宇宙世紀に転生した。何故かジオンが勝った。妹がガンダムに乗ってた。 作:今峰鏡
これも評価、感想、お気に入りをしてくださった皆様のお陰です!
感想としては「案外動けるな」という感じだった。
多分、ジークアクスの思考操縦が性に合っているんだろう。
思ったら思った通りに動くというのは、簡単そうに見えて案外難しい。
余計なことをゴチャゴチャと考えていればそれがノイズになり、反応が鈍る。
その点、素人のアマテは余計なことを考えない……いや、考える余裕もないお蔭で、逆に上手くいっているんじゃないかと思う。
ニュータイプとしての直感と、それに従う素人故の素直さが、アマテというパイロットの強みだ。
迷いのないパイロットは強い。
MSの速さとは判断の早さだ。
速いだけでは強いとは言えないが、強さを構成する大きな要素である事に違いは無い。
「でもなぁ、そもそも『思考操縦』ってのが遅いんだよ!」
何故ベテランが強いのか。
何故パイロットが搭乗時間を誇るのか。
何故訓練が必要なのか。
「慣れたパイロットは考えるより先に、染み付いた反射で身体が動くんだよなぁ!」
ジークアクスの姿が下に消える。
それに反応してビームサーベルを突き出し、ゲルググの足元を狙っていたヒートホークを弾き返す。
同時にAMBACで宙返りをして身体を逃がした。
この間コンマ数秒。考えるより早く動けば、ニュータイプ相手でもある程度は行動を読ませずに戦える。
ジークアクスがスラスターを吹かして距離を取った。
それを見てフットペダルを踏み込み加速しながらビームサーベルを振るえば、流石の反応速度でヒートホークを合わせてきた。
鍔迫り合いをしながら、接触回線を開く。
「なかなか楽しませてくれるじゃないか、マチュくん」
「馬鹿にして!」
「分かるのか、俺が遊んでいるのが」
「こっちは真剣なの!」
「真剣かも知れんが、必死さが足りんな。命がかかっている自覚がない」
「これはクランバトルでしょ!」
「同じだよ、戦場と!」
胸部を蹴りつけ、反作用で距離を取る。
ジークアクスは錐揉しながら離れていく。そういう風に蹴った。
ここまで戦ってみたアマテの評価だが……操縦はサイコミュ頼り、命のやり取りに無自覚。だが、ニュータイプとしての勘はかなり鋭い。
月面防衛隊時代にフラナガンスクールの候補生と模擬戦をした事があるが、彼らと比べても遜色ないどころか、訓練次第では大きく上回る素質を感じた。俺自身がニュータイプじゃないから断言は出来ないがね。
戦場での甘さに、高いニュータイプ能力、成長途中の戦闘センスも実に主人公らしい。今後戦争が始まって(ガンダムの世界なんだ、戦争ないし紛争くらいは起こるだろう)才能が開花する事を期待出来るくらいの素質は確認出来たな。
さて、アマテの見極めは済んだ事だし、シイコさんの様子でも見に行くか。
ジークアクスが体勢を立て直しているのを背中に、高速で交差し合う二つの光点へと接近する。
光学センサを最大望遠にし、画像認証でロックオン。ついでにビームガンを構えて殺気を飛ばせば、それに反応して赤いガンダムが回避行動、シイコさんに対して隙を晒す。
これくらいの援護ならシイコさんも許してくれるだろう。
出来た隙の間にシイコさんが置きビームガンを設置するのが見えた。
恐らく同時に三本目のワイヤーアンカーを打ち込んだのだろう、慣性を無視したかのような動きで加速が始まる。
赤いガンダムのビームサーベルが空を切ったのと同時、二丁のビームガンからそれぞれ光条が伸びた。
ガンダムはビームに当たる事こそ無かったものの、光の檻に囚われ身動きが取れなくなる――かに見えた。
スティグマ攻撃には弱点がある。
それは、シミュレーターで俺がそうした様に、ワイヤーアンカーを逆に利用される恐れがあると言う事だ。
もちろんそれは、相手の動きを読んだ上で、卓越した操縦技術があってこその物だ。
そして、赤いガンダムのパイロットにはソレがあった。
腰部に突き刺さったワイヤーアンカーを軸に側転。
サーベルを囮に残してビームの檻から逃れると、限界まで伸び切ったワイヤーの張力に逆らわず、シイコさんと共に円運動の軌跡に入る。
互いに互いを追いかけるような形でワイヤーを引っ張り合う。お互いにとてつもないGがかかっているだろう。視界もかなり狭まっているはずだ。その所為か、シイコさんはガンダムのビームサーベルが囮だとは気付いていない!
そしてついに、MS同士が引っ張り合う力に耐えられなくなったのか、ゲルググの左腕がバラバラに壊れると、引き絞った弓から解き放たれた矢のように、ガンダムは一直線にゲルググの背後へと飛んだ。
――不味い、シイコさんはまだ囮のビームサーベルをガンダムだと思っている。背後に回られたことに気付いていない。
「間に合えええええええええ!!!」
ジークアクスから離れる際に最大加速していたゲルググMは、すでに最高速へと達している。
このまま赤いガンダムに機体をぶつける!
赤いガンダムは二本目のビームサーベルを引き抜き、ゲルググのコクピットへと狙いを付けていた。
ここで下手に斬りかからず、冷静に一撃でコクピットを貫こうとする判断は流石だ。
「だが、俺が居るのに悠長な事だな!」
ゲルググMの通信性能ならギリギリ届くだろうという距離で、オープンチャンネルに向かって叫ぶ。
ガンダムの動きが一瞬止まる。
気付いたシイコさんが僅かに身動ぎする。
一瞬の躊躇が終わり、先にシイコさんを殺すことにしたガンダムのサーベルが突きこまれる。
ゲルググの脇腹部分がえぐり取られ、そして、俺が間に合った。
ガゴンと、とてつもない轟音がコクピットに響き、シートベルトが引きちぎられるんじゃ無いかと思うような衝撃が身体を襲う。
ソレを踏ん張って耐えながらフットペダルと操縦桿を動かす。
ガンダムを突き飛ばした反作用で慣性を殺すと、AMBACで180度転回、シイコさんの元へと走った。
「シイコさん!」
コクピットの真横をえぐられたゲルググを抱き、接触回線で呼びかけるが応答は無い。
直撃こそしなかったが、やられた部分がコクピットに近すぎる。意識を失っているか、それとも――
「あの様子からして、ただ降参したって認めてくれなさそうだな……まぁ先に命を狙ったのはこっちだし、しゃーなし」
ならば、だ。
ゲルググを抱いたまま、バーニアを吹かす。
向かうのはこちらへと近付いてくるジークアクス。
「遊ぶ余裕は無くなった。本気で行かせてもらうぞ!」
ビームサーベルを抜き、下方から足元を狙って振り抜いた。
ジークアクスはソレを切り払うと同時に
次の瞬間、俺の首を取る位置にヒートホークが叩き込まれた。
「流石だよ、アマテ。俺が見せた通りだ」
「何で私の名前――」
だが甘い。
俺自身が見せた動きなど、俺は予想しているに決まっているだろう。
俺はシイコさんのゲルググを盾に、身体を逃がす。
ヒートホークを首筋に叩き込まれたゲルググの頭部が宙に舞う。
「味方を盾に!?」
「言っただろう、命がかかっている自覚が無いと!」
俺は首無しゲルググの背後に隠すようにしていたビームサーベルを、ジークアクスの頭部目掛けて突き出した。
――――はは、流石だな。
アマテはシイコさんの機体を蹴って、先ほど赤いガンダムが見せたように側転をすると、回転の最中に腕を伸ばし、俺の脳天へとヒートホークを叩き込んでいた。
これで、
信号弾が上がり、
「流石だよマチュくん、俺が思った通りの動きだ」
「私の、勝ちだっ!」
「そうだな、だから敗者は舞台を去らせてもらう。おっと、勝負がついた後は
真っ暗になっていたメインカメラからサブカメラに切り替えると、すぐ近くまで追いついていた赤いガンダムが、振り上げていたビームサーベルを下ろすのが見えた。
間一髪ってとこか。
「ではな、ポメラニアンズの諸君。縁があったらまた会おう」
機体を翻し、バーニアに火を入れる。
それ以上何を言うこともなく、呆然と立ち尽くす二機のガンダムを置いて、全速力でその場を後にした。
結論から言えば、シイコさんは生きていた。
少々療養は必要だそうだが、既に意識も回復し、受け答えもしっかりしているらしいと聞き、俺は彼女が入院している病室へと足を踏み入れた……と同時、顔すら確認する前に言葉を投げつけられた。
「赤いガンダムは薔薇を探しているわ」
ニュータイプ能力で来たのが俺だと分かったんだろうが、いくらなんでもいきなり過ぎる。
元気すぎる様子に心配が全部吹っ飛んだぞ。
というか、ちょっと雰囲気が違うな。吹っ切れたというか、執着の対象が変わったというか。
片手を上げて案内してくれた看護婦を下がらせる。ベッドサイドまで進むと、見舞いの果物をテーブルに置き、パイプ椅子へと腰掛けた。
「赤い彗星が?」
「アレは赤い彗星じゃ無いわ。貴方だって分かっているでしょう?」
「では、薔薇とは?」
「分からない。でも、薔薇は地球にある」
「それは、ガンダムのパイロットが言ったんですか?」
「見えたのよ、落とされる直前、ガンダムのパイロットの望みが」
ニュータイプ同士の感応。
共振などと呼ばれるものだろうか、命をかけた戦いの中でニュータイプ同士の心が繋がるアレだ。
なるほど、それによって自分のニュータイプ能力を自覚したんだな。
そしてその事により考え方が変わったと見える。
「彼の望みは、その薔薇……シャロンの薔薇の中で眠る少女を守る事」
シャロンの薔薇ねぇ……
ラビアンローズはこの世界線には無いし(ジオン系企業を取り込めなかったアナハイムは、史実ほど軍事産業に傾倒していない)、ラフレシアは流石に未来を先取りし過ぎだろう。
「フォウくん」
シイコさんは笑んでいる。
「はい、シイコさん」
「私、薔薇が欲しくなったわ」
妖艶な笑みを向けてくる人妻に、俺の心臓がギュッと握られた。
「良いでしょう、分かりましたよ。こちらでも当たってみます」
「頼んだわよ、フォウくん」
シャロンの薔薇とやらを探ることは、おそらく俺の目的にも合致する。
赤いガンダムが探す『薔薇』と、その中で眠る少女。
いかにも『物語』の本筋に関わりそうな
そうだな、まずは……
「報告がてら上官に相談してみようか」
スマホを取り出し、軍用の通話アプリを開いてコール。
「失礼します。こちらツクヨ・ユズリハ軍曹であります」
『そろそろかかってくる頃だと思っていましたよ、軍曹。楽に話してください』
スピーカーの向こうから聞こえてくるのは、落ち着いた低い声。
シャリア・ブル中佐だ。
「まずは単刀直入に。赤いガンダムのパイロットは赤い彗星ではありません」
『でしょうね。それで?』
「赤いガンダムのパイロットは『薔薇』を探しています」
『…………それを何処で?』
「魔女はニュータイプです。話を聞く限り、戦いの中で感応したのかと」
『……なるほど』
「『薔薇』とは、何なのですか?」
沈黙。
そして、中佐はシニカルに鼻を鳴らした。
『我々は、シャロンの薔薇と呼んでいます。一年戦争の最中、突然現れた
向こう側。
それは、もしかして、俺が『正史』と呼ぶ世界の事なのか?
『シャロンの薔薇は時間凍結が成されており、通常の方法ではMAにも、そのパイロットにも干渉することは出来ません』
なんかめっちゃSFしてきたな……
いや、ガンダム自体が広義のSFではあるんだが。
そのパイロットってのは、誰だ? アムロ? いや、シイコさんは少女って言ってたな。そんでMAのパイロット……もしかして、ララァ?
「……突拍子もない話ですが、中佐がそう仰るのならば事実なのでしょう」
『ほう、信じますか、この話を』
「作戦中に上官の話を疑うような訓練は受けておりませんので」
『……軍人の鑑ですよ、軍曹は』
なんか含みがあんなぁ! 単純に褒めてはいないんだろうけど、俺も良い大人だ、ここは「恐縮です」と返しておく。
『薔薇の話は一旦承知しました。勿論この事は他言無用で』
「了解であります」
『ジークアクスとそのパイロットの捜索について、何か進展は?』
「……パイロットに目星は付けました。それ以外にもいくつか気になる情報もあります」
『ほう、それは』
素直に感嘆したような溜息だ。
別に優秀さを誇示したいわけでは無い。昇進したいならさっさと士官教育を受けているしな。
「通信では伝えづらい事もあります。どこかで情報共有をしておきたい」
『分かりました。それでは後日、合流場所は追って知らせます』
「了解しました、中佐」
ジークアクスに乗るアマテの事。赤いガンダムのパイロット。何処からか横流しされているゲルググ。クランバトルに関わっていると見られるペルガミノ。そして、シャロンの薔薇――
一度情報を整理し、黒幕感のあるシャリア・ブルの反応を見てから次の行動を考えるべきだろう。
それに――これで『主人公』の情報がジオン側へと伝わる。
さて、ここから『物語』はどう動くかな。
書き溜めの進み具合次第ですが、このあたりから各日~3,4日に一回更新になると思います。
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引き続き「うないも。」をよろしくお願いいたします。