転生オオタチ、変異個体ですが主人公のパートナーです。   作:マスターカード

1 / 2
転生オオタチ、邪神によりて転生する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……おや? 彼女は気がついた。

 此処は、何処だ? 

 見覚えの無い原っぱだ。

 そもそも、昨日の記憶が……。

(あれれー? おかしいぞー? 会社帰りに買い物してたら地震来てなかったか昨日の夜?)

 そうなのだ。

 名探偵の小学生も吃驚の現実。

 多分大規模な地震に遭遇して記憶が落ちている。

 気付いたら矢鱈視線の低い原っぱにいた。見上げる空は晴天だった。

 何が起きた。刹那、彼女の脳内に稲妻と言葉が走る!

 

『この声が聞こえている頃、気付いているでしょう。貴女は転生したのです。これは分かりやすく言うと留守録です。すみません、剰りにも暇だったので、暇潰しに現世に干渉して死人の魂を拾い、このポケットモンスターの世界に転移させてみました。我が名はアルセウス。人々がそう呼ぶ存在の分霊です』

 

 邪神アルセウス!! 邪神アルセウスじゃないか!

 貴様、LAに飽き足らずまたも人間を興味本位で拉致したな! 

 転移させてみました? つまり死んだと言うことか!

 勝手に何をしてるんだこのアホ邪神!

 

『抗議があるのでしょうが、ご安心を。キッチリ生きていけるように貴女はポケモンになりました。どうも前世ではポケダンがお好きなようで。トレーナーよりもポケモンになった方がエンジョイ出来るのでは? という私なりの気遣いです。お礼は結構』

 

 誰が礼を言うかこの戯け!

 巫山戯るな、モアイ! じゃない、もう良い!

 

『オン○ゥル語が聞こえたような……。ちなみに貴女はなったポケモンは……デデン! 色違いオオタチィ!』

 

 ファッ!?

 色違いオオタチだとぉ!?

 確かにオオタチは好きだとも。

 出ている世代は網羅した。必ずどんな時も手段も資金も考えずオオタチをゲットしたとも。

 そのオオタチ……!? なん、だと……!?

 

『次に貴女は嘘だそんなことぉ! と言う』

 

 嘘だそんなことぉ! ……ハッ!?

 

『それも普通のオオタチではありません。専用特性を持つ変異個体の色違いオオタチです。どうです? 主人公でしょう?』

 

 ……ああ、そうだな。

 色違いオオタチ、しかも専用特性。

 普通なら……主人公だろう。だが、だがな!

 オオタチに、そんな事出来るわけねえだろうがぁ!

 

『ぬう!?』

 

 舐めんなよ、こっちはオオタチいる全ての世代やってるトレーナーだぞ。

 よく考えて見ろ。415だ。種族値、415。

 この一個も数値が100に届かない旅のデパートが、主人公になれるわけねえだろう!!

 こっちはなぁ! 

 ゲームで上位互換が出る度に嫉妬したんだぞ!

 その苦悩を分かるか邪神アルセウス!

 主人公ってのは、ガブリアスのことを言うんだよ!

 オオタチは所詮序盤ノーマル、旅パですら代打の利く……敗北者じゃけえ……。

 

『はい? 種族値? 貴女の種族値は570ですが?』

 

 ……えっ? 

 

『ですから。言ったでしょう、変異個体だと。能力値も勿論大幅に上昇する変異個体ですが、なにか?』

 

 クモみたいに言わないで? 何、570?

 待って、ちょっと。一般枠より高くね? 

 

『そうでしょう。ここはパルデア地方。他の分霊の私ですらパワーインフレが起きてランクマで駆逐された世界ですよ? 数値の詳細、聞きます?』

 

 結構です。ってかこれ留守録じゃなくて聞いてるだろ邪神。

 

『ええ、起きたようなので。状況は理解できていますか?』

 

 出来てねえよ。ここ、パルデア地方って言った?

 つまり九世代。魔境じゃねえか。

 

『魔境ですね。残念ながら後継のメガシンカはパルデア地方にも実装されていますけど』

 

 おい。テラスタルとメガシンカの共存ってマジか。

 カオス! 圧倒的カオス! 

 整理しようか。

 先ず、自分は前世で死んで邪神アルセウスの暇潰しにより転生オオタチになった。

 ここはパルデア地方。

 ……で、どうしろと。

 邪神アルセウス、好きにしろとだけ言った。

 その旅路に期待して眺めているから、冒険心を満たしてこいと。

 そう言うと脳内から消えていくアルセウス。

 放置された彼女は晴天の空を見上げる。

 ……パルデア地方か。オオタチ出ている最新だった。

 でも、ね? 戦闘民族って言われてるパルデア地方のポケモンに、二世代のポケモンが勝てると思う?

 570って言われても、専用特性って言われても。

 主人公には……なれないと思う。

 そもそも、オオタチはパルデア地方に居ないのに。

 周りをよく見る。原っぱに海辺の近辺。

 近くには灯台みたいな建物もある。

 此処、もしかしてコサジタウンの近く?

 よく見ると洞窟もあるし、近くには野性のポケモンも居る。

 オオタチに襲ってこない。彼女はどうするか考える。

 なんかお腹空いた。コサジタウンに行こう。誰かにご飯をねだる為に。

 向かっていくと、丁度二人の少女が喋りながらコサジタウンの道を歩いていた。

 長身のポニーテールの女の子と、小柄な銀髪ロングヘアの女の子。

「コサジタウンの近くにもポケモンが居るんだよ、アンナ」

 そう案内して言っているのは、ネモだった。

 丁度まさかの主人公とのブッキング。

「そう……。じゃあ、あんな風に?」

 そう言いながら風にそよぐ銀髪を撫でながら、指差す少女。

 それは、こっちを見ていた。

「ん? ……えっ?」

 ネモは彼女を見て、目を見開いて、確認する。

 何度も、何度も。よく見る。

「何、あの子……!? 普通のオオタチじゃない! 図鑑が反応してる! 色違いだ!!」

 ネモが驚いて叫ぶ、色違い。

 図鑑が反応してるって事は一応この辺にもいるらしいオオタチ。

「凄いよアンナ! 滅多に居ない色違い! ラッキー過ぎ!」

「そうなの。……おいで、おいで」

 興奮するネモに対して、もう一人……アンナという少女は手招きして、オオタチを誘う。

 危ないと言うが、ネモに反論する。

 敵意は感じない。この距離、オオタチの俊敏性なら間合いは詰めている。

 襲わないのは、温厚な個体だからだと。

 オオタチはお手々スリスリで媚びを売ってみた。

 成る程、アンナというのは海外版SVの女の子主人公の名前だ。

 敵意無いです、ご飯も強請るように愛嬌を振りまいて寄っていく。

「うわ、色違いがこんなに人慣れしてる……。何で?」

「普通の個体じゃ、ないみたい。見て、ネモ」

 スマホで図鑑を見ると、二人は驚愕する。

 更新されて変異個体として登録された。

 特性が三つとも該当しない。新種の特性。

 名は『しっぽトルネード』。概要を見る。

 バトル時、常時後方から竜巻を起こす特性。

 ノーマルタイプの技を先制で発動できる。

 ノーマルタイプの攻撃がゴーストに効果抜群になる。威嚇が効かない。

 素早さが常時上がる。

「何このてんこ盛り……。一個目は多分疾風の翼の効果で、二つ目は相性抜群になった肝っ玉。三つ目は加速かな」

「よく分からないけど、複合的な特性?」

 自分で聞いてて思う。強くね? しっぽトルネード。

 加速、抜群肝っ玉、ノーマルタイプの疾風の翼。

 どれだけ盛ればこんな特性できるよおい。

 つまり常にノーマルタイプの先制をブチ込み、ゴーストにノーマル叩き込んで抜群取って常時加速する。

(私の特製てんこ盛り……)

 こりゃ邪神が太鼓判押すわ。

 これでいて570の種族値が序盤ノーマル名乗るのか。

 補正がぶっ壊れてるだろアルセウス。

「この子、ご飯が欲しいみたい」

「フーズあったかな。見てみる」

 おねだりしていると、フーズくれたネモ。

 アンナという女の子は毛並みが気に入ったのか。

「よし、巻こう」

 抱きかかえ、首に向かってオオタチを回した。

 当然長すぎて無理。胴体で輪っかを作るだけ。

「アンナ!? オオタチでマフラーは無理だよ!?」

「みたい。でも抱き枕に丁度良さそう。この子ゲットしてみるね」

 ボールを取り出すと、オオタチはギョッとする。

 狭い中に入るのはちょっと控えたいので、頭を振って否定する。転生したので、捕獲とかは遠慮したい。

 なのに無遠慮にボールをぶつけるアンナ。

 オオタチは抵抗できずに捕獲、吸収される。

 あーれー……という内心を聞くモノはアルセウスのみ。

「あらら。まさか初対面で色違いとはね。私も初めて見たよ」

「スマホで詳細出たみたい。ええと……」

 覚えている技。

 捨て身タックル、高速移動、影分身、とっておき。

「随分と機動性よりの構成だね。誰かに逃がされたのかな」

「色違いって逃がすモノ?」 

 実戦向きの構成にネモは呟く。

 アンナの疑問も尤もだが。

「普通は逃がさないけど、この子変異個体だからなぁ……。怖がって逃がしたのは十分有り得る」

 変異個体は時折見つかるメタモルフォーゼ的なポケモンだ。

 有名なのが絆変化という特異特性で、トレーナーの鼓舞によってメガシンカに似た変化を起こすらしい。

 この場合、ネモの持つゲッコウガの変異個体がそれ。

 他にも多種多様の変異個体は世界中で発見されている。

 このオオタチも恐らく変異個体。

 図鑑がオオタチの項目で変異個体の申請を出している。

 初手から、随分と珍しい子をバトルもせずに捕獲するとは。

 この子は才能と天運に恵まれているだろう。

 ポケモンを貰って居ないのに、既に一匹寄ってきたとはいえ捕獲した。

 強運というか、この子はきっと化ける。 

 ネモの観察眼はそう思っている。

 この辺には他にも滅多に居ないが進化系がちょくちょくいる。

 このまま行けば鍛錬でアンナはチャンピオンに……。

「ほら、おいでオオタチ。行くよ」

 何故か速攻連れ歩くアンナ。

 出て来たオオタチの歩く姿を見て言った。

「私の故郷だと、オオタチの歩く光景はミームになってるの。癒やしの動画で有名なんだ」

「ゴメン、意味わかんない」

 四つ足でその辺歩いてるだけで癒やしの動画になる、人気のあるポケモンらしい。

 ネモは苦悩した。世の中の需要が理解できない。

「だろうね。オオタチはこっちだと何を食べてるのかな。肉食だけど……グルトンは大きいよね」

「ん? 本来はネズミみたいな感じだったっけ」

「うん」

 こう見えて肉食獣オオタチ。

 だが彼女は転生オオタチ。

(嫌じゃ! ネズミなぞ食いとうない!!)

 普通にネズミは嫌だ。豚の方が良い。

 連れ歩くアンナについていくオオタチ。

 目指すはネモの実家。豪邸である。

 暫く歩くと、近くの家の屋根の上に数羽のタイカイデンがいた。

 海鳥だからか、コサジタウンの海辺にも居るらしい。

 アンナが軽くフーズを持ってタイカイデンに投げる。

 飛び去っていくが、一匹だけ残って食っている。

「うん、チャンスだね」

「アンナ……いや、こういう捕獲は街中だけだよ?」

 呆れるネモに苦笑するアンナが、ボールを取り出すと素早く投擲。

 タイカイデンにぶつかって、吸収される。

「捕まえた」

 微笑むと敷地にいた家の人に許可を得て入って回収。

 ゲットしてしまう。駆け出しにしては手際が良い。

「本当にトレーナー素人?」

「触れ合いの機会は多いから、育成をしてないだけ」

「あー……そっちか」

 よく居る家族のポケモンを触れている人。

 だから何となく経験で捕獲できそうな温厚な個体を見分けがつく。

 オオタチも納得。今作の主人公は随分と優しい。

 転生オオタチ、豪邸につくとアンナに言われる。

「本当はネモに教わって捕獲予定だったけど。オオタチ、バトルは出来る?」

(私が戦うと。これSVの初バトルよね? いきなりか)

 アンナはオオタチを使うつもりだとネモに言う。

 それなら、ネモも本気で……。

「――おや、この子は色違いのオオタチですか。コサジタウン近辺に居るとは、また希有な事ですね」

 後からお邪魔してきたクラベル校長が登場した。

 制服は藍色。バイオレットの世界かここは。

 ネモに事情を聞くと、変異個体だとしてもとても大人しい個体でよく見ての通りアンナの意思も通じる。

「ふむ。ですが、アンナさんは初めてのバトルですよ。ネモさん、今本気でやろうとしましたね? 変異個体でもトレーナーの経験値が違うのですよ」

「ですよね……。この個体がどういう動きをするのか、全く予想が出来ないのとアンナに扱いきれるか……」

「可愛いから大丈夫だよ」

「ゴメン。意味わかんないのとそれ多分関係ないと思う」

 ピーキーな転生オオタチと、最年少最強チャンピオン。

 転生と最強が交差するとき、物語は始まる。

 そんな感じで邪神アルセウスの起こした暇潰しの転生オオタチ物語、始まるよー!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。