スバル23です!
懲りずに2話目の投稿です!
さぁー今回からホロメン達と絡んでいく感じですので
どうぞよろしくお願いします!!
誤字などありましたら一報頂けたら幸いです!
それではどうぞ!
2話目 いつも一緒 前半
23時30分。『BAR BLUEBELL』の通常営業は、穏やかに幕を閉じた。
青い花【ブルーベル】と錨をあしらった看板のネオンは灯したまま、凪は入口の札を『CLOSED』に裏返す。仕事着の黒シャツのボタンを少し緩め、その上から大きめのパーカーを羽織ると、店の裏口へと向かった。
「……ふぅ、一服しよ」
夜の路地裏へ少しだけ顔を出し、お気に入りの紙巻きタバコに火をつける。
紫煙を夜風に溶かしながら、凪はしばし、誰にも邪魔されない気だるい時間を味わっていた。
そんな最中、ふと思い出す。
(……あ、表の鍵、閉め忘れたな)
看板をクローズにしただけで満足して、施錠をすっかり忘れていた。
自分のガサツな私生活がこんなところにも出ているな、と自嘲気味に苦笑する。
もっとも、今さら慌てたところで仕方がない。
「ま、戻ったら閉めりゃいいか」
そう呟き、考えるのを後回しにした。
吸い終えたタバコを携帯灰皿で揉み消し、店内へ戻る。
カウンターの奥に立った凪は、手際よく特大のチャーハンを作り始めた。細身の体格からは想像もつかないが、彼はかなりの大食漢だ。
「よし、嵐が来る前に、まずは自分の賄いを――」
スプーンを手に取り、山盛りのチャーハンに手をつけようとした、その時だった。
カランカランコロン!!
静まり返った店内に、正面入り口のドアベルがけたたましく鳴り響く。
開けっ放しだったドアが勢いよく引かれ、見慣れた四人の影が賑やかな声とともに滑り込んできた。
「こんぺこ! 凪、お腹空いたぺこーーー!」
「Ahoy! あ、ずるい! なーくん、もうご飯食べようとしてるじゃん! 船長にも何かくださーい!」
「こんばんまっするー! ねぇ、凪くん? 団長にもその美味しそうなチャーハン、一口……ううん、大盛りでくれないかなぁ?」
「こんぬい! みんな、静かにしなさいってば……! マスター、夜遅くに、しかも毎回うちのメンバーが騒がしくてごめんね……?」
夜の静寂を切り裂いて、貸切営業の約束時間よりも早く雪崩れ込んできたのは、ホロライブ三期生の四人だった。
凪はスプーンを持ったまま固まり、壁の時計を見上げる。
針が指しているのは、23時47分。
「……いや、はえーよ!!! 24時からだろ!?」
30歳にしては少し高めの声を張り上げ、凪は黒い癖毛をガシガシと掻いた。呆れ果てた表情の耳元で、右耳のピアスが琥珀色の照明にきらりと反射する。
「だって、そこの角でみんなで待ってたら、マリンが『クローズの看板出てるけど、ネオンついてるし、ノブ回してみようよ~』って言ったぺこ!」
「ちょっとぺこら! 自分だって『防犯意識ガバガバぺこだな!』ってノリノリだったでしょ!?」
「もう二人とも、言い合いはそこまで! 凪くん、団長、本当にお腹空いちゃって動けないから、早くチャーハン作って~!」
「もう! 入り口でギャーギャー騒がないの! 本当に恥ずかしいから、早くみんな座って!! ……マスター、本当にごめんね!?」
フレアが慌ててメンバーたちの背中を押し、カウンター席へと促す。改めて申し訳なさそうに頭を下げる姿に、凪は苦笑した。
24時から貸切のはずが、開始前から『BAR BLUEBELL』は三期生たちの第二の実家と化していた。
「……まったく。予約時間より早く来るなら、せめて連絡くらいしてよ」
「えへへ、なーくんなら許してくれるかなーって!」
「船長、反省してないでしょ……」
フレアが呆れたように呟く。
「まあ、来ちゃったもんは仕方ないか。ノエル、これ食べる?」
凪は自分のチャーハンをノエルの前に差し出した。
「えっ!? いいの!?」
「いいよ。俺はまた作るから」
「やったぁ! ありがとう、凪くん!」
ノエルは嬉しそうに手を合わせ、さっそくスプーンを手に取った。
「いただきまーす! ……んーっ! おいしい!」
ひと口食べた途端、ノエルの顔がぱっと明るくなる。
「やっぱり凪くんのご飯っておいしいなぁ。団長、ここに住みたいくらい!」
「それはやめて。店の上、俺の住居だから」
「えー! じゃあ、凪くんのお部屋にお邪魔するのは?」
「話が飛躍してるんだよなぁ……」
凪は呆れたように笑いながら、再びフライパンを握った。
その隣では、ぺこらとマリンも好き勝手に注文を始めている。
「ぺこらはオムライスがいいぺこ!」
「船長はお肉! ガッツリしたやつ!」
「……ここ、居酒屋じゃないんだけどなぁ」
「でも、なーくん作ってくれるじゃん?」
「……まあ、作るけどさ」
結局、凪は二人の注文も聞きながら、自分の分のチャーハンを作り直すことになった。
フレアはそんな様子を見て、申し訳なさそうにしつつも、どこか安心したように笑っていた。
いつも通りの、騒がしい夜だった。
◆
「……ん?」
料理を仕上げていた凪は、ふとノエルの顔に目を留めた。
口元に、米粒がひとつ付いている。
「ノエル、ちょっと」
「ん? なぁに?」
「ここ。米粒ついてるぞ」
凪はそう言って、ノエルの口元に指を伸ばした。
そっと米粒を取ってやる。
「……はい、取れた」
「あっ……。あ、ありがとう、凪くん……!」
ノエルは一瞬きょとんとしたあと、頬をほんのり赤くした。
ただ米粒を取ってもらっただけ。
それだけのことなのに、妙に意識してしまう。
そんなノエルの反応に、凪は特に気づいた様子もなく、いつもの調子で厨房へ戻っていった。
「……っ、もう!」
「ちょっとぉ!!」
その様子を見ていたマリンが、勢いよく声を上げた。
「何その少女漫画みたいなやり取り! ノエルもノエルで、そんな天然タラシ技を真正面から食らわないでよ!」
「えっ!? だ、団長は別に何も……!」
「してないから怖いんでしょーが! 船長の立場がないんですけど!?」
「いや、船長の立場って何……?」
料理を運びながら、凪が首を傾げる。
「なーくんは黙ってて!」
「はいはい」
凪は笑いながら、マリンの前に料理を置いた。
その何気ない笑顔が、またマリンの調子を狂わせる。
本人は何も考えていないのだろう。
きっと、誰に対してもこうなのだ。
自然に気を遣って、当たり前のように優しくして、相手が照れていることに気づかない。
……だからこそ、厄介だった。
「……ほんっと、ずるいんだから」
「ん? 何か言った?」
「なーんにも!」
マリンはぷいっと顔を背けた。
その様子を見て、ノエルは小さく笑う。
「船長、凪くんに構ってほしいんだねぇ」
「ノエルぅ!?」
「えへへ、ごめんね?」
「絶対思ってないでしょ、それ!」
店内に笑い声が広がる。
凪はそんな三人を横目に、最後の皿をテーブルへ置いた。
「ほら、冷めないうちに食べな。あと、食べ終わったらグラス出すからね」
「はーい!」
四人の返事が、また綺麗に揃った。
……本当に、騒がしい。
でも、不思議と嫌ではなかった。
◆
食事がひと段落し、時計の針が零時を回った頃。
凪はカウンターの内側に立ち、4人のグラスを用意していた。
「さて、と。そろそろ飲み物にしようか。今日は何にする?」
「ぺこらは凪にお任せぺこ!」
「船長も、なーくんにお任せで!」
「団長も凪くんのおすすめがいいなぁ!」
「私もお任せ! マスターの選ぶお酒なら、安心して飲めるしね」
四人の返事を聞いた凪は、少しだけ考えるように顎へ手を添えた。
「んー……じゃあ、今日はこれにしようかな」
そう呟き、カウンターの内側で手際よくグラスを並べていく。
用意したのは、淡い赤色が綺麗なカクテル――スプモーニ。
カンパリのほろ苦さに、グレープフルーツの爽やかな酸味。そこへトニックウォーターの炭酸が加わった、すっきりとした味わいの一杯だ。
「はい、お待たせ。スプモーニ。さっぱりしてて飲みやすいと思うよ」
四人の前に、同じカクテルが並ぶ。
「おおー! オシャレぺこ!」
ぺこらはグラスを持ち上げ、興味津々に中を覗き込んだ。
「へぇ、これがスプモーニか。いただきまーす!」
ノエルが一口飲むと、ぱっと顔を明るくする。
「おいしい! さっぱりしてるのに、ちょっと大人っぽい味だね!」
「気に入ったならよかった」
凪は満足そうに笑った。
その隣で、マリンもグラスを手に取る。
「んー、確かにおいしい! さすがなーくん、船長の好みをわかってるぅ!」
「いや、みんなお任せだったから、俺が選んだだけだけど?」
「そこは『船長のために選びました』って言うところでしょー!?」
「はいはい」
軽くあしらわれ、マリンは頬を膨らませた。
そんな二人のやり取りを見ながら、フレアは小さく笑ってグラスを傾ける。
「うん、私も好きだな。甘すぎないし、食事のあとにも合いそう」
「そりゃよかった」
凪は四人の反応を確かめると、自分のグラスを手に取った。
同じカクテルを選んだのは、特別な理由があったわけじゃない。
ただ、今夜の四人には、こういう一杯が似合うと思った。
それだけのことだった。
◆
スプモーニを飲みながら、4人の会話は途切れることなく続いていた。
ぺこらは次に食べたい料理の話をし、フレアはそんな彼女にツッコミを入れる。ノエルは相変わらず料理を楽しみ、マリンは凪をからかっては、逆に軽くあしらわれていた。
いつもと変わらない、賑やかな時間。
けれどマリンは、ふとした瞬間に凪の横顔を目で追ってしまう。
誰に対しても自然に優しい。
誰に対しても、同じように笑いかける。
自分だけが特別なわけじゃない。
頭では、ちゃんとわかっている。
それなのに、凪が自分のグラスを気にかけてくれたり、何気なく声をかけてくれたりするだけで、胸の奥がくすぐったくなる。
「……なーくんってさ」
「ん?」
「こういうの、誰にでもやるよね」
「こういうのって?」
「……なんでもない!」
マリンはグラスに口をつけ、誤魔化すようにもうひと口飲んだ。
そんな彼女を、凪は不思議そうに見つめている。
「……船長、顔赤くなってるぞ。大丈夫?」
「だ、だいじょうぶですぅー! 船長は立派な大人の女性なんですけど!?」
「へぇ。そりゃ頼もしいな」
「でしょ!?」
「じゃあ、無理して飲まなくていいからね。まだ時間あるんだし」
凪は笑いながら、マリンのグラスに視線を落とした。
その言い方が、あまりにもいつも通りで。
いつも通りだからこそ、胸の奥がきゅっと締めつけられる。
マリンはグラスを両手で包み、しばらく黙っていた。
隣では、ノエルが美味しそうにスプモーニを味わっている。
凪はフレアたちと何気ない会話を交わしながら、時折こちらにも笑いかけてくれる。
それだけで、嬉しい。
それだけなのに、もっと欲しくなってしまう。
いつもみたいにふざけて、からかって、笑わせて。
そうやって誤魔化していれば、きっと楽なのに。
凪の前では、どうしても素直になってしまう。
「……もう、なーくんのいじわる」
「ん? また何か言った?」
マリンは小さく息を吐いて、困ったように笑った。
「なーくんの前だとさ、私、いつものお調子者じゃなくて……ただの女の子に戻れちゃうんだよね」
それは、いつもの冗談めいた口調とは少し違っていた。
誰かを笑わせるためでも、場を盛り上げるためでもない。
ただ、好きな人の前でだけこぼれてしまった、ひとりの女の子の本音だった。
その言葉は当の本人には届いていなかった…
いかがでしたか?
今回は前半後半でお送りしたいと思っております!
今回は 船長と団長の2人
後半は あの二人のお話となっております!
それで次回の投稿でお会いしましょう!
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