宇宙世紀に転生した。何故かジオンが勝った。妹がガンダムに乗ってた。 作:今峰鏡
人を謀る時に大切なのは、
相手の力量を量り違えない事。
そして、他人に計画を諮らない事。
「各部チェック、問題なし。シイコさんはどうですか?」
「こっちも大丈夫よ。ふふ、ただのゲルググとは違うのよ、ゲルググとは」
俺とシイコさんはエアロックからコロニー内部へと入り込み、直前になって変更されたクランバトルのスポーン地点へと辿り着いた。
あの後ゲーツと打ち合わせをし、俺達はトウェルブ・オリンピアンズのメンバーとしてクランバトルに参加し、ガンダムを抑える役をすることになった。後は軍警への抑えと逃亡時の補助も俺達の仕事だ。
半ば信用できないような相手を、直接キシリア暗殺に関わらせるのは避けたかったんだろうな。妥当な判断だ。
逃亡にはブライト大尉が用意してくれた地球行きのシャトルを使う。MS一機程度なら載せられる大型シャトルらしいから、二人くらい増えても大丈夫だろう。
というか、マトモな逃亡手段が無いと知った時は驚いたぞ。流石はバスク・オム、部下を捨て駒にするのも厭わないってわけだ。
宇宙港でサイコガンダムを探していた時はここまで上手くいくとは思わなかったが、これで亡命前に一度、アマテと戦うことが出来る。
ここで決着が付くとは思わないが、ジークアクスを落として後継機への乗り換えイベントを発生させるくらいのつもりで挑むつもりだ。
イズマコロニーの居住区では、コロニーへの小惑星の接近に伴い、小惑星の破壊
言わずもがな、そんな小惑星はL4宙域に影も形も無い。父さんがどうにかして政府を動かしたんだろう。父さんありがとね!
人気のなくなったビルの屋上に陣取った俺は、地上を行くシイコさんを見下ろしながら周囲の動体反応を探る。
モーント・ライター自慢の索敵機能は頭部の換装に伴って失われたが、俺のケンプファーも指揮官機としての機能を備えている。ミノフスキー粒子下でもある程度の索敵能力はある。
「シイコさん、思ったよりもミノフスキー粒子の濃度が濃い。ガンダムを見つけるまでは、あまり前に出すぎないでくださいよ」
『大丈夫、
信号弾が上がる。
クランバトルが始まったと同時にシイコさんが駆け出し、データリンクによってレーダー上に二つの光点が示された。
「怖えよニュータイプ。勘で相手の位置を見つけて、手動でマップにピンを打ったのか……」
レーダーの光点から割り出した位置を、光学センサと熱源探知によりモニタ上に可視化すれば、そこには地下通路への入口に隠れるガンダムとジークアクスの姿があった。
「それじゃあまずは――挨拶代わりだ」
背に懸架していたジャイアント・バズⅡを肩に構え、俺はトリガーを三度引いた。
「シュウちゃん、今日はバトルが終わっても私から離れないで」
『なんで? でもまぁ、わかった』
このバトルが終わり次第、三人は購入したスペースグライダーに乗って地球に行く。
そのための残りの資金を確保するため、カネバンの事務所へと向かったマチュに代わり、ニャアンがバトルに参加していたのだった。
(私も、もうこのコロニーには居られない……)
先日行われた密輸業者に対する一斉捜査により、末端の運び屋であるニャアンにも逮捕状が出されていた。
カネバンに対しても
少女達は今、追い詰められていた。
そして、彼女達から何も知らされていないシュウジも、また――
『ニャアン!』
シュウジの声にハッと顔を上げると同時、何かが迫ってくる予感にジークアクスの頭部を巡らせる。
「バズーカ!?」
先日のクランバトルで相手のドムが撃ってきた物と似た弾頭が、こちらへと飛翔してきていた。
数は三つ。
赤いガンダムの頭部バルカンと、マチュがどこからか手に入れてきたジークアクスの専用ビームライフルにより、すんでの所で撃ち落とす事に成功するが――
『来る!』
炸裂弾の爆煙を突き破り、トリコロールカラーのゲルググが姿を現した。
ゲルググは重力を無視した、まるで
たまらず二人はシールドを掲げながら、別々の方向に飛び
「シュウちゃん!」
広い道路の真ん中に着地したニャアンが見れば、シュウジはビルとビルの間を自由自在に飛び回るゲルググに翻弄されていた。
『――新し――スティグ――――う!?』
『――――と、ガン―――』
シュウジとゲルググのパイロットが何かを言い合っているが、ミノフスキー粒子により雑音ばかりが聞こえてくる。
助けに行くべく駆け出そうとしたニャアンだったが、不意に感じた予感に従い防御態勢を取った。
新たに飛来した二発のバズーカ弾が周囲のアスファルトを吹き飛ばす。
たまらず背部スラスターをフルスロットルで噴射し上空へと逃れるニャアン。しかしその行動を読んだかのように、追加のバズーカ弾が次々にジークアクスを狙う。
「ぐうぅ!」
持ち前の勘でそれらを何とか避けながら上昇すれば、すぐ足元ではビルに着弾した弾頭が、いくつもの巨大な爆炎を上げていた。
バズーカにより側面をえぐり取られながらも屹立するビルの屋上へと着地し、弾頭が飛来してきた方角へカメラを向ける。
目の前をプラズマが走った。
反射的にシールドを構える。ギリギリで
「うわあああああああああああああああ!?」
その身を襲う浮遊感に悲鳴を上げながら、なんとかスラスターを噴射して地面との激突を避け、路上へ仰向けに着地したジークアクスが見上げた先、ビルの先端がバズーカによって
「ちょっ、まっ!?」
破壊されたビルは、コロニーの回転が生み出す疑似重力に従い、真っ逆さまにジークアクスへと向けて落下してくる。
「ひっ」
質量兵器となったビルの残骸が大通りへと降り注ぎ、そこにあるものを粉々に破壊した。
俺は全弾を撃ち尽くした二本のジャイアント・バズⅡをその場へ投棄すると、先程
代わりに取り出したのは197mm口径ショットガン『ヤークトゲーヴェル』だ。
「この程度で終わりじゃないよなぁ、アマテ!」
飛んだ。
スラスターの噴射で落下速度を殺しながら、アスファルトを割り砕いて着地した俺は、未だに土煙が上がるビルの崩落現場へと突っ込む。
前傾姿勢で投影面積を減らしながら、装甲の分厚い部分を前にして飛ぶ。
ショットガンを構え、散弾を土煙の中へと叩き込んだ。
ポンプアクションにより空になったショットシェルを排出、同時に機体を回転させながら高度を取れば、路面で跳ねた空薬莢がビームに焼かれて消えていく。
「そうでなくてはな!」
ビームが飛来した位置へ再び射撃、位置を変え射撃、脚を前に出し地面を削りながら着地、脚部ミサイルポッドからミサイルを射出、殆どはビームに焼かれて迎撃されるが、俺はその間に真上へと跳躍している。
放物線の頂点でミサイルポッドをパージ、落下するミサイルポッドがビームに貫かれて爆散するのを見ながらジークアクスの背後に着地した。
「貰ったァ!」
二振りの直刀型ヒートソードを引き抜き、駆けた。
土煙に紛れてX字に振り切ったヒートソードはギリギリで避けられ、ビームライフルを4分割するに留まる。流石はニュータイプだな! だが!
右手の剣を跳ね上げ、避けた所へ横一文字に左手の剣を振るう。
獣じみた動きで四つん這いになったジークアクスがその下を潜り逃れる。
引き戻した二刀を右肩に担ぐようにして同時に振り下ろす。
専用ビームサーベルを引き抜いたジークアクスがそれを受け止めた。
「やるじゃあないか、マチュくん!」
『フォウさん……なんでっ!?』
「な、ニャアンだと!?
『こっちのセリフ……! 何でフォウさんがオリンピアンズにっ』
「言っただろう! 君達と決着をつけるのが俺の望みだと!」
ビームサーベルを弾き、小さくバックステップ。
距離を取るだろうと予測した相手の不意を突くために、思考の隙を突いて再び踏み込む。
だが、俺の予測に反して前へ出てきたジークアクスに、速度が乗る前のヒートソードを受け止められた。
『そのために私達を通報したの!?』
「何のことだッ!」
『惚けないで! 私には逮捕状が出たし、ジオンに追い詰められてカネバンはマチュとシュウジの隠れ家を売った!』
「なん……だと?」
思わぬ情報に、今度は本当に距離を取る。
ジークアクスも追撃してこない。
僅かに生まれた間に、思考を巡らす。
誰がそんな事を?
カネバンの方は分かる。ジオンの工作員がポメラニアンズのオーナーを嗅ぎつけたのだ。だが、ニャアンを通報? 何の目的で?
いや、まさか――
「そこまでするか、シャリア・ブル!」
そうだ、キシリア機関の
そのための情報は、全て俺が奴に教えてしまっている。
目的は勿論、ガンダムとジークアクス、そして貴重な天然のニュータイプであるアマテとニャアンを確保するためだ。
だが、何故今更になってシャリア・ブルが動いたんだ? 俺が信用ならないのなら、もっと早くから動くは、ず……
サァと血の気が引く。
バレている。
俺の裏切りが、シャリア・ブルに。
そうだ、自分で言ったじゃないか、シャリア・ブルは連邦がサイコガンダムを持ち込むことを知っていると!
ならば当然、手勢を使って連邦の動向は監視しているはず。つまり――
俺がゲーツ・キャパに接触してしまったばっかりに、裏切りがシャリア・ブルにバレたのだ!
そう考えれば、直前になってクランバトルのスポーン地点が変更されたのも納得がいく。奴はコロニー内で、サイコガンダムと同時に
シャリア・ブルの手がまさかそこまで伸びていたなんて……どんだけ手が長いんだよ。ナメック星人か? 木星ってナメック星の事だったのか?
こうしては居られん、最悪ブライト大尉の手配してくれたシャトルまで足が付いている可能性がある。もしそうなったら俺達は袋のネズミだ、キシリア暗殺が成功しても、シイコさんはともかく俺と強化人間二人の命は無い。
「ニャアン、勝負は一旦預けるぞ。だが覚えておけ、アマテだけでは無く、お前も俺の好敵手となった!」
『ワケワカなんだけど!』
「俺が敵だとだけ覚えておけ! 俺は今から、俺達をハメた奴を
そう、殺す。
シャリア・ブルを殺せばまだ目はある。
サイコガンダムと連携すれば、勝率は然程低くは無い……と、思いたい。
少し前の俺なら、シャリア・ブルという現状最強のニュータイプと戦って死ぬのならば本望だと思っただろう。
だが、今は違う。
俺はこの物語の『仮面枠』になるのだ。主人公の宿敵が、こんな所で死ぬなんてあってたまるか!
路上を駆け、ビルを迂回し、戦闘音が響く市街地へ向かう。
通りの先の交差点で、ガンダムとゲルググが向かい合っていた。
共にシールドも、ほとんどの武装も無くし、ビームサーベルだけを構えて互いの隙を伺っている。
悪い、シイコさん!
「うおおおおおお!!」
ショットガンを乱射、気付いたガンダムが身を翻し、ビルの陰に隠れる。
『邪魔をするなァ!』
「落ち着いてくれ、シイコさん! 俺の裏切りがシャリア・ブルにバレた!」
『私には関係ない!』
「このままじゃ、薔薇がある地球へ向かえなくなるぞ!」
『ッ……!』
落ち着いてくれたか。今にも切りかかってきそうなほど気が立っているシイコさんの隣へ行き、並んでシュウジを警戒しながら通信を続ける。
「シイコさんは今すぐシャトルへ向かってください。もしシャリア・ブルの手勢がシャトルに気付いていたら、そのまま逃げてくれて良い」
『……フォウくんはどうするの?』
「俺は連邦の連中と一緒にシャリア・ブルを殺す。そうすれば、シャトルが制圧されていてもまだ逃げる目がある」
『私を置いていく気?』
「そうなったら、必ずパルダまで迎えに行きますよ」
『約束よ?』
「ええ、約束です」
だが、シュウジが俺達を逃がしてくれるかだが――
『軍警察だ! 直ちに戦闘をやめて投降しろ!』
交差点の中央に、マシンガンの威嚇射撃が突き刺さる。
クランバトルの取り締まりに来た軍警か! しめたっ!
シイコさんにハンドサイン。ゲルググが頷くのを見届け、身を翻した。
『待てっ!』
俺達の背後にザクマシンガンの弾丸が突き刺さり、アスファルトを掘り返す。
後ろを見遣れば、シュウジのガンダムもビルを盾にして下がっていくのが見えた。
「追ってくるザクを落とします。シイコさんは行ってください」
『それじゃあ、待ってるわよ――
シイコさんのゲルググが、片手を器用に動かして投げキッスを送ってきた。
は、はははは!
なんて
「クソっ! 人妻に恋するなんて、ロマンス小説じゃないんだぞ!」
悪態をつきながら、俺は頬がニヤけるのを止められなかった。
ああ、もう! 今ならキケロガだって一人で落とせる気がしてくる。
「まずはお前たちだ。軍警に恨みはないが、邪魔をするなら死んでもらう!」
ショットガンを構え、飛ぶ。
ビルの側面を蹴って空へ。軍警のザクマシンガンは、ウェポンバインダーのスラスターを真横に向けてスライド回避。相手の数は4機か、余裕だな。
ビルの縁を蹴り、さらに上空へ。
先頭の一機へと、すれ違いざまにショットガンを叩き込む。
『な、こいつ――うわああっ!?」
ビルへと突っ込んで爆発するザクを尻目に、ウェポンバインダーのスラスターでジグザグに飛ぶと、並んでこちらを狙っていた二機の背後を取る。
ショットガンを二射。
それだけで軍警のザクは火を吹いて落ちていく。
『性能が違いすぎる!?』
島田兵みたいな反応ありがとう。
ならば俺もこう返そう。
「ザクとは違うのだよ、ザクとは!」
怯えている最後の一機へ迫り、無茶苦茶にマシンガンを乱射するそいつへ吶喊。
前傾姿勢で投影面積を減らしたケンプファーに対し、狙いの甘い弾丸は殆どが反れていく。僅かに当たった弾丸も、ケンプファーの前面装甲は貫けない。
俺は恐慌状態のザクへと組み付くと、ヒートソードをコクピットへ一刺し、そのまま機体を蹴って離脱する。
「サイコガンダムは……軍警本部か。デカいから目立って助かるな」
俺はバーニアを吹かすと、イズマコロニー内でも一際高いビルへと飛翔した。
騙し合いで勝てないのなら、正々堂々交渉するしか無い。
――もちろん、拳で。