「あの日お前はフォトン・モードの許容上限を大幅に超えていた。大幅に、だ。副作用については予め何度も伝えていた筈だが?脳、心肺機能、気管へのダメージ...、諸々考慮してもあのままデュエルを続行していたら取り返しのつかない事態になっていたとしてもおかしくはない。....何か言う事はあるか」
「あー、.....申し訳ございませんでした」
「それとその左肩の火傷痕は何だ」
「.....いや、えっと...、前にちょっと、やらかしちゃって....」
「......暫くはこの部屋の外には出さん。大人しくしていろ」
「え、それ監き」
「大人しく、していろ」
「ハイ.....」
「オービタル、しっかり見張っておけ」
「カ、カシコマリ!」
それだけ言うと兄さんは部屋の外に出ていってしまった。あーあ、火傷の事バレちゃった。凄い顔してたな。
残されたオービタルに話しかけようと少し下を向くと首がびょーんと伸びてきた。
「オービタル、あの
「本当ニ!良カッタデアリマス!コノオービタル、コノママセツナ様ガ目覚メナカッタラト、」
「うん、ごめんね」
「反省シテイルデアリマスカ!?アンナ無茶ヲシテ!
カイト様ハ目ガ覚メルマデズットセツナ様ノ側ニ居タデアリマスヨ!!」
「....そっか」
「ハルト様モ心配ソウニサレテイタデアリマス。モット自分ノ事ヲ大事ニシテ欲シイデアリマス!」
「うん、ごめんって。ありがとうね、オービタル」
喉乾いちゃったな、飲み物取りに行ってもいい?と問いかけると問いかけると絶対にそこから動くなと釘を刺され、オービタルも出ていってしまった。
ばふん、と起こしていた上体をまたベットに沈める。左腕に繋がっている点滴の管が揺れてカラカラと音を立てた。
遊馬とデュエルしてから三日間眠り続け、つい先程目が覚めたところだ。
あの日ぶっ倒れた私は兄さんに回収され大急ぎでタワーに戻り、処置を施されたらしい。ここにはその辺の病院並みの設備が揃っているし、私の体調不良の原因に関する対応もできる。一通りの処置が終わって、今は自室で点滴だけ打たれて眠っていたようだ。
眠り過ぎて多少頭がぼんやりしているが、派手に血を吐いたりした割には軽症な気がする。もういつも通りと身体を動かせそうである。
「ま、あの感じじゃ暫く外には出られないけど」
そうは言ってもまた数日後には動き出すことになるだろう。我々兄妹はかなり自由に行動してはいるが大前提としてDr.フェイカー、もといMr.ハートランドの指示に従って動いている。勝手に手駒を減らす事は許されない。
その内またナンバーズ回収の進捗状況を報告しろとでも連絡が来る。ここまできて兄さんひとりにまた任せるわけにはいかない。
だから今は大人しく養生していよう。また行かなくちゃいけない時にすぐに戦えるように。
そう思いながら目を閉じる。明かりが少し眩しくて右手の甲で目を隠すように覆った。
「(遊馬と凌牙くん、私の事探してそうだなあ)」
生きてるとだけでも伝えた方がいいのかな、と思った後いやいやと自分自身で否定する。もう友達でも仲間でも何でもないのだ。あの日私が否定したじゃないか。
今の私からすればナンバーズを所持する限り、全てのデュエリストが『狩り』の対象である。そして逆に持たぬ者は私に必要のない存在。そう、ただそれだけなんだ。
いい加減甘い考えはもう捨てなければ。いつまでも曖昧にしているから苦しくなる。どこかに救いがあると思うから縋りたくなる。
そんなものは何処にもないんだって理解しなくては。後戻りなんて出来ないんだから。
むくりと起き上がると点滴スタンドを引き摺りながらデスクに置かれたデッキケースを手に取る。
「....あなたと、お別れしなくちゃね」
漆黒のサイバーエンド。私の魂にして心の拠り所。
今だってあなたの事が大好き。でも、今の私が持っているには余りにも気高すぎる。私はこれ以上、『サイバー』を穢したくはない。
そっとカードを撫でる。きらりと目が光った気がするけれど、それは多分私が泣いてるせいでそう見えただけだろう。
♯
「安心したよ、キミが学校に来てくれるようになってね」
「.....」
「遊馬がキミの心を変えたのかな?ーー彼には太陽の様な不思議な力がある。何故か遊馬に関わった人間はいつの間にか自分の心を照らし出されてしまう...そう思わないか?」
「...さぁな」
先公に話しかけられたが適当に返事してその場を去る。
学校には来たが授業に出る気にはならない。外が見渡せる場所まで来るとカードを眺めて時間を潰す。
「太陽の様な不思議な力、か」
確かにそうかもしれない。オレもアイツに救われたひとりだ。闇の中に沈んだオレの心を真っ直ぐぶつかってきたかと思えば無理矢理引き上げやがった。...もしかしたらアイツもそうだったのかもしれない。アイツにとっての遊馬も、真っ暗な闇の中で見つけた一筋の希望ひかりだったのかもしれない。
「....ちゃんと生きてんだろうな、」
兄だと言う男と共にセツナが消えてから一週間が経った。度々高校に確認しにいったがあれから学校には来ていないようだった。
冷静になって考えれば血を吐いて倒れた人間が一週間で学校に来れる訳がないとも思うが、オレが辿れるアイツへの手がかりはこんな所しかなかった。遊馬の方も何も分からず仕舞いのようでオレの顔を見る度悲しそうな顔で首を横に振る。
何も出来ない自分が歯痒かった。何が助けてやる、だ。助けられたのはオレの方だった。寧ろきっと苦しめていたんだ。アイツは必死に『あの頃のセツナ』の仮面を被ってオレに接していた。オレを闇の中から救うために、自分の事情をひた隠しにして。
「クソ、っ」
手摺に拳をぶつけると鈍い痛みが広がった。どうにかしてアイツを見つける手段はないか、そう思っていると視界の端に不審なゴミ箱が動くのが見えた。
「....?」
そのゴミ箱の後を着けていけば何故か男子更衣室へ入っていく。夢中で何かを探しているようで、こちらには気づいていない。
「(このロボット、どこかで)」
こちらが記憶を遡っているとそのロボットは目当ての物を見つけたらしく、ロッカーのひとつからあるものを取り出した。
「(あれは、遊馬のペンダント!)」
任務完了とかほざいているロボットから素早くペンダントを奪い返す。
「お前、セツナと一緒にいたロボットだな。アイツは今どこだ、お前はここで何をしている」
「!?キサマアノ時ノ!...ソ、ソノペンダントヲ返スデアリマス!デナイト私ハスクラップニ...」
「話が通じねぇのか。訳のわからねぇ事を...」
蹴り飛ばして大人しくなったかと思えばロボットは意地でも遊馬のペンダントを奪い取ろうと変形して向かってくる。
「ヨクモヤッタナ...コウナッタラ、ソノペンダント絶対ニ返シテ貰ウデアリマス!オ前カ私ノドチラカ、スクラップニナルノヲ賭ケテ...」
「何だ、コイツ...」
ドリルで壁や床を破壊しながらこちらに襲いかかって来るロボットから何とか逃げて屋上まで辿り着く。
「(振り切ったか、)」
そう思った瞬間足元のコンクリートがひび割れ、ロボットが飛び出してきた。
「ソノペンダント、寄越スデアリマス!!」
「くっ!」
「オービタル!お前何をしてるの!?」
万事休すかと覚悟したその時、オレとロボットの間に割って入ったのは先程まで辿り着くのに手掛かりひとつないと思い、嘆いていた女その人だった。
♯
あれから一週間が経ち、私達は拠点を湾岸地区の一画に移していた。部屋からの軟禁状態は溶けたが、未だこの秘密基地の様な場所の外から出る事は許されていない。
「ねぇオービタルー?いないのー?」
ひたすら寝て、起きてはご飯を食べて寝る生活を続けているせいで身体が鈍っている。もう身体機能の回復は十分だろう。
逆に兄の顔色は悪い。ここに来るまでに仮眠を取っている兄を見つけたが体調もあまり良くなさそうで、私が休んでいる間また無理をさせてしまったのだと申し訳なくなる。
兄はゆっくり休ませておいて、一緒にご飯でも食べようとオービタルを探しながらこの拠点の中枢であるコンピュータールームに入る。やはり誰もおらず、中央のモニターには見知った人物が大きく映っていた。
「遊馬?....皇の鍵について分析してる?」
モニターには皇の鍵についての詳細な分析が載っている。サラッと確認する限り、この世の物質ではないというのが結論だろう。
「もしかして、アストラルに気づいた...?」
兄さんが指示を出してるならあんな所で眠りこけてないで一緒に行くはずだ。オービタルのみが居ないとなるともしかしたら暴走してあの鍵を奪いに行ったのかもしれない。
「....ちょっと見に行くだけ。勘違いならすぐ帰ってくればいいだけ」
今日は平日、遊馬は今頃学校で授業を受けているはずだ。オービタルが暴走して学校で大暴れしてない事を祈りながら学校へと急いだ。
「(って、やっぱり暴走してるじゃんか!しかも何で凌牙くんが!?)」
男子更衣室から勢いよく出てきたふたりから身を隠す。鍵を守っているのは何故か凌牙くんで、暴れるオービタルから必死に逃げている。
こんなに大暴れしてどう説明をつけるつもりだったんだ、あのロボットは。とイライラしながらふたりが辿り着くであろう屋上へ先回りする。
いよいよ凌牙くんにドリルを突き立てようとするオービタルの前に立ちはだかると、前からも後ろからも驚く声が聞こえた。
「オービタル!お前一体何をしてるの!?」
両手でこの先は通さないと言わんばかりの意思表示をしつつ怒鳴りつける。
「セセセ、セツナ様!?オ部屋デ寝テ居ナイトダメデアリマス!!」
「!?お前っ、身体は」
「延々と寝かされすぎてすっかり身体が鈍ってるよ!…貴方を助けた訳じゃない。早くその鍵持って消えて」
「!」
一週間ぶりの再会を喜ぶこともなく、彼に視線を向ける事もなく短くそう告げると今度はオービタルへ向かって怒鳴りつける。
「こんな泥棒みたいな真似をして...、ハートランド学園は私の狩りの範囲だって忘れたの!?こんな事しなくたって九十九遊馬のナンバーズも、必要ならその鍵も私がデュエルで勝って奪い取ってくるわ!それともカイトの、兄さんの指示なの!?」
「イ、イエ。デスガアノ鍵ガナイトスクラップニ...」
「バカなの!?こんな目立つ暴れ方してどう始末をつけるつもりだったのよ!このまま学校を破壊しようていうなら私がお前をスクラップに、
「そこまでだ、オービタル!勝手な真似を…」
「カ、カイト様...」
「「!!」」
響き渡る聞きなじみのある声にちょっと登場が早すぎるなと舌打ちする。この場に降り立った男の方を向くと随分と機嫌の悪そうな顔がこちらを見下ろしていた。
突如として現れた兄にに睨まれオービタルは震えている。すぐさまこちらを見ると鋭い視線を寄こしながら高圧的な物言いで私に言い放った。
「あの拠点の中から出るなと言ったはずだが」
「貴方の作ったロボットが暴走してるのを止めに来てあげたのに、随分な物言いね。感謝の言葉くらいないわけ?」
「成程、感謝しよう。...ではそのペンダントを持って俺の元へ戻れ」
「嫌だ。ここは私の狩場よ、指示は受けない。大体、こんな泥棒みたいな真似をして恥ずかしくないの?」
「俺達に手段を選んでいる余裕があると思っているのか」
「だとしても、これ以上無駄な罪は増やしたくない。…奪いたいものならデュエルで勝って相手から奪い取るわ」
「そのデュエルを挑んでついこの前死にかけたのは誰だと思っている。病人は大人しく寝ていろ」
「自分こそ病人みたいな真っ白い面しといてよく言う。ここは私に任せて早く家へ帰って寝たほうがいいわよ」
兄の方へ向いて話し続ける。後ろに凌牙くんを庇うような形になっているが、彼は様子を窺うばかりで全く逃げようとしない。
心の中でまた舌打ちすると、更に眉間に深い皺を寄せた兄が続ける。
「お前と話していても埒が明かん。…貴様、あの時の男だな。そのペンダントを渡してもらおう」
「断る。これはお前のものじゃない」
「知っているさ、九十九遊馬のものだ」
「!遊馬を知っているのか」
「ああ、奴はナンバーズを持っているからな」
「ナンバーズ…、やはり貴様もナンバーズ・ハンター!ハッ、兄貴の癖にこんなことにセツナを巻き込んだ張本人ってワケだ」
「!違っ」
「…ほう、どうやら気づかぬ内に大事な妹に不愉快な虫が纏わりついていたようだ。俺を知っているということはお前もナンバーズを?」
「持っている、と言ったら?」
「ならば俺にとっては好都合!害虫駆除を兼ねてナンバーズカードとそのペンダントどちらも頂く!デュエルだ!」
「黙って聞いてりゃ人のことを虫扱いたぁ、イラッとくるぜ!そのデュエル受けて立つ!」
「!?ちょっと待って、兄さん!彼はっ」
「ーー余計な事言うな。お前は黙って見てろ」
「っ、」
彼はナンバーズを持っていない、デュエルをする意味はない。
そう反論しようとすると何も言わせないとばかりにあっという間に後ろから抱きしめられるように凌牙くんに捕らえられる。
この表現なら恋人同士のスキンシップのようだが実際は犯人に捕まった人質のような絵面だ。左手首は掴まれ、口元は彼の手のひらに覆われていて碌に声を発することもできない。耳元で黙ってろと囁かれたのに対して、辛うじて動かせる首を捻って何をするんだと言わんばかりに睨みつけると至近距離で視線が絡み合った。彼の瞳には有無を言わさぬ強さがある。
「貴様…、気安く妹に触れるな!オービタル!」
「カシコマリ!セツナ様ヲ離セ!!」
「セツナ!チッ、」
「な、わっ、」
顔を般若のように歪めながら猛烈に憤りを露わにしている兄の指示を受けたオービタルが襲い掛かってくる。体制を崩した私達を引き離すと飛行モードになったオービタルは私を抱えて兄さんの元へ飛んでいく。連れ戻されるといきなり手首と顎を掴まれて視線を合わせられた。
「!ちょっ、と」
「あの男は俺が狩る。お前は黙ってそこで見ていろ」
「だから!凌牙くんは、」
「…黙っていろ、と言っている」
「!」
その瞬間、喋ったはずの声が自分の耳に届かなくなった。どいつもこいつも黙ってろ黙ってろって…私を何だと思ってんだ、お得意の科学の力をこんな風に悪用するんじゃないと怒りそのままに睨みつけるとトン、と軽く肩を押される。オービタルに支えられる私を一瞥して視線を凌牙くんへ向けた。
「これで暫く声は出まい。そこで大人しくしていろ。…オービタル」
「モ、勿論デアリマス!スクラップニナッテモ離サナイデアリマス!!」
がっしりと掴まれた腕を見て、放してくれとオービタルに視線を向けると「ダメデアリマス!カイト様ノ命令ハ絶対デアリマス!」と一刀両断されてしまった。目の前のふたりは準備が整ったようで既にARビジョンが展開しデュエルが始まっている。
「(何でこんなことに…いくら凌牙くんとはいえ、兄さんには…)」
今の兄はどんなに低く見積もっても私と同じか、それ以上に強い。いくら彼とは言え勝つことは難しいだろう。正直勝敗は決まっているようなものだ。しかも…、
デュエルというのは一種の心理戦だ。強者同士であれば在るほどに、相手の手の内や考え、出方を読みあって自分の出せる手札カードで相手の思う展開を遮っていかなければ勝つことはできない。数手先の展開を読んで罠を張ることなど当然だし、もしも考えが相手に分かっていては勝てる試合も勝てなくなる。
そう思いながら見守っていると凌牙くんが食らいついているものの流れはやはり兄優勢で進んでいく。それもそのはずだ。
「(これは多分兄さんは凌牙くんの『狙い』を読んでる、だとすればこの後召喚されるのは…)」
「現れろ、No.30!全てをその忌まわしき力で溶かし尽くせ!破滅のアシッド・ゴーレム!!」
やっぱりこのモンスターか!現れた禍々しいモンスターを見る。ダメだ、このモンスターは、凌牙くん気づいて。
そう念じるも虚しく、彼は罠カードによりアシッド・ゴーレムのコントロールを奪い取った。
「カイト様、コレッテマズインジャ...」
「お前は下がっていろ」
「……」
心配するオービタルを一蹴すると兄はこちらに視線を寄こす。
もうやめてくれ、そういうつもりで首を横に振るも、兄は眉一つ動かさず正面を向いてしまった。進んでいくデュエルの中、次々と明かされていくアシッド・ゴーレムのからくりに凌牙くんはどんどん追い詰められていく。
悔し気に目を伏せる様子を心苦しく見つめていると不意にこちらを向いた彼と視線がぶつかった。
「!」
「……っ」
「…そうか、そうだったな遊馬」
そういうと彼は首から下げている皇の鍵を一度強く握りしめるとこちらを真っ直ぐ見たまま言う。
「ーーそれにアンタが見てる前で、これ以上無様なデュエルはできねぇな」
「!」
そう呟くと闘志が戻ったような顔で兄さんを見据えた。彼はまだ勝つ気なのだ。
しかしそんなものは関係ないと言わんばかりに兄は執拗に凌牙くんを追い詰めていく。ギャラクシーアイズを召喚した兄はアシッド・ゴーレムを破壊した。
「ギャラクシーアイズはナンバーズじゃない!なぜナンバーズを破壊できる!?」
「オーバーレイ・ユニットがなくなったアシッド・ゴーレムは攻撃を受けた時無条件に破壊される」
「!?くっ、だが今の攻撃はお前のプレイングミスだ!アシッド・ゴーレムの呪いからオレを救うハメになったんだからな!」
「ハッハッハ!俺がミスだと?とんだロマンチストだな!」
「何?」
「呪いはまだ終わっていない。アシッド・ゴーレムが破壊された時、そのコントローラーに2000のダメージを与える」
「!」
「な、なんだと…」
アシッド・ゴーレムの効果により敗北した凌牙くんが大きく吹き飛ばされていく。首に下げられていた皇の鍵が衝撃で外れ、地面に転がった。
「すまねぇ遊馬、セツナ…」
「狩らせてもらうぞ、お前の魂ごと」
「っつ、ダメよ!兄さん!!」
「アア!セツナ様!」
やっと声が出る。無理やりオービタルを拘束を振り切り凌牙くんの前に辿り着くが、一歩遅かった。
断罪魔のような声を上げながら兄に魂を奪われた凌牙くんの意識はない。
「!この魂には、ナンバーズがない」
「だから、何度も言おうとした!彼はナンバーズを持ってないって!早く魂を凌牙くんへ返して!彼は無関係の一般人よ!!」
「し、シャーク!?セツナ!」
「!遊馬」
「九十九遊馬か」
「お前は、カイト!」
皇の鍵を探していたであろう遊馬が我々の元へ辿り着きこの状況をみて困惑している。小鳥ちゃんや鉄男くんといったお友達も集合し、何事かと見守っている。
「カイト様、現在フォトン・モード二ヨル身体負荷ガ、」
「わかっている」
「!そ、それは皇の鍵!」
兄は地面に落ちた皇の鍵を拾うと行くぞ、と私に声をかけて歩き出す。咄嗟にその腕を掴んで足を止めさせる。
「彼に魂を返して。私達には必要のないものよ」
「…何故この男に拘る」
「拘ってなんかない!ナンバーズを持たない一般人の魂まで狩るのは、」
「邪魔をする者は全て俺達の敵だ。例えナンバーズを持っていなかろうとな。野放しにしておけばそれだけナンバーズの回収に時間がかかり、ハルトの命が危うくなる。.....お前はハルトの命よりもその男が大切なのか」
「!?そんな事、は....」
「ならその男がどうなろうと構わないだろう。...帰るぞ」
「....っ、」
肩を掴まれて顔を覗き込まれながら言われた一言に何も返せなくなる。素早くオービタルを飛行モードに変えると私を抱えて大空に飛び立つ。
一瞬遊馬と目が合う、困惑した彼の目を見ていられずすぐに目を逸らした。だが、逸らした先には意識を失い、横になって動かない凌牙くんがいる。
「(...ふたりとも、ごめんなさい)」
遊馬のアストラルを呼ぶ声が飛び去る私達を追いかけて来る様にずっと耳に聞こえていた。