宇宙世紀に転生した。何故かジオンが勝った。妹がガンダムに乗ってた。 作:今峰鏡
エアロックを飛び出し、オレンジ色の多脚ロボットが見せてくれた座標へと飛ぶ。
サイコミュを積んだ機体だからまともに動かせるか不安だったが、元がサイコミュ非搭載の機体だから、駆動系は全て通常の兵器と変わらなくて助かった。
操作系もジオン系列のものとそう変わらない。
「装備はシールドとビームサーベル、そんでもって頭部バルカン砲ね。ハンマーも使ってみたかったけど、シイコさんが壊しちゃったからなぁ」
各部の
合流地点には……居た、ジークアクスだ。
「ん? 頭部のロックが外れていない? オメガサイコミュを起動していないのか?」
近付き、肩に手を触れる。
「マチュくん、フォウだ。シュウジが熱を出して倒れたから、代わりに――」
「フォウさん!? 何で!?」
「ッ!? その声、ニャアンくんか、そっちこそ何で」
「マチュが軍警に捕まっちゃったの! だから私が代わりにジークアクスに乗らなきゃって……」
何やってんだよアマテェ!
いや、でもナイス判断だニャアン。ここでジークアクスが出て来なかったら、俺が来た意味も無くなるところだった。
アマテの事は……この際仕方ない、赤いガンダムの関係者として、地位協定を盾に身柄を引き取ればいいだろう。その場合、アマテにはジオン軍人ルートに乗ってもらうが。
妹は心配だが、今はバトルに集中しなくては。
「ニャアンくん、MSの操縦をしたことはあるか?」
「プチモビなら……」
「上等だ。戦闘は俺がやる、キミは自分の身を守る事を優先しろ」
「わ、わかりました」
戦力としては期待できんな。
しかも相手は『黒い三連星』のガイアとオルテガ……
「三人じゃなくて良かったな……しかしここで原作キャラと戦うことになるとは、ファンサービスってのを分かってるね」
各種操縦方法、注意点などをニャアンに教えつつ、交戦座標へとたどり着く。
然程間を置かず、信号弾が打ち上がった。
「さぁて、どう出てくるか」
ニャアンから目を逸らさせるために前へ出て、敵を誘う。
さぁ、MAVの前衛が隙を晒しているぞ、来い!
「いけませんね、敵は初めからガンダムの相手をする気がない」
整ったヒゲを蓄えた中年の男の呟きに、マチュはムスっとした顔で視線を向けた。
カネバンへと向かう最中、ニャアンに絡んできた軍警にイラつき、手を――正確には、足を――出したマチュは、ニャアンと二手に分かれて逃げ出したものの、あえなく軍警に捕まる事になってしまった。
どこかへと連れて行かれそうになった時に現れたのが、シャリア・ブルと名乗るこの男だった。
「彼女は赤いガンダムの関係者です。地位協定により、身柄は我々ジオンが預かります」
そう言って、強引にマチュを連れ出したこの男が彼女を連れてきたのは、駅近くにあるファミリーレストランだった。
あまりこういう店に慣れていないのか、マチュに色々と聞きながら注文を終えた彼は、スマートフォンを取り出してこう言ったのだった。
「君も気になるでしょう。クラバがどうなったか」
そして、マチュは見るのだった。
自分以外の誰かが操る、ジークアクスの姿を。
「おっと、なかなか良い動きをする」
シャリアの言葉に、視線をスマートフォンへと移す。
そこにはリック・ドムのジャイアント・バズを、間一髪で避けるジークアクスが居た。
すぐさま反転したリック・ドムは、自分の動きに振り回されているジークアクスへと何かを射出する。
「電磁ハーケンですか」
「なにそれ」
「電撃により、コクピット内部のパイロットへもダメージを与える武装です」
電流が走り、ジークアクスの動きが止まる。
だが、駆けつけた赤いガンダムのビームサーベルによりワイヤーが切断され、ジークアクスは動きを取り戻した。
敵のドムが両腕を広げ、ガンダムの視界を制限する。同時に、その背後から撃ち込まれたジャイアント・バズを、ガンダムはまるで予想していたかのような動きで頭部バルカンにより迎撃、しかしその隙に背後へと抜けられてしまう。
追おうとするが、それをもう一機のドムが許すはずもない。
バズーカを担いだままヒートサーベルを抜くと、ガンダムへと叩きつけた。
ガンダムはビームサーベルで受け、鍔迫り合いに持ち込む。
だが、
「ドムには拡散ビームがある」
胸部の砲口が開き、威力の低いメガ粒子を広範囲に拡散するビーム砲が放たれた。
低威力とは言え、至近距離で浴び続ければ装甲は焼き切れ、致命的なダメージとなる。
たまらず距離を取った赤いガンダムを捨て置き、リック・ドムは先行したもう一機の後を追って飛び去った。
カメラが切り替わった先では、先行したドムの攻撃を受けるジークアクスの姿があった。
バックパックの大型ブースターのおかげで加速性能が高いドムが高速で接近し、スパイクの付いた拳や大きな足を使い格闘戦を仕掛ける。
対するジークアクスは腰の引けた姿勢で無闇矢鱈にヒートホークを振るうが、ドム側の加速について行けず当たらない。すると再び、背後や側面から加速して突っ込んできたドムの攻撃を受ける。その繰り返しだった。
そこにもう一機のドムが追いついた。
振るわれるヒートソード。それをヒートホークで何とか弾く。
切り結び、鍔迫り合い。なんとか凌いでも、横から無手のドムに蹴り飛ばされ、宇宙空間を錐揉みする結果に終わる。
ようやく追いついたガンダムに受け止められ、体勢を立て直すものの、ドムの攻撃は終わらない。
今度はジークアクスを庇うようにシールドを構えたガンダムが、ニ機の攻撃を受ける番だった。
「フォウさん!」
致命的な攻撃こそ捌いているものの、ジークアクスを庇っている所為か良いようにやられ続けるガンダムに向けて、マチュが叫んだ。
「ほう」
シャリアの興味深げな視線を受け、マチュがはっと気付く。
「フォウさんって言ったの、私?」
流石は二人になっても『黒い三連星』と言ったところか。
右上から来るオルテガ機の蹴りをシールドで受け流し、左正面から振るわれたガイア機のヒートサーベルを切り払う。
だがその間に、今度はオルテガの拳を受けてしまう。
コクピットを大きく揺らされ、操縦桿を握って耐える。
反射的にAMBACで身体を捻れば、頭部のすぐ横をヒートサーベルが通り過ぎていった。
「ちぃっ!」
ガイア機がジークアクスの方へと反転したのを見て、追いかけようとバーニアを焚く。
「フェイントかっ!?」
だが、再度こちらへと振り向いたガイアの拡散ビームをモロに受けてしまった。
怯んだところで背中に衝撃。
オルテガ機の蹴りか!
吹き飛ばされながら、姿勢を制御して再び耐える構えを取るが、二機の連携が上手く、攻撃全ては防ぎきれない。出撃時にもチェックした機体コンディションは、既に関節部などを中心にいくつものアラートが点灯している。
致命的な攻撃は貰っていないが、マズい。
だが――
「何故落とさない?」
攻撃を凌ぎながら考える。
もちろん、俺が落とされないように立ち回っているのはある。だが、それにしたって『無駄』が多い。現にこうして思考を回しながら――悪く言えば
前回俺がマチュにしたように実力を試している? いや、それにしては似たような動きが多すぎる。試すなら徐々にギアを上げていくはずだ。
撃墜できない理由がある? いや、軍の作戦行動ならともかく、言ってしまえばただのジャンク屋の二人に大層な理由があるとは思えない。
遊んでいる?
そうか、それだな。遊んでいるんだ、コイツらは。俺を嬲りものにして。
「マチュとのクラバで手を抜いた俺が言うのも憚られるがよ……ちげえだろ、お前らは俺の妹か? 『敵』だろうがッ!」
舐めやがって……ムカついてきたぞオイ。
思えば俺も『続編』が始まってからテンションが上がりすぎてたかもな。『続編』のために「ああしよう」「こうしよう」なんて、戦っている最中に考えることじゃなかった。
敵も味方も全力で戦ってこそMS戦は楽しいんだろうが。
こいつらにもムカつくが、腑抜けていた自分にもムカつく。
決めた。楽しむことは止めないが、コレ以降『遊び』は捨てる。
立ち塞がる相手は全力で殺す。たとえそれが『原作キャラ』であろうと――『主人公』だろうとだ!
「っし、いっちょう気合い入れてぶっ殺すか」
ペダルを踏み込み、操縦桿を引く。
細かくスラスターを噴射させ、AMBACも合わせて相手の下側へ潜ると、もう一機の攻撃も避けて距離を取った。
それを見たリック・ドム達は「それならば」とばかりにジークアクスへと標的を変えた。
各部損傷チェック。
一部スラスターが使用不可、左脚の関節も無理な動きをするとヤバイな。
だがバイタルパートへのダメージは少ない。ビームサーベルの出力、問題なし。
「なら、やれる」
バーニアを吹かし、『黒い三連星』――いや、『バイナリーズ』を追う。
奴らは残った電磁ハーケンで電流を浴びせながら、ジークアクスを振り回して
ハーケンのワイヤーをビームサーベルで切断。
ジークアクスは動かない。ニャアンは気絶したのか? 死にはしないと思うが……
「さっさと片付けて、病院につれていかないとな」
まだ若い女の子だ、火傷の跡なんかが残ったら可哀想だろう。
バイナリーズのリック・ドムはバックパックを変形させ、三本目の脚にすると、旋回して加速。先程までとは比にならない速度で突っ込んでくる。
「ジェットストリームアタックか」
それは三機居てこその戦術だろう。
ニ機しか居ない事が分かっているなら、後衛の視界と機動を制限する悪手でしかない。
シールドに半身を隠し、ビームサーベルを下段に構えて待ち伏せる。
三脚が放つバーニアの煌めきが徐々に大きくなり、機体のシルエットが見えてきた。
よし、今――――!?
『あああああああああああああ!!!!』
通信機越しにニャアンの叫びがコクピットに響いた瞬間、背後から衝撃。そのまま真っすぐ押し出される。
「ニャアンくん!?」
『くそがあああああああああ!!』
後方を映すサブカメラを見れば、ジークアクスのバイザーが上がり、オメガサイコミュが起動していた。
ニャアン、お前もニュータイプだったのか……
というコイツ、俺を盾にして突っ込むつもりか!?
いや、だが、相手もこっちの動きに困惑している。ええい、ままよ!
慌ててジャイアント・バズを発射するガイア。だが、動揺で狙いが甘い。
俺は右足を振った反作用でひらりと身を躱すと、そのまま身体を回転させ、背負投げの要領でジークアクスを投げつけた。
ニャアンはそれを
オルテガもさるもの、何とか身を捩って直撃こそ躱すが、ヒートホークはドムの胸部装甲を引き裂き、コクピットを露出させた。
慌てたガイアがジャイアント・バズをニャアンへと向けるが。
「俺を忘れるなよ!」
ビームサーベルを振るってジャイアント・バズの砲身を切り飛ばす。
銃把から手を放したガイア機の肩に手をつくと、そこを軸に宙返り。
「しっかり掴まってろよ、ニャアン!」
『ふざけっ――』
弾かれたように飛び出したジークアクスが正面のリック・ドムと抱き合う。
『っあああ!!!』
ニャアンの悲鳴が聞こえるが、これでお相子だ。
それに、今のでコクピットが剥き出しになっていたオルテガは
それを見て怖気づいたのか、ガイアが三本目の脚を下ろして逃げようとする。
「ニャアン!」
『わかってる!』
ジークアクスが投擲したヒートホークがガイアの進路を塞いだ。
思わず動きを止めたな。
ビームサーベルを構え、飛ぶ。
「遊びが過ぎたな、
足を止めたリック・ドムの背中に、ビームサーベルを突きこんだ。
クランバトルに勝利した俺はニャアンと分かれると、シュウジが待つエアロックへと戻り、薬が効いてぐっすりと眠っているシュウジと多脚ロボット――あとで聞いた話によると『コンチ』と言うらしい――を赤いガンダムに乗せて再び宇宙へと飛び立った。
向かったのはクランCRSの拠点だ。
以前貰ったモスク・ハン博士への直通回線を開いて連絡を取り、困惑されながらもドッグへと招かれた俺は、ひとまずシュウジを医務官へと預けると、慌ててやってきた博士に対面した。
「突然すみません、博士」
「どうしたと言うんだフォウくん。それにこれは……ガンダムか!?」
「ええ、ちょいと訳ありでして……こいつの整備と修理を。それと余っているゲルググか軽キャノンの武装があればそれも」
「待て待て、流石に赤いガンダムなんかをここに――」
「ガンダムにマグネット・コーティングを施したデータ、欲しくはありませんか?」
「むっ……だが」
「そういえば、ガンダムにはあるシステムが搭載されていましたね。確か――サイコミュ、とか」
「…………いいだろう。整備と補給はさせてもらう。それに際して必要なデータは
ふふ、やっぱ本質的にはマッドだよ、この博士。
それとも連邦をクビになって歪んだのかな?
まあ、いい。
勝手にデータは売り渡したが、別にシュウジは気にしないだろう。
それよりも、勝手に乗って色々と無理をさせたからな、俺のせいでガンダムが撃墜されても困る。
それに、これで
ニヤケ顔で離れていくモスク・ハンを見送り、俺も笑みを深める。
次が何時になるかは分からないが、やっぱり戦いは互いに万全な状態で、本気を出し合ってこそ面白い。
『戦争』ってのがそう都合の良いモノで無い事は分かっているが、ちょっとくらい高望みしてもいいじゃないか。
俺は『主人公』との再戦と、間もなく届くであろう『アレ』に思いを馳せながら、いつぞやのメガネの女性研究員へと笑顔を向けるのだった。
メガネちゃんは、本編でCRS職員が着ていた服の上から白衣を羽織って、丸メガネをかけています。野暮ったい黒髪黒目の巨乳ちゃんで、160cmちょっとのむっちり系女子(27)です。
性格まで含めるとツクヨのストライクゾーンアウトコースギリギリいっぱいの決め球ですね。追い込まれなければツクヨは振りません。