Fate/stay night IF BEYOND THE EVER   作:Мир

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第十四話・幕間 灯りのある窓

 間桐邸の上階に、明かりがあった。凛は通りの曲がり角で足を止めた。門へは近づかず、塀の向こうの窓を見る。隣家の軒から落ちる影が、こちらの足元まで届いていた。

 

 アーチャーは少し後ろに立っていた。凛と同じ窓を見てから、道路の反対側へ目を移す。車が一台通り過ぎた。光が二人のいる場所を外れ、先の道へ消える。

 

「二階か」

 

 凛が声を落とした。

 

 少し開いたカーテンの隙間に、しばらくして人影が立った。明かりを背にした顔が横を向く。窓から離れかけ、室内の何かへ腕を伸ばす。その時、顔に光が当たった。

 

「慎二ね」

「ああ」

 

 慎二は部屋の奥へ引っ込んだ。窓の明かりは消えなかった。凛は門へ視線を動かし、それから、もう一度上階を見る。

 

「戻っているのは、確かね」

「いつからかは分からんがな」

「ええ。今、ここにいる」

 

 言い直して、凛は息を吐いた。玄関の戸は閉じていた。人が出入りする様子はない。

 

「あの男は?」

「見える範囲にはいない」

 

 それ以上を、アーチャーは言わなかった。凛も頷くだけにした。城で見た男の姿を思い出すと、塀の内側へ入って確かめるつもりにはなれなかった。

 

 上階で、慎二がもう一度窓際へ来た。何かを苛立たしげに動かしている。口も動いたが、閉じた窓を通して、その声までは届かなかった。誰に話しているのか、それとも一人で何かを言っているだけなのか、凛には分からなかった。

 

 カーテンが引かれる。最後に腕の影が横切り、部屋の中は見えなくなった。

 

「……本人に聞けば、早いんだけどね」

「顔を見るだけ、と聞いている」

 

 アーチャーの返事に、凛は横を向いた。

 

「覚えてるわよ。行くなんて言ってないでしょう」

 

 言い終える前に、もう足は来た道へ向いていた。アーチャーが周囲を確かめるのを待ち、門から離れる側の道へ入る。

 

 *

 

 合流場所へ向けて、予定していた道を戻っていた。時計を見る。約束の時刻には、まだ少し間がある。士郎たちの方が先に着いているかもしれない。凛は歩調を緩めず、次の角へ向かった。

 

 塀が途切れ、公園の木々が見えた。枝の間に街灯の光がある。もう一つ角を曲がれば、入口へ出る。

 

 アーチャーが、急に顔を上げた。

 

「どうしたの」

 

 返事を待つ間に、凛も足を止めた。寒さとは違った。外套の下まで、何かが触れたように思えた。皮膚の上に何もないことを、手で確かめたくなる。

 

 その先から、人を呼ぶイリヤの声がした。

 

「アーチャー!」

 

 凛が呼ぶより先に、赤い背中が動いていた。凛も地を蹴った。公園へ続く角が、目の前まで来る。指はもう、胸元の宝石に触れていた。

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