今夜もBAR BleuBellで   作:スバル23

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おは!こん!ばんわー!
お久しぶりの方もいらしゃいますかね!
どもスバル23です!
初めの方はこれからよろしくお願いします!
再始動して頑張って行きたいと思います!
それでは……どうぞ!
って懐かしいこの感じ…
チャンネルはそのままで!!
※本作は「ホロライブ」の二次創作小説です。
※オリジナル主人公・独自設定を含みます。
※実際の人物・団体・出来事とは関係ありません。

誤字、脱字ございましたら
1報頂けると幸いです。


BAR BleuBell
1杯目 プロローグ


第一話 同情

 

 夕暮れの街は、昼間の喧騒を少しずつ夜へと引き渡していた

 

 西の空にはまだ赤みが残っている。ビルの窓が夕陽を反射し、行き交う人々の足元には長い影が伸びていた。

 

 その街の一角に、小さな看板がある。

 

 青い花と錨を組み合わせた、少し古めかしいデザイン。ネオンの文字が淡く灯り始めていた。

 

 ――BAR BLUEBELL。

 

 店の裏口から、ひとりの男が顔を出した。

 

「んー……あー……軽い二日酔いだ。昨日何飲んだっけ、なんも記憶ねぇー……」

 

 大きめのパーカーを着た男は、気の抜けた声でぼやきながら、紙巻きタバコをくわえた。

 

 火をつけ、煙を吐く。

 

 夕暮れの空に、白い煙がゆっくりと溶けていった。

 

「……ま、仕事するかぁ」

 

 短くなったタバコを灰皿に押しつけ、男は店の中へ戻っていく。

 

 パーカーを脱ぎ、黒いシャツに袖を通す。腰には黒いソムリエエプロン。髪を軽く整え、カウンターの内側に立つ。

 

 先ほどまでの気の抜けた様子は、少しだけ影を潜めた。

 

 グラスを磨き、ボトルの残量を確かめ、必要なものを手の届く位置へ並べていく。

 

 手際に無駄はない。

 

 酒の知識なら、それなりに自信がある。客の好みやその日の気分に合わせて、銘柄を選び、飲み方を提案することもできる。

 

 もっとも、自分自身は酒に強いわけではないのだが。

 

「……よし。開店」

 

 看板の灯りを確かめ、入口の札を返す。

 

 BAR BLUEBELLの夜が始まった。

 

     *

 

 やがて、街の空はすっかり夜の色に染まった。

 

 駅前の飲食店からは人の声があふれ、仕事を終えた人々が連れ立って歩いていく。誰かと食事をする者。仲間と飲みに行く者。一人で気ままに夜を楽しむ者。

 

 それぞれの一日が終わり、それぞれの夜が始まっていた。

 

 そして、BLUEBELLにも最初の客がやってきた。

 

「よっ、マスター。今日もやってる?」

 

「やってなかったら看板消えてるでしょ」

 

「相変わらず口が減らねえなあ」

 

「そっちこそ、毎回同じこと聞きますね」

 

 見慣れた顔に、男も気兼ねなく返す。

 

 注文を聞き、酒を用意する。客が最近あったことを話せば、適当に相槌を打ち、時には冗談で返す。

 

 特別な話題があるわけでもない。

 

 それでも、気づけばグラスは空になり、次の注文が入る。

 

「じゃあ、また来るわ」

 

「はいはい。足元気をつけて」

 

 客が出ていくと、男は空いたグラスを片づけた。

 

 見送る声は気安く、振り返る様子も自然だった。

 

 長々と引き留めることもなければ、必要以上に踏み込むこともない。

 

 来たいときに来て、帰りたいときに帰る。

 

 そんな距離感が、この店にはよく似合っていた。

 

     *

 

 夜が深まるにつれ、街の表情も変わっていく。

 

 仕事帰りの人々が減り、代わりに酒の入った笑い声が目立ち始める。店をはしごする者もいれば、ようやく腰を落ち着けられる場所を探す者もいた。

 

 そんな頃、二度か三度ほど顔を見せたことのある客が、連れを伴ってやってきた。

 

「マスター、前に飲んだやつって何でしたっけ?」

 

「前って、この前の青いやつ?」

 

「あ、そうそう! あれ!」

 

「じゃあ、同じのでいいですか?」

 

「お願いします!」

 

 男は小さく笑い、グラスを用意する。

 

 初めて来たらしい連れの客は、並んだボトルを眺めながら少し迷っていた。

 

「こういう店、あんまり来ないんですよね。何を頼めばいいのか……」

 

「普段は何飲むんです?」

 

「ビールが多いですね」

 

「なら、無理に格好つけなくてもいいんじゃないですか。飲みやすいのからいきましょう」

 

 いくつか好みを聞き、男は一杯を選んだ。

 

 やがて運ばれてきたグラスを見て、客の表情が明るくなる。

 

「これ、いいですね」

 

「ならよかったです」

 

 それ以上、大げさなことは言わない。

 

 客が楽しそうに話し始めれば、男は仕事の手を動かしながら耳を傾ける。話に加わることもあれば、あえて口を挟まないこともあった。

 

 帰り際、二人は次も来ると約束するように手を振った。

 

「また来ます、マスター!」

 

「はい。お待ちしてます」

 

 扉が閉まる。

 

 男は二人が飲んでいたグラスを片づけると、次の注文に備えて手元を整えた。

 

     *

 

 日付が変わる頃には、街を歩く人の数もずいぶんと減っていた。

 

 それでも、夜はまだ終わらない。

 

 終電を気にする者。帰るタイミングを失った者。明日のことを考えないように、もう一軒だけと足を延ばす者。

 

 その夜、BLUEBELLにやってきた男も、どうやらその一人だった。

 

「マスターぁ……」

 

 扉が開くなり、妙に伸びた声が響いた。

 

「……いらっしゃいませ。大丈夫です?」

 

「大丈夫れす!」

 

「その返事をする人、大体大丈夫じゃないんですよね」

 

 客は自信満々に頷いた。

 

 しかし、カウンターまでの数歩がどこか危うい。男は苦笑しながら様子を見て、無理のない席へ案内した。

 

「えーっと……ここ、何軒目だっけ……」

 

「俺に聞かれても困るんですけど」

 

「じゃあ、ここが一軒目ってことで!」

 

「都合よすぎるでしょ」

 

 思わず吹き出しながら、男は水を差し出した。

 

 客はそれを受け取り、しばらく真剣な顔で水面を見つめたあと、何かを思いついたように顔を上げる。

 

「マスター、俺ってさあ……ちゃんと帰れると思う?」

 

「今から帰る練習しましょうか」

 

「練習!?」

 

「まず水飲んで、ちょっと休憩。それから帰り道を考えましょう」

 

 男は慣れた手つきで水を足し、客の話に付き合った。

 

 話題はあちこちへ飛び、同じ話が何度か繰り返された。それでも、男は露骨に面倒そうな顔をすることなく、時々ツッコミを入れながら付き合っていた。

 

 しばらくして、客はようやく落ち着いたらしい。

 

「……マスター、優しいねえ」

 

「はいはい。明日覚えてたら、もう一回言ってください」

 

「絶対言う!」

 

「それはそれで困るなあ……」

 

 笑いながら見送る頃には、夜の街もすっかり静かになっていた。

 

 店の外を通る人影はまばらで、遠くから聞こえる車の音だけが、かすかに夜の気配を残している。

 

     *

 

 客足が途切れ、店内に静けさが戻ってきた。

 

 カウンターの上を片づけ、使い終わったグラスを洗い終えると、男は小さく息を吐いた。

 

「……ふぅ。ちょっと休憩」

 

 カウンターの内側から電子タバコを取り出す。

 

 ひと息ついて、ゆっくりと煙を吐く。薄い煙が、琥珀色の照明の下で揺れた。

 

 先ほどまで客に向けていた笑顔はない。

 

 疲れたというほどでもない。ただ、誰にも話しかけられず、何も考えずに過ごせる数分間が欲しかった。

 

 電子タバコを持ったまま、男はぼんやりと時計を見上げる。

 

「……明日こそ、ちゃんとした生活しよ」

 

 その言葉に、どれほどの説得力があるのかは本人にもわからない。

 

 そのときだった。

 

 カラン、と入口のドアベルが鳴る。

 

「いらっしゃいませ――」

 

 いつもの調子で顔を上げた男は、入口に立つ人物を見て少しだけ目を丸くした。

 

「あれ、谷郷さん?」

 

「やあ、凪くん。休憩中だったかな?」

 

「いえいえ。ちょうど一服してただけですよ」

 

 凪は電子タバコを片づけ、カウンターの内側へ戻った。

 

「どうします? いつもの?」

 

「そうだね。お願いしようかな」

 

「了解です」

 

 それ以上、説明はいらなかった。

 

 谷郷は凪の父親が店をやっていた頃からの常連だ。凪が店を引き継いでからも、客として足を運び、ときには仕事の相談にも乗ってくれる。

 

 客と店主。

 

 それだけでは説明しきれない、長い付き合いがあった。

 

「相変わらず、ここは落ち着くね」

 

「そりゃどうも。褒めてもお通しぐらいしか出ませんよ?」

 

「十分だよ」

 

「安い男だなぁ…」

 

 凪が笑いながら、グラスを用意する。

 

 谷郷もまた、そんなやり取りを楽しむように席へ腰を下ろした。

 

     *

 

「俺も飲もうかなー。頂いても?」

 

 凪がそう尋ねると、谷郷は少しも迷わず答えた。

 

「いつものだね。いいよ」

 

「さすが、わかってらっしゃる」

 

 凪は谷郷のグラスに酒を用意し、自分の前には氷を入れたアイスコーヒーを置いた。

 

 酒を扱う仕事をしているくせに、本人はあまり強くない。

 

 それを知っている谷郷は、わざわざ理由を尋ねたりしなかった。

 

 凪がグラスを持ち上げる。

 

「じゃ、今日もお疲れさまでした」

 

「うん。お疲れさま」

 

 カチン、と小さな音が鳴る。

 

 たったそれだけの乾杯だった。

 

 大げさな話も、特別な祝い事もない。ただ、今日という一日を終えるための、二人にとっていつもの時間。

 

 凪はアイスコーヒーをひと口飲み、ほっと息をついた。

 

「……やっぱ、これだな」

 

「お酒じゃなくていいのかい?」

 

「俺に酒飲ませたら、明日の俺が大変なことになりますからね」

 

「それは困るね」

 

「でしょ? 店主が二日酔いで営業してたら、説得力ないですもん」

 

「さっきから、ずいぶん身に覚えがありそうな話だね」

 

「気のせいですよ、気のせい」

 

 即答だった。

 

 谷郷は小さく笑い、グラスを傾ける。

 

 店の外を走る車の音が、遠くに聞こえた。

 

     *

 

 しばらくして、谷郷がふと思い出したように口を開いた。

 

「そういえば、最近はずいぶん賑やかみたいだね」

 

「……あー、はい。おかげさまで」

 

「ホロライブの子たちが、よく来ていると聞いたよ」

 

「よく、どころじゃないんですよ」

 

 凪はカウンターに肘をつき、少しばかり大げさにため息をついた。

 

「人それぞれですけど……本当に頻度考えて欲しい。多い子だと週四来てますよ?」

 

「週4?」

 

「週4です。週4。もう第二の家か何かだと思われてません?」

 

「それだけ凪くんに会いたいんじゃないかな?」

 

「……そういうこと言うの、ずるくないですか?」

 

 思わず顔をしかめる凪に、谷郷は楽しそうに笑った。

 

「違うのかい?」

 

「いや、まあ……来てくれるのは嬉しいですよ? 嬉しいですけどね。こっちにも準備ってもんがあるじゃないですか」

 

「なるほど。嬉しい悲鳴というわけだ」

 

「悲鳴っていうか、普通に寝不足です」

 

「それは大変だ」

 

「本当にそう思ってます?」

 

「もちろん」

 

 口元は、まったくそうは見えなかった。

 

 凪はじとっとした目を向けたが、すぐに諦めたように笑った。

 

「……今度、谷郷さんからも言っといてくださいよ」

 

「何を?」

 

「ほどほどに来るように、って」

 

「私から言ったら、余計に来るんじゃないかな」

 

「うわ、ありそう……」

 

 二人して笑う。

 

 客が誰もいない深夜の店に、気兼ねのない声が響いた。

 

 凪にとって、彼女たちは決して遠い世界の人間ではない。

 

 仕事をして、笑って、疲れたら酒を飲みに来る。

 

 そんな、ひとりひとり違う事情を抱えた客たちだ。

 

 だからこそ、無理をしてほしくはないし、来てくれるなら少しでも気楽に過ごしてほしいと思っている。

 

 ――もっとも、本人はそんなことを改めて口にするつもりもなかった。

 

「まあ、来るなとは言いませんけどね」

 

「うん」

 

「……ほどほどにしてほしいだけで」

 

「わかっているよ」

 

 谷郷は、それ以上からかわなかった。

 

     *

 

 グラスの中の氷が、少しずつ小さくなっていく。

 

 話題がひと段落した頃、谷郷がぽつりと言った。

 

「君と出会ってもう7年か……時というのは早いね」

 

「……急にどうしたんですか」

 

 凪は思わず苦笑した。

 

「いや、なんかしみじみしちゃって。俺まで年取ったみたいじゃないですか」

 

「実際、7年経っているからね」

 

「そこは否定してくれてもよくないです?」

 

「ははは。すまないね」

 

「まったく……谷郷さん、急に真面目なこと言うのやめてもらえます?」

 

「そうかな?」

 

「そうですよ。こっち、どういう顔すればいいかわかんなくなるんで」

 

 そう言いながらも、凪の表情はどこか柔らかかった。

 

 7年。

 

 口にしてみれば短いようで、決して短くはない時間だ。

 

 店を引き継ぐことになったときのことも、まだ慣れない仕事に追われていた頃のことも、今となってはずいぶん昔の話になった。

 

 その間も、谷郷は変わらずこの店に顔を出していた。

 

 客として酒を飲み、話し相手になり、ときには店のことを気にかけてくれた。

 

 何か大きな言葉を交わしたわけではない。

 

 それでも、ここまで続いてきた時間がある。

 

「……まあ、これからもよろしくお願いしますよ」

 

 凪はグラスを置き、いつもの調子で言った。

 

 谷郷は一度目を細めてから、ゆっくりとうなずいた。

 

「こちらこそ。よろしく頼むよ、凪くん」

 

「はいはい。お得意様は大事にしないとね」

 

「それはありがたい」

 

「ただし、ツケはなしで」

 

「ははは。厳しいね」

 

「そこは譲れません」

 

 また、いつもの軽口に戻る。

 

 けれど、ほんの少しだけ、二人の間に流れる時間が穏やかになった気がした。

 

     *

 

 時計の針は、午前3時に近づいていた。

 

「さて……そろそろ閉めようかな」

 

 凪が時計を見上げて言うと、谷郷はグラスを置いた。

 

「そうだね。では、最後にもう1杯お願いしようかな」

 

「最後の一杯、ですね。かしこまりました」

 

 凪はカウンターの中で手を動かした。

 

 用意したのは、ビールとトマトジュース。

 

 グラスの中で二つを合わせ、軽く整える。

 

 赤い液体が、照明を受けて静かに揺れた。

 

「はい。レッドアイです」

 

「ありがとう」

 

 谷郷はグラスを手に取り、色を確かめるように少し傾けた。

 

「二日酔い対策かな?」

 

「気持ちだけです。俺が言うのもなんですけど、酒で酒をどうにかしようとするのは、あんまりおすすめしませんよ」

 

「経験者の言葉は重いね」

 

「……それ以上は聞かないでください」

 

 凪は目をそらした。

 

 谷郷は声を立てて笑い、レッドアイをひと口飲んだ。

 

 トマトの風味とビールの苦みが混ざり合う。

 

 最後の一杯には、ちょうどいい味だった。

 

 凪は空になったグラスを片づけながら、谷郷の飲み終わるのを待った。

 

 急かすこともなく、余計なことを話すでもなく。

 

 ただ、最後の一杯を飲む時間を、静かに見守っていた。

 

「ごちそうさま。今日もいい時間だったよ」

 

「ありがとうございます。またいつでもどうぞ」

 

「うん。また来るよ」

 

 谷郷は席を立ち、入口へ向かう。

 

 ドアを開ける直前、ふと振り返った。

 

「凪くん」

 

「はい?」

 

「無理はしすぎないようにね」

 

 凪は一瞬だけ目を丸くした。

 

 けれど、すぐにいつもの笑顔を浮かべる。

 

「……そっちこそ。飲みすぎないでくださいよ」

 

「努力するよ」

 

「絶対してない返事だな、それ」

 

 二人の笑い声が、最後に小さく重なった。

 

 ドアベルが鳴り、谷郷の姿が夜の街へ消えていく。

 

「ありがとうございましたー。またお待ちしてます」

 

 凪は扉が閉まるまで見送り、それから店内へと戻った。

 

     *

 

 午前3時。

 

 看板の灯りを落とし、入口の札を返す。

 

 今日の営業は終わりだ。

 

 グラスを片づけ、カウンターを拭き、店の中をひと通り確かめる。

 

 外へ出ると、街はすっかり静かになっていた。

 

 昼間の喧騒は遠く、通りを歩く人影もまばらだ。

 

信号が変わる音だけが、妙にはっきりと耳に届く。

 

 街灯の下で、BAR BLUEBELLのネオンライトが消えた看板が静かに夜を見つめていた。

 

 凪はそれを見上げ、軽く伸びをする。

 

「……んー。今日も終わったぁ」

 

 肩を回し、裏口から二階へ上がる。

 

 明日もまた、店を開ける。

 

 いつも通りの1日が始まるだけだ。

 

 ――そう思いながら、凪はふと立ち止まった。

 

「……あれ。そういや昨日、何飲んだっけ?」

 

 少し考えてみる。

 

 思い出せない。

 

「……ま、いっか」

 

 考えるのをやめ、男は自分の部屋へと消えていった。

 

 街は、ゆっくりと朝を迎えていく。





いかがでしたか?
今回は谷郷さんからスタートさせて頂きました。
個人的にはあまり見かけない感じ?なったかーって
またこいつは難しいこと初めて…思ってる方もいらしゃると思います
ええ!その通りです!
確実に失踪しそうな勢いで書きました!
(何言ってるんだ?続けろよ)
これでは皆さん次回もお楽しみに!
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