宇宙世紀に転生した。何故かジオンが勝った。妹がガンダムに乗ってた。 作:今峰鏡
いつもありがとうございます。
サブタイトルの略称は『サド穴る』でお願いします。
父さんとの密談を終え、アマラカマラ商会について調べるようソドンへ連絡を入れた翌日。
俺は再び宇宙港へ向かい、イズマコロニーの緩衝空域に停泊するジオンの輸送艦へと乗り込んだ。
そこで待っていたシムス・アル・バハロフ大尉に案内された格納庫には、俺のパーソナルカラーである象牙色に塗装された機体が鎮座していた。
一本角にモノアイ、流線型のスマートなシルエットでありながら、武装や肩部装甲のお陰でマッシブな力強さをも感じさせるそのMSは、俺が前世で大好きだった機体だ。
そんな機体のテストパイロットを探していると聞いて真っ先に手を上げた俺は、他作品の機構や、この世界では作られなかったモビルスーツの特徴を盛りに盛ってリクエストし、グラナダ工廠の連中とあれやこれやしながら実装した結果、試作機と言うより技術試験機となってしまった。
そのせいで調整に手間取り、今になってようやく届いたこのMSの名は――
「ケンプファーAIF。次期量産機であるケンプファーの『
呆れたような声音のシムス大尉の言は正しいが、正確ではない。
アンチ・Iフィールドと言うのは、この世に存在しないMSの名前を引用する上で、俺が言い訳のために付けた略称だ。
AIFの本当の意味は――アメイジング・イフリート。
ガンダム好きなら分かるだろう。このケンプファーは『ケンプファーアメイジング』をベースに『イフリート』の特徴を持たせた強襲用MSだ。
特徴的なのは背中から突き出た『アメイジング・ウェポン・バインダー』だ。……この世界では単にウェポンバインダーと呼ぶのが少々不満だが。原作との違いは、これ自体をスラスターとして加速や姿勢制御に使うため、戦闘中にパージする構造にはなっていない事と、収納されているのが折り畳み式レールガンとショットガンで、実弾兵器を主にしている事だな。対ビグザムのための『アンチ・Iフィールド』が売りなんでね。当然ジャイアント・バズⅡも吊ってるぞ、ウェポンバインダーに固定する形で。
もう一つの特徴は、そこだけ赤色に塗装された肩部装甲だ。
スパイクの生えたこの装甲のお陰で、ぱっと見のシルエットはむしろ『イフリート改』めいて見えるかも知れない。スパイクアーマーの色はニムバスのパーソナルカラー? 知らん、格好いいからいいのだ。
そしてイフリート改の武装と言えば、やっぱり二本の直刀型ヒートソードだろう。こいつがあれば格闘戦もお手の物である。
これこそが俺の新型機!! 『ケンプファー・アメイジング・イフリート』こと『ケンプファーAIF*1』である!!!!!
「協力関係にあるクランの格納庫に隠しておくとの事ですが、この機体は未だ機密の塊です。取り扱いには十分に注意してください」
「承知しております、大尉。それでは早速乗ってみても?」
問うと、シムス大尉が眉間を指でほぐしながらため息をついた。
「はぁ、男ってほんと……」
仕方ないだろ、俺は案を投げただけとは言え、自分で設計に関わったMSなんだから。
「失礼。シャリア・ブル中佐も試運転だなんだと乗りたがっていましたから……」
「あぁ、それは……心中お察しします」
「それより、頼まれていたジークアクスの武装も、そこのコンテナに。中身は専用ビームライフルとビームサーベルです」
これでジークアクスの武装も万全になる。次の戦闘が楽しみだな!
「ジークアクスの現在のパイロットは軍曹の実妹だと聞いていますが……本当にジオンへ来るのでしょうね?」
「そのために赤いガンダムの隠れ家に出向き、話をしてきたのです。そこで交渉が纏まったからこそ、前回は代役として赤いガンダムに乗れたのですから」
と、いう事にしている。
この嘘がシャリア・ブルにどこまで通用しているかは疑問だけどな。
こうして武装を届けてくれたことを思えば、少なくとも騙された振りはしてくれていると信じよう。
その後、俺はケンプファーに乗り、コンテナを抱えてジャンクヤードを飛んだ。
シュウジの隠れ家のほど近く、正方形に成形されたジャンクの陰に身を隠していると、ネノクニ方面から無手のジークアクスが現れた。
「こっちだ、マチュくん」
「フォウさん!」
思考操縦によるものだろう、ジークアクスは妙に人間的な動きでケンプファーを上から下まで眺め直すと、アマテが接触回線を開いて言った。
「それが新型? なんか……ゴツいね」
「ジークアクスやゲルググに比べればな。どうだ、格好いいだろ?」
「んー? ん~……」
微妙な反応だった。
ふっ、女には分からんさ。
「とりあえず肩もクリーム色に塗り直したら?」
「これが格好いいんだろうこれが! というか象牙色と言え!」
パーソナルカラーにしては地味だなって俺も思うけど!
でも『金の月輪』だからって金色の機体には乗りたくないしな……いや、百式はアレで格好いいんだけどさ、アカツキも好きだし。だけど流石に……ね? ゴールドフレームくらいなら、まぁ……
「まあいい、これがジークアクスの正式武装だ」
コンテナを開封し、中から半月型のビームサーベルの発振器を二つと、ビームライフル一丁を取り出す。
アマテは早速ビームサーベルを持つと、ビーム刃を展開してブンブンと振り回した。
それだけで成形済みジャンクがパックリと割れ、通信機からは「おお!」と感動の声が聞こえてきた。
「これは格好いいね!」
“は”ってなんだよ。確かにこのビームサーベルは格好いいけど、なんか釈然としねえ。
ビーム刃を仕舞い、腰へとマウントすると、ジークアクスは器用に腰を折ってぺこりとお辞儀した。
「ありがと、フォウさん」
「上官を騙すような事をしてまで手に入れた武装だ。俺との再戦まで負けるなよ」
「……うん」
なんか歯切れが悪いな。心配事でもあるのだろうか。
「どうした、何か問題でもあったか?」
「ううん、何でも無い! じゃあね、フォウさん」
言って、ジークアクスが身を翻す。
バーニアから青白い噴射光を吐いて飛び去っていくアマテを、俺は黙って見送るしかなかった。
アマテの様子は気になるが、俺は俺で忙しい。
あの後も、アマテにヒートホークでぶっ叩かれて壊れた頭部を軽キャノンの物に置き換えたモーント・ライターの修理が終わったため、シイコさんとお互いに慣らし運転を兼ねた連携訓練を行い、CRSの拠点へと戻るとソドンから入電があった。
通話に出たセファ伍長によると、アマラカマラ商会が地球の極東――日本に本社を置く企業らしく、さらに近くにはあの悪名高きムラサメ研究所があると聞き、俺は敵の正体にアタリをつけた。
――サイコガンダム。
ムラサメ研が関わっていて、シャリア・ブルがキケロガを持ち出すような相手となるとそれしかあるまい。MarkⅠかMarkⅡかは分からんが。てか、そうなるとパイロットはフォウ・ムラサメの可能性もあるのか? どうしよう、フォウ被りしてしまう……
それはそれとして。
連邦軍の暗部が関わっているとなれば、ブライト大尉が知らないのも無理はないだろう。父さんに住民を避難させるよう言っておいてよかったな。あんなんが暴れまわったらとんでもない被害が出るところだった。
通信機の向こうで「私が調べた情報、役に立ちました?」と聞いてくる伍長に礼を告げ(その後ろから「
サイコガンダムをコロニー内に持ち込むとしたら、工業港から『建設重機』あたりの名目で持ち込む方が自然だと思われるが、あちらからの入港はコロニー公社がかなり厳密に管理している。民間船に偽装して持ち込むなら商業港の方が適しているだろう。ポケ戦のケンプファーと一緒だな。
宇宙港を見下ろせるカフェに陣取ったり、シャトルの搭乗受付の列に並んでみたり、観光客を待つツアーのガイドのフリをして『サイド6へようこそ!』と書かれたボードを掲げてみたりしながら入港する宇宙船を見張っているが、なかなかそれらしい積荷を積んだ船は来ない。正確には、いくつかサイコガンダムを運べそうな船こそ来るものの、使っている輸送船やそこにペイントされた社名、その他確認できる限りの情報から調べる限り、地球から来ている船で該当するものは無かった。積荷的に、そう何度も宇宙港を経由するとは思えないからな。この世界だと連邦は宇宙に拠点がないから、使っている機材は地球の企業のモノか、精々アナハイム製だ、分かりやすい。
にしても全然
と、再びやってきたカフェの窓際席でコーヒーを飲みながら考えていた時だった。
「あれは……」
マサムネエアコンと書かれたコンテナを輸送する船が入港してきた。スマホで写真を撮って照合するに、地球製の輸送船のようだ。写真を拡大すると、船の搭乗口の上に『KOBAYASHI MARU』の文字もある。どう見ても日本船籍です。本当にありがとうございました。
「ていうかぁ……」
サイコガンダムっぽい色の肩がおもいっきりはみ出てるんですけど!?
え、隠す気ある??????
大丈夫? 税関通れる?? 流石にサイド6が平和ボケしてるからってそこまでザルじゃ――
――はい、通れました。
ザルでした。
今の通した税関くん、父さんにチクってやるからな。
いやね、流石にあの大きさのMS――サイコガンダムはMAだが――があるとは普通思わないし、そんなモンを堂々と商業港から持ち込むとも思わないだろうから、盲点っちゃあ盲点なんだけどさ……え? これって俺に原作知識があるから分かるだけ? まぁ外交官の父さんですら軍事に疎いワケだし、一般人からしたら分かんないんかな……いや、でもグラナダなら確実に止まるぞ。
まあサイド6税関のザルさは良い、ポケ戦の頃からの伝統だしな。
それよりも今の船だ、どこにサイコガンダムを運び込むのか、持ってきたのはどんなヤツなのか、追いかけて確かめるとしよう。
サイコガンダムは輸送船からトレーラーに載せ替えられ、使われていない貨物ヤードで降ろされた。
随伴した人員の殆どが作業員に扮しているが、その中に場違いな人物が二人。
スーツ姿の若い男性に、私服の少女。
男性の方は何処にでも居そうな外見だが、華奢な少女はなんとも目立つ見た目をしていた。
真っ白な髪に、眠たげに垂れた蒼い瞳、顔にはマズルガードのようなマスクをし、ノースリーブのニットを着て首にはマフラーを巻いている。暑いのか寒いのかはっきりしろよ。
あのどちらかがサイコガンダムのパイロットなのだろうが、白い少女の方があからさまに強化人間って感じのキャラ立ちしてるよな。金髪の方はムラサメ研の研究員か、監視の連邦軍人だろうか。少なくともフォウは居なさそうだ。名前被りしなくてよかったぁ……
サイコガンダムの警備やら動作チェックのような事をしている奴らは置いといて、俺はパイロットと思しき二人組を追う。
二人はイズマコロニーでもかなりグレードの高いホテルへと入っていく。フロントでチェックインを済ませるの待ち、宿泊客のフリをして同じエレベータへと乗り込んだ。
「待っていましたよ、お二人とも」
エレベータが動き出したのに合わせ、その背中に声をかける。
「っ!? お前は」
金髪のほうが動揺した声を上げた。
肩を震わせ、こちらを振り返ろうとする。
「おっと、そのままで。監視カメラがありますので、話は部屋の中でしましょう」
言われた金髪はすぐさま平静を装い、口を閉じた。
白い方は全く動じないな。ぼーっとしてるだけか? ますます強化人間臭い。
エレベータを降り、二人がチェックインした部屋へと向かう。
一緒になって部屋に入り、堂々と廊下を横切ってリビングのソファに腰掛けた。
「どうぞ、お座りください」
「……ドゥー、お前も座れ」
「ん」
釈然としない顔をしながら、対面のソファに金髪が座る。白髪のドゥーと呼ばれた少女もその隣りに座った。
「まずは私から自己紹介を。……
「バスク少佐からそのような事は聞いていないが?」
疑わしげな目を向けてくる金髪へと意味深な笑みを向ける俺だったが――内心は驚愕で声を上げそうになった。
ばばっばバスク少佐!? バスク・オムの事かぁ!? って事はこいつらティターンズ? でもティターンズって、この世界じゃ結成されてないよな? その前身かなんかか? いや、とりあえず落ち着こう。思わぬ大物が釣れたが、俺がやる事に変わりはない。
「入れ違いになったのだろう。俺はブライト・ノア大尉から指示を受けている」
「あのブライト・ノア大尉か!? いや、まさか……」
「そちらの娘がムラサメ研の強化人間なのだろう? ほら、ここまで知っているのが証拠にならんか」
「それは……」
俺の
金髪がドゥーへと視線を向ける。
視線を受けたドゥーがマスクを外した。
「ボクはキラキラを邪魔されなければどうでもいい。ゲーツが決めてよ」
「……分かった、ひとまず信じよう。私はゲーツ・キャパ中尉だ。今回のキシリア暗殺計画の指揮官を任されている。こちらはドゥー・ムラサメだ」
ゲーツ・キャパって……ロザミアのお兄ちゃんか!? 言われてみれば確かにそれっぽい顔だ。この世界でも強化人間のお守りをやらされているのか。
「俺の名はツクヨ・ユズリハ」
名前を聞き、ゲーツが息を呑んだ。
「『金の月輪』……!」
「それと、俺の他にもう一人、シイコ・スガイも協力者だ」
「スガイ? いや、シイコだって!?」
「――そう、ジオンの『金の月輪』と、元ユニカムの『魔女』がお前達に協力しようと言うんだ。作戦の成功は、約束されたようなものだろう?」