「ようこそ遊馬くん、ナンバーズを持つ者よ」
「その声は...てめぇ!小鳥達を返しやがれ」
「フフフフ、お友達を救いたければ私とデュエルをするのです。....あのお二人の御前で」
「!」
「か、カイト...」
「アストラル!?」
攫われた小鳥達を助ける為に敵の所へ乗り込んだオレとキャットちゃんを待っていたのはジンって奴と椅子に座ったカイトだった。気付けば置いてきたはずのアストラルが近くにいてカイトの姿にすっかりビビっちまってる。椅子に座ってるアイツは何も言わず、顔も見えねぇ。
「カイト様!...そしてセツナ様、この者からナンバーズを取り上げ、お二人へ捧げます」
「!!」
「!?何でセツナの名前が」
「当たり前です、彼女はカイト様と対を為すナンバーズ・ハンター。闇の中に咲く美しき女王でいらっしゃる。....ああ、今日も麗しい」
崇めるようにカイトのいる方へ礼をするジン。カイトの座る方をよく見ると、その直ぐ隣に寄り添う様にひとりの髪の長い女が立っていた。カイトと同じく顔は見えないが、その姿は確かにセツナに似ている気がする。
「....やはり、彼女も」
「!?おい、アストラルどういう事だよ!」
「カイトとのデュエルが中断した時、映し出された映像に彼女の様な後ろ姿があった。....そしてその声は彼女のものとよく似ていた」
「そ、それじゃあカイトとセツナは知り合いで、しかもナンバーズハンターってことかよ!あのセツナが...そんなの、ある訳ねぇ!
.....おい、セツナ!どういう事だよ!黙ってないで答えろよ!!」
セツナに向かって声をかけるが、返事は返ってこない。その代わりジンの気味の悪い笑い声がオレ達に届く。
「ヒッヒッヒ、彼女が君の様な者と話す訳がないでしょう。さあ、狩らせてもらいますよ、ナンバーズを」
「....上等じゃねぇか、オレは絶対に勝つ。みんなを助けてみせるぜ!」
まだ混乱している頭をブンブンと振る。
とにかく今はコイツを倒すしかねぇ。集中しろ、オレ。
Dゲイザーをセットするとジンとのデュエルが始まった。
♯
強力なナンバーズをもつジンにオレ達は追い詰められていく。「仲間を助けたければサレンダーし、持っているナンバーズを差し出せ」と言ってきたアイツの言葉にその通りにしろというアストラルに猛烈に腹が立つ。
「ふざけんじゃねぇ!!オレはデュエルで沢山のやつと出会ってきた。そりゃ負ける事もあったけど、だけど、一緒にデュエルをやった奴はみんなオレの大事な仲間なんだ。...そんな仲間を、オレはただの一人だって見捨てることはできねぇ!」
「遊馬、だからこそ私は」
「まだわからねぇのかよ!お前はオレの、大切な仲間なんだよ!アストラル!!」
「...遊馬」
そこまで言うと痺れを切らしたのかジンがオレ達に向かってまたサレンダーしろと迫ってくる。奴の額には数字が浮かび上がり、周りには邪悪そうな空気が漂っている。
「ふざけんな!オレは絶対にサレンダーなんかしねぇ!」
「フン、いいだろう。カイト様もセツナ様も、お前が魂を奪われる姿を楽しみにしておられる。...フフフ、ハハハハ!!」
「くっ、...おいカイト!こんな奴が本当にお前らの部下なのかよ!聞いてんのかよセツナ!お前のデュエルはこんな奴と一緒なんかじゃねぇだろ!」
あいつらの居る方向を向いてそういうオレに返事は返ってこない。じっと見ていると、何かおかしいことに気づいた。
「...おい、あそこにいるのは本当にカイトとセツナなのか!?」
「なっ、何を言う...」
急に焦り出したジンにオレの後ろから飛び出して行ったキャットちゃんがカイトとセツナに近づく。触れれば首の取れたそれらは唯の人形だった。目に嵌め込まれた水色の宝石がポロリと外れる。
「わ、私のカイト様とセツナ様が...」
「やっぱりそうか、オレはカイトとデュエルした。アイツは強すぎて怖いくらいの奴だけど、人の苦しむ姿を見て楽しみながらデュエルをするやつなんかじゃねぇ。
...セツナだってそうだ。アイツのデュエルは圧倒的だったけど、戦ってる相手をいたぶるようなマネは絶対しねぇ、デュエルチャンピオンにまでなったアイツがこんな事するはずがねぇ!
ーーアイツらはお前の様な下衆な奴じゃねぇんだよ!」
「くっ、」
「....私はあんなものに恐怖していたのか」
「へへっ、オレだって怖かったさ。でも諦めなきゃ誰にだって希望は残ってんだ、かっとビングだぜ!」
「遊馬...」
その時突然皇の鍵が光り、その光はアストラルに当たった。キラキラと光るアストラルは少し前までのどこか気弱か顔じゃなくいつものムカつくような澄まし顔だ。
こちらを向くとオレに向かって言い放つ。
「ーー勝つぞ、遊馬」
「アストラル!よし、いくぜオレのターン!」
魔法カードカムバックでホープを取り戻す。オレのフィールドに戻ってきたホープを見るとアストラルが皇の鍵へ向かって手を伸ばした。
「新たな勝利の方程式は、ここに全て揃った」
「!コイツは、」
「希望の力、混沌を光に変える使者。CNo.カオスナンバーズ39希望皇ホープレイ」
「カオスナンバーズ...」
「このカードは希望皇ホープとオーバーレイユニットを一体とし、自らを進化させる!いくぞ、遊馬!」
「おう!」
「「カオスエクシーズ・チェンジ!今こそ現れろ、CNo.39希望皇ホープレイ!!」」
そう告げるとホープの姿が進化する。黒っぽい姿に変わったホープに驚くジンに向かってホープレイの効果を使ってビッグアイを切り裂いた。
相手のLPは0となりオレ達が勝利すると扉の向こうから囚われていた小鳥達が飛び出してくる。
「みんなっ、」
「凄いわアストラル!」
「サンキュー、アストラル!」
「凄かったです!」
オレの方には見向きもせずアストラル(そこにはいねぇ)に感謝を伝えるみんなに怒りながら伝える。
「お前ら何でアストラルばっかり...、オレが助けたんだぁ!がっかリングだぜ全く!」
恩知らずなやつらめ、もう知らねえ!と思いながら出口へ向かうと小鳥達が追いかけてきた。
「(そういや、セツナがナンバーズ・ハンターってのはあのジンって奴の嘘だったって事だよな)」
振り向くと遠くに転がる二体の人形。同じ様に嵌め込まれていた水色の宝石が二つきらりと光っている。
ふたりの顔を思い出す。カイトとセツナの眼の色は確かに似ていた気がする。少し灰色がかった水色の綺麗な眼....。
「遊馬?どうしたの?」
「...何でもねぇ!さっさと帰ろうぜ!」
小鳥に声をかけられて考えてたことを頭からかき消す。
セツナがそんなことするわけねぇんだ。...なのに何でこんなに不安な気持ちが消えねぇのかな。
そうだ、今度会ったら聞いてみれば良い。きっとアイツなら笑って「何それ、私がそんなことする訳ないでしょ?」って言うはずだ。
♯
時計の短針は真っ直ぐに9を指していた。いつも私が『狩り』に行く時間よりもずっと早い。
いつも通り真っ黒なロングコートを纏いヒールの高いブーツを履く。腰にデッキケースをつけて完成。これが今の私の戦闘服だ。
「じゃ、行ってくるから」
「......やはり俺が、」
「何言ってるの?連日のフォトンチェンジは身体に負荷がかかり過ぎるからダメだってそっちが言ったんでしょ」
「....俺なら別に、」
「大丈夫な訳ないでしょ。鏡見た?顔色悪いよ。
...もうこのやり取り何回目?私ひとりで行く時はいつもこうなんだから。はじめてのお使いかっての」
いつもちゃーんとナンバーズ回収して戻ってくるでしょ?それにそれなりの成果を上げないとハートランドにだって嫌味言われんだから。
そういうとぐっと押し黙る兄にため息を吐く。
「セツナ様、カイト様ハセツナ様ノ事ガ心配ナノデアリマス。イツモコノオービタルメニ『セツナノ事ヲ必ズ守レ』ト、」
「余計な事を言うな、オービタル7」
「カ、カシコマリ!」
「心配してくれるのは嬉しいけど、兄さ...カイトはハルトの心配だけしとけばいいの。大丈夫、今日だっていつもと変わらずサクッと終わらせてくるから、ね?」
「....ああ」
眠るハルトに視線を向けてから兄に念押しすると観念したように小さく返事が返ってきた。
じゃあ行こうか、今日も宜しくねオービタル。そう声をかけるとナンバーズの回収へ向かった。
今日の相手は学生だと言う。塾帰りにひとりになったところでナンバーズを頂くつもりだ。
「(同年代は初めてだけど、まあやりにくいな)」
兄さんが私を行かせたがらなかったのはそれもあるのかもしれない。今まで私がナンバーズを回収してきた相手はナンバーズを持つ前から悪行に手を染めていたようなチンピラばかりだった。
学生だからと言って見逃してあげられるわけではない。バイクに変形したオービタルに乗ると目的地を確認する。
「(もうそろそろ、遊馬を見逃してあげるのも限界かもしれないな)」
あの太陽の様に周りを照らす少年。彼がナンバーズを複数枚所持していることは明白だ。倒せばナンバーズ回収は大きく前進する。
「(戦いたくないと思うくらいに関わってしまったのは、やっぱり私のミスだな)」
アクセルを回す。タワーを出ると目的地へ向けて勢いよく走り出した。
♯
繁華街から一歩奥に入った路地裏で虹色の翅はねを広げたドラゴンが雄叫びを上げる。
「ひっ、く、くるなぁ!」
「止めを差せ、銀河眼の光波竜ギャラクシーアイズ・サイファードラゴン!殲滅のサイファー・ストリーム!!」
「ぐあ、あああ!!」
学生服を着た男子生徒は私のモンスターの攻撃を受けて吹き飛んでいく。
LPが0になったのを確認して相手の元に歩み寄った。
「な、なんで貴方が、『天城セツナ』が、こんな」
「....さあ、誰かしらその人。知らない名前ね」
信じられないと言った顔でこちらを見てくる少年に惚けた返事をしながらいつも通りナンバーズと魂を奪い取る。耳を塞ぎたくなるような断罪魔を上げて少年は動かなくなった。
「No.21氷結のレディ・ジャスティス。回収完了」
「オ見事デアリマス!セツナ様!」
手元に残ったカードの名前を読み上げる。こんなものの為に、そう思いながらオービタルへナンバーズを渡そうとした瞬間こちらへ向かって誰かが歩いてくるのが見えた。この空間の中で動けるのはナンバーズを持つ者だけ。その姿が完全に現わになった瞬間、なぜここに居るのかという驚きではなく、バレるのが意外と早かったななんて冷静に思う自分がいた。
「おい何してんだよ、セツナ....」
「.....だからあの時言ったんだよ、早く帰りなさいって」
呆然とした顔で私の顔を見つめる遊馬に笑いかける。
「怖い女ヤツに魂を奪い取られるよ、ってさ」