カメリル軍ツイク司令部のポール少佐は、アビル少佐の不明な敵の装備を偵察してからという提言を無視して、ガボリの兵など取るに足りぬと戦車5台とトラック5台にいる歩兵50人に、ガボリの基地への攻撃を命じた。ポールはそれだけの戦力で簡単に基地を落とせると思ったのだ。
ツイクの街とボントの街は2車線の舗装道路でつながっている。カメリルがガボリを征服した時に敷設された幹線道路である。その途中にガボリ陸軍防衛基地がある。その道路を戦車を先頭にカメリル軍が進行している。
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「上手いものですね。」とメイキ大佐がドローンを操作している三木に声をかける。(同じことをどこかで誰かに言われた。)と思いながら、「ええ、まあ。」と三木は生返事をして、黒い偵察ドローンを操作している。
「メイキさん、見てください。来ましたよ。」と三木が携帯モニターをメイキに差し出す。モニターには進行して来る戦車とホロを被ったトラックが映し出されていた。
メイキが特殊部隊の隊員に命令する。「一人2機、攻撃態勢に入れ!」8機のドローンが基地から、飛び立っていく。
黒い無人機を発見したカメリルの兵がそれを砲撃するが当たらない。カメリルに対空ミサイルがあるのだが、ガボリ軍に航空機はないと思って用意していない。しばらくすると、8機の白い無人機が飛来してくる。戦車の砲撃、トラックからはロケット弾が発射、無人機は動き回ってどちらも当たらない。
カメリル軍は進行を止めて、頭の上のハエを追い払うかのように、上空に向かって砲撃、射撃を繰り返す。8機も飛んでいるのである。5台の戦車の砲撃、トラックにいる50人の兵のロケット弾や射撃、当たらない方がおかしい。
銃弾一発の命中で破壊されるドローン、次々と命中していく。破壊されたドローンから放出されるクライスター弾、戦車やトラックは破壊できなくても広範囲の殺傷能力、トラックのホロを突き破り爆発する。
クライスター弾、転移前の地球では条約で使用が禁止されていた爆弾。と言っても、アメリカ、ロシア、中国をはじめイスラエル、イラク、ウクライナなど多くの国が未著名であったが。
このドローンはクライスター弾だけでなく、場所と目的によっていろいろなものが搭載できる。三木たちが用意しているのはクライスター弾のほかに燃料気化爆弾とナパーム弾である。
「止めろ!止めろ!」誰かが叫んで、気が付いた時には、上空には3機しか残っていなかった。砲撃や射撃の音が止み、ドローンの飛行音だけが草原に響いている。
負傷した兵たちで溢れている部隊に侵攻能力はない。呆然と上空のドローンを眺めている兵たちに次の悲劇が起こった。このドローンは撃ち落とされなくても、一定時間が過ぎれば自爆するように設計されているのだ。残りの3機が同時に上空で爆発し、クライスター弾の雨が降り注いできた。
新たな8機の無人機がやってくるのを目視したカメリル軍は、戦車もトラックも向きを変えて、全速力で退却していった。
偵察ドローンのモニターでその様子を見ていたメイキは、隊員たちを集めて小言を言っていた。
「何をやってんだ、逃げ回って。上空で止まって早く撃ち落とされていたら、もっと早く終わっていただろう。」メイキは逃げ回っていたことが気に入らないのだ。
隊員たちは俯いて黙って小言を聞いていたが、1人の隊員が、メイキに聞こえないようにボソッと呟いた。「それでは面白くない。」
実は隊員たちは賭けをしていたのだ。最後まで撃ち落とされずに自爆まで持ちこたえた者が、撃ち落とされた者の持っている砂金を1掴み貰えるという約束であった。勝者の3人は、砂金の持ち分が5掴み増え、敗者の5人は、3掴み減ったのである。
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カーレンの軍港から戦艦3隻、航空母艦1隻、輸送艦1隻がガボリ共和国に向かって出航していた。旗艦の航空母艦には指揮官のカガト大佐が乗艦しており、戦闘機が3機搭載されていた。
「ガボリには海軍がないそうですから、簡単に圧力がかけられますね。砲弾1発で終わりそうです。」と航空母艦の艦長マスカ少佐が、双眼鏡を覗いているカガトに声をかける。
双眼鏡を覗くのをやめたカガトが、
「何をのん気なことを言っている、海軍は無くても他の国の戦艦がいると聞いておる。」マスカをたしなめた。
「えっ、そんな情報、どこで?」とマスカ。
「通信兵がガボリとの通信を傍受したそうだ。」
「それはどこの国ですか?」
「確か、リベルテとか、とにかく海戦は避けられまい。心しておれ。それとなぜ敵に軍機などないのに戦闘機を用意しておる?街の攻撃は爆撃機ではないのかね?」
「はっ、ですが、爆撃機は大きくて滑走距離が長いのでこの艦から離着陸ができません。ところで、リベルテってどんな国です?聞いたことがありません。」
「わしも良く知らないのだ。どうせ蛮人の国、大したことはあるまい。こちらにはミサイルがある、」
「そうですね。それに、陸軍も基地を攻撃するそうですし、簡単に終わりそうですね。」
「まあ、ガボリの陸軍は素人の寄せ集めと聞いておる。簡単に占領するだろう。とにかく、リベルテとやらの戦艦を叩く準備をしておけと各艦に伝えておけ。」そう言って、カガトは再び双眼鏡を覗いて遠くの水平線を眺めた。カガトに陸軍の基地攻撃の失敗は伝わってなかった。
ガポリ共和国のボントの街の港には漁船がたくさん停泊していて、リベルテの戦艦3隻はその沖に停泊していた。漁船がいなくても、港が浅く桟橋が小さくてリベルテの戦艦が停泊することは無理があった。
旗艦であるマイト艦長の戦艦と隣の戦艦は、旧式で大きな砲がいくつもある勇ましい艦であるが、新しくリベルテからやって来た1隻の戦艦はスマートな戦艦であった。
それは、リベルテが二ホンに協力する代償として得た、最新の装備を備え付けていて、まるで護衛艦あたごとそっくりの戦艦であった。
そのあたご擬きの戦艦が、重厚な2隻の戦艦を守るように、カメリルの艦隊がやってくる方向に位置して待機していた。
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カメリル陸軍のツイク陣地では、戦車もホロに穴の開いたトラックも、運行に支障がない状態で戻ってきたが、多くの兵が負傷していて、その治療にてんやわんやであった。
司令室で退却の報告を受けたポール少佐は、渋い顔をしてアビル少尉に愚痴をこぼしていた。
「先発隊は、無人機から放出される小爆弾で、何もできずに逃げ帰ったそうだ。どうしたものか。」
(だから敵の装備を偵察してからと言ったのに。)とアビルは思ったが、そんなことは言えない。
「道路や草原を進むのは戦闘車両だけにするしかないですね。戦車の乗組員は無傷でしたから。トラックで兵を運ぶのは無理があります。」とアビル。
「戦闘車両だけでは基地を攻撃することができても、占領はできない。占領にはそれを指揮する将校とそのための訓練をした兵がいるのだ。歩兵を運ばないと占領できない。」とポール。
「そうですか、それならこんな手はどうですか?」と言って、アビルは地図を広げた。
「ツイクの街の西にあるジャングルはこのようにここまであります。」と地図上を指さし、
「敵の基地はここにあります。」とアビルは地図に赤でマークした。
「ジャングルの中を進行してここまでくれば、敵の基地は目と鼻の先です。そこからロケット弾が敵基地に届きます。戦闘車両はジャングルを走れませんから、道路か草原を進んで敵基地を攻撃する、できれば歩兵隊と同時に攻撃できるように時間を調整すればいいですね。どうでしょう、こんな案は?」とアビル。
「ジャングルには猛獣もいる、徒歩で進むには危険すぎる。」とポール。
「そうでしょうが、無人機の小爆弾の雨よりましですよ。猛獣は襲ってきたら撃ち殺せばいい、兵は武器を持っているのですから。」とアビル。
「分かった、そうしよう、分隊長を呼べ。」とポールはアビルに命じた。
カメリル軍のガボリ陸軍防衛基地攻撃失敗、新たな作戦はどうなる?