今後を憂うご感想を多くいただき、ふじゅーがめっちゃ溜まってそうなんですが、この小説はハッピーエンド!ハッピーエンドなんです!
信じて、、、
目を開けると、どこまでも続く湖、そしてその上に立つ大きな鳥居の前にいた。
自分も湖の上に立ってる。現実だったら見れない景色だと思う。
おもしろー!と周りを見渡していると、あることに気づいた。
「あれ?彩葉?」
なんでか、彩葉がいなかった。一緒にログインしたはずなのに。どこだろ?
彩葉のことを探していると、いつの間にか前に人が立っていた。
あれって!もしかして!
「ヤチヨだ!ヤチヨでしょ!配信見た!」
ヤチヨは、私の方を見て少し微笑んだ後、目を瞑った。
「──太陽が沈んで、夜がやってきます。」
そう言い終わると同時に、あたりが暗くなる。
すると星々が光の軌跡を残しながら空を廻り、姿を現した。
「わぁ…!」
そんな風景に目が釘付けになっているとヤチヨが近づいてきて手を握ってくれた。
「仮想空間ツクヨミへようこそ!管理人の月見ヤチヨでーす!」
「このモフモフは、FUSHI!」
「ヤチヨがツクヨミと僕を作ったんだ!」
「さぁ!出かける前に、その格好じゃあつまらない!」
ヤチヨが指を鳴らすと、
私の前に、ずらっとアクセサリーが並んだウィンドウが出てきた。
髪の長さ。目の色。服。耳。しっぽ。
なんでも選べるらしい。
「おぉ!」
いっぱいある!何にしよっかなー。彩葉はどういうの好きかなー?
「…うーん」
かわいいの?かっこいいの?おしゃれなの?
彩葉が好きそうなやつがいいな。
「むむむ…」
ぐるぐる選んでは消して、選んでは消してを繰り返していたら、ヤチヨがウィンドウを覗いてきた。
「……お悩み中?だったらー、これとかいかがかな?」
ヤチヨが新しくウィンドウを出す。
長い金髪に、三日月マークの穴が空いた和服。
頭にでっかい三日月の飾り。
それから、うさぎの耳。
なんだか、すごくしっくりきた。
「うん!かぐや、これにする!」
そう言い終わると、ヤチヨがかぐやの両手をぎゅっと握った。
「これで準備は整ったね!それじゃあ、行ってらっしゃーい!」
「え、ちょ、わあああ!?」
ぽーんと、鳥居の向こうに放り込まれた。
その瞬間、目の前の景色が一瞬で切り替わった。
「ヴェェェ」
前のめりにばしゃん、と顔面で水飛沫をあげて着地する。
着いたところには少し水が張っていた。
「ふふっ、金髪ギャルのかぐや姫…」
隣から、小さな声がして見上げると、女の子が口元を手で押さえていた。
「もしや!彩葉!」
絶対彩葉だ!
ツクヨミでの彩葉はそういう感じなんだー!
「かぐや、大丈夫?」
そう言って手を貸してくれた。えへへ。やさし!
差し出された手をつかんで、…あれ?
あったかい。
握った手がちゃんとあったかい。
顔も、なんかつめたい。さっき突っ込んだ水が、ほっぺたからぽたぽた落ちてる。
「…彩葉!さわれる!水もつめたい!」
「…ツクヨミだからね。そういうものだよ」
そういうものなの?すごくない?
仮想空間なのにちゃんと触れる!
「?というか…それ、何?」
彩葉がさした指の先には、犬DOGEがいた。
連れて来れるんだ!
●
周りを見回してみると空にでっかい月が浮かんでいた。
ん、あれってミラーボール?
遠くに見える、光る街。
空を泳ぐ魚。屋根の上を走る電車。
見たことないものが、ぜんぶいっぺんに目に飛び込んでくる。
「わーーー!!すごい!」
そこから橋を渡りきり、門を抜けたその先に神社みたいな石の階段があった。
上のほうから、光と、にぎやかな音がこぼれてくる。
あの上に、なんかある!
「彩葉、はやくはやく!」
待ちきれなくて、一段飛ばしで駆けあがる。
「あ…転ばないようにね!」
彩葉の声を後ろに聞きながら、最後の一段をとんっと蹴った。
その瞬間、目の前がぱあっとひらけた。
「わあああああ!!」
思わず、その場で飛び上がった。
瓦屋根の建物がどこまでもずらっと並んでいる。
軒先の提灯も、看板も、屋根もぜんぶきらきら光ってる。
道の両側には屋台がいっぱいで、いろんな格好の人たちが、お面とか、光る金魚とか、見たことないものを売ってる。
お祭りだ!毎日お祭りなんだ!
「うお!すげー!面白そうなもんが死ぬほどある!」
「かぐや、速いよ…」
追いついてきた彩葉の手を、ぎゅっとつかむ。
「彩葉、あっち!あっちいこ!」
クマのぬいぐるみ!超可愛い!
あ!アクセサリー売ってる!綺麗!彩葉に似合うかも!
音の鳴る提灯!ヤチヨのカチューシャ!
あっちもこっちも、全部行きたい!
ちょー楽しい!
「か、かぐや、ちょっと休憩…」
あれ、彩葉がへろへろだ。
屋台の通りを抜けたところに、休憩スペース付きのカフェみたいなところがあった。
お店の外は池みたいになっていて、提灯の光がゆらゆら映ってる。
縁側に彩葉を座らせて、足を水にひたす。
ひんやりして、気持ちいい。
頼んだのは、いちごのパフェ!
ひと口食べて、首をかしげた。
「…なんかへん!」
甘い。甘いけど、なんか足りない。
くそまずパンケーキより、ずっとぺらぺらな味がする。なんで?
「味がちょっとでも複雑になると、再現が難しいらしいよ。ツクヨミの食べ物って、だいたいこんな感じ」
彩葉が、自分のパフェをつつきながら教えてくれた。
ライブまではもう少し!さっさと頼んだパフェ食べちゃお。
●
ライブ会場は人でいっぱいだった。
会場中のアバターの一部が光り、波みたいに揺れている。
綺麗!これ全部、ヤチヨのファン?すごい!
…なんだけど。
隣の彩葉が、さっきからずっとそわそわしてる。
袖をにぎったり、はなしたり。目の前のでっかい鳥居を見たり、下を向いたり。
さっき話しかけた時も上の空だったし。
すっごい楽しみなのかな?
…やっぱり、ヤチヨのこと好きなんじゃん。
好きなの?って聞いたとき、答えてくれなかったのに。
なんか、胸のあたりがもやもやする。
時間になると、鳥居の上にでっかい画面が現れ、カウントダウンが始まった。
「5!」「4!」「3!」
会場のみんなが、声をそろえて数えてる。
「ねえ彩葉、何が始まるの?」
「…見てればわかるから」
「2!」「1!」
「「「0!!」」」
画面がぱあっと光って、鳥居のまんなかにヤチヨが現れた。
「ヤオヨロー! 神々のみんな〜、今日も最高だったー?」
その一言で、会場中の光がいっせいに跳ねた。
すごい。ひと言で、みんなこんなに元気になるんだ。
「よーし、今宵も皆を誘っちゃうよ☆ Let's go on a trip!」
『Remember』のイントロが流れた瞬間、会場が爆発したみたいな歓声に包まれた。
「ヤチヨーーーー!!!」
すぐ隣で、いちばん大きな声が上がった。
…え、今の彩葉?
「え」
彩葉が、両手でペンライトを振り回していた。
それから泣いてた。
ぼろぼろ、ぼろぼろ、涙をこぼしながらずっと笑ってた。
「い、彩葉?」
「やばい…ほんもの…ほんものや…っ」
やばいのは彩葉のほうだよ!
なんか、性格ちがくない!?
「彩葉!?大丈夫?なんか変なもの食べたんじゃ…」
肩をゆすって彩葉を元に戻そうとする。
「ちょっと待って今いいとこ!!」
むー。かぐや、彩葉の心配してるのに。
ほっぺをふくらませているうちに、曲が終わった。
ステージの真ん中で、ヤチヨが大きく手を広げる。
「イェーイ!感謝感激雨アラモード!ヤチヨは果報者なのです。ここで、お知らせがありまーす!」
会場が、しんと静まった。
なになに?
「ヤチヨカップ、開催決定ーー☆FUSHI!詳細よろしくぅ」
FUSHIがヤチヨカップ?の詳細を説明してる。
優勝したらコラボライブできるらしい。
さっきより大きな歓声。
隣の彩葉は、口を両手でおさえて固まってる。
「ねえ彩葉、コラボライブってすごいの?」
「すごいなんてもんじゃないよ!!ライブのコラボは今までなかったんだよ!?ヤチヨと一緒に歌えるんだよ!?同じステージで!!」
ヤチヨと一緒に。あのステージで。
「じゃあ、やろ!」
「……え?」
「彩葉!かぐやたちで、一緒にそれ、やろ!」
彩葉の顔から、すうっと熱が引いた。
「…無理だよ。そんなの。きっと、誰とやるかなんてもう裏で決まって…」
彩葉の言葉を遮るみたいに、バーンと派手な音が響いた。
「よう、子ウサギども。お前らの帝様が来たぜ」
なんか黒鬼?って人たちが宣戦布告しに来た音だった。
思わず帝の方を見てしまった視線を彩葉の方に戻すと、帝って人を見て、悪いことした人の、泣くのを我慢してるみたいな顔をしていた。
あ。
まただ。
あの時と同じ顔。
…そんな顔、させないもん。
ステージに向かっておもいっきり息を吸った。
「ヤぁぁぁぁぁぁぁチぃぃぃぃぃぃぃヨぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「かぐやがヤチヨカップ優勝する!そんで絶対コラボライブする!いろhむぐっ」
「あんたは!勝手に何言ってるの!?」
彩葉が口を押さえてくる。
よかった、もうあの顔じゃない。
というか、ヤチヨが何か言ってそうだったけど聞き取れなかったな。
●
「ほいでは!ライブは一旦ここでクローズ!みんなとちょこっとお話しさせてねー、さらばーい」
ステージのヤチヨが回転するとそこからヤチヨがいっぱい出てくる。
え、ヤチヨがいっぱい!?
ヤチヨがいくつも飛びだして、会場中に散らばっていく。
分身ってほんとだったんだ!
そんな光景を横目に、彩葉におねだりをしてみる。
「ねぇ彩葉!一緒にやろ?」
彩葉がぐぬぬーって言いそうな顔をしてると、分身のひとりが私のところに飛んできた。
なんか、ちっちゃくない?
「ムリムリ!小娘が!」
ヤチヨの肩に乗ったFUSHIがそう言う。
あれ?こんなキャラなの?
チュートリアルからの豹変ぶりにちょっと引いていると、ヤチヨが声をかけてくる。
「お忘れかな?参加は、ライバー限定なのです!」
「らいばー」
そっか。
らいばーじゃないと、だめなんだ。
…じゃあ、なればいいじゃん!
「そっかー!じゃあ、かぐや、ライバーなる!」
「準備準備ー!彩葉、さき帰ってるね!」
「え、ちょ、かぐや!?」
彩葉の声を背中で聞きながら、ログアウトのボタンをぽちっと押した。
待っててね、彩葉。
あのステージにぜったい立たせてあげる!
※ ※ ※
かぐやを見送ったヤチヨの目線がこちらに来る。
「あ、あ、あの、えっと」
声が裏返った。
何か言わなきゃ。
いつも聴いてます、とか。ありがとう、とか。
何ひとつ、まともな言葉にならない。
「…じゃ、じゃあ、私も、これで…」
逃げるように頭を下げて、背を向けかけたとき。
「待って…!」
ヤチヨの声が、少しだけ震えていた。
振り返る。
ステージの上の、あの笑顔じゃなかった。
「いろ…君には、謝らなきゃいけないことがあるの」
「…え?」
「3年前まで、相談アプリで、ヤチヨにいっぱい相談してくれたでしょ?」
心臓が、どくんと鳴った。
「あの後から、アカウントが、ぱったり動かなくなっちゃって」
ヤチヨが、ぎゅっと自分の手を握る。
「私、何か間違っちゃったかな…。あなたのこと、傷つけちゃったかな。…ごめ「ヤチヨのせいじゃない!」」
自分でも驚くくらい大きな声が出た。
「ヤチヨは、何も悪くないの…」
喉の奥から、考えるより先に言葉がこぼれてくる。
「私が、弱かっただけで…私のせいなの…。だから、謝らないで…」
ヤチヨが、私をじっと見ていた。
長い、長い一瞬だった。
「…そっか」
ヤチヨが、目を伏せる。
それから、ぱっと顔を上げた。
いつもの、ステージの上の笑顔だった。
「えへへー、湿っぽくしてごめんね!ヤッチョはツクヨミの管理人なので、神々のみんなには、笑ってて欲しいのです!」
くるっとその場で一回転。
「たまには、ツクヨミに遊びにきてね!ヤッチョ、寂しいな…」
しゅん、と肩を落としてみせて。
「それと!」
ヤチヨが、一歩近づいてきた。
「これ!忘れ物!」
「今日は来てくれて、ありがとね!」
ヤチヨの手が、私の両手を取る。
「…………!?!?!?」
推しが。
目の前で。
私の手を。
て、手の感触ががが、なんかにぎにぎしてくれてるしぃぃ!
握手券。
そうだ、これは握手券付きの…
やばい!記憶より五割増しくらいで可愛い!かわいい!
「あ…」
意識が、ふわっと遠のいていく気がした。
〇
目を覚ますと、朝だった。
昨日の夜のことがうまく思い出せない。
ライブに行って、それから。
テンションがはちゃめちゃに上がったことと、ヤチヨが最高に可愛かったことは覚えてるんだけど…
「彩葉、おはよー!」
台所の方を見やると、かぐやがフライパンを振っていた。
髪が金色になっていた。
「……………………は?」
重ねて、閲覧、感想、評価、お気に入り登録いただきありがとうございます!
次回以降は今までほどプロットが固まってないので更新頻度落ちるかもです。
何卒ご容赦を、、、