「Ⅳって言うんですね、芸名?変な名前」
初めてデュエルした後、負かしたオレにそう言い放った女は兄に似た綺麗な銀の長い髪を靡かせながら笑った。
この女はオレが『何者』なのかを知らない。それもその筈、最後に出会ったのはもう10年は前だろう。面影はあったとしてもその存在と一致させるのは難しい。
だがオレは知っている。コイツは憎い復讐相手の娘で、オレ達家族の敵だ。
「でも凄く、強かった。負けるかと思った相手に出会えたのは久しぶりでした。また戦えるのを楽しみにしてます」
「......ハッ、一回勝ったくらいで調子に乗ってんじゃねぇよ。次はそのサイバーエンド、必ずオレがぶっ潰してやるよ」
「.....成程、それが本性か」
だいぶ猫被ってるね、猫っていうより虎か。オレの言葉に砕けた口調でそう返してきたアイツはまた面白そうに笑った。
憎い仇の娘、そしてよく笑う女。
それがオレの10年ぶりに会った『天城セツナ』に対する印象だった。
♯
「ハルトはあの中だ!間違いねぇ!」
「...貴様に何故それがわかる」
「と、とにかくわかるんだよ」
「何がわかる!兄弟でもない貴様に、ハルトの何が、」
「カイト様!アノ中カラ強力ナバリアライトノ反応ヲ確認!セツナ様デアリマス!アノ中ニセツナ様ガイルデアリマス!!」
「!本当か」
「セツナが?...おい、そういや何でセツナがいないんだよ。アイツならお前と同じように死に物狂いでハルトを探してるはずだろ!アイツはどこに行ったんだよ!」
「.......」
変な所で勘の鋭い奴だ。いや、今のオービタルの言葉を聞けば誰でもわかるか。
余計なタイミングでセツナの所在を知らせたオービタルに視線を向ければ途端にガタガタと震える。
「ヒィ!スクラップハゴメンデアリマ、
「ちょっと、セツナさんに何があったの!答えて!教えなさいよ!!」
「ク、苦シイ、目ガ回ルデアリマス!?セツナ様ハ数時間前カラ行方不明デ今ヤットアノ中カラ反応ガ、」
「えっ、」
「余計な事を言うな!オービタル!」
「ヒィイイッッ!?」
「ハルトと同じタイミングでセツナまで...そして、あの中に彼女も、」
「何でそんな大事な事を言わねぇんだよ!」
「何故貴様に言う必要がある、兄弟でもない貴様に」
口の軽いロボットだ、こんな風に作った覚えはない筈だが。そう思いながら睨みつけると今度こそ縮み上がって譫言の様に「スクラップハ、スクラップハ嫌デアリマス」と繰り返している。
そして目の前の男に同じセリフを繰り返す。これは俺の、俺達兄弟の問題だ。関係のない部外者は黙っていろ。
その時、湖に沈んでいた美術館へ続く橋が現れる。
まるで誘い込むような、入って来いと言わんばかりのタイミングに己の目付きが鋭くなる。
「...どうやら、我々を迎え入れてくれるらしい」
「面白え、だったら正面から堂々と乗り込むぜ!って、」
「貴様は帰れ」
「帰れるわけねぇだろ!ハルトをお前とセツナ以外の奴に渡しちまったのはこのオレだ。だからハルトを無事に帰すまでは、オレは絶対に帰れねぇんだ!
それにセツナとだって約束した。お前のことを絶対に諦めない、って。助けてやるって決めたんだ。
アイツはもうオレの大事な友達だ、仲間だ!きっとアイツは今困ってる。そう言う時に助けてやるのが仲間ってもんだろ!」
「!待て、クソっ....」
かっとビングだぜ、オレ!そう言うと俺の制止を振り切って一目散に美術館の中へと走っていく。
慌てて追いかけ美術館の中へと侵入した。中はかなり荒れ果てていた。床は割れ、柱は折れて、左右に立ち並ぶ巨大な石像達にも所々ヒビが入っている。
唯一正面の階段奥にあるステンドグラスだけが美しく月明かりを受けて輝いている。
「ハルト、セツナ...どこに、」
「遊馬、セツナさんが!」
「!」
「セツナ!」
折れた柱を背に、妹は倒れていた。急いで駆け寄り声をかける。最悪の結末が頭を過ぎる。やめてくれ、何処にも行かないでくれ、お前に行かれたら俺は....。
青白い顔に血色の悪い唇。その眼は固く閉じられていていくら肩を揺さぶって呼びかけても開く事はない。
「セツナ!しっかりしろ、セツナ!起きて返事をしてくれ!頼む、セツナ!」
「......ぅ、っ...」
「!」
「セツナ!」
「大丈夫、生きてるわ!」
「どうやら何かで眠らされているようだ。命に異常はなさそうだが、この様子では暫くは目覚めないだろう」
「何で、誰がこんなこと....」
微かに声を漏らしたかと思えばまた小さな呼吸音が聞こえてくる。大丈夫だ、コイツはちゃんと生きている。
意識の無いセツナをその存在を確めるように強く抱きしめる。規則的に動く心臓の音が聞こえ、じんわりと温かい。最悪の事態を回避できたことに安堵しつつ、猛烈な怒りが湧き起こる。
「誰が、一体誰がお前をこんな目に....」
「あぁ?誰がだって?オレ達だよ!!」
「「!」」
響き渡る高笑い。見れば、石像の肩に二人、人間がいるのが見て取れる。
「ーーやっと会えたな、カイト。待ってたぜ」
「!」
「お前はⅣ!」
「!知っているのか」
「ああ...!」
石像から飛び降りこちらと対峙するふたりの男。
何故九十九遊馬がコイツの名を知っているのか、疑問には思うが取るに足らない些細なことだ。逸らした視線をⅣへ戻す。
「そっちは仲間の復讐にやって来たか。いいぜ、いつでも受けてやる」
「Ⅳ、てめぇ...」
「挑発に乗るな遊馬!それが彼の作戦だ」
「貴様....、セツナに何をした!」
「安心しろよ、そいつはただ眠ってるだけだ。邪魔されちゃ困るってんでな、ひと足先にここへ招待してやったんだよ。それとオレは何もしちゃいねぇ。
ーーまぁ、トロンとVは少しそいつで『遊んでた』みたいだけどなぁ」
「!?何だと、」
「Ⅳ兄様、誤解を生む言い方はお辞め下さい。彼女の指輪を少し借りていただけでしょう」
「指輪だと?」
眠る妹の指を確認する。いつも通り銀の指輪は薬指に鎮座し、我が物顔で鈍色に光を放っている。
「その指輪、かなりヤベェ代物らしいな。あのトロンが碌に触れられねぇその指輪を四六時中嵌めてるたぁ、いよいよ人間辞めたんじゃねぇか?その女」
「......」
変わらず眠り続けるセツナを見る。顔色は悪いが、小さな寝息を立てて夢の中にいる妹はこの状況で無ければ何の問題もなくいつも通りと言えるだろう。
またゆっくりと柱に寝かせ、目の前の敵と対峙する。
「...貴様ら如きに妹の事をとやかく言われる筋合いなどない。ハルトを攫ったのも貴様達だな、ハルトはどこだ!」
「そっちも生きてるから大丈夫だよ、.....今のところはな」
「何だと!?」
「だがすぐに返す訳にはいかねぇ、生憎今は取り込み中でな。それでも弟を助けたいってんなら、」
「「っ!?」」
ⅣとIIIから赤い鞭の様なものが俺と九十九遊馬の腕に絡みつく。自分もよく使用する、よく見たことのある形状のそれにひとつ舌打ちをした。
「オレ達を倒していきな!」
「上等だ、オレはデュエルを復讐になんか使わねぇ!かっとビングだ、オレ!」
「セツナとハルトに危害を加える奴を俺は絶対に許さない!」
フォトンチェンジし、再度相手と向かい合う。激しい怒り、目の前の敵を絶対に倒すと言う強い意思が俺を突き動かす。
「狩らせてもらおう、貴様達の魂ごと!」
ARビジョンの展開終了と同時にデュエルが始まった。
♯
オレは初めて会った時からコイツの事が大嫌いだった。どんな時もスカした面を崩さねぇいけ好かない男。優秀な頭脳を持ち、父親や兄弟から頼りにされ愛される恵まれた兄。...オレとは大違いだ。
だがその面が今、焦りと怒りで歪んでいる。嘗てこんなカイトの姿を見た事があっただろうか。いや、ある訳がねぇ。愉快で仕方がない、自ずと口角が上がる。
「仲間もお構いなしか、オレ好みだぜ」
フィールド魔法で自分以外のプレイヤーにダメージを与えて来たカイトは一緒に来たオマケに文句を言われている。まるでチームワークのカケラもねぇ。
「カイトお前!」
「.....」
「...わかったよ、お前がそのつもりならオレだって!」
「待て遊馬、このデュエルに勝つにはカイトと協力すべきだ」
「オレのせいじゃねぇ!アイツのせいだろ!!」
「忘れたのか、このデュエルには我々だけでは無くハルトの命もかかっている」
「!ハルト....」
「ハッ、お前はどうやら何も知らないようだな」
「....?」
よくわからねぇ事をぐちゃぐちゃ言い続けるオマケに優しいオレが教えてやろうじゃねぇか。この兄弟の惨憺たる現状。涙無くして語れない美しい兄弟愛の生み出した悲劇を。
「ーーカイト、お前はハルトの為に戦いを強要された哀れな兵士。Dr.フェイカーとMr.ハートランドにナンバーズを集めればハルトの病気を治してやるって言われてるんだろ?」
「「!?」」
「........」
「やっぱり!お前はハルトの病気の為にナンバーズを!」
「そうさ、ソイツは弟の為に死に物狂いでナンバーズを集めてる。他人の魂なんてお構い無しでな!涙ぐましい話だ。泣けてくるぜ」
「黙れ」
「カイト...」
「全く優しい兄貴だぜ、弟にとってはな。可哀想なのはそこに転がってる妹の方さ。何せ弟の為に『犠牲』にされたんだからな」
「!」
「犠牲って、」
澄ました面でやり過ごそうとするカイトに追い打ちをかける。セツナの話をすりゃ脳面の様な奴の表情に容易く罅ひびが入った。
お前の考えは手に取るようにわかる。アイツのことに一番罪悪感を感じてるのは兄貴であるお前だろうからな。
「だってそうだろ?テメェは自分ひとりじゃナンバーズを回収しきれねぇと踏んで、妹にまで同じ罪を背負わせやがった。適任だよなぁ、アイツはデュエルの世界チャンピオンだ。そこいらのデュエリストを倒してカード巻き上げるなんざ秒で出来る」
「......黙れ」
「責任感と家族愛の強いあの女の事だ。弟の為なら喜んでナンバーズだろうが何だろうが血眼になって集めるだろうよ。自分の自由も尊厳も、必要ならその身や命ですら容易く投げ出しただろうさ。
.....テメェはそれを分かっててアイツを地獄に招き入れた、罪深ぇ兄貴だぜ、全く」
「黙れと言っている」
「テメェがアイツを引き込まなきゃ、今頃は真っ当なデュエリストとして表舞台で活躍してただろうなぁ。あのヘラヘラした笑顔ツラで、今も黒いサイバーエンドを従えて最強のデュエルチャンピオンとして君臨して、」
「黙れと言ってるのが聞こえないのか!!」
「テメェが殺したんだよ!カイト!!デュエリストとしてのセツナを!テメェは妹と弟を天秤にかけて弟を取った!妹のことだって踏み躙って構わねえ、その辺の人間と同じってことだ!
セツナはもう二度と陽の当たる世界には戻れねぇ。
まさか『仕方なかった』とでも言い訳する気じゃねぇだろうな?セツナにとってはテメェこそが自分の翅はねをもぎ取った悪魔そのものなんだよ!!」
「......っ、」
「カイト様...」
「そんな....こんな事って....」
「ーーもし兄として、どちらかを取らざるを得なかったのならばカイトは相当苦しんだだろう。そして、今もなお...」
「.......」
オレの言葉を食らって目を伏せ何も言い返せないカイトをみて最高の気分になる。良い気味だぜ、もっと苦しめよ。テメェはそれだけの事をしたんだ。
あの女は特別だった。絶対的な強さで尊敬と畏怖を一身に背負う、まるで誰も触れられやしない銀色の太陽だった。届かないとしても誰もがその姿に焦がれていたんだ。
そう、デュエリストならば誰もが。アイツに。
テメェのせいだ。テメェひとりが苦しんでいりゃあ、こんな事にはならなかった。太陽アイツが地に沈み、人の道さえ踏み外し、サイバーエンド心さえ失ったのは全て、全てお前の、
「違う」
「...あ?」
「セツナは自分が犠牲になっただなんて思ってねぇ。セツナは、ハルトとカイトの為にその時自分が出来ること選んだんだ。一生懸命に、兄弟を守ろうとしたんだ。それが間違ってるってわかってても...。」
「......貴様、」
「バカか、それが犠牲だっつってんだよ。テメェあの女のデュエルは見たことあんのかよ。まるでナンバーズを狩る為だけにするような機械的なデュエルだ。デュエルチャンピオンだった頃の面影なんざひとつもねぇ。
捨てちまったんだよ、アイツはデュエリストの魂ってやつを。そこの兄貴のせいでな!」
「Ⅳ兄様、これ以上は、」
「違う!セツナはデュエリストの魂を捨ててなんかない!!」
「「!」」
やけに熱く語るオマケに苛立ちが募る。何だコイツは鬱陶しい。カイトのオマケでここに居るような分際で、このオレに意見しようなんざ虫唾が走るんだよ。
IIIの言葉を遮るように怒鳴った奴を睨みつける。そんなものには屈しないと言わんばかりの強い目をしながらオマケがまた口を開く。
「....オレはセツナとデュエルした。感じたんだオレ。アイツからデュエルの事を大好きな気持ちを。どんな時だってアイツが自分のモンスター達を見る目は優しかったし、モンスター達もセツナと一緒に戦うのを喜んでるみたいだった。
アイツはデュエリストの魂を無くしてなんか無い、あれはそんな奴が出来るデュエルじゃなかった。絶対に。
アイツのデュエルはいつも本物だ!
だからセツナは何も、無くしてなんか無いんだ!!」
「........」
「遊馬....」
「.....貴様、」
「話にならねぇ、何だそのメチャクチャな感情論は。まぁいい、どれだけ喚こうが現実は変わらねぇ。
...おやおや、妹の話をした途端少しは人間らしい面になってきたじゃねぇかカイト。その面が見たかったんだよオレは」
「くっ、」
「...カイトとセツナはハルトの病気を治す為に必死でナンバーズを集めてた。でもそれってオレ達がナンバーズを集めちまったら、ハルトは」
「遊馬!今は戦いに集中しろ。このデュエルに負ければハルトを取り戻すことすら出来ない」
「...わかったよ、」
「兄様、少しお喋りが過ぎます」
「へいへい、悪かったよ」
IIIからの「遊びすぎだ」という小言を食らい、デュエルが再開する。IIIはマシュマッグを召喚しカードを伏せる。コンボを仕込むとコイツが言うからにはもうお前らに逃げ場はねぇ。
だが、デュエルに予想だにしない出来事は付きものだ。
「何っ!?」
「ナンバーズ!?」
「兄様、この前のデュエル迂闊だったかも知れませんね。彼はボク達のデュエルを一度見ている。作戦を変更しますか?...兄様?」
「ククク、ハハハハハ!こいつは面白い。ナンバーズ位持ってなきゃぶっ倒し甲斐もねぇ!
ーーここからがショーの始まりだ!」
オマケが召喚したナンバーズには多少驚きはしたが大した問題じゃなあない。ここからがファンサービスの始まりだ。ジャイアント・キラーを召喚するとIIIが手筈通りまず罠カード「ナンバーズ・ウォール」を発動させる。
これでマシュマッグを守りながらオマケのナンバーズを破壊できる。
「そんな、ホープの効果は!?」
「ダメだ、ムーンバリアは攻撃にしか発動できない」
潰したナンバーズの分ダメージを与えてやったが、効果モンスターの召喚でLPを回復しやがる。小生意気な、ならば澄ました面で突っ立ってやがるカイトへ攻撃をと思えばまた罠カードで邪魔をされた。本当に目障りな奴だ、舌打ちにながらターンエンドを告げる。
庇われたカイトは高いプライドが傷付いたのか、オマケとまた言い合いを始めている。
「...アストラルの指示か」
「違う、オレの意思だ!オレはお前が敵だって言うなら敵でも構わねえ。けどオレはハルトと約束したんだ、アイツはずっとお前とセツナに会いたがっていた。だから、必ずハルトを取り戻す!」
「.....」
「ムカつくぜテメェら!オレのサービスを悉く拒否りやがって、何でオレに気持ちよくデュエルさせねぇんだ!オレはお前達が苦しむ姿を見ていたいんだよ!!
...そうだ、良い事を思いついた。これまでのサービスが気に入らねぇってんなら別のサービスをしてやる。これなら気にいるんじゃねぇか!?」
オレが手を翳せばハルトが絶叫しながら苦しむ姿が流れる。澄まし顔に戻ってきたカイトも途端に焦燥感が隠せなくなる。
「ハルト!?ハルトォォオ!!」
「お前の愛しい弟の生中継だ、ハハハハ!」
「ハルトに何をしている!」
「さあ?何かね。兄貴のする事はオレよりえげつねぇからな。けどあの様子じゃあ早く止めないとまずいんじゃねぇのか?」
「兄様、」
「貴様...っ」
「さっきよりイイ顔だぜカイト、やれば出来んじゃねぇか。そのスカした顔が苦痛に歪んでいくのを見るのはたまらねぇ快感だよ、ハハハ!」
「許さん....、うおおおおおっ!!」
さあ呼べ、呼んでみろよお前の銀河眼切り札を。
その時がお前の最後だ、カイト!
オレが散々煽ったことで頭に血が上ったカイトはまんまと銀河眼ギャラクシーアイズを召喚した。そしてそのまま、オレ達が用意した罠に嵌ることになる。
「いけ!銀河眼ギャラクシーアイズ、ジャイアント・キラーに攻撃!破滅のフォトン・ストリーム!!」
「かかったな、カイト!!」
「永続罠発動!ストーン・ヘンジ・シールド!このカードは相手フィールドの元々の攻撃力が3000以上の攻撃を無効にし、更にその攻撃力を0にしてモンスター効果を無効にする!」
「何だと!?」
「マシュマッグの効果発動!フィールドのモンスターの攻撃力が変化した時、オーバーレイ・ユニットをひとつ使い、変化した攻撃力分のダメージを相手に与える。
ーーいけ、マシュマッグ!インフィニティ・キャノン!」
「お前の銀河眼ギャラクシーアイズの攻撃力は3000から0。終わりだカイト!3000のダメージを喰らえ!!」
仕留めた。そう思ったマシュマッグのモンスター効果はまたしてもオマケの罠カードによって防がれる。しぶてぇ野郎だ、怒りを通り越して呆れるぜ。
焦るカイトはオレを急かすように怒鳴りつけてきた。
「そう急かすなよ、全く良い眺めだぜ」
「Ⅳ!お前!」
「....確かにやり過ぎでは、」
「やり過ぎだと?お前はオレ達が味わった苦しみを忘れたのか!?」
「兄様...」
「さぁ、お前の仕事をしろ」
「...ボクのターン、ドロー!」
そうだ、それでいい。お前は優し過ぎる。敵に情けをかける必要などない、オレ達が味わった苦しみのその何倍もの苦痛を与えてやらねばならない。
これはDr.フェイカーへの復讐、そして報復のひとつなのだから。
カイトとオマケをみればもう何度目かわからない言い合いを始めている。まともにデュエルできねぇくせにタッグなんか組んでるんじゃねぇよ。
「黙れ!お前に俺の苦しみ、俺の憎しみの何がわかる!!」
「...ああ、わからねぇ。わからねぇさ!お前やハルト、そしてセツナの憎しみも悲しみも。
けどオレはお前とデュエルした、デュエルを通じてお前を知っちまったんだ!デュエルは新しい仲間を、絆をつくってくれる。そして、デュエルってのは新しい自分にかっとビングさせてくれる!決して恨みや憎しみをぶつける道具じゃねぇ!!
見せてやる、オレのかっとビングを!!」
カイトへ長々と説教を垂れたかと思えば自分のナンバーズを復活させた。しかもそれだけでなく、オレ達の知らない『カオスナンバーズ』へとその姿を変えさせる。
「こんなナンバーズ、見たことない」
「まさか、オマケがこんなカードを...」
こちらが呆気に取られている間にモンスター効果を使い、オレのジャイアント・キラーを沈めようと襲いくるカオスナンバーズの攻撃をギミック・ボックスで受ける。腹立たしい、このオレを倒せると本気で思ったのか?見せてやるよ、本当の絶望ってやつを。
「現れろ!No.40ギミック・パペット ヘブンズ・ストリング!!」
現れたヘブンズ・ストリングスに恐れ慄く相手。もうそろそろ飽きちまった。今度こそ終わりだ、カイト。
しかしまたもオマケの罠カードでカイトのLPは首の皮一枚繋がり、倒し切ることが出来ない。
「ぐっ、また!ふざけるなテメェら!良い加減沈めよ、沈めっ!!」
「.....」
血管の中の血液が沸騰するように苛立つ。許さねぇ、オレのファンサービスを無駄にしやがって。
ヘブンズ・ストリングスの効果を発動させる。これでやっと終わりだ、次のターンアイツらのモンスターをぶっ潰す。
カイトに最後のターンを渡してやるが、先程のダメージで起き上がる事すら出来ない。
オマケの必死の叱咤がAR空間に響き渡る。
「立てよ、立つんだよカイト!このまま負けちまってもいいのかよ!...立てよ、何で立たねぇんだよ!カイト!
ボロボロでもいいよ、最後まで諦めんなよ。お前が諦めてどうすんだよ!お前がハルトを守らなくて、誰がハルトを守るんだよおぉ!!」
「ーー私が、私がハルトを守る」