宇宙世紀に転生した。何故かジオンが勝った。妹がガンダムに乗ってた。 作:今峰鏡
皆様の感想や評価、お気に入りなどのお陰で執筆スピードがかなりブーストされております。本当にありがとうございます。
今回はオリキャラが出てきます、ご注意ください。
熱が下がり元気になったシュウジは、補修と整備が終わってすっかり綺麗になったガンダムを見上げると、一言「ありがとう」と言って去っていった。お礼とか言えたんだな……
ちなみに、アマテの事はシャリア・ブル中佐が地位協定を盾に助けてくれたらしい。
クランバトルが終わった後はそのまま解放したらしいけど、良かったのか?
……あぁ、俺が赤いガンダムに乗っているのに気付いて、サイド6に残り続ける名目のためにも、片方はリリースしなきゃって判断だったんかな? ま、俺としては好都合だから良いんだが。
「フォウくん、
「ありがとうございます。シイコさんの伝手が残っていて助かりました」
パイロットスーツで現れたシイコさんから手渡された端末に指を這わせると、そこには
まさかシイコさんが一年戦争終盤に乗っていた艦に、シャアのサイド7襲撃から生き残ったブライト・ノアが乗っていたとは思わなかった。
この世界では未だ大尉だそうだが、有能で将来有望な出世頭の若手として、連邦軍内でもそれなりに影響力があるらしい。
「キシリアとペルガミノの会合が行われるのは三日後、それを
「そうみたいね。本当に連邦は何もしないのか、ブライトくんでも探れないような部隊が動いているか、それとも一部の過激派の独断か……」
そうは言うが、間もなく行われるキシリアとペルガミノの会談に際して、連邦はまず間違いなく動くと俺は思っている。
そうでなければ、シャリア・ブルがキケロガまで取り寄せるとは思えない。
ここで戦闘が起きれば――あるいはキシリアが死ねば、連邦とジオンの戦争の火蓋は切って落とされるだろう。
俺としては
だってそうだろう? 自分の故郷で暴れた上、戦争の火蓋を切った連邦側に、アマテが付くとは俺は思えない。
アマテがジオンに来る可能性がある以上、同じ陣営に留まる訳にはいかないだろう。
だから俺は、連邦側に付く。
そう、つまり――俺はジオンを裏切ろうと言うのだ。
それもこれも、アマテと本気で戦うため。
前回の『バイナリーズ』との戦いで、俺は自分が浮かれていた事に気付いた。
それは戦闘だけじゃない。ここまでの『続編』との関わり方でもそうだ。
物語の本筋を追い、登場人物になる?
主人公の実兄として共に戦うのも悪くない?
馬鹿を言え、ガンダムの仮面枠なら、主人公と敵対してナンボだろうが。
シイコさんが覚悟を決めたと言うなら、俺も覚悟を示さなくてはならない。
俺の手を取って病院から抜け出したシイコさんのように。
言葉では無く、行動で。
「フォウくんのモーント・ライター、本当に私が使っていいの?」
「勿論です。俺の新しい機体も届きましたから」
シャリア・ブルのキケロガと同じくして、俺が頼んでいた『アレ』こと新型機もシムス大尉によってサイド6に運び込まれていた。
そのため、現在急ピッチで修理を進めているモーント・ライターはシイコさんが乗る事となり、塗装もトリコロールカラーに塗り直されている。
「ジオンの新型でしょう? それも量産化前の技術試験用にカリカリにチューンナップされた、実質的な専用機だって言ってたわよね」
「ええ、楽しみにしていてください」
俺がよっぽど楽しそうな顔をしていたからだろう。
シイコさんは可笑しそうに「うふふ」と笑った。
シイコさんと話した後、俺は宇宙港からシャトルに乗って、サイド6の実質的な首都であるパルダコロニーへと向かった。
首都と言っても大統領府や官庁なんかが大半を占めているため、あまり賑やかな感じはしない。歩いているのもスーツ姿の住民ばかりだ。
そんなパルダの中心地から少し離れた場所にある料亭――料亭だよ、純和風の!――に入った俺は、名前を告げると座敷の一間に通された。さすが高級料亭、俺の仮面を物珍しそうに見る店員が一人も居ないし、部屋に通されるまでの間、他の客と一人もすれ違わなかった。部屋の配置からしても、かなり防諜のしっかりした店だと分かる。官僚さん御用達ってだけあるねぇ。
しっかし、「秘密裏に会いたい」と連絡を取ったら、指定された場所がこんな料亭とは。
外交官ってすげえな。
そんな愚にもつかない思考を弄びながら、スーツの上着を預けてネクタイを緩め、シャツにベスト姿で畳に寝転んでしばらくしていると、僅かな擦過音だけを上げて襖が開いた。
「行儀が悪いぞ、ツクヨ」
「五年ぶりに会う息子への第一声がそれ?」
「む……うむ、そうだ。久しぶりだろうと、幾つになろうと、お前は俺の息子だからな」
言って、五十搦みの男が対面に座った。
かっちりとしたスーツ、短く整えられた黒髪には白髪が混じり、目元には深い皺が刻まれている。体格はガッチリしており、背は高い。
この男こそ、俺とアマテの父親だった。
「まぁ、久しぶり。父さん」
「ああ、元気そうで何よりだ」
「俺の所為で出世できてないんじゃ無いかって思ったが、こんな店に来れるくらいには稼いでるんだな」
「ジオンのエース様には負ける。……『金の月輪』のプロフィールを見た時は目を疑ったぞ」
「母さんは知ってんの?」
「ジオン軍人になったらしいとは言ってある。流石に
「詳しく調べれば分かることだけどな。
ジオン――特にグラナダだと、すぐにバレて話しかけられたものだけど。
そう言って、狐面を外す。
机の端へとそっと置いた。
「…………」
「なんだよ」
「大きくなったな、と思ってな。思えば、お前の顔をこうしてしっかり見られたのは、お前が十歳くらいの頃ぶりだ」
「仕事柄仕方ないだろうさ」
「……昔からそうだった。お前は聞き分けが良すぎる。お陰でアマテの教育に苦労した」
俺は転生者だからね、とは言わない。
代わりに肩をすくめた。
そうしていると、店員がやってきて机の前に膳が並べられた。
「酒は飲むか?」
「おすすめがあれば」
言うと、なにがしかを耳打ちされた仲居が頷いて下がる。
「急ぐのでなければ、本題は後にしよう。暫くはお前の近況が聞きたい」
「あー……だから料亭なのね」
会席料理ってのは言ってしまえば和食のコース料理だ。何度も仲居が出入りするのが普通だから、ある程度食事が進むまでは本題に入らない……らしい。俺も前世で数回、接待で行ったことがある程度だから詳しくは知らん。
「ま、父さんに任せるよ」
「うむ」
何故か満足げな表情の父さんに怪訝な顔を向けていると、徳利とお猪口が運ばれてきた。
互いに酌をし、杯を掲げる。
「美味いな」
「これはだな、カミイグサの――」
「いいよ、
「そうか」
言って、日本酒を一口含み香りを鼻から抜く。いいな、フルーティでスッキリしている。俺はクセの強いほうが好みだがね。
「そうだな……まずは俺がグラナダの訓練施設に行った所から話そうか」
そこからは、主に俺が話をした。
グラナダでソロモン護衛艦隊の注意を引く囮になり、仲間を失いながら十機を撃墜しエースになった事。
その後最前線への配属を望み、海兵隊に入ったがすぐに戦争が終わった事。
海兵隊でシーマ・ガラハウ中佐(今は大佐)に気に入られ、宇宙海賊や連邦の残党と戦いながら、戦闘技術を徹底的に仕込まれた事。
数年後にグラナダに呼び戻され、月面防衛隊の騎兵小隊に配属された事。
模擬戦での活躍がキシリアの目に留まり、下士官ながら小隊長に抜擢された事。
ソドンの乗員を一新し、若手で固める事になったのを聞きつけ、艦載機のパイロットに志願した事。
ソドンでただ一人の艦載機パイロットになったと思ったら、シャリア・ブルが部下を連れて乗り込んできた事。
そのシャリア・ブルの指揮下で赤いガンダムを探し、サイド6まで来た事。
父さんはたまにいくつか質問をしたり、時には驚いたように声を漏らす事はあったが、殆どは黙って聞いていた。
いくつかの膳が入れ替わり、空の徳利が何本か増えた頃、父さんが仲居に何かを耳打ちした。
頷いた仲居が静かに襖を閉めると、父さんは居住まいを正した。
「お前の話を聞けて良かったよ。楽しんでいるようで何よりだ」
「そんな楽しそうに話してた?」
「ああ、学校に通っている時より、よっぽどな」
「人殺しの仕事だぜ? 楽しんじゃ駄目だろう」
「関係ないさ、仕事は楽しみを見つけてやるものだ」
「父さんも楽しんでる?」
問うと、父さんは年齢以上に深く刻まれた皺を
「ああ、少なくとも俺は今日、お前が俺に何を要求し、何を差し出すのか……楽しみで仕方がなかった」
俺やアマテとは違う、黒い瞳が爛々とした光を湛えている。
流石は海千山千の外交官サマだ、俺がただ世間話をしにきた訳じゃない事をよく分かってる。
「ペルガミノがクランバトルに関わっている事は知ってるか?」
まずはジャブだ。どう出るよ、父さん。
「関わっている?」
おいおい、これすら知らないのか。って事は、組織的な物ではなくペルガミノ個人の――
「関わっているなんてモノでは無い。アレを主催しているのこそ大統領だ」
「……はぁ、現役の外交官相手に、ジャブで様子を伺おうとした俺がバカだったよ」
「交渉というのはハッタリのカマし合いだ。覚えておくと良い」
大した狸っぷりだよ、シャリア・ブルみたいに心でも読めんのか?
「クランバトル自体は、半ば独立した組織が運営しているようだがな。ペルガミノはその上前をハネているに過ぎん」
「軍警もグルなのか?」
「いや、軍警は何も知らないはずだ。でなければああも躍起に取り締まりをする筈もない……で? お前は俺に何を教えてくれるんだ」
ニヤニヤしやがって……本当に楽しそうだなぁ!
仕事を楽しんでるだろう事はよぉく分かったよ!
「……三日後、キシリアがペルガミノとの会合のためにサイド6へ訪れる」
「ほう、目的は?」
「とある計画への出資を頼むらしい。その見返りの一つとして、ジオンのMSを何機か渡している」
「よく調べているな。ちなみにその計画というのは『イオマグヌッソ』なる、地球環境修復用ソーラレイの建設事業だ」
おいおいおい……地球環境修復とか言ってもソーラレイだろ!? 絶対地球を焼くために使うやつじゃん!
ていうか、だ。
「何でそんな事まで知ってるんだよ……」
「俺は外交官だぞ。いくら極秘とは言え、他国の要人が訪れるなら分かる。会合の内容とて、事前に何も話さずに来る訳も無い」
まぁ、そうなんだろうけど。そんなレベルまで出世してんのかよ、父さん。
「さぁ、他には?」
「…………会合の日、確実に連邦はコトを起こす」
「だろうな、だから軍警には警備を――」
「そんなモンじゃ済まねえよ」
軍警? あんないつまでもザクを使ってる奴らがどうこう出来るとは思えん。
本気で言ってるのか?
「もう知ってると思うが、シャリア・ブルがキケロガを持ち込んだ。その意味を考えてくれ」
「……俺も含め、官僚というのは軍事に疎い。軍警程度しか武力を持たんサイド6は特にな。教えてくれ」
そうか、サイド6政府もペルガミノも、ともすれば軍警さえ『戦争』というのを甘く見ているのか。
いや、甘く見ているのはMSという兵器に対してか。下手に造船企業である『ワンナヴァル』と繋がりが深い所為で、思考が大艦巨砲主義的になっているんだろう。
だから
戦争はもう、薄闇の中で始まっているのに。
「シャリア・ブルはジオン最強のニュータイプだ。それが条約で禁止されるほどの兵器である
「それ、は……」
「何が来るかまでは分からん。だが、
俺が――多少のハッタリを混ぜて――言い切ると、父さんはしばらく考え込んでいるようだった。
空になったお猪口をじっと見つめていた父さんは、一つ息を吐くと口を開いた。
「アマラカマラ商会を調べろ」
父さんが顔を上げた。
黒い瞳が真っ直ぐに俺を見つめている。
「近頃、クラン『トゥウェルブ・オリンピアンズ』のオーナーがその商会に変わった。イズマコロニー内にも最近になって拠点を構えたようだが、本社は地球にある」
「トゥウェルブズって、クラバのランク一位のチームだよな、そのオーナーが地球の企業?」
「ああ、連邦の政府高官の護衛を名乗る軍人が、イズマに出入りするようになったのもその頃だ」
つまり――そのアマラカマラ商会こそが、キシリア暗殺を狙う連邦の特殊部隊?
「分かった。ありがとう、父さん」
「礼を言うのはこちらだ。どうだツクヨ、サイド6に戻って政府の軍事アドバイザーでもしないか?」
「嫌だよ、そんなつまんなそうな仕事」
「ふっ……そうだな、仕事は楽しくなければならん」
アマラカマラ商会……帰ったら早速調べなければ。ソドンに連絡を取ってオシロ軍曹かセファ伍長あたりに調べてもらうか?
まぁ、それは後で考えよう。
「だけどさ、父さん。こんなにペラペラ機密っぽい事話しても良かったのか?」
「かまわん。クランバトルについては公然の秘密であるし、イオマグヌッソに関してもじきに分かる事だ。それよりも、お前の情報の方が俺にとっては価値がある。当日は何か名目を付けて住民を避難させる事にしよう、これで大勢の命が救われる。母さんや――アマテもな」
ああ、そうか。
これがこの人の『望み』なのか。
サイド6市民の――母さんやアマテの生活を守ることが。
「……たまにはアマテに連絡を取ってやれよ」
「母さんから定期的に様子は聞いている」
「直接話せって言ってるんだ」
「……そうだな、分かった」
さて、色々と情報は集まった。
当日に住民が避難してくれるって言うなら、何も気にせず
シイコさんには会合を『見届ける』なんて言ったが、見ているだけのつもりは無い。状況次第でアマテと戦う事もあるだろう。
悪いな父さん。
あんたが守ろうとしている娘を、俺は――
――殺すかも知れない。
マチュパパ登場回でした。
独自設定・独自解釈はここからもどんどん出てきますので、引き続き寛大な気持ちで読んでくだされば幸いです。
次回もよろしくお願いいたします。