宇宙世紀に転生した。何故かジオンが勝った。妹がガンダムに乗ってた。 作:今峰鏡
一年戦争時代のお話です。
人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させ、そこで子を産み、育て、死んでいくようになった宇宙世紀。
有名すぎるあのナレーションを
月面都市グラナダ。
ジオン突撃機動軍の新兵訓練所。
その中でもモビルスーツパイロットの適性が高かった者が配属される訓練施設だ。
理由は単純明快、モビルスーツのパイロットになるためだった。
生まれた時から前世の記憶を持っていた俺は、自分の転生したこの世界がファーストガンダムの世界だと気付いた頃から、モビルスーツを駆って宇宙を飛び回る事を夢見ていた。
しかし俺が生まれたのは中立コロニーのサイド6。ジオンの先制奇襲攻撃で崩壊するルウムやらハッテじゃないだけマシかも知れないが、地球やサイド3で生まれるよりはモビルスーツ乗りになり辛い出身だと言えるだろう。宇宙世紀の人口比率的にサイド6住人なんて極僅かなのだから、これは転生ガチャ失敗だと言えるかも知れない。
こうなればポケ戦のストーリーが始まったタイミングでアルと一緒にサイクロプス隊に接触し、NT-1をパクってジオンに亡命するしか無い。問題は俺の住んでいるコロニーが、ポケ戦の舞台となった『リボー・コロニー』では無く『イズマ・コロニー』なる日本風のコロニーである事だった。ナムサン!
チクショー、サイド3に生まれていれば戦争末期に学徒兵としてザクなりゲルググなりに乗れたのにな……絶望的な戦いになるだろうが、どうせ二度目の人生だし、モビルスーツに乗って死ねるなら本望だ。生き残れたらデラーズフリートでジオンの残党として暴れまわってやる。もしもアクシズに逃げ込めたなら、シャアと一緒にエゥーゴ入りして官軍に回ることだって出来るかも。そこからロンド・ベル入りして、逆シャアでアクシズを押し返すメンバーになって……
とまぁ、益体のない妄想をしつつ、自身の生まれの不幸を呪う俺だったが、ガノタとしてではなく一般人としての視点で見れば親ガチャは大成功と言えるだろう。
なにせ戦火を
5歳の頃には妹も生まれ、金銭的に裕福な家庭で何不自由無く暮らしていた俺だったが……転機はある日突然訪れた。
宇宙世紀0079。地球から最も遠いコロニー、サイド3はジオン公国を名乗り地球連邦に宣戦布告、後に言う一年戦争が始まり9ヶ月あまりが過ぎた頃の事だった。
中立を宣言していたサイド6へとジオン公国が攻撃を仕掛け、大した戦力のないサイド6はあっという間に占領されてしまう。
イズマ・コロニーは攻撃に晒される事こそ無かったが、コロニー内にはジオンの艦艇が駐留し、街区ではジオンの陸戦兵やザクがうろつくようになる。
無辜の市民には不幸な出来事だろうが、俺にとっては千載一遇のチャンスだ!
「アマテ、俺は明日家を出る。もう二度と会うことは無いだろう、達者で暮らせよ」
「お兄ぃ、何言ってるの?」
「俺はジオンに亡命する。ジオンでモビルスーツ乗りになるんだ!」
「え、やだ。あたしジオン嫌い。ジオンが来てからお父さんもお母さんも全然帰ってこないもん」
妹はそう言ってふくれっ面になる。
未だ幼い妹を置いていくのは心苦しいが、裕福な我が家ならこの先何の不自由もなく暮らしていける事だろう。
「俺もジオンが好きなわけじゃないよ、アマテ。コロニーを地球に落として、罪のない人々を何億人も殺したのは許されることじゃない。だけど俺は、そんなジオンに入ってでもモビルスーツに乗りたいんだ」
「わけわかんないよ。今日のお兄ぃ、なんか変」
「そうかな……あるいは生まれた時から変になってたのかもな、俺は」
「そうかも、お兄ぃは元からちょっと変」
コロコロと笑う妹の髪を優しく撫でる。
俺はこんなにも愛おしく思う妹を、これから捨てるのだ。
罪悪感はある。
未練だってある。
それでも、俺はモビルスーツに乗りたいんだ。
それが、二度目の生を得た理由だと思うから。
翌朝、俺はアマテを残して家を飛び出した。
駆け込んだのはジオンの駐屯地だ。
そこで俺は年齢と出自を誤魔化し、ジオン軍に入隊する事になる。
これまでの人生を振り返っていた俺は、コクピットに響く警報で我に返る。
接近警報。
AMBACで体を捩ると、すぐ隣をマヴの機体が通り抜けていった。
「アンドレ、バーニアを吹かしすぎるな! 敵に見つかったらどうする! それとも、そんなに俺のケツが魅力的だったか?」
「す、すまねぇ……緊張して操作が覚束ねえ。あ、あと、男のケツはあんまり拝みたく、ねえな……へへっ」
「悪いがカマを掘りかけた罰だ、お前は俺のケツを追い続けてもらう。後ろは任せたぞ、アンドレ。ミンキー達はデブリで待機。サインとバウアーは俺に続け、敵を罠まで誘い込む!」
グラナダへのソロモン落としに際し、決死隊の囮になるべく連邦の護衛艦隊へと攻撃を仕掛ける事になった。
新兵の中でも成績の良かった俺は、囮部隊の一つで隊長として味方に指示を飛ばしていた。
軽キャノンのマヴが3つ。計6機の編隊はまだこちらに気付いていない。
対してこちらは所々ガタの来ている
「ソロモンは必ずこの場所に接近する、この先行部隊が証拠だ! このデブリ帯を拠点に、少しづつ敵を誘引して戦力の漸減を図る!」
俺のこの作戦は図に当たった。
俺達は軽キャノンを共同で2機、俺一人で2機撃墜し、相手を撤退に追い込むことに成功する。
だが――
「なんだこいつ!? さっきのより速い!」
「ピーターがやられた! こいつら、待ち伏せ部隊を先に落とすつもりだ!」
「ミンキー! おいミンキー!? クソッ! もう俺達しか居ねえぞ!」
「落ち着け! 練度が高いのは1機だけだ。現に前衛4人でもう2人も食った、4対4ならまだ互角……仕掛けるぞ!」
連邦軍の第二陣にはエースが居た。
軽キャノン6機のその部隊は、先程逃がした敵から情報を得たのだろう、待ち伏せ部隊の潜むデブリ帯へと攻撃を仕掛け、あっという間に練度に劣る味方達を撃墜してしまった。
この事態に浮足立つ味方を鼓舞し、俺達は4機で一塊になり突貫する。
敵は2機ずつに分かれて散開。マヴをマヴでカバーする二重マヴ戦術で戦うつもりだろうが、こちらにしてみれば好都合だ。
練度でも性能でも劣る俺達の勝機は、局所的に数の有利を作り出しての速攻にしかない。
「アンドレ、そろそろ俺のケツを眺めるのにも飽きただろう。先行して一撃離脱、後に後方警戒に当たれ」
「了解!」
「アンドレの次に俺が行く、サインとバウアーは遅れて来い」
「ああ」「わかったよ!」
指示通り前に出たアンドレが行く。
フルスロットルで突っ込みながらのザクマシンガンの掃射で敵が浮足立つ。前衛に被弾、落とすまでは行かないが速度は死んだ。
「おおおおおおおおッ!」
アンドレに気を取られた前衛に肉薄し、ヒートホークを一閃、二閃。おまけに後衛へクラッカーを投げつける。
連携の崩れたマヴにサインとバウアーのザクマシンガンが叩き込まれ、一瞬にして二機の軽キャノンは宇宙の塵と化した。
「なっ!? こいつ――うわあああああああ!」
同時、アンドレの悲鳴と閃光。
後方警戒に当たっていたアンドレが残りのマヴに食われた! こうも簡単に!?
「よくもアンドレをっ!」
逆上したバウアーが仕掛けるが、前衛に足を止められ、あっという間に後衛のビームガンの餌食となってしまう。
腕がいいのは後衛か!
「どうする、ツクヨ」
「同時に仕掛けるぞ、お前は前衛を!」
「了解した」
相手の足を殺してからの狙撃。お手本のようなマヴ戦を狙ってくるなら、こちらはマヴを捨てて1対1に持ち込むのみ!
「お前の相手は俺だ!」
サインに狙いを付ける後衛の軽キャノン相手に弾幕を張りながら接近。マガジンを打ち尽くしたマシンガンを投げ捨て、ヒートホークを振り下ろす。
たまらず回避行動に移った相手に追随。
敵のビームガンは大きく手を振り反作用を利用した方向転換で回避。
スラスターを吹かして背後を取る。
「貰った!」
軽キャノンの頭部へ斬撃。
しかし相手もさるもの、AMBACで身を翻し直撃を避ける。だが右肩のキャノン砲の質量に引っ張られて鈍い。赤熱した斧刃は頭部を逸れたものの胴体前部を切り裂く。むき出しになったコクピット越しに軽キャノンのパイロットと目が合った。
「っ!?」
視界の端に光条が煌めく。
相手のマヴのキャノン砲だ。
サインが相手をしていたはずのもう一機が接近してくる。
「サイン!? やられたのか……」
ミノフスキー粒子の所為か、悲鳴も聞こえなかった。最期まで口数の少ない男だったな……
俺は感傷を振り切り、コクピットへの衝撃で朦朧とする軽キャノンへとヒートホークで斬りかかる。
計器がやられているからか反応が遅い。
それでも辛うじてビームサーベルを抜いた相手と切り結び、一合、二合、三合――
「獲った!」
剥き出しになったコクピットへ前蹴りを食らわせる。
衝撃でぺしゃんこになったパイロットを乗せ、軽キャノンが吹き飛ぶ先は、砲撃を諦めてビームサーベルを抜いていた
反射的に僚機を受け止め、無防備になった相手へヒートホークを投げつければ、回転する刃は狙い違わず相手の頭部を破壊した。
バーニアを吹かし無手で突貫。
すれ違いざまにヒートホークを引き抜き、身を翻して背中を深く斬りつける。
すぐさまその場を離脱すれば、眼下では重なり合うように二つの爆炎が咲いていた。
「撃墜一〇、被撃墜六。性能差を考えれば破格の戦果だが、俺を残して味方は全滅か……」
MSパイロット育成過程の同期の仲間達。
気に入らないやつも居たが、皆仲間だった。
彼らを喪ったことは悔しいし悲しい。
ソロモン落としを目論んだ連邦への恨みや、自分達を捨て駒の囮にしたキシリアへ思うこともある。
だけど――嗚呼、本当に碌でもない話だが。人でなしな話だが。
「――楽しかったなぁ」
自分でも驚くほどに、心の底からうっとりとした溜息が出た。
故郷を捨ててジオン軍に仕官した時に想像した以上に、MS戦には心躍るものがあった。
鉄の巨人を意のままに操る万能感。
いつ死ぬかもわからない戦場のスリル。
追い詰められる焦燥感。
味方が落とされた時の絶望感。
そしてそれらを乗り越え、手強い敵を討ち果たした時の高揚。
そのすべてが愛おしく、そして代え難い物だった。
「グラナダにソロモンが落ちれば、未だ戦争は続く……さて、シャア大佐は上手くやったかな?」
呟き、近くて遠い
あの場所で戦えていたら
それから暫くして、俺は虹色の輝きを見た。
ソロモンはグラナダに落ちず、そして戦争は終わった。
だから、俺は――