呼んでいる。

 ツイクの街はカメリル兵で溢れ、街の人たちは家の中に潜んで外の様子を覗っていた。

 

 ボントの街からカメリル軍が追い払われると、日本は直ぐにウラン濃縮工場とウラン鉱山を日本の管理下にするように動いた。そして川本外交官を派遣し、交渉の結果、濃縮ウラン工場とウラン鉱山の管理使用権を得た。

 もちろん、カメリルが再びガボリ共和国を支配下におくために武力を行使することは目に見えていた。しかも、ガボリ軍のような軍事素人の寄せ集めで防衛できるとも思われなかった。だからといって、自衛隊を派遣することもできない。

 

 日本の世論が派遣に否定的なのではない。世論は自衛隊を国防軍にすべきだという主張が大勢を占めていた。でも、自衛隊の派遣はできないのである。それは人がいないから、人材不足は企業だけではない、自衛隊も隊員確保に頭を悩ませていた。

 日本国民は勝手なもので、自衛隊を国防軍にすることには賛成でも徴兵制度には反対であった。腕力も体力もいらない、機器を操作するだけとアピールしても隊員は集まらない、隊員募集の担当者の苦労は計り知れなかった。

 

 日本が覇権国となり平和を主導すべきという新秩序を唱える保守系の人たちは、望む徴兵制が無理ならば、各国から傭兵を雇い、日本の戦闘車両や武器の扱いを訓練して、戦場に派遣すればよいと政府を突き上げていた。

 政府は武器や技術が他国に漏れることを恐れており、武器の輸出も先端技術を使用した機材や武器は避け、差しさわりのないものしか許可していなかった。というのは、ジュラス都市国家が建国当初から日本製の戦闘車両や護衛艦などを購入し軍備を整え、近隣国サンパル皇国のみならず、アルミ港のあるバーキー王国までも脅威になっているからである。だから、他国の者に日本の機材や武器を使用するだけでなく、戦闘技術までも教えることに難色を示しているのだ。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ボントの空港には、おびただしい数のドローンの箱が積まれている。川本外交官や中川調査官の一行が帰国した直後に日本から送られてきたものである。

 

 「皆さん、ドローンの操作、すぐに上達しましたね。」と二宮。

 二宮は民間のドローン製作会社の技術者である。

 「何でもできる精鋭の人たちですからね。」と三木。

 特殊部隊の隊員たちがドローンを飛ばして遊んでいる。

 

 「メイキさんもやってみたら?」と三木は側にいたメイキ大尉に声をかける。

 「遠慮しておきます。私は機械類の操作は全くダメ、できるのはトラックの運転だけです。」とメイキはそう答えて続けた。

 「ミキさん、我々はガボリの傭兵でも二ホンの傭兵でもないのですよ。どうしてガボリ軍の手助けを?理解できません。」

 メイキはドローンの操作訓練には参加しなかったが、それを使って何をするかを二宮が説明するのを聞いていた。

 

 三木はメイキの鋭い問いには答えず、二宮に尋ねた。

 「これらのドローンは非常にチンケですね。材質は発泡スチロールと見たのですが、間違いないですか?」

 「はい、その通りです。最大の狙いはドローンの軽量化です。それと大量生産による低価格化です。積載する爆弾類の重量がありますからね。」と二宮は答えた。

 

 「軽量化は分かります。でも大量生産とは?」と三木。

 「この手のドローンは弾薬と同じく消耗品です。安くしないと販売競争に負けます。」と二宮。

 (それにしても発泡スチロールとは・・・・1発で撃ち落とされる・・。)三木はそう思ったが、何も言わなかった。

 

 大量のドローンの箱が3台のトラックに積み込まれ、カメリルの国境近くにあるガボリ軍基地に向かって出発すると、メイキの運転するトラックが後を追った。それを見送った二宮たちドローン製作会社の技術者たちは反対方向のコンガテント村へ自動車で向かった。コンガの技術の先進性は日本の民間企業にも伝わっていたのだ。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 トーベ征伐に遠征しているイマト大尉の部隊は、戦車の砲弾が届くまでは動けないと、陣地から一歩も出ようとしなかった。ナーイ地方軍基地へ砲弾の催促するのだが、ナーイ地方の治安と消防、災害救助が主な任務の地方軍に砲弾などあるわけもない。

 ナーイ地方軍基地からカメリルの陸軍本部へ砲弾の供給を要求しても、陸軍本部は、トーベ征伐の援軍を引き返させたほどのガボリ共和国の独立騒ぎでそれどころではなかった。

 

 砲弾は届かなくても、動かなければ何の問題もない。そもそもイマトは攻撃する気もなかった。ところが、食料だけは動かなくても消費する。食料はナーイ地方から供給されていたのだが、部隊の消費する量は相当なものである。

 日を追うごとにそれがナーイ地方の負担になる。ナーイ地方の行政の長であるナクル市長トシキは、直接電話でトスカ執政官にカメリル軍の食料供給の困難を直訴した。執政官も軍務大臣もナーイ地方に本家があり、トシキは執政官の次男である。

 だが、トスカ執政官の返事は、カーレンの情勢も大変な時で、しばらくそちらも辛抱して供給するするようにとのことであった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ツール地方のセイルの屋敷内にカメリル陸軍の司令室を構えたアビル少尉は、司令官ポール大佐と話をしていた。

 「ここでは兵たちに静かにするように徹底していただきたい。昨夜は一部のテントで宴会騒ぎがありました。このお屋敷には病人もおりますので。」とアビル。

 

 アビルはこの地への派遣の命を受けた時、すぐに外務省のセイル外交官を尋ね、屋敷内を利用する許可を願いでていた。地方軍基地のないツール地方では、軍が利用できる場所が他になかったのだ。セイルは、いろいろ二ホンのことを教えてくれたアビルを覚えていて、快く承諾してくれた。その時、療養中のセイルの母がいることを聞いていたのだ。

 

 「分かっておる。すぐに分隊長に話をしてテントでの酒盛りを禁止しよう。ところで、アビル、ガボリの方はどうなっておる?」とポール。

 「偵察によりますと、このツイクの街のずっと東方に基地を築いて我が国の戦車などを並べているそうです。」とアビル。

 

 「そうか、反乱軍の脅しに乗って置き去りにして逃げ帰ったものだな。そんなものがあっても、急造の軍だ。簡単に突破できるだろう。」とポール。

 「そうでしょうが、短期間にあの場所に基地を造り上げることができるのですよ。警戒する必要があります。」とアビルは慎重であった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 カメリルとの国境近くにあるタクシー運送会社という名の基地は、ガボリ共和国に譲り渡してガボリ陸軍防衛基地になっていた。その基地の司令官スナンはボント消防庁の長官であった人物で、軍事には全くの素人であった。その基地に大量のドローンを積んだトラック3台と三木たちの乗ったトラックが到着して、箱に入ったドローンを取り出し広場に並べ始めると、物珍しそうにガボリの兵たちが集まってくる。

 

 「メイキさん、ドローンは隊員たちに任せて、司令室へ挨拶に行きましょう。」と三木が荷下ろしの指揮をしているメイキに声をかけた。

 「そうですね。それにしても、大きな声では言えませんが、」と言って、メイキは小さな声で「ここの兵隊さんたち、みなさん貧弱ですね。」と囁いた。

 「そう見えますね、あはは。」と三木は笑った。

 

 司令室のスナンは、メイキの顔を見るなり「リベルテの援軍、感謝いたします。」と言って、手を差し出した。メイキは訳が分からず、握手をしながら、「どういうことでしょう?」と尋ねた。メイキは特殊部隊がガボリ共和国に加担すること自体不満だったのである。

 

 「ボント市長から連絡を受けています。ガボリには海軍がございませんので、海からの脅威には対抗できません。」とスナン。

 メイキは、(海だけでなく、陸も対抗できないよ。)と思ったが、黙っていた。

 

 「ところが、貴国の戦艦が我が国の沖に停泊して、カメリルの海からの攻撃に備えてくれているそうです。誠にありがとうございます。」

 メイキにとっては寝耳に水であった。メイキは隣の三木を見る。三木は笑っている。

 

 「知っていたのですか?」とメイキ。

 「ええ、まあ。」と思わせぶりな回答をする三木。

 「この方は?」とスナンが尋ねる。メイキは軍服で体格もよし、三木は作業着で華奢、どう見てもメイキが格上に見える。三木はお付きの者にしか見えない。スナンが最初メイキに握手を求めたのも無理はなかった。

 「我がリベルテ軍のアドバイザー、煮ても焼いても食えないお方です。」とメイキは答えた。




三木たち特殊部隊がガボリを援助、カメリルとの戦いはどうなる?
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