深紅   作:天城ある

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22.憧憬

「オレはエクスカリバーのモンスター効果発動!オーバーレイ・ユニットを使い、攻撃力を2倍にする!更に手札から魔法マジックカード『ヒロイック・チャンス』を発動!エクスカリバーの攻撃力を更に倍にするぜ!

お前の場に伏せカードはねえ!これで終わりだセツナ、いけ!H-Cエクスカリバー!銀河眼の光波刃竜ギャラクシーアイズ・サイファーブレード・ドラゴンに攻撃!」

 

「攻撃力8000とは随分と景気がいいなあ。....私は墓地の超電磁タートルの効果発動、このカードを除外する事で相手のバトルフェイズを強制終了とする」

「!チッ、やるじゃねぇか『機械族の女王』。オレはカードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

 

流石にゴーシュ相手だとちょっとヒヤヒヤするな、楽しいけど。

ターンエンドの宣言を聞きながらここまでの骨のない相手と比べて楽しいデュエルができている事に喜ぶ。ドローしたカードを見ながらゴーシュに声を掛けた。

 

 

「流石だね、今まで戦ってきた人達と比べものにならないくらい強いよ」

「お褒めに預かり光栄だがこのライフの差でそう言われても嫌味にしか聞こえねぇな。そっちこそ流石のノリだぜ」

 

ゴーシュのLPは残り500、場にはエクスカリバー1体と伏せカードが1枚。対する私は残りLP2500でフィールドには銀河眼の光波刃竜ギャラクシーアイズ・サイファー・ブレード・ドラゴン1体と伏せカードが1枚。LPだけ見ればかなり差が開いたが、ここまでかなり攻め込まれてはいる。決定打は与えぬようさっきの様にかわしながらこちらがダメージを与えている感じだ。

 

 

「そりゃどーも。そろそろ決めさせてもらおうかな!私は、」

「おおっと、映像の乱れていた一騎討ちの一試合目が終了!トロンvsドロワはトロンの勝利!トロンは一番乗りで決勝ステージ、準決勝に進出だ!Congratulation!」

「「!!」」

 

 

いきなり会場にいるハートランドの実況が強制的に繋がる。生き残っているデュエリストには大事な試合結果が逐一伝えられる様だ。私とゴーシュの間に映像が映し出され、洞窟の中にジャングルフィールドの様子が広がった。

トロンは既に居らず、膝をついて茫然自失としているドロワ、そして何故か彼女の肩を支える遊馬の姿があった。虚ろなドロワの瞳から光る涙が頬を伝って地面に落ちた。

 

 

「.......」

「ドロワ....」

 

やはり勝つのは難しかったか。それにしてもいつも強く凛々しい彼女が涙を見せるなんて、一体このデュエルで何があったのか...。

仲間の敗北に各々の手を止め、暫し静寂の中映像に見入る。ゴーシュも何も言わず厳しい顔つきで映像を見つめている。

 

デュエルを再開せずその様子を見ていると急に映像が切り替わる。そこにはリアルタイムの自分達の姿が映し出されていた。私たちを包んでいた静寂を主催者であるハートランドが打ち破る。

 

 

「「!」」

「打って変わってこちらは最後の一騎討ち挑戦者を決める戦い!ゴーシュとセツナのデュエルもいよいよ大詰めだ!」

「.....」

 

 

まるで図ったようなタイミングでこちらが映し出された事にイラっとする。私はこの男のやることなす事全てが不愉快なので怒りのハードルが著しく低い。

 

「(サボってないでデュエルしろとでも言ってんのか)」

 

今にも睨みつけて舌打ちしてやりたくなる気持ちを必死に押さえ込んでいるとゴーシュから声が掛けられる。

 

「そういう面は兄貴そっくりだな、お前」

「その物言いだと褒め言葉じゃなさそう」

「褒めてねぇからな。ま、どんだけ見てても結果は変わらねえんだ。オレ達はオレ達のデュエルに集中しようぜ。...ドロワの奴の仇は勝った方が討つ。それでいいだろ」

「....そうだね。わかった、任せといて」

「ったく、もう勝った気でいるのかよ。怖ぇ女だぜ。

ーーおいセツナ、中途半端なノリはいらねぇ。お前の全力で来い」

「別にゴーシュ相手に手加減なんかしてないよ。

でもまあ、お望みとあらばもう少し頑張っちゃおうかな」

ニッと笑い合うと中断していたデュエルを再開する。

 

 

「私のフィールドにフォトン、もしくはギャラクシーモンスターが存在するとき、手札の銀河騎士ギャラクシー・ナイトは特殊召喚することができる。出てきなさい、銀河騎士ギャラクシー・ナイト!

更に銀河騎士ギャラクシー・ナイトの効果発動。このモンスターの召喚に成功した時、墓地の銀河眼の光子竜ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴンを守備表示で特殊召喚する。

ーーさあ、現れろ銀河眼の光子竜ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン!」

 

「確かに本気で来いとは言ったが、エンジン全開じゃねぇか」

 

「え?まさかこれで終わりだと?まだまだ遠慮しないでよ。

私は魔法マジックカード『シフトアップ』を発動!フィールドにいる3体のモンスターのレベルを全て9にする!」

「レベル9のモンスターが3体、...まさか!」

 

「私はレベル9になった銀河眼の光波刃竜ギャラクシーアイズ・サイファー・ブレードドラゴン、銀河騎士ギャラクシー・ナイト、銀河眼の光子竜ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴンの3体でオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!!

降臨せよ、銀河の闇に永久とこしえに輝く希望の光!超銀河眼の光波龍ネオギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン!!」

「出やがったな、超光波ネオサイファー!」

 

3体のモンスターと引き換えに現れたのは三つの首を携えた虹色の翅はねをもつドラゴン。私の目の前、ゴーシュに立ちはだかるように舞い降りると雄々しく咆哮を上げる。

 

 

「この子はあんまり呼ばないんだけど、今日は特別。

私は手札から速攻魔法『サイクロン』を発動。その邪魔な伏せカード、破壊させてもらう!」

「!チッ、」

「続けて超銀河眼の光波龍ネオギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴンの効果発動。相手モンスターのコントロールを得て、そのモンスターを超光波ネオサイファーと同名、そして同じ攻撃力とする!

サイファー・スーパー・プロジェクション!!」

「エクスカリバー!」

 

 

ゴーシュのフィールドからエクスカリバーがこちらのフィールドへ来るとその姿がぼんやりと超光波ネオサイファーと同じ姿になる。これでゴーシュのフィールドは丸裸だ。

 

「ありがとうゴーシュ、とても楽しかった。

超銀河眼の光波龍ネオギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴンでダイレクト・アタック!戦慄のサイファー・ストリーム!!」

「ぐ、ぐあああああ!!」

 

 

超光波ネオサイファー放たれた攻撃を受け、ゴーシュのLPは0となった。

勝者を告げるブザー音と共にARビジョンが消え、元の洞窟内に戻る。

 

 

「amazing!強烈な一撃で勝利を決め、最後の一騎討ちに名乗りを上げたのはセツナ!素晴らしいデュエルを見せてくれたゴーシュにも敬意を表したい!皆、割れんばかりの拍手を!!」

「あー....、完敗だ。負けたぜセツナ。まさか超光波ネオサイファーまで出してくるとはな...でも楽しかったぜ」

「本気で来いって言うからさ。この子まで出す事になるとは思わなかったよ、私もすっごく楽しかった」

 

ありがとう、そう言いながら握手する。ゴーシュは爽やかな笑顔でこちらを見ており、つられてこちらも頬が緩む。

ああ、本当に楽しかった。まるで前に、ナンバーズなんて知らなかった頃の自分に戻ったみたいで。

 

 

「...悪いな、これ以上お前に託しちまって」

「大丈夫だよ。任せておいて」

「遊馬とも戦えなくなっちまった。せめて代わりにお前がアイツと良いデュエルをしてくれよ」

「....うん」

少し話してゴーシュと別れる。コースターは動くようになっただけでなく、次に進むべき場所も示されていた。

 

 

「フラワーガーデン...」

私の次の戦いの場所。花は大好きだ、見ていると心が穏やかになる。

出来ることならたくさんの花や緑に囲まれた場所で、目覚める事なく静かに眠っていたいといつも思っている。

 

 

例えホログラムといえど、美しい花園を私のドラゴン達が焼け野原にしてしまうのは忍びない。相手が誰かはわからないがすぐに消えて頂くとしよう。

 

 

 

♯

 

 

 

「カイト、苦しかっただろう、辛かっただろう。

......だがもういいんだ、キミはここで全ての苦しみから

解放される。ナンバーズ・ハンターの使命からも、ハルトの苦しみやセツナへの罪悪感からも。それが私がキミに掛けてやれる、最後の情けだ」

 

「...違う。オレは、これまで一度だってハルトを俺の苦しみだと思ったことなどない!!そして、セツナへの罪悪感から逃れようとなど思わん!!」

「!」

「アイツらは、セツナとハルトは俺の全てだ、生き甲斐だ。ふたりは俺に希望を与え続けてくれた。

ーー俺は諦めない。俺の事も、セツナの事もハルトの事も」

「...いいだろう、来るがいい!」

 

 

残りのライフは僅か100。だが必ず、俺はこのデュエルに勝利してみせる。

「俺のターン、ドロー!」

引いたカードを確認し、一瞬時が止まる。このタイミングでこのカードを引くとは....、だが。

「(このカードが俺を救うというのか...、これが俺の運命)」

気を取り直し引いたカードを使う事を宣言する。

 

 

「俺は魔法マジックカード『未来への思い』を発動!」

「!?何だそのカードは、私が知らないカードをお前が...。そんなカードがお前のデッキにあったなんて」

「どんなに俺の手を知り尽くしたアンタでもこのカードの事は知る訳がない。

 

ーー何故ならこのカードは人生でたった一枚、親父から貰ったカードだからだ」

「!?」

「カイトの親父...Dr.フェイカーから」

「俺はこれまで一度たりともこのカードを使った事はない」

「バカな...、父を憎むお前が、そんなカードをデッキに入れていたというのか!?そんな事があるというのか!?」

 

 

信じられないと言わんばかりに声を荒らげるVに反論したのは俺ではなく遊馬だった。

 

 

「当たり前だろそんな事!誰だって家族は守りたい。アンタ達が家族を守ろうとするようにな!

だからカイトもそのカードを持っていたんだ、自分の家族にだって希望があるって!...だからカイトは、」

「黙れ。貴様に俺の心を代弁してもらうつもりはない」

 

 

決して口に出来なかった心の奥底にある本音を、容易く言い当てられた気がした。何故お前にそれが分かる?それ以上何も言うな、その思いで遊馬の言葉を制す。

『未来への想い』で墓地からモンスターを召喚し、更に『シフトアップ』でレベルを8に揃える。

 

 

「俺はレベル8の銀河眼の光子竜ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴンとフォトン・スラッシャー、フォトン・パイレーツをオーバーレイ!3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!

 

ーー逆巻く銀河よ、今こそ怒涛の光となりて姿を現すがいい!降臨せよ、我が魂!!

超銀河眼の光子竜ネオギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン!!」

 

 

紅く光を纏った三つ首の龍が自分のフィールドに現れる。フィールド魔法の効果でカードを1枚ドローすれば目当てのものを引き当てる事が出来た。

 

「超銀河眼ネオギャラクシーアイズ効果発動!フォトン・ハウリング!超銀河眼ネオギャラクシーアイズが召喚された時、このモンスター以外のモンスター効果を無効にする!」

「わあ...」

「ダイソン・スフィアが....」

 

「俺は魔法マジックカード『ビックバン・パニック』を発動!このカードは相手フィールドにある魔法マジック・罠トラップカードを全て相手モンスターのオーバーレイ・ユニットに変える!

更にそのオーバーレイ・ユニットひとつにつき俺のモンスターの攻撃力は800ポイントアップ!

 

そしてオーバーレイ・ユニットをひとつ使い超銀河眼ネオギャラクシーアイズ効果発動!ダイソン・スフィアのオーバーレイ・ユニットを全て吸収、吸収したオーバーレイ・ユニットひとつにつき攻撃力は500ポイントアップ!!」

「攻撃力、6800だと」

「そして超銀河眼ネオギャラクシーアイズは吸収したオーバーレイ・ユニットの数だけ攻撃可能となる」

 

 

あの冷たい雨の日。理由も告げず去って行く師の背をただ見送るしかなかった、無力で弱い自分の姿。

「(俺はあの日からずっと、心の中で貴方に追いつこうとしていた)」

 

 

「今、やっと....」

目の前のVは無言で構えていた左腕を下ろす。その表情は酷く穏やかで敗北を前にした者とは思えぬ程だった。

 

「超銀河眼の光子龍ネオギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン、アルティメット・フォトン・ストリーム!!」

 

 

超銀河眼ネオギャラクシーアイズの攻撃により、ダイソン・スフィアは爆風を巻き起こしながら崩壊していく。Vはそっと顔を伏せた後、その衝撃で弾き飛ばされた後地面に投げ出される。

 

 

「カイト、これがキミの強さか」

 

 

手の中にあるカードを見つめると、貰った日の事を思い出す。親父から貰った唯一のカード。どんなに憎くても、どうしてもデッキから外す事の出来なかった一枚。...まさかここで俺を助ける事になるとは、運命の悪戯とはこういうことなのかもしれない。

デュエルが終わり、Vと対峙する。

 

 

「復讐の先にあるのは虚しさだけだ。そんな事は私にもわかっていた」

「V...いや、クリストファー・アークライト」

「、その名前で呼ばれるのは久しぶりだよ」

「それが本当のVの名前....!」

「父と共に自分達家族の名を捨てた。カイト、私は父を救いたかった。...しかし、異世界から戻ってきた父の心は既にDr.フェイカーへの復讐に取り憑かれていた。

私にはそれを止められなかった。だか、それが親子ってものだろう?」

「違う」

「!」

「俺は、親に抗うために戦っている。いつかハルトの事が解決した時この手でDr.フェイカーとケリを着けるために」

「そうか、キミはそんなに強くなったのか」

「.......教えてくれ。セツナの肩の傷の事を」

「.......あの怪我はセツナが『ある人物』を守る為に負ったものだそうだ」

「ある人物、だと」

 

苦しげに言葉を紡ぐクリスは一度言葉を切ると、深く息を吐いた後続けた。

 

「トロンは、一人の少年をDr.フェイカーを倒す刺客として仕立てようとしている。情報を探る内、その少年に妹がいることに気づきトロンはⅣを使ってその妹を傷付けようとしたのだ。少年の心を乱し、深い闇の中に陥れる為に...。

 

ーーその少年と妹には一人の友人がいた。年齢の近い彼等はデュエルを通して交友を深めたようだ。少年にとっては憧れの目標であったのかもしれない、何故なら友人である少女は後に世界の頂点に君臨する程優秀なデュエリストだったからだ。

そして少女の方も少年、そしてその妹との交流を楽しく思っていたのだろう。特に少年の方は全国大会の決勝まで駒を進められる程の実力者だ。きっと切磋琢磨し合える、数少ない大切な存在だったに違いない」

「!」

「それって...もしかして」

「シャークと、セツナのこと....」

「....これで全てが繋がったな」

 

 

「.....Ⅳと少年の妹がデュエルした時に事故が起きた。その場に居合わせたセツナは妹を守る為、火の海に飛び込んだと聞いている。その事故でセツナは肩に酷い火傷を負い、少年の妹は長く昏睡状態のまま目覚めない。Ⅳも顔に傷を負った」

「そんな事が...だがアイツは一言も....」

「言えなかったのかもしれない。トロンはセツナに我々のことをキミ達に話さない様暗示をかけていたからな。

.....セツナの事、謝って済む問題でない事はわかっている。だが、本当に申し訳なかった」

「........俺に頭を下げてどうする。謝罪する人間が違うだろう」

 

 

クリスが深々と頭を下げると長い銀髪が地面に付いた。その髪を見て思い出す。昔セツナが笑っていた、自分と同じ色の髪に親近感が湧くと。会った回数は少なかったが、アイツは優しくて穏やかなクリスに懐いている様だった。

だが全て壊れてしまった。こうなったのもトロン、そしてDr.フェイカーのせいだ。絶対に許さん。

 

 

「クリス、アンタの思いは俺が受け継ぐ。俺が代わりにトロンとケリを着ける」

「カイト....、キミを本当の弟のように思っている。そしてセツナ。あの子の事も本当は、妹のように...」

 

 

言い終わる前にクリスは異空間に吸い込まれて消えた。

その場にはただ、ダイソン・スフィアが残されていた。

 

 

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