今夜もBAR BleuBellで   作:スバル23

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いつもありがとうございます。
スバル23です。
日常編です。
基本的にはここで凪の何気ない時間(話)
凪の昔話などになります。
そんな1話目です。
どうぞ。


日常
凪の休日


休日の過ごし方(仮)

 

 昼過ぎ。

 

 カーテンの隙間から差し込む光が、部屋の床を照らしていた。

 

「……んぁ」

 

 ベッドの中で小さく声を漏らし、凪はゆっくりと目を開ける。

 

 枕元に置いていたスマートフォンを手に取り、画面を確認する。

 

 時刻は午後一時を少し過ぎたところだった。

 

「……寝たなぁ」

 

 休日らしい休日。

 

 今日は店を開ける予定もなく、特に誰かと会う約束もない。

 

 凪はしばらくベッドの上でぼんやりしていたが、ふと通知が来ていることに気がついた。

 

 LINE。

 

 送り主は、スバルだった。

 

『この前の話、許可おりた!!』

 

「……お?」

 

 思わず声が出る。

 

 以前、スバルから相談されていた話だ。

 

 スバル、ちょこ先生、あやめの三人で、行きつけの店としてBLUEBELLを紹介したいという話だった。

 

 しかし、さすがにそれはマネージャーや谷郷に止められたらしい。

 

 その後どうなったのか、詳しい話はまだ聞いていなかった。

 

『よくおりた……』

 

 凪がそう返すと、すぐにスバルから返信が届く。

 

『最初の案はダメだったけど、別の形ならって!』

『誕生日ライブの宣伝も兼ねて、対談企画みたいな感じになった!』

『凪にはバーのマスターとして出てもらいたい!』

 

「……なるほどねぇ」

 

 どうやら、店を紹介するという形ではなく、バーのマスターと話すインタビュー企画のようなものになったらしい。

 

 スバルの誕生日ライブに向けた企画の一環。

 

 凪自身が出演することで、少しでもライブの宣伝に繋げたいということなのだろう。

 

『声だけでいいって!顔出しもなし!』

 

「そこは助かるな」

 

 画面を見ながら、凪は小さく笑う。

 

 返信を打とうとした、その時だった。

 

 スマートフォンが震える。

 

 画面に表示された名前を見て、凪は一度だけ目を細めた。

 

「……今度はそっちか」

 

 着信の相手は谷郷だった。

 

「もしもし」

 

『やあ、凪くん。今、少し大丈夫かな?』

 

「大丈夫ですよ。ちょうど起きたところです」

 

『ああ、休日だったね。寝起きにすまない』

 

「いえいえ。それで、どうしました?」

 

『スバルくんから話は聞いていると思うけど、今回の企画についてね』

 

 やはりその話だった。

 

 谷郷は、企画の内容について簡単に説明したあと、少し声の調子を落とした。

 

『君が無理だったら断っていいんだよ?』

 

「……」

 

『仕事のこともあるし、あまり表に出たくないというのも分かっているからね。スバルくんのためとはいえ、無理をしてほしくないんだ』

 

「まぁ、そこは大丈夫ですよ」

 

『本当に?』

 

「腐れ縁のよしみで声だけ出演しますよ」

 

『ははっ。そう言ってくれると助かるよ』

 

「ただし、顔は出しませんからね」

 

『もちろん。そのあたりは先方にも伝えてあるよ』

 

「なら問題ないです」

 

 それから当日の流れや、担当マネージャーとの打ち合わせについて簡単に話し、通話は終わった。

 

「……さて」

 

 凪はスマートフォンを操作し、再びスバルとのトーク画面を開く。

 

『当日の流れはマネージャーさんから聞くから、まぁ当日よろしく』

 

 送信。

 

 少しして、返信が届いた。

 

『ありがとおおおお!!』

『よろしくな!!』

 

「元気だなぁ……」

 

 凪は苦笑しながらスマートフォンをベッドに置いた。

 

 こうして、休日の予定がひとつ増えた。

 

 とはいえ、今すぐ何かが変わるわけでもない。

 

「……腹減った」

 

 まずは飯だ。

 

 凪はベッドから起き上がると、ゆっくりと身支度を始めた。

 

     *

 

 遅めの昼食を済ませた凪は、買い物に出かけていた。

 

 日用品の買い足しに、店で使う消耗品や食材の確認。

 

 休日とはいえ、店を経営している以上、完全に仕事から離れられるわけではない。

 

 買い物袋を両手に提げ、帰宅したのは夕方を少し過ぎた頃だった。

 

「ただいまー……って、誰もいねぇけど」

 

 当然、返事はない。

 

 買ってきたものを片付け、必要なものを整理する。

 

 店で使うものは、次の営業に備えて分けておく。日用品は自宅の棚へ。食材は冷蔵庫へ。

 

 ひとつずつ片付けていくうちに、いつの間にか時間が過ぎていた。

 

「……よし、こんなもんか」

 

 ひと通り片付けを終え、凪は一息つく。

 

 その後、夕飯を済ませてコーヒーを淹れた。

 

 時計を見る。

 

 そろそろ、あの時間だ。

 

「……やるか」

 

 凪は部屋の別室にある配信環境を整え、マイクの位置を調整する。

 

 配信画面を確認し、タイトルを設定。

 

 活動名は――『社畜の鏡』。

 

 ゲームに雑談、歌。特に決まったジャンルにこだわらず、気が向いたときに好きなことをする。それが凪の配信スタイルだった。

 

 ただし、最近は仕事が忙しく、配信する時間がなかなか取れていない。

 

 前回の配信から、気づけば二ヶ月以上が経過していた。

 

「まぁ、たまにはやらんとな」

 

 軽く肩を回し、配信開始のボタンを押す。

 

     *

 

 ――配信開始。

 

「お前ら今日も元気社畜してるかー?」

 

 いつもの挨拶。

 

 それを合図に、待っていたかのようにコメントが流れ始めた。

 

『いつものw』

『えっ?お前の方が社畜だろ』

『生きとったんかワレ』

『待ってたぞー!』

『お久しぶりです』

『前回の配信から2ヶ月と3日』

『2ヶ月と3日……長かった……』

 

「えっ? そんなか? つうか普通にやれる時間ねぇんだよ! お前らと違ってこちとら自営業なんやぞ! あと! よく前の配信から数えてたな! 怖いよ? 逆に何考えて生きてるの?」

 

『草』

『監視してます』

『愛です』

『2ヶ月と3日、ずっと待ってました』

『主の配信予定をカレンダーに書いてます』

『自営業の闇』

『お前もちゃんと休めw』

 

「監視じゃねぇか! 愛って言えば何でも許されると思うなよ? あと、俺は休んでるからな。今日だって休みだし」

 

『ほんとぉ?』

『昼過ぎまで寝てただけでは?』

『それ休みっていうんですかね』

『休日の定義壊れる』

『寝るのも仕事のうち』

 

「いや、寝るのは仕事じゃねぇだろ。普通に休日の過ごし方だわ」

 

『昼まで寝て買い物して飯食って配信』

『健康的な社畜』

『意外と充実してるじゃん』

 

「まぁ、そんなもんだな。今日は店も休みだったし、久しぶりにゆっくりできたわ」

 

『店?』

『あ、バー経営してるんだっけ』

『マスター業お疲れ様です』

『自営業ってそっちかw』

 

「そうそう。小さいバーやってんのよ。まぁ、店の仕事もあるからな。営業時間外でもやることは結構あるんだわ」

 

『マスターだったのか』

『似合いそう』

『お酒作ってるの?』

『店名は?』

 

「お酒は作るよ。そこは仕事だからな。……店の名前は内緒。配信と店は別にしたいんでね」

 

『徹底してるw』

『なるほどなー』

『そこは秘密か』

『店に凸するなよ!絶対だぞ!』

 

「凸されたら困るわ! 普通に営業してる店だからな。そこは分けてくれよ?」

 

『了解!』

『配信は配信、仕事は仕事』

『マナーを守って楽しく社畜!』

 

「そうそう。分かってくれりゃいいよ」

 

 凪はコーヒーを一口飲み、画面に目を戻す。

 

「まぁ、そんな感じで。今日は久しぶりだし、ゆるく雑談でもするか。お前ら最近どうよ? ちゃんと飯食ってるか?」

 

『親かな?』

『おかん助かる』

『食べてます!』

『主に健康管理される社畜』

『お前が言うな定期』

 

「いや、飯は大事だぞ。食わないと仕事できねぇからな」

 

『主は食いすぎなんだよなぁ』

『また大盛り食べた?』

『胃袋どうなってるの』

 

「誰が食いすぎだ。普通だろ、普通」

 

『普通とは』

『基準がおかしい』

『主の普通は信用できない』

 

「失礼な奴らだな、お前ら……」

 

 コメントを読みながら、凪は楽しそうに笑う。

 

 久しぶりの配信だというのに、リスナーたちとのやり取りに違和感はない。

 

 いつもどおりの軽口。

 いつもどおりのツッコミ。

 そして、いつもどおりのくだらない会話。

 

 凪にとっては、こういう時間も嫌いではなかった。

 

 しばらく雑談を続けていると、画面の端に通知が表示された。

 

 画面の上部に、スーパーチャットの通知がポップアップする。

 

 【ヤニカスアイドル ¥3,000】

 

 その下には、メッセージが添えられていた。

 

 「タバコの銘柄教えて下さい」

 

「あ、お。スパチャありがとうなー! ヤニカスアイドルさん、ありがとう!」

 

 凪は通知を確認し、メッセージを読み上げる。

 

「えーっと……タバコの銘柄か」

 

 少し考えるように視線を上に向けた。

 

「吸ってるのはメンソールの紙かな。仕事と配信は電子タバコで、味はメンソールのチェリー系統かな……」

 

 そこまで話したところで、凪は少し苦笑する。

 

「……本当にスパチャじゃなくてコメントで良かった気がする」

 

『草』

『質問にスパチャw』

『ヤニカスアイドルさんありがとう』

『銘柄特定班出動!』

『紙と電子で使い分けてるのか』

『チェリーメンソール気になる』

『主、今吸ってる?』

 

「ん? ああ、今は電子の方だな」

 

 凪は机の端に置いていた電子タバコを手に取る。

 

 慣れた手つきで口元に運び、一口吸う。

 

 少し間を置いてから、ゆっくりと息を吐いた。

 

『お、吸ったw』

『実演助かる』

『急に喫煙所』

『配信中に吸うのかw』

『マスター感あるなぁ』

『なんか落ち着く』

『チェリー系って甘いの?』

 

「いや、別に普通に吸うぞ? 配信中だからって我慢するもんでもないしな」

 

 電子タバコを机に戻し、凪はコメントを追いかける。

 

「味は……そうだな。チェリー系だけど、そこまで甘ったるい感じじゃないかな。メンソールが入ってるから、結構すっきりしてる」

 

『なるほど』

『甘い系かと思った』

『メンソール強め?』

『吸ってる姿が想像できる』

『バーのマスターって感じするわ』

 

「バーのマスターってなんだよ。まぁ、仕事中もこんな感じだからな。癖みたいなもんだよ」

 

『仕事中も吸うのか』

『休憩大事』

『自営業の特権』

『社畜の鏡、喫煙休憩中』

 

「いや、仕事中って言っても、ずっと吸ってるわけじゃねぇからな? ちゃんと仕事してるわ!」

 

『誰も疑ってないw』

『自分から言い訳していくスタイル』

『怪しい』

『仕事してる証拠見せて』

 

「配信で仕事の証拠ってなんだよ! レシートでも見せりゃいいのか?」

 

『レシート配信』

『経費精算枠』

『社畜の鏡、確定申告編』

 

「絶対やらねぇ。そんなもん見て何が楽しいんだよ……」

 

 凪は呆れたように笑い、もう一度電子タバコを手に取った。

 

『また吸ったw』

『気に入ったんだな』

『チェリーメンソールの宣伝になってる』

『ヤニカスアイドルさん、いい質問だった』

 

「いや、別に宣伝してねぇからな? 俺が勝手に吸ってるだけだから」

 

 そう言って、凪は小さく笑った。

 

「まぁ、タバコの話はこの辺にしとくか。吸う吸わないは人それぞれだしな。無理に勧めるもんでもないし」

 

『それはそう』

『健康第一』

『主もほどほどにな』

『急にまとも』

 

「俺はいつでもまともだろうが!」

 

『え?』

『ほんとぉ?』

『どの口が言う』

 

「お前らなぁ……」

 

 そんなやり取りをしていると、再び通知音が鳴った。

 

 今度は画面中央に、先ほどよりも大きなスーパーチャットの通知が現れる。

 

 【雪のお姫様 ¥50,000】

 

 大きな金額が画面に表示され、その下にメッセージが続く。

 

 「いつも見てるよっずっと」

 

「…………え?」

 

 凪の声が止まる。

 

 画面を一度見て、もう一度見る。

 

「……いや、ちょっと待て」

 

 数秒の沈黙。

 

「五万……?」

 

『wwwww』

『5万円!?』

『でっかwww』

『雪のお姫様さん!?』

『通知の存在感すごい』

『主、固まってるぞw』

『久々の配信でこれは草』

 

「いやいやいや、ちょっと待って。額でかくね?」

 

 凪は通知に表示された名前を確認し、メッセージを読み上げる。

 

「雪のお姫様さん、ありがとうございまーす。えーっと……【いつも見てるよっずっと】……」

 

 もう一度、金額に目を向ける。

 

「……雪のお姫様さま、か。さまいらねぇな」

 

『草』

『姫様w』

『5万円www』

『額がすごい』

『愛が重いw』

『ずっと見てるよっずっと』

『圧がある』

『ストーカー宣言かな?』

 

「いや、額がでかい上に愛が重い……ブロックだな……冗談だけど」

 

『ひどいwww』

『ブロック宣言w』

『姫様泣いちゃう』

『愛が届いてよかったね!』

『ずっと見てるよっずっと(圧)』

『これは重い女』

『姫様、強く生きて』

 

「いやいや、ありがたいよ? ありがたいけどさ。もうちょっとこう……普通のコメントでもいいんだぞ?」

 

 凪は苦笑しながら、画面に向かって軽く手を振る。

 

「本当にありがとうな。いつも見てくれてるのも嬉しいけど、無理はすんなよー」

 

『優しい』

『結局ちゃんとお礼言う』

『こういうところなんだよなぁ』

『姫様、報われたな』

『ブロックされなくてよかったね』

 

「だから冗談だって言ってんだろ!」

 

 コメント欄が笑いで流れていく。

 

 凪もつられて笑い、コーヒーを手に取った。

 

 そして、また通知音。

 

「お、またまたスパチャありがとうなー!」

 

 今度は画面の端から、ライオンのアイコンとともに通知がポップアップする。

 

 【ライオンマン ¥10,000】

 

 その下に表示されたメッセージは――

 

 「最近いったラーメン屋ありますか?」

 

「……おい!」

 

 凪は思わず笑ってしまった。

 

「ライオンマンさん、ありがとうなー! って、こんなので一万出すな!? いや、ありがたいけど! 質問ならコメントでいいだろ!」

 

『草』

『質問に一万円w』

『ライオンマンさん太っ腹』

『ラーメン情報に一万円の価値』

『主の食レポ待ち』

『また飯の話かw』

 

「えー、最近行ったところかぁ……」

 

 凪は少し考えるように視線を上に向ける。

 

「最近行ったのは、そうだなー。それこそ前にお酒の研修で行ったところのラーメンが美味かったな」

 

『酒の研修?』

『ラーメン屋も行ったのか』

『研修とは』

『食べ歩きじゃないんですか?』

 

「いや、ちゃんと研修だよ。まぁ、そのあと飯食ったんだけど」

 

 凪は少し笑いながら続ける。

 

「味噌ラーメンなんだけどさ、味濃いめで、自分でスープを薄められるタイプなんだよ。あれがマジで美味かった。最初はそのまま食って、途中でちょっと薄めたりしてさ。味変もできるし、最後まで飽きないんだよな」

 

『うまそう』

『味噌ラーメンいいな』

『濃いめを自分で調整できるのいいね』

『どこの店?』

『で?量は?』

 

 最後のコメントを見て、凪は一瞬だけ黙った。

 

「……おいおい」

 

 そして、当たり前のように答える。

 

「特盛一択だろ?」

 

『でたーwww』

『主の大食いww』

『知ってた』

『普通盛りという選択肢がない』

『味の話より量の話』

『特盛一択は草』

『胃袋どうなってんだよw』

 

「いや、だって美味いんだぞ? 普通に食べるだろ、特盛くらい」

 

『くらい!?』

『特盛をくらい扱いw』

『主の普通は信用できない』

『ラーメン屋さん逃げて』

『替え玉もするタイプ?』

 

「いや、店によるだろ。麺の量にもよるし。替え玉するところもあるけど、最初から特盛があるならそっち頼むかな」

 

『こだわりがあるw』

『食の話になると饒舌』

『さっきまで眠そうだったのに』

『ラーメンの話で目が覚めた男』

 

「お前らなぁ……。いや、食べることは大事だろ? 美味いもん食ってる時が一番幸せなんだから」

 

『名言』

『社畜の鏡、食に生きる』

『今度ラーメン食べに行こうかな』

『明日の昼ラーメン決定』

『主のせいで腹減ってきた』

 

「お、いいじゃん。ちゃんと食えよ。俺の話聞いて腹減ったなら、それはもうラーメン食うしかないだろ」

 

『責任転嫁w』

『飯テロ配信』

『深夜に聞くんじゃなかった』

 

「知らねぇよ! 俺は悪くねぇ!」

 

 凪の笑い声とともに、コメント欄がまた賑やかになる。

 

 その後も、好きなラーメンの味や麺の硬さ、トッピングの話などで盛り上がった。

 

『味噌以外だと何が好き?』

 

「醤油も好きだし、豚骨も好きだぞ。あとは店によるな。スープが美味けりゃだいたい好き」

 

『結局なんでも好きじゃねぇかw』

 

「美味いもんは美味いだろ」

 

『チャーシューは?』

 

「チャーシューは大事だな。薄いのも好きだけど、厚切りでほろほろのやつもいい」

 

『主、食レポうまいな』

 

「食ってるだけだからな。専門家じゃねぇぞ?」

 

 コメントを拾っては返し、時折脱線しては笑う。

 

 凪の声は終始楽しげだった。

 

 配信を始めた頃の少し眠そうな雰囲気は、もうすっかりなくなっている。

 

『今日めっちゃ喋るじゃん』

『久しぶりだから嬉しいんだろ』

『次回も近いうちに頼む』

『また2ヶ月待つの?』

 

「いや、知らんがな。俺だって時間があればやりたいんだよ。店の仕事もあるし、仕込みもあるし、買い出しもあるし……意外と忙しいんだぞ?」

 

『自営業大変だな』

『無理せずな』

『でも待ってる』

『次回はゲーム?』

 

「ゲームもやりたいんだよなぁ。最近ちょっと気になってるのがあってさ。まぁ、時間があればやるわ」

 

『言質』

『次回ゲーム配信』

『ラーメン配信も忘れるな』

『特盛食べながらゲーム』

 

「同時にやるな! 絶対無理だろ!」

 

『できるできる』

『主ならいける』

『胃袋と指を同時に動かせ』

 

「お前ら俺をなんだと思ってんだよ……」

 

 凪は呆れたように息を吐く。

 

 それでも、口元には笑みが残っていた。

 

 気づけば、配信を始めてからかなりの時間が経っていた。

 

「……あー、そろそろいい時間か」

 

『もう終わり?』

『早いなぁ』

『次いつ?』

『また2ヶ月後?』

『次回予告ください』

 

「次回予告ってなんだよ。できる時にやるよ、できる時に」

 

『待ってるぞー!』

『無理せずな』

『次はラーメン配信』

『特盛食べるだけの配信』

 

「誰がやるか! ……いや、まぁ、食べながら雑談くらいなら面白いかもしれないけどな」

 

『やったぜ』

『言質』

『ラーメン配信決定』

『特盛確定演出』

 

「決定してねぇよ! 勝手に決めんな!」

 

 最後までコメント欄にツッコミを入れながら、凪は配信を締めくくる。

 

「じゃ、今日はこの辺で。久しぶりに来てくれてありがとな。スパチャもコメントも、いつもありがとう。無理せず、ちゃんと飯食って寝ろよー」

 

『おつ!』

『お疲れ様!』

『久しぶりに声聞けてよかった』

『またなー!』

『おつ社畜!』

『次回も待ってるぞ!』

 

「おつ社畜ー!」

 

 配信終了。

 

 画面が暗くなり、部屋に静けさが戻ってくる。

 

「……ふぅ」

 

 凪はマイクの電源を落とし、背もたれに体を預けた。

 

 久しぶりの配信だったが、やはりこの時間は嫌いではない。

 

 普段の仕事とは違う、気楽な会話。

 

 顔も知らない相手と、くだらない話で笑い合う時間。

 

 店にいる時とはまた違う、自分の居場所。

 

「……さて、明日からまた仕事か」

 

 空になったコーヒーカップを手に取り、凪は立ち上がる。

 

 休日は、もう終わり。

 

 明日からは、いつもの場所で、いつものように誰かを迎える。

 

 そんな日常が、また始まる。




いかがでしたか?
凪も配信してるというお話でした。
今回はいつもと違う凪の姿になっております。
どうやらスパチャの人たちは一体だれでしょうね?
それでは次回のお話でお会いしましょ!

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