カメリル海軍カガト大佐とマスカ少佐は旗艦の航空母艦から、ガポリ共和国の沖に停泊している3隻の軍艦を双眼鏡で眺めていた。
「後ろに控えている艦は戦艦のようですが、前にいる船は何ですか?我が国の巡視艦に似ていますが?」と双眼鏡を覗きながら、マスカが尋ねた。
「わしも不思議だと思っていた。装備も貧弱で軍艦ではなく、要人の乗艦している艦かと思ったのだが、それなら後ろに配置するはず。あの配置は、あの貧弱な艦が後ろの戦艦を守っているようだ。」とカガト。
「戦闘機を出動させましょうか?」とマスカ。
「いや、爆撃ならともかく、低空飛行の銃撃では撃ち落とされる可能性もある。戦艦にミサイル発射を伝えよ。目標は前にいるあの小さな艦だ。」
カガトの命令は直ちに伝えられて、隣の戦艦からミサイルがあたご擬きの艦に向かって飛翔して行く。その様子を双眼鏡で追うカガトとマスカ。二人はミサイルで貧弱な艦が沈没すると確信していた。ところが、突如、飛んでいるミサイルが空中で爆発。
「な、何が起こった?」と双眼鏡を外し思わず呟くカガト。マスカも双眼鏡を外して、呟きに答える。
「わかりません。」二人は顔を見合せた。
「ミサイルを撃ち落としたのか?何で?」とカガト。
「砲ではありません。甲板が光ったように見えましたが何か分かりません。」とマスカが答えた直後、
ドカーン ミサイルを発射した隣の戦艦が大爆発。
カガトもマスカも驚きを通り越して言葉も出ない。呆然としていると乗組員が叫ぶ。
「何かがこちらに向かってきます!」
我に返ったカガトは双眼鏡で乗組員の指し示す方向の水面を見る。1つだけではない。いくつもの物体が水面を水しぶきをあげて向かってくる。
カメリル海軍に潜水艦はない。造れなかったのではなく、必要がなかったから造らなかったのである。カガトは潜水艦も魚雷もその存在を兵学校で学んでいて知っていた。向かってくるのは、その魚雷とも違うが、危険なものであることは間違いない。
「マスカ、全速力で艦を動かし、あれを避けよ!」とカガトは叫んだ。
しかし、大きな航空母艦が急に旋回することなどできず、次々と衝突して爆発し、艦は傾いていった。短時間の出来事で乗組員が退艦するのが精一杯、戦闘機は飛び立つ間もなく海中に滑り落ちていった。
驚いたのはカメリルだけではなかった。リベルテの旗艦の戦艦から双眼鏡でその様子を覗いていたマイト大尉は、開いた口が塞がらなかった。
最新の装備を備えた艦だとは聞いていた。新しい艦の乗組員は新しい操作の訓練をしっかり受けた優秀な人材であることも知っている。しかし、カメリルの艦隊との海戦を任せろと連絡があったとき、あんな小さな主砲で大丈夫なのかと思った。だから、マイトは様子を見て援護すればいいと考えていた。そんなマイトだから、何が起こったのか分からなくて、自分の目を疑った。理解の範疇を越えていたのだ。
カメリルの他の2隻の戦艦からもミサイルが発射されたが、全て空中で爆発し、あたご擬きの艦は何事もなかったように浮かんでいる。逆にミサイルが飛んできて沈没の憂き目を見たのはカメリルの戦艦であった。
カメリル海軍カガト大佐は救助されたボートから自国の戦艦が傾いていくのを眺めた。3隻の戦艦と1隻の航空母艦が傾いて沈みつつあるのに、攻撃など不可能であった。無事な輸送艦は白旗をあげていた。
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ツール地方のカメリル軍ツイク司令部のポール少佐は、ガボリ陸軍防衛基地への出撃を命じた。ツイクとボントを直線で結ぶ幹線道路を戦車5台が進んで行く。トラックも自走砲も後を追っていない。無人機による爆撃を想定して被害のない戦車だけにしたのだ。
ところが、ガボリ陸軍防衛基地が目視できるところまで近づいても無人機はやって来ない。攻撃の時刻合わせのために、戦車の砲撃の射程距離内ではないが、隊形を横一列に変更して停車した。
一方、基地の占領に欠かせない歩兵部隊は、ツイクの街の西にあるジャングルの中を進んでいた。懸念されたジャングルの中の猛獣や毒蛇は意外に少なく、部隊の進行の妨げにはならなかった。苦労したのは生い茂る樹木を伐採して道を切り開く最前列の兵たちであった。それでも部隊の進行は確実に進み、攻撃の時刻にはガボリ陸軍防衛基地に達するようであった。
ガボリ陸軍防衛基地にいる三木は、二ホンの連絡を受けたリベルテ艦隊のマイト大尉から、カメリル軍の動きを無線で聞いていた。二ホンは偵察衛星でカメリルの動きに注目していたのだ。
三木はカメリル軍に対抗するためメイキ大尉や特殊部隊の隊員たちに指示をしていた。
そこへ、防衛基地の司令であるスナンがやってきた。
「どうしたんです?何事ですか?」とスナン。
「カメリル軍に動きがあったもので、その対策を」と三木が答えると、
「カメリル軍に動き?どうしてそんなことが分かるのですか?」とスナンは驚いた表情で言った。
メイキも隊員たちも笑っている。
「魔法ですよ、透視魔法。この人は魔法が使えるのですよ。」とメイキが言ってまた笑った。
三木の操作する黒いドローンが、防衛基地から飛び立っていった。その後を発泡スチロールの白いドローンが8機追いかけていく。
黒いドローンは赤外線カメラで、ジャングルの中のカメリル軍を捕えていた。三木の指示に従って隊員たちは白いドローンを操作する。8機の白いドローンが配置に着いたところで、三木が命令する。
「自爆!」一斉に8機のドローンが破裂した。搭載していたナパーム弾がばら撒かれる。
ナパーム弾というのは転移前のアメリカ軍が、ジャングルのベトナム兵べトコンのゲリラ戦に閉口して開発した焼夷弾の一種である。クライスター弾と同じように、転移前は使用が禁止されていた。そのようなナパーム弾がジャングルの中を進行していたカメリル軍の歩兵部隊の上にばら撒かれたのである。
兵たちは燃え盛るジャングルの中で悶え苦しみながら命を絶っていった。運よくジャングルから脱出できた兵もいたが、戦意はすでに失せていた。
攻撃の時刻ではないがジャングルに煙が上がるのを目視した戦車部隊は、異常を察知して退却すればいいのに、進行を開始した。歩兵部隊が攻撃を受けたのなら、同時攻撃は不可能、ならば戦車部隊だけでも砲弾を浴びせようと考えたのだ。
射程距離まで近づけば一斉砲撃をするため、横一列になって5台の戦車が進行していく。
ドカーン ドカーン ドカーン
3台の戦車が地雷を踏んで爆発する。リベルテの特殊部隊が昨夜設置した地雷である。爆発を免れた2台の戦車は危険を感じてUターン。ところが防衛基地から飛んできたロケット弾が命中する。
ドカーン ドカーン
ガボリ陸軍防衛基地に砲撃を浴びせようと進行してきた5台の戦車も壊滅、運よく命が助かった兵は徒歩で退却するしかなかった。
カメリル陸軍も再度のガボリ陸軍防衛基地の攻撃に失敗。どうする、カメリル軍?