ゲホっ、何度目か分からない咳を服の袖で押し殺す。口の中に漂う血の味が不快だ。息するのってこんなに難しかったかな。肺か気管なのか知らないが大分参っているらしく、息を吸う度ヒューヒューと音を立てる。
「セツナ様、本当ニコレ以上ハ」
「....ここまで来てやめらんないでしょ。第一、向こうは逃してくれなそうだよ」
目の前に対峙する遊馬とアストラルをみる。その目は絶対にこちらに勝利するという気迫に満ちていて、鬱陶しいことこの上ない。だが、こちらとて逃げる気も負ける気も更々無い。だから勝敗が着くまでこのデュエルは終わらない。
そう、私があの二人を倒してナンバーズを奪い取るまでは。
「オレのターン、ドロー!オレはガガガマジシャンを召喚!そしてカゲトカゲを特殊召喚!カゲトカゲは自分がレベル4モンスターの召喚に成功した時手札から特殊召喚出来る!」
「レベル4のモンスターが、2体」
「オレはレベル4のガガガマジシャンとカゲトカゲでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ、No.39希望皇ホープ!!」
「ハッ、出てきたねホープ!そうこなくっちゃ張り合いが無いわ。...さあ、かかってきな!」
「ああ!やってやるぜセツナ!かっとビングだ、オレ!!」
遂に現れた彼のエースモンスターと私のFAフルアーマーフォトンが対峙する。だが、その攻撃力の差は1500。小さくは無いこの差をどう埋めてくるか見せて貰おうじゃないか。
「オレは魔法カード『エクシーズの宝札』を発動!このカードは自分のフィールドにランク4以下のモンスター・エクシーズがいる時、そのランク分だけデッキからカードをドロー出来る!オレのフィールドにいる希望皇ホープのランクは4、よって4枚のカードをドロー!」
「いくぞ、遊馬!」
「おう!魔法カード発動!『ホープバスター』!このカードは自分のフィールドにホープがいる時、攻撃力の一番低い相手モンスターを破壊してその攻撃力分のダメージを相手に与える!!」
「いけぇ!ホープバスター!!」
「これでFAフルアーマーフォトンを倒す事が出来ればセツナのLPを0に出来る!」
「.....あらあら、もしかして勝った気でいるのかな。
この子が『どういう』モンスターなのか忘れてたの?
ギャラクシーアイズ・FAフルアーマーフォトン・ドラゴンの効果発動!相手が効果を発動した時、オーバーレイ・ユニットを全て取り除き、FAフルアーマーフォトンと相手モンスター1体を除外できる!そしてこのターンの終わりに除外された2体はフィールドへ戻る!」
「!?コイツ、元々のギャラクシーアイズの効果も持ってるのか!」
「いや、これはバトルではなく効果を無効にする能力。元のギャラクシーアイズよりも性能が強化されている...」
そこまで言うとハッとした表情になったアストラルは遊馬は指示を出す。
「まずい、これでこのターンの終わりにFAフルアーマーフォトンが戻ってくれば圧倒的に我々の不利!遊馬、カードを伏せろ!」
「くっ、オレはカードを伏せてターンエンド!」
「今ので私を倒せなくて残念だったね。
ーーさあ舞い戻れ、ギャラクシーアイズ・FAフルアーマーフォトン・ドラゴン!!」
そう言うとお互いのフィールド上にそれぞれのモンスター達が戻ってくる。
「(っ、)」
その瞬間、カクン、と唐突に膝が曲がって転びそうになるのを寸前で耐える。頭痛と耳鳴りが酷い、オービタルの慌てる声が聞こえるが返事をする余裕はなかった。
「セ、セツナ様!」
「...遊馬、先程から彼女の様子がおかしい」
「お前、凄く調子悪そうじゃねぇか!?」
「......」
「ア、当タリ前デアリマス!フォトン・モードハ物凄イ負荷ガ身体ニカカルデアリマス!コンナニ長時間維持シ続ケルナド通常ハ有リ得ナイデアリマス!!」
「「!?」」
「そ、そんなの今すぐやめろ!お前の身体が」
「.....敵の心配をする余裕があるのね。本当に、舐められたものだわ」
このお喋りロボットめ。オービタルが余計なことを話したことで遊馬とアストラルもこちらの異変に完全に気づいたらしく、こちらを困惑した表情で見つめている。
ゲホっ、とまた咳き込むと口元を押さえた袖に少量の何かが付着したのがわかった。口の中に広がる嫌な鉄の味。碌に街灯の無い路地裏の暗闇の中でもそれが赤い色をしていることは明らかだった。
袖口で乱暴に口を拭う、気力を振り絞って睨み付けるように遊馬とアストラルの方を向くとふたりはまた動揺したような顔を見せた。
「!お前それ、血...
「ーー止める?ここで?止めないでしょ、もう少しで貴方を倒してナンバーズが手に入るって言うのに」
「何言ってんだ!ナンバーズなんて、」
「私は今、その為にだけ生きてる。それに、人様の魂奪い取ってるのに今更自分の命が惜しいなんて思わない。当然の報いでしょ」
「.....セツナ、何故キミはそこまでしてナンバーズを、」
「こっちだって別にそんなもの、欲しくないんだよ。
....でも、」
弟を助ける為には、これしかない。兄さんも私も、もうこの道を進むしかない。例え何を犠牲にしてもーー
一度天を仰ぐように顔を上に向ける。しっかりしろ。まだここで倒れる訳にはいかない。どうにか呼吸を整えてデュエルを再開する。
「....お喋りが過ぎたな。私のターンだったね」
「っ、セツナ!」
「喧しいんだよ!止めたきゃデュエルで勝ってみな!
この首が落とされるまで、私は絶対止まらない!!」
「...なんで、なんでだよ...デュエルってそんな、苦しかったり悲しかったりするものじゃないんだ、絶対に」
「遊馬、集中しろ!このデュエルに勝たない限り我々の言葉は彼女に届かない!」
「ちくしょう、...わかってるやってやるよ!」
「私のターンよ、ドロー!....最後まで威勢が良かったのは褒めてあげる。でももう終わりにしましょ。
装備魔法『ギャラクシー・ショット』を発動。このカードはギャラクシーアイズにのみ装備でき、相手にダメージを与えた時ギャラクシーアイズをリリースすることでその攻撃力分のダメージを相手に与える!」
「くっ、除外されたホープにオーバーレイ・ユニットは残ってねぇ!」
爆風と共に遊馬のLPが2500まで削れる。正直こっちはもういつ倒れたっておかしくない、ここで畳み掛ける。
チラリと右手の薬指に嵌めている指輪が目に入る。さっきからビリビリと薬指が痛い。これもフォトン・チェンジの副作用なんだろうか。どこか咎められているような気がして指輪を見ないよう視線を逸らす。
「(お願い、あと少しなの)」
「...この瞬間、『ギャラクシー・ショット』の効果発動!ギャラクシーアイズをリリースしてその攻撃力分のダメージを与える!ギャラクシーアイズ・FAフルアーマーフォトン・ドラゴンの攻撃力は4000!」
「ヤベェ!このままじゃ、」
「私達の敗北....」
「さようなら、遊馬、アストラル。案外楽しめたわ、これで、っ...!」
ーー「ダメだよ、姉さん。これ以上はもう」
勝てる。これでトドメを刺して、またナンバーズを回収できる!
そう思いながら最後の指示を出そうとした瞬間、耳元でハルトの声が聞こえた。え?と思った瞬間、視界がぐにゃりと大きく歪む。身体が言う事を聞かない。
不味い。そう思った時には私の身体は地面に崩れ落ちていた。
♯
「その手を離せ、....オレの連れだ」
「ひぃぃっ!シャ、シャーク!?」
夜、繁華街はこれから本当の姿を見せる時間だ。
普通中学生が彷徨かないような時間、偶々オレの目に映ったのは遊馬といつも一緒にいる友達ダチの女子が男に絡まれている所だった。
素通りする訳にもいかず、一声かけると男はすぐに消えた。
「あ、ありがとうシャーク」
「こんな時間に、こんな場所を女子一人でほっつき歩くんじゃねぇ。早く帰るんだな」
「ひとりじゃないの、遊馬がさっきまで居たはずなんだけど...」
「ーー遊馬が?」
「え、ええ。でも気づいたら居なくて」
探してるんだけど...、そう言った時、隣を通り過ぎて行った顔の赤いサラリーマン達の話し声が聞こえた。
「なんかよお、さっき通ってきた向こうの路地裏から男の叫び声聞こえなかったか?」
「それってあれかー?今流行りのナンバーズ・ハンターってやつじゃねぇか?戦ったデュエリストの魂を抜いちまうっていうさあ」
「魂!?みんな廃人みたくなっちまうっていうアレか!
いやあーおっかねぇなあ、ははは。まあ、飲み屋には流石にそのナンバーズ・ハンターもこないんじゃねぇか!」
「おっ、違いねぇ。もう一軒行こうぜぇ。もしそのナンバーズ・ハンターとやらが来たら一杯奢ってやろうぜ」
一緒に酒でも飲んだら見逃してくれるんじゃねえか、そもそも俺たちそんなカード持ってねえだろ、はははは。そう言いながら既に千鳥足のサラリーマン達は夜の繁華街に消えて行った。
「ナンバーズ・ハンターってもしかして....、ってシャーク!」
嫌な予感がして走り出す。胸騒ぎと言ってもいい。
後ろから追いかけて来る気配は感じたが構っている余裕はねぇ。
「(もしや、遊馬に何か....)」
ナンバーズ・ハンター、最近巷で話題になってるデュエリスト狩りをしてる奴の名前だ。それもただのデュエリストじゃなく『ナンバーズ』を持つ者を狙うという。
相当な腕を持つらしく、もう何人ものデュエリストにデュエルを挑み、勝利してはナンバーズを奪い取っている。そして、ナンバーズを奪われた者は魂まで抜かれたように廃人になってしまうという話だ。
廃人になった被害者達から話は聞けず、その姿も使用するモンスターも、一切が謎に包まれており得体が知れない。ただ最近の話ではナンバーズ・ハンターは複数いるのではないかと言われている。被害者の数がハンターひとりと仮定するには多すぎるからだ。
遊馬もナンバーズをもつデュエリストのひとりだ。狙われる可能性は十分にある。アイツもデュエリストの端くれと言えるくらいには成長して、そこいらの奴に簡単に負けるような事は無いだろうが、万が一と言うことは大いに考えられる。
あのサラリーマン達が男の悲鳴を聞いたというのはこの辺りだろう。薄暗い路地裏を駆け抜ければ前方でデュエルしている様子が微かに見えた。やはり、遊馬のような声が聞こえる。
「(お前に、あの時の借りを返す時が来たようだぜ)」
ナンバーズ・ハンターだか何だが知らねぇが、オレがぶっ潰してやるよ。
そう思いながらDゲイザーを装着しつつ走るスピードを上げる。ビルの合間を抜け開けた空間に辿り着いた時にオレが目にしたのは、やはり遊馬がデュエルしている姿だった。
ただし、その相手はもうひとりの『恩人』
「は....?」
闇に溶け入りそうな黒いコートに同じく黒く長い髪を揺らす女。血のように赤い瞳は今にでも射殺さんと遊馬を睨み付けている。表情は痛みを耐えるように歪められているし、放つ言葉は鋭く低く、怒りと憎しみが込められている。
いつもとは全く違う。だってアイツの髪は光る様に煌めく銀髪で、瞳は冬の海を凍らせた様な美しい水色で、いつも大輪の花が咲いた様で笑っていて、その声は穏やかにこちらの鼓膜を揺らす。
だから何一つ同じじゃない。無いのに、どこからどう見ても目の前の女の姿はセツナにしか見えなかった。尋常じゃないその雰囲気に言葉を失う。
「どうなってやがる...」
なぜこのふたりがこんな所でデュエルを、セツナのあの姿は何だ。遊馬のフィールドにはホープが、セツナのフィールドには見たことも無い黒いドラゴンがいるが状況は明らかに遊馬の劣勢だった。
「っ、セツナ!」
「喧しいんだよ!止めたきゃデュエルで勝ってみな!
この首が落とされるまで、私は絶対止まらない!!」
右手で自分の首に触れ、怒りのままに怒鳴り散らす彼女に遊馬は一層悲しそうな顔をする。
こんなにも感情を剥き出しにして戦う姿を未だかつてオレは見た事がない。
そしてセツナのターン、装備魔法の効果で遊馬のLPを削ると更に効果でトドメを刺しにかかる。
「さようなら、遊馬、アストラル。案外楽しめたわ、これで、っ...!」
肩で息をしながらそこまで告げたかと思うと、途端に彼女の身体は糸の切れた操り人形のように地面に崩れて行った。
セツナ!名前を呼びながら一目散に彼女へ向かって駆け出した。
♯
「....っ、ゲホっ、は....っ」
「セ、セツナ様!!」
「「セツナ!」」
「、来るな!!」
「「!?」」
倒れた身体を腕に力を込めて何とか起こす。まだARビジョンは崩れていない。デュエルは続行できる。
指示を待つFAフルアーマーフォトンを一瞥した後、よろめきながら立ち上がりながら口を開く。
「....まだデュエルは、終わってないわよ」
「!?そんな身体で、これ以上やったら」
「明らかに身体機能に異常をきたしている。このまま続行すればその命さえ危うい」
「なっ、」
「おい遊馬、セツナ!テメェら一体、何やってんだ!!」
「「!?」」
「シャーク!?」
「....何で貴方が、ここに」
「そんな事はどうでもいい!お前、」
「部外者は口を挟まないで」
「....何だって」
「聞こえなかったの?関係ない奴は黙ってろって言ってんだよ」
睨み付けるように凌牙くんに視線を向ける。険しい顔をしているがその表情は苛立ちではなく困惑と心配故だろう。
何故こんなところに、時間停止を切ったのは失敗だった。....いや、丁度良かったのかもしれない。最初から無理だった、彼の希望で在り続けることなど。烏滸がましい、それに演じる事にも疲れた。
だって本当の私は『憧れ』でなく『憎しみ』の対象なのだから。
呼吸は整わない。自分でもよく立ってるなと思う。
「....楽しいハンティングの最中に横槍を入れないで。もう直ぐナンバーズが手に入るっていうのに」
「!お前、それ、」
「ああ、でも丁度良かった。もうネタバラシしようね。
ーー凌牙くん、貴方の知ってるセツナはね、もう何処にもいないのよ。貴方の憧れたデュエルチャンピオンは死んじゃったの。幻だったのかもねぇ、だってこれが今の、...いいえ本当の私の姿だからさ。
ナンバーズと共に人の魂を狩り取る死神。どう、驚いた?」
「....お前、オレがそんな事信じるとでも思ってんのか」
「信じるも、信じないも貴方の自由だけど目の前の事実は変わらないよ。
もしかして、あそこの馬鹿みたいに私が何かに操られてるとでも思ってる?残念ながら正気だし本物の『天城セツナ』だよ。信じられないなら、そうだなあ...、抱き締めてあげようか?またあの夜みたいに」
「テメェ...」
精一杯蔑むように笑いながら両手を広げると、その顔は困惑と憤りに歪んでいる。ちらりと見ると遊馬とアストラルも私達のやり取りにやはり困惑したまま固まっているようだ。
まるで映画の悪役みたいだと心の中でひとり笑う。
「やだ冗談だよ、冗談。そんな怖ーい顔しないで。
....私はね、ナンバーズを持たない人には興味ないの。貴方がナンバーズを持ってないのは知ってる。だからそこで大人しく指を咥えて見ているといい」
貴方のお友達が、私に魂を奪われる様を。
そこで漸く視線を遊馬とアストラルへ戻す。弾かれたように遊馬は肩を跳ねさせる。
「待たせてごめんなさい。さあ、FAフルアーマー
フォト、」
「ダダダ、駄目デアリマス!!コレ以上ハ!!」
「....お前まで私の邪魔をするの、オービタル」
目の前に立ちはだかるロボットにげんなりとした視線を向けるとひぃ、と震えながらもその場を動かない。
「オービタルハセツナ様ヲ守レトカイト様カラ言ワレテイルデアリマス!コレ以上ハ絶対ニダメデアリマス!!」
「....まさか身内に邪魔されるとは思わなかったわ、そこを、
「ーー辛うじて及第点だ、オービタル7」
「「!?」」
ARビジョンを展開していたせいか、頭上をホバリングしてる音が全く聞こえなかった。
上空に突如として現れた一機のヘリから飛び降りた白いコートの男は私と遊馬の間に着地すると真っ直ぐこちらに向かってくる。
「あれは、カイト!」
「彼まで揃うとは...」
驚く遊馬とアストラルには見向きもせず、険しい顔をして私から視線を離さないカイトは私の目の前まで来るとオービタルに確認をとる。
「フォトン・モード身体負荷率は」
「ゲ、現在92%!生命維持機能ニ著シイ影響ガ出テイルデアリマス!!」
「....お前がここまで馬鹿だとは思わなかった。今すぐにフォトン・モードを解除しろ」
「何を言ってるの、あと一撃でまたナンバーズが手に入るって言うのに。...邪魔しないでそこ退いて」
「セツナ!」
「っ、私の身体がどうなろうがどうだっていいでしょ!今必要なのはナンバーズだけ、その為だけに生きてるし、その為に他者を犠牲にしても構わない!まともな感情ならあの日に捨てたきたわよ!カイトだってそうでしょ!!」
「っ...」
腕を掴み此方を静止する兄を払いのける。よろけながら感情のまま怒鳴りつけると一瞬傷ついた様な表情をする兄に申し訳なさが込み上げる。
「...だから、早くそこを退いて。もう、」
「!セツナっ」
「セツナ様!」
「「!!」」
とっくに限界なのよ、見てわかるでしょ。そう続けようとしたのに気づけば兄の腕の中に居た。もう上手く力が入らない、咳込めば兄の纏う白いコートが血で汚れていった。
視界の隅でARビジョンが崩れていく、握っていられなくなった手札がパラパラと地面に落ちていった。流石にフォトンチェンジが維持できなくなったようで髪が元の色に戻っていく。それもその筈、もう辛うじて意識を保っているような状態だった。
「....やはりあの日、お前を巻き込むべきじゃなかった」
自責の念が強く込められたその言葉の後、ぐっと強く抱き締められる。素早く横抱きにされたかと思うとオービタルにカードの回収を命じて歩き出す。
「おいカイト!セツナは、」
「!貴様は...、何故こいつの名を。...生憎先を急いでいるデュエルの申し込みなら後にしてもらおう」
「おいテメェ、コイツを何処へ連れてく気だ」
「...次から次へと、誰だ貴様は。そこを退け」
「オレの事なんざどうだっていい。そいつに何かしようってんなら、」
「....『何か』だと?もう既にコイツの身体にはその『何か』が起こっている。このまま放っておけば死ぬ」
「「!!」」
「早く適切な処置を施さなければ。行くぞ、オービタル7」
「カ、カシコマリ!!」
「!おい、」
「これ以上オレの行く手を阻むな。
....妹に何かあってみろ。お前達全員、何処に居ようが探し出して地獄に送られた方がマシだと思わせてやる」
「!....妹、だと」
驚愕する凌牙くんの声が聞こえる。それを最後に私の意識は途切れた。
♯
ヘリの飛び去っていった方向を呆然と見ている遊馬に掴みかかる。
「おい遊馬!一体どうなってやがる!アイツは、セツナは」
「オ、オレだってわかんねぇよ!叫び声が聞こえて、ここに来たらセツナがいたんだ。自分はナンバーズ・ハンターだって、今までの姿は全部嘘だって.....」
「テメェ、そんな嘘にもならねぇ言葉信じたのかよ」
「信じるわけねぇだろ!だからデュエルしたんだ!オレが勝って、そしたらそんな事やめさせてやるって、でも...」
途中からずっと具合が悪そうで、いきなり血吐いて倒れちまって...、オレ何が何だかもうよくわかんねぇよ...。
半泣きの遊馬を見て舌打ちしながら手を離す。
「面白いじゃん。その言葉、忘れないでよね」
「貴方に色々なことがあったように、私にも色んなことがあったの」
「貴方の知ってるセツナはね、もう何処にもいないのよ。貴方の憧れたデュエルチャンピオンは死んじゃったの。幻だったのかもねぇ」
今までのお前の姿が全て偽りだと?そんな事ある訳がねぇ。オレがそんな紛いものにこんなにも焦がれるとでも思ってんのか。お前も、お前のデュエルも間違いなく本物だった。
苛立ちから強く拳を握りしめる。絶対に理由がある、アイツが道を踏み外さなくちゃいけなくなった理由が。
そしてその理由にはきっと、
「ーーええ、とっても」
弟が絡んでる、そうだろ?セツナ。