ダイの大冒険 やはり俺がアバンの使徒なのは間違っている。 作:tomozow
その頃――魔界の奥深く。
立ち込める煙と炉の熱気が渦巻く工房で、ハドラーは孤高の鍛冶職人・ロン・ベルクと対峙していた。
「……断る」
ロン・ベルクは冷たく言い放ち、作業台の金属を静かに叩く。同じ魔族とはいえ、バーンの配下に甘んじているハドラーに対し、職人としての彼が剣を打つ理由など何一つなかった。
「魔王軍の軍司令が、私に剣を打てだと? 笑わせるな。私には貴様に剣を作る謂れなどない」
だが――ハドラーは静かに、そして深く頭を下げた。
かつて世界の頂点に君臨した魔王が、誇りも面目も投げ打ち、ただ一人の武人として一振りの剣を求め、頭を下げている。
「……ハッ。かつての魔王にここまで頭を下げられては、断るわけにもいかんな」
ロン・ベルクは呆れたように息を吐くと、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「いいだろう。一本作ってやる。……材質は、バーン様から賜ったというその『オリハルコン』だ。お前の体格と戦い方に合わせた、最高の一本をな」
「……感謝する、ロン・ベルク」
ハドラーは静かに、しかし重みのある言葉で礼を言った。
その瞳に宿るのは、かつての浅はかな功名心や保身ではない。度重なる不覚とアバンの使徒たち――そして比企谷八幡という異分子への敗北から芽生えた、泥を舐めてでも勝つという武人としての凄絶な覚悟だった。
(……アバンの使徒ども、そして比企谷八幡。貴様らに……絶対に負けるわけにはいかんのだ)
熱風が吹き荒れる工房の中で、ハドラーの全身から禍々しくも力強い闘気がみなぎり出す。
(アバン……! あの世で見ておれ! すべてを捨てて真の強さを求めたこの俺が……再び魔王に返り咲く瞬間をな……!!)
己の肉体と心を極限まで研ぎ澄まし、ハドラーは再戦の時へと向かって静かに闘志を燃やすのだった。
その頃――死線を越える修行の地にて。
ダイの受けた修行は、まさに「凄惨」の一言に尽きるものだった。
竜の騎士・バランによる容赦なき怒涛の責め立て。それだけに留まらず、時にはバランとヒュンケルという二大戦士を同時に相手取るという、常人ならば即死を免れない極限の疑似戦が繰り返されていた。
「――甘いぞ、ダイ! 死線を見誤れば、その一瞬が命取りとなる!」
「追撃だ、ダイ! 思考を止めるな!」
バランの烈風のごとき剣技と、ヒュンケルが繰り出す無駄のない槍撃。その双方を同時に見切り、受け流し、破る――。
血と泥にまみれ、何度も倒れ伏しながらも、ダイは目覚ましい勢いで覚醒を遂げていた。
(負けられない……! 八幡やポップ、マァムたちがそれぞれの場所で戦ってるんだ。俺だけが足踏みなんてしてられるか……ッ!)
極限の闘気の中で、ダイの全身を覆う【竜の騎士の闘気(ドラゴニックオーラ)】はより密度を増し、完璧な制御下におかれつつあった。
一方、傍らでダイを鍛え上げるヒュンケルもまた、果てしない領域へと到達しようとしていた。
「――うおおおぉぉぉッ!! 『グランドクルス』!!」
ヒュンケルの十字の構えから解き放たれた純白の闘気の奔流が、空間そのものを震わせて爆発する!
ドォォォォォンッ!!
「……くっ……!」
直撃を竜の闘気で受け止めたバランの足元が、凄まじい衝撃波によって削り取られ、数メートルも後退していた。
かつては命を削る諸刃の危険技であった『グランドクルス』を、ヒュンケルは完璧に極めつつあった。それは今や、竜の騎士であるバランにすら通じる、恐るべき必殺技へと昇華されていたのだ。
「……見事だ、ヒュンケル。私の闘気をもってしても、易々と受け止め切れんほどの威力」
バランは静かに刀を納め、息を整えるヒュンケルと、その横で凄まじいオーラを纏うダイを見つめた。
「父さん……! ヒュンケル……!」
「うむ。我が息子ながら、恐ろしいまでの成長速度だ。……そしてヒュンケル、お前の技のキレも増している。これならば……いかなる激戦が訪れようとも打ち破れよう」
覚醒を遂げつつあるダイと、至高の技を完成させつつあるヒュンケル。バランの指導のもと、最強の戦士たちは着々と来るべき決戦へと牙を研ぐのだった。
――バランは、いつの間にかさらに高みへと登っていた。
自身ですら「極めた」と思っていた竜の騎士の境地。だが、実戦の果て、血を流し、限界の向こう側を覗き見たその瞬間に、さらにその上へと続く広大な力の手応えがあった。
(……これが、まだ先の世界か)
バランは自らの拳を静かに見つめ、淡く、しかしどこか達観した笑みを浮かべた。
(まあ、使う機会があれば……その時使うとしよう)
そう心の中で呟いた直後、バランの全身から放たれていたオーラの色が一変した。
ゴゴゴゴゴゴ……ッ!!
足元の地面が粉々に砕け散り、大地が悲鳴を上げる。周囲の空気が圧倒的な密度で震え、空間そのものが歪み始める。
バランの肉体が変化し、漆黒と真紅の禍々しくも神々しい闘気甲殻がその身を包み込んでいく。
頭上には巨大な角がそびえ立ち、その瞳には冷徹で底知れぬ竜の光が宿る。
――【竜魔人(りゅうまじん)】。
戦闘本能と破壊の力が究極まで高められた、竜の騎士がたどり着く真の戦闘形態。
「なっ……!?」
「これは……!? なんだ、この桁違いの闘気は……っ!!」
すぐ傍らで控えていたダイとヒュンケルは、あまりの重圧に息が詰まり、思わずその場に膝をつきそうになった。冷や汗が頬を伝い、身体の芯から恐怖に近い戦慄が這い上がってくる。
ただ立っているだけで、周囲の重力すらねじ曲げるかのような絶対的な存在感。
「これが……真の、竜の騎士の姿……」
ダイは目の前に立つ父親の姿に言葉を失い、ヒュンケルもまた、魔王軍時代を含めてもかつて見たことのない究極の戦闘形態を目の当たりにして、唇を噛み締めるしかなかった。
静まり返った修練の地に、ただ竜魔人・バランの圧倒的な気圧だけが重く、静かに渦巻いていた。
凄まじいプレッシャーを放っていた漆黒の巨躯から、ふっと闘気が和らぎ、バランは静かに元の人間形態へと戻った。
「これが私の本気だ。……おそらく、今の私であれば、大魔王バーンにも通じるだろう」
静まり返った修練の地で、バランは圧倒的な事実を淡々と告げた。そして、その厳格な瞳を愛息へとまっすぐに向ける。
「ディーノ。お前は人間と竜の騎士のハーフだ。……正直に言おう、お前が私のようにこの『竜魔人』の姿になれるかどうかは、私にもわからん」
風が止まり、張り詰めた空気がダイの肩に重くのしかかる。
「だがな……私に勝てないようでは、バーンと戦ったところで通用するかどうか怪しいものだ。お前には少なくとも、私と同じレベルになってもらわねばならん。――竜魔人の私とな」
「…………っ!!」
その言葉の意味を理解した瞬間、ダイの背筋に冷たいものが走った。
今の父が示した、世界の理をも歪めるような絶望的なまでの暴力と破壊の化身。その「竜魔人」と対等以上に渡り合えというのだ。
傍らでそのやり取りを聞いていたヒュンケルも、思わず息を呑み、拳を固く握りしめた。
それは修行の域を遥かに超越した、死闘中の死闘。我が子を慈しむ親の顔などそこにはなく、ただ最強の敵として壁に立ちふさがる、かつて獅子が我が子を千尋の谷に突き落とすかのような、峻厳極まる愛の形だった。
「……父さん……俺は……!」
ダイは震える両手を握り締め、恐怖をねじ伏せるように、真っ直ぐにバランを見据え返した。
竜魔人という途方もない壁を示されたダイ。過酷を極める修行の果てに、彼がたどり着く答えとは――?
「……俺はッ!」
ダイは震える拳を力強く握り締め、胸の奥底から湧き上がる怒涛のような感情を叫びに変えた。
「俺は……守りたいんだ! 八幡さんも、ポップも、レオナも、マァムも……! それに、父さんやヒュンケルだって!! 俺はみんなを守りたいんだッ!!」
ドバッ……ッ!!
ダイの全身から爆発的に解き放たれたのは、力への渇望でも、敵への憎悪でもなかった。
ただただ「大切な仲間や大切な家族を死なせたくない」という、一筋の純粋なまでの守護の意思――。
その瞳に宿る覇気と輝きは、もはや迷いを知らぬ本物の勇者のそれであった。
能力や戦闘レベルの壁がどれほど高かろうと、どんな過酷な絶望が立ちふさがろうと、決して折れることのない強靭な魂。ダイの「勇者としての意志」は、いまや完全に完成されつつあった。
(……ディーノ……)
元の人間形態に戻ったバランは、眼前で眩いばかりの光を放つ我が子の姿に、息を呑んで目を見張った。
(……私がこの子の年頃だった頃は……何も知らぬ、ただの幼い少年でしかなかったというのに。……これほどの意志と光を、この若さで宿すとは……)
我が子への愛おしさと、一人の戦士としての敬意が、バランの胸を満たしていく。
そして、ダイの少し後ろでその光背を静かに見つめていたヒュンケルもまた、槍の柄を握る手にぐっと力を込めた。
(守られるだけではない……ダイのその眩しい光は、いずれ世界の闇をすべて照らすだろう。……ならば俺の役目は決まっている)
ヒュンケルは口元にほんのわずかな笑みを浮かべ、ダイの背中を遮るように一歩引いたポジションへと身を置いた。
(……お前の背中は、俺が守る。……兄弟子だからな)
誰に聞かせるでもなく、静かに心の中で呟いたヒュンケル。
竜魔人という圧倒的な壁を示す父親と、その背中を支える決意を固める兄弟子。そして極限の意思を覚醒させた勇者ダイ――。
アバンの意志を継ぐ者たちの絆は、これ以上ないほど強固に結ばれようとしていた。
ヒュンケルはダイの背中を見つめながら、己の胸の内を静かに訂正した。
(――いや、違うな。俺がこの少年に惹かれているのだ)
かつては憎しみに囚われ、闇の闘気を操っていた男。そのヒュンケルが今、ダイという存在に深く魅せられていた。
(ダイには、あの先生(アバン)と同じ……本物の「勇者」の大きさが感じられる。……そして、バランにもだ)
ヒュンケルは視線をバランへと移す。
かつては復讐と破壊の竜の騎士であり、戦いだけに生きる冷徹な男だった。しかし今のバランは違う。我が子の成長を見つめるその目には慈愛があり、共に戦い、共に壁となる「真の父親」の顔がそこにはあった。
(……戦いが終わったら、俺はどうするかな)
ふと、ヒュンケルの脳裏にそんな雑念がよぎる。
(あんな風に誰かを守り、誰かの父親……いや、俺には似合わないか……)
普段の冷徹な仮面の下で、ヒュンケルがそんなことを考えていると、戦場の空気を切り裂くようにいい匂いが漂ってきた。
「そこまでだ。訓練は終わりにする。……腹が減っただろう、食事にしよう」
そう言って立ち上がったバランが手際よく用意したのは、豪快に焼き上げられた肉の塊や、大鍋いっぱいのスープ、無骨に削られたパンといった、見事なまでの「男メシ」だった。彩りや盛り付けなど一切無視の、しかし戦う者たちの飢えた体を満たすには最高の野戦料理である。
「うわあ……! 父さん、いただきます!」
ダイは目を輝かせると、肉にかぶりついた。
ガツガツと夢中で頬張るダイの身体に、ジワジワと疲弊しきった筋肉と闘気が満ちていく。
(……はあ、美味い……!)
限界まで追い込まれた疲労困憊の身体には、こんな飾り気のない男メシが最高に染み渡る。ダイは幸せそうに目を細めながら、次々と料理を平らげていくのだった。
厳しい修練の合間に訪れた、静かで温かなひととき。最強の戦士たちは、それぞれの胸に絆と明日への活力を蓄えていくのだった。
一方、ダイたちが修練の地で死闘を繰り広げていた頃――。
現実世界、都内のマンションの一室。社会人となり、それぞれが己の足で立つようになった大人たちの空間で、八幡とのキスという決定的な出来事を経た直後の二人による、息が詰まるような対峙が続いていた。
「……あなた、身を引いたのではなかったの? 結衣」
冷ややかな氷の美貌に鋭い眼光を宿し、雪乃が静かに腕を組みながら睨みつける。
「……そのつもりだったよ。ゆきのんのこと応援しようって、一度は決めたもん」
結衣は一歩も引かず、スーツのジャケットの裾を軽く握りしめながら雪乃の視線を受け止めた。その佇まいには、学生時代のような甘えはなく、社会で揉まれてきた大人の女性としての強さが宿っている。
「でも……あんな真っ直ぐな告白? 言われて、黙って引いていられるわけないじゃん。私だって……ヒッキーのこと、諦められるわけないよ」
「……っ」
結衣の毅然とした言葉に、雪乃は固く唇を噛み締め、返す言葉を失って黙り込んだ。
社会に出て、世間の不条理や冷たさを知ったからこそ、あの不器用で真っ直ぐな言葉がどれほど希少で価値のあるものかが分かる。あれほど不器用で泥臭い男の「本物」を見せられて、引き下がれるはずがなかった。
(……まったく、あの男は……)
雪乃は静かに瞳を閉じ、溜息をついた。
(……なぜ、わたし一人に決めないのかしら)
会社でも社会でも合理的な選択ばかり求められる時代だというのに、あの男は相変わらず一番面倒で、一番リスクの高い選択肢を残したまま全員を引きずり込む。苛立ちと、胸を締め付ける愛おしさが同時に湧き上がってくる。
そして――結衣もまた、夜景が広がる窓に視線を向けながら、心の中で全く同じ思いを抱いていた。
(……本当だよ、ヒッキーのバカ。なんで私だけを選んでくれないの……?)
一人に絞りきれない八幡の狡さも優しさも、全部理解できてしまう自分がもどかしい。
大人になっても変わらない、バチバチと火花が散る二人の空気。
異世界の壮絶な決決戦と、現実世界の大人な三角関係。比企谷八幡の「本当の戦場」は、むしろここから始まろうとしていた。
バチバチと火花が散る部屋のインターホンが、突如として甲高く鳴り響いた。
扉が開かれ、優雅な足取りでリビングに侵入してきたのは、完璧な笑みを崩さない陽乃だった。仕事帰りの洗練されたスーツを身に纏い、獲物を追い詰める肉食獣のような瞳を輝かせている。
「ふふ、お邪魔するわね~……って、二人ともすごい顔。でも残念でした。比企谷くんは……私の物だから」
余裕たっぷりにそう言い放ち、勝利を確信したような笑みを浮かべる陽乃。
だが――。
「……何を言っているの、姉さん」
雪乃の冷ややかなりんとした声が、室内に響いた。その瞳には動揺どころか、底知れない冷淡さが宿っている。
「……? 雪乃ちゃん?」
「お生憎様だけれど、あの男の唇は……既に私たちがもらっているのよ。今さらあなたが割って入る余地なんて、どこにもないわ」
氷のように冷たい雪乃の宣言に続き、隣に立つ結衣もまた、すっと顎を引いて陽乃をまっすぐに見据えた。
「そうだよ、陽乃さん。私たちはもう、ヒッキーと『その先』の話をしてるの。……お呼びじゃないよ」
「っ……え……!?」
普段なら余裕で二人を弄ぶはずの陽乃の顔から、一瞬で笑みが消え去った。
「く、唇って……二人とも……!? え、ちょっと待って、比企谷くんが二人に……!? 嘘でしょ、あのひねくれ男がそんな行動力を……!?」
完璧だった陽乃の仮面が見事にひび割れ、動揺と焦色が隠しきれずに露わになる。いつも主導権を握っていたはずの「お姉さん」が、完全に後手に回された瞬間だった。
八幡という男を巡る、女たちの執念。
八幡本人が廊下でブルブルと震えている不在の隙に、リビングでは男の手を一切借りない、静かで凄惨な「三つ巴の覇権争い」が繰り広げられていた。
「……冗談じゃないわ」
動揺を隠しきれなかった陽乃だったが、すぐにフッと自嘲気味な、しかし今まで見せたこともないほど獰猛な笑みを浮かべた。
「私は本気だから。……あれ以上の男は、今までもこれからも私の人生に現れない。……狩りに行くわよ」
真っ直ぐに宣言する陽乃の眼光には、いつものからかいや観察者の余裕など一切なかった。一人の女性として、己の欲望と誇りをかけた本気の眼差し。
だが、雪乃は何も答えなかった。
カチャン、と静かな音を立ててティーカップをソーサーに戻し、静かに紅茶の香りを愉しむ。
(……狩りに行く? ふふ、お生憎様。それはこちらのセリフよ、姉さん)
言葉には出さず、完璧な優雅さで立ち振る舞う雪乃の内に秘めた情熱は、決して陽乃に引けを取るものではなかった。
そして結衣もまた、逃げ出すことなくまっすぐに二人を見据える。
「……私もです」
短く、だが退路を断った重みのある一言だけを伝える結衣。
かつて頼りなく二人の後ろをついて回っていた少女の面影はどこにもない。そこにあったのは、愛する男を絶対に譲らないと決意した一人の大人の女性の顔だった。
三つ巴の静かな殺気が充満するリビング。女たちの本気が交錯し、静寂の中に激しい火花が散っていた。
視線は再び、血と闘気に満ちた異世界の修練の地へと戻る。
激しい試練の最中、ダイの手にはバランから借り受けた予備の武器――『吹雪の剣』が握られていた。しかし、その刀身にはすでに無数の亀裂が走り、悲鳴を上げ始めている。
それほどまでにダイの修行は常軌を逸した激しさを誇っていたが、原因はそれだけではなかった。
ダイの肉体から奔流のように溢れ出る【ドラゴニックオーラ】の密度と威力が、通常の鋼で作られた剣の強度を遥かに凌駕し、自らの闘気で剣を内側から破壊し始めていたのだ。
「……武器が自分の闘気に耐えられんか。流石だな、ダイ」
バランは愛息の足元に転がった、柄だけになった剣の残骸を一瞥し、ふっと満足げな笑みを浮かべると、自らの腰から一振りの剣を抜き放ち、ダイへと投げ与えた。
「私の剣を使ってみろ」
「父さんの……剣……!?」
ダイが受け取ったのは、竜の騎士の圧倒的な闘気を長年受け止めてきた、凄まじい業物であった。その重みと冷たい輝きだけで、普通の武器とは次元が違うことが嫌でも伝わってくる。
そして、その強靭な剣を手にしたダイは、さらなる高みへと到達していた。
「――はあああぁぁぁっ……!!」
天に向かって突き上げたダイの指先から、バチバチと激しい青白い電光が迸る。幾度もの死線を越え、ついにダイは【ギガデイン】の呪文を完全に我がものとして習得していたのだ。
頭上に渦巻く雷雲から、神をも穿つ強烈な稲妻がダイの剣へと一気に収束していく。
「これなら……! 壊れない……っ!!」
ダイは一歩踏み込み、眼前にそびえ立つ巨大な岩山に向かって、渾身の構えから剣を振り抜いた。
「――『ギガストラッシュ』ッ!!」
ズガガガガガァァァァンッ!!
雷光と凄まじい真空の刃が融合した究極の剣技が、一筋の閃光となって岩山を直撃する。
爆発音すら置き去りにしたその一撃が過ぎ去ったあと、轟音とともに、何千トンもあるはずの巨大な岩山が音もなく綺麗に両断され、ズシリと崩れ落ちた。
圧倒的な切れ味と、すべてを両断する破壊力。
バランの剣は少しの歪みも見せず、ダイの膨大なドラゴニックオーラを完璧に受け止めて冴え渡っていた。
「見事だ……。私のギガブレイクに、もはや遜色はない」
バランの称賛の言葉が、砂煙の舞う修練の地に響き渡る。
真の強さを手に入れたダイの背中は、もはや一人の戦士として、まばゆいほどの光を放ち始めていた。
父の口から出たその技名に、ダイは目を見開いた。
かつてバランが放ち、地表を抉り、圧倒的な破壊力で世界を絶望に陥れた必殺の剣技――『ギガブレイク』。
雷の呪文「ギガデイン」と剣技を融合させ、竜の闘気で極限まで高められたその究極の一撃と、ダイが放った一撃が今、完全に同等の領域に達したのだ。
「父さんの……ギガブレイクと……」
ダイが自分の両手と、手に握られたバランの剣を見下ろす。
吹雪の剣を粉々に砕いた自分のドラゴニックオーラが、この業物を通して寸分たがわず噛み合い、岩山を一刀両断した。それは、ダイが名実the竜の騎士の最高峰の技を受け継ぎ、自らのものにした確かな証だった。
「ふっ……。私の教えるべきことは、もうほとんど残っていないようだな」
バランは満足げに、しかしどこか誇らしげな笑みを浮かべる。
過酷な試練の果てに、父の背中を捉え始めたダイ。
最強の技を手に入れた若き竜の騎士は、来るべき決戦へ向けて、さらなる自信と輝きをその身に纏うのだった。
砂煙が静まり返る中、バランはまっすぐな眼差しでダイに向き直った。
「ディーノ……最後に、ひとつやっておかなければならんことがある」
バランの声には、これまでにない厳格さと真剣みが宿っていた。
「紋章の位置だ。右腕にあるその竜の紋章を……元の『額』へと戻せ」
「え……額に……?」
ダイが息を呑む。かつて母・ソアラや仲間たちを想う気持ちから、右腕へと移動した竜の紋章。しかし、バランの眼差しに迷いはなかった。
「お前が真の力を完全に制御し、竜の騎士として全開の戦闘力を発揮するためには、本来の位置である額で紋章を躍動させねばならん。……できるはずだ。今の決意を固めたお前ならばな」
ダイは静かに目を閉じ、胸の奥底にある大切な者たちへの想いと、勇者としての覚悟をひとつに束ねた。
――じわリ、と右腕の輝きが消え、ダイの額に鮮烈な【竜の紋章】がくっきりと浮き上がる。
「……できたな。では、これを受け取れ」
バランが差し出したのは、鈍い光を放つ鋭利な武具――『竜の爪』だった。
「それは私の腰にある『竜の牙(ドラゴンファング)』と同じ材質で鍛えられた代物だ。……それを固く握り締めてみろ」
ダイは言われた通り、渡された竜の爪を両手で強く握りしめた。
「そして――自分自身に向かって『ライデイン』を放つんだ」
「えっ……!? 自分にライデインを!?」
驚愕するダイとヒュンケルを余所に、バランは静かに命じる。
「そうだ。自分自身に雷を落とすと同時に、その体内に流れ込んだ電撃のエネルギーを爆発させ、自らのドラゴニックオーラに一気に上乗せするのだ。……限界を超えた闘気の圧縮と昇華。それが、竜の爪の真の真価を引き出す!」
ダイは唾を呑み込んだ。
自分自身に電撃を打ち込み、それを体内で制御してオーラと融合させる――一歩間違えれば自滅しかねない凄絶な試練。
だが、ダイの瞳に怯えはなかった。
「……分かったよ、父さん!」
ダイは竜の爪を固く握り締める。
ダイが竜の爪を受け取り、固く握り締める。瞬間、バランは厳かに首を横に振った。
「違う。手に持つのではない……。その爪を、自らの肉体に直接食い込ませるのだ」
「なっ……!? 肉体に、食い込ませる……!?」
ダイだけでなく、傍らで見ていたヒュンケルも思わず息を呑み、わずかに身構えた。自らの肉体を傷つけ、そこに異物を突き立てるなど、常人であればそれだけで致命傷になりかねない。
「そうだ。竜の爪を己の皮膚に深く突き立て、その痛覚と流れ出る血潮をダイレクトに闘気の燃料とする。私の『竜の牙』と同じだ。痛みを恐怖ではなく力に変えよ」
バランの言葉には、一片の迷いも妥協もなかった。
ダイは覚悟を決めると、その鋭利な竜の爪をぐっと両手で掴み、自らの腕、あるいは胸の皮膚へと迷いなく突き立てた!
「ぐっ……! あああぁぁっ……!!」
生々しい肉を裂く痛みとともに、ダイの口から苦悶の叫びが漏れる。傷口から鮮血が流れ出したが、ダイは怯まない。その痛みと流れる血こそが、己の闘気に火をつける導火線だった。
「その状態で、自分自身に『ライデイン』を放つんだ!」
「はあああぁぁぁっ……!!」
ダイの額に浮かぶ竜の紋章が、血塗られた肉体と共鳴するかのように狂ったような輝きを放ち始める。
自らの頭上へと呪文を呼び寄せ、ダイは躊躇なくその巨雷を己の肉体へと直撃させた。
ドカアアアァァァンッ!!
激しい落雷のエネルギーが、竜の爪を通じてダイの傷口から体内の血管へと直接流れ込む。
痛覚と電撃の奔流が混ざり合い、ダイの神経を焼き尽くすかのような地獄の苦痛。だが、ダイはその凄まじいエネルギーを逃がすまいと、全身の【ドラゴニックオーラ】を一気に爆発させ、体内の電撃と血潮を強引に融合・昇華させた。
バチバチバチバチッ……!!
「うおおおぉぉぉぉぉ――っっ!!!」
ダイの絶叫とともに、傷口から吹き荒れたのは、ただの闘気ではない。雷光を纏い、周囲の空間をズタズタに引き裂くほどの超高密度な破壊のオーラだった。
流血と激痛を代償にして、限界の壁を完全に突破したダイ。
その圧倒的な姿を目の当たりにし、バランは深く、静かに頷くのだった。
電光と爆風が収まりゆく中、砂塵が舞う修練の地で、ダイの肉体にわずかな、しかし決定的な「変異」が生じていた。
額に刻まれた【竜の紋章】は以前よりも一回り大きく膨れ上がり、獣の眼光の如き光を放ちながら激しく脈打っている。さらに、引き締まった唇の端からは、わずかに鋭い「牙」がのぞき始めていた。
それは、人間と竜の騎士の血を引く者がさらなる高みへ踏み込んだ証――人知を超えた領域への扉が開いた瞬間だった。
「……フッ」
バランは我が子の変異を目の当たりにし、どこか誇らしげに、そして猛々しく口元を歪めた。
「さすがは私の息子だ、ダイ」
静まり返った空間に、圧倒的な確信に満ちた声が響く。
「見事だ。お前の体に……『竜魔人』の兆しが見えているぞ」
「りゅう、まじん……?」
自らの体に起きている変化と、身体の底から湧き上がる底知れぬエネルギーに戸惑いながらも、ダイはその圧倒的な充実感を噛み締めるように息を荒げていた。
そして、その光景をすぐ傍らで目撃していたヒュンケルは、思わずゴクリと喉を鳴らし、全身を微かに震わせていた。
(……これが、ダイの……っ!)
かつて魔王軍の剣士として数々の修羅場をくぐり抜け、あらゆる強者を見てきたヒュンケルでさえ、背筋を這い上がる戦慄と畏怖を禁じ得なかった。
人間の枠組みを遥かに超え、世界の理をも揺るがす伝説の破壊の化身へと足を踏み入れていく少年の背中。
(信じられないほどの怪物性と、人間としての温かさが同居している……。これが、俺たちの守るべき『勇者』の姿か……ッ!)
恐ろしくもあり、同時に、圧倒的な信頼を抱かせるその光景を前に、ヒュンケルはぐっと拳を握り締めるのだった。
「よし……これで修練もひとまず一段落だな」
バランが静かに刀を納めると、息を荒げていたダイとヒュンケルも張り詰めていた気気を緩めた。凄惨を極めた修行を乗り越えた達成感と、心地よい疲労感がその場を包み込む。
ダイはボロボロになった自分の両手と、無惨に砕け散った剣の柄を見つめた。
「凄まじい成長だが、今のディーノのドラゴニックオーラと雷撃に耐えられる武器がなければ、本番で全力を出せん。腕の良い鍛冶屋があればいいのだが……」
バランの言葉に、ダイはハッと顔を上げた。
「あ……! 鍛冶屋なら、ポップの実家が確かランカークスで鍛冶屋をやってるんだ! ポップの親父さんなら、きっとすごい武器を叩いてくれるかもしれない!」
「ポップの実家か。……ふっ、あの男の親ならば、一筋縄ではいかんかもしれんが期待はできそうだな」
ヒュンケルも頼もしそうに口元を緩める。
「よし、決まりだな。じゃあ、まずはポップたちと合流して……八幡たちとも久しぶりに会おう!」
その頃、ロモス城の一角。
【破邪の剣】を手に入れた比企谷八幡は、現実世界での恐ろしい「三つ巴の戦い」の余韻(と、夢の中でのひとときの安らぎ)から目覚め、ポップやマァム、ラーハルトたちと合流していた。
「いやー、比企谷の旦那! ザムザの野郎から『破邪の剣』を回収してくるたぁ、相変わらずいい仕事するねえ!」
「別に俺が力ずくで奪ったわけじゃねえよ。あいつが勝手に置いてっただけだ。……まあ、これで少しは戦力が整えばいいんだがな」
八幡がコーヒーを飲みながら不器用につぶやいていると、部屋の扉が勢いよく開いた。
「八幡! ポップ! マァム!」
「ダイ! ヒュンケル! それにバランまで……!」
久々の再会を果たした一行。ダイの全身から漂う、以前とは比べものにならないほど研ぎ澄まされた重厚な覇気に、ポップやマァムどころか、八幡すら思わず目を丸くする。
(おいおい……なんだあの雰囲気。少し見ないうちに、完全に『主人公』としての面構えが極まりすぎてねえか……?)
八幡が内心で冷や汗をかいていると、ダイが笑顔で駆け寄ってきた。
「八幡! 無事でよかった! 破邪の剣を手に入れてくれたんだね!」
「おう……まあな。いろいろあったがな。で、ダイ、お前その格好……どんだけ凄まじい修羅場を潜ってきたんだよ」
「へへ、父さんやヒュンケルに鍛えてもらったんだ! ……でもそのせいで、剣が全部ダメになっちゃってさ。だからポップ、お前の実家のランカークスに行こうと思うんだ!」
「えっ!? 俺の実家あ!?」
ダイの言葉に、ポップが素狂おしい声を上げる。
鍛冶屋の息子・ポップの実家へ向かい、ダイの新たなる武器を求める旅へ――。
そして、過酷な修行を終えたダイたちと、現実世界で凄惨な愛執の修羅場を潜り抜けた八幡。それぞれの戦いを経た者たちが一堂に会し、物語は次なる決戦の準備へと動き出すのだった。
ダイたちの提案により、一行はルーラでポップの故郷・ランカークスへと向かった。
のどかな町並みを進み、見慣れた看板を掲げる一軒の鍛冶屋――ポップの実家へとたどり着く。
「……ただいま、親父、おふくろ」
気恥ずかしさを隠すように、少しぶっきらぼうに店の扉を開けるポップ。
奥の作業場から、頑固そうな体つきの男――ポップの父親・ジャンクが顔を出した。腕組みをしたジャンクは、突然帰ってきた息子をじっと見つめ、一瞬だけ目を見開く。
かつては逃げてばかりで、どこか頼りなかった息子の佇まい。しかし今、ジャンクの目の前に立っているのは、死線を幾度もくぐり抜け、己の弱さと戦い続けてきた一人の「戦士」の顔だった。
「……ふん。少しはマシなツラになったじゃねえか」
ジャンクは不愛想に鼻で笑いながらも、その目には息子への確かな驚きと誇らしさが滲んでいた。
「当たり前だろ!?」
ポップは鼻の下を指でこすりながら、ニッと胸を張って言い返す。
「俺はアバンの使徒ってだけじゃねえ。……大魔導士マトリフ師匠の弟子なんだぜ! いつまでも昔の弱虫ポップだと思うなよな!」
その誇らしげで堂々とした言葉に、店の奥から飛んできた母親のステラが目を見張った。
「ポップ……! ああ、ポップ……っ!」
見違えるほど頼もしく、立派な男へと成長した息子の姿に、ステラは感極まってボロボロと涙を溢れさせた。駆け寄ってポップの手を強く握りしめ、何度も何度もその顔を見つめ返す。
「お前……本当に、凄く立派になっちゃって……っ!」
「ちょ、ちょっとおふくろ! みんなが見てんだから泣くなよ、恥ずかしいろ!」
照れくさそうに顔を真っ赤にするポップだったが、その表情には温かな家族の情が溢れていた。
そんな親子の再会を、後ろで見守っていた八幡は小さく口元を緩めた。
(……へっ。逃げてばっかりだった奴が、親父相手に胸張って『男のツラ』見せてるじゃねえか。……悪くない実家帰りだな)
一筋縄ではいかない鍛冶屋の親父・ジャンクと、成長を遂げた大魔導士の弟子・ポップ。
感動の再会を果たした一行は、いよいよダイの新たなる「最強の武器」作りに向けて、ジャンクとの交渉へと臨むことになる――。
目の前で繰り広げられる親子の温かな再会に、少しだけ毒気が抜けていくのを感じていた。
そんな空気を破るように、ポップが照れくささを誤魔化しながら親父に向き直る。
「……でさ、親父。感傷に浸ってるところ悪いんだけどよ、実は頼みがあって帰ってきたんだ」
「ん? んだよ、急に帰ってきたと思ったら……まさかまた厄介事じゃねえだろうな?」
ジャンクが頑固親父らしい険しい顔で腕組みをし、鋭い視線をポップ、そしてその背後に控えるダイやバランたちへと向ける。
「厄介事って言うか……その、ダイの武器を作ってほしいんだ。こいつの凄まじい闘気と雷撃に耐えられる、とびきり強固で凄え剣をさ!」
ポップの言葉に、ジャンクの眉間がピクリと動いた。
ジャンクはダイの前へと歩み寄ると、その全身から漂う尋常ではない密度のオーラと、静かに秘められた圧倒的な覇気をじっと見つめる。長年、鉄と向き合ってきた名鍛冶屋としての本能が、目の前の少年が只者ではないことを瞬時に察知していた。
「……ほう。このガキの剣を、か」
ジャンクの目が、一瞬にして頑固な親父の顔から「職人の顔」へと変わる。
「おいおいポップ。お前、自分が何を言ってるか分かってんのか? こいつの纏ってる気は半端じゃねえぞ。並の鉄や鋼じゃ、一回振っただけで粉々に吹き飛んじまう。……おいガキ、今までどんな剣を使ってた?」
ジャンクの問いに、ダイは少し申し訳なさそうに答えた。
「……父さんの『吹雪の剣』を借りてたんだけど、さっきの修練で壊しちゃって……」
「なに……!? あの名剣・吹雪の剣を叩き折ったってのか!?」
ジャンクは呆気にとられたように目を見開いたが、すぐにニヤリと不敵で頑固そうな笑みを浮かべた。
「面白い……! そこまでの力を受け止める剣か。だがなポップ、そんなもんを打つにはただの鉄じゃ話にならんぞ。最高の素材と、俺の命を削るような打ち込みが必要だ!」
決戦に向け、勇者の最高峰の武器を鍛え上げるための問いかけが、今ランカークスの鍛冶場で始まろうとしていた。
「――なら、これを使えばいいんじゃねえか?」
会話の輪から少し引いていた八幡が、ポケット……ではなく、懐からゴソゴソと何かを取り出し、無造作にドスンと作業台の上に放り投げた。
重厚な金属音とともに鈍い輝きを放ったのは――【覇者の冠】であった。
「なっ……!??!?」
それを見たヒュンケルとラーハルトが、一瞬にして目を見開き、息を呑んだ。
「お、おい八幡……! それは……まさか『オリハルコン』か!?」
「あ? ああ、そうらしいな。元々はダイの物なんだがな。なんかサイズが俺の頭に異常なまでにシンデレラフィットしたから、今までちょっと借りてただけだ。本来の持ち主に返すついでに、剣の材料にしてくれりゃ丁度いいだろ?」
八幡は何でもないことのように淡々と言い放つ。
「おいおい……! オリハルコンって言ったら、この世に存在するあらゆる金属の中で最強・最硬とされる神の金属だぞ……!?」
ポップが泡を食って叫び、マァムも呆然と八幡と冠を交互に見つめている。
そして――今まで数々の鉄や希少金属を叩いてきた頑固鍛冶屋・ジャンクは、その『覇者の冠』を目にした瞬間、全身を激しい戦慄に包まれていた。
ゴクリ、と唾を飲み込み、震える手でそっと冠の表面に触れるジャンク。
「つ、強い……! 鉄じゃねえ、鋼でもねえ……! 意志を持った神の金属……! こ、これが伝説のオリハルコンか……っ!?」
あまりの密度の高さと、金属自体が放つ圧倒的な存在感に、ジャンクの職人としての血が狂ったように沸き立ち、武者震いが止まらない。
「信じられん……! この素材なら、吹雪の剣どころか、どんな闘気も雷撃すらも完璧に受け止め、更なる威力へと増幅させる『究極の剣』が打てる……! 最高の素材じゃねえか……っ!!」
眼をギラつかせ、今すぐにでも炉に火を入れんばかりの勢いで叫ぶジャンク。
「……よかったな、ダイ。お前だけの『本物の剣』が、これでようやく形になるぞ」
八幡はふっと不敵な笑みを浮かべ、ダイの肩をポンと叩いた。
神の金属オリハルコンと、命を削る職人の業。
ここに、勇者ダイの覚醒を象徴する【最強の剣】の精錬が始まろうとしていた。
「……だがな」
ジャンクは武者震いを鎮めるように深く息を吐くと、苦笑いを浮かべて首を横に振った。
「これほどの凄まじい素材と相手となると、いくら名鍛冶屋を自負する俺一人じゃどうにもならねえ。……おいポップ、ついて来い。俺の『酒飲み仲間』のところへ行くぞ」
ジャンクが案内した先にいたのは、静かに酒を煽る謎の男――魔界の名工、ロン・ベルクであった。
「……何の用だ、ジャンク。俺はもう剣など打たんと言ったはずだ」
ロン・ベルクは鬱陶しそうに一蹴しようとしたが――その視線が、ジャンクの後ろに佇むバランに留まった瞬間、その瞳が大きく見開かれた。
「……むッ!?」
ロン・ベルクの鋭い眼光が、バランの腰に差された【神魔剛竜剣】へと注がれる。
「……その剣は……まさか……! 神々が作りし剣か……!?」
魔界一の鍛冶屋として、数々の神兵・魔兵を眼にしてきたロン・ベルクをして、息を呑ませる圧倒的な威容。神と竜と魔の力が混ざり合った、この世で唯一無二の至高の超金属の輝きに、ロンの職人としての魂が激しく揺さぶられる。
「ほう……一目でこれを見抜くか」
バランが静かに呟くと、八幡が無造作に【覇者の冠】を差し出した。
「神々の剣も凄いんだろうがよ、おっさん。こっちの『オリハルコン』を使って、ダイに最高の剣を打ってやってくれねえか?」
「……なッ!?」
ロン・ベルクは立ち上がり、思わず冠を凝視した。
「オリハルコンまで揃えているというのか……!? この人間界に、これほどの素材が残っていたとは……!」
神の作りし最高峰の剣『神魔剛竜剣』と、究極の金属『オリハルコン』。
絶対に剣を打たないと誓っていた魔界の名工の瞳に、激しい情熱と鍛治師としての熾火が宿り始めていた。
「……参考になるかどうかわからんが、ついでにこれも」
八幡は面倒くさそうに頭をかきながら、背負っていた布包みを解き、一本の古びた、しかし凛とした聖気を放つ剣をドン、とテーブルの上に置いた。
そこに現れたのは――超古代の聖なる力が宿る伝説の兵装、【破邪の剣】であった。
「……ッ!??!」
ロン・ベルクとジャンクの二人は、もはや声を出すことすら忘れて硬直した。
魔界最高峰の金属『オリハルコン』。
神々が鍛え上げた至高の兵具『神魔剛竜剣』。
そして、人知を超えた秘術と聖なる力が秘められた『破邪の剣』。
鍛冶屋として一生に一度出会えるかどうかというレベルの「伝説」が、いま目の前に三つ同時に揃っているのだ。ロン・ベルクの鋭い瞳が激しく揺れ、息を呑む音すら静まり返った店内に響き渡る。
一方、その光景を後ろで見ていたヒュンケルは、信じられないものを見る目で八幡を凝視していた。
「おい……八幡……! お前、いつの間に『破邪の剣』などを手に入れていたんだ……!? 」
「あ? いや……なんかロモスでザムザの奴と色々と押し問答があったんだよ。『くれてやる』とか何とか言われて、半ば押し付けられるみたいにもらったんだよ。まあ、役に立つならと思って持ってきて正解だったな」
八幡は何でもないことのように鼻を鳴らす。
そのあまりにも軽々しい口ぶりに、修羅場を潜り抜けてきたバランでさえも、片眉を上げて八幡を見つめていた。
(……自ら求めずして、運命の至宝が向こうから転がり込んでくる……。恐ろしいほどの豪運の持ち主か、あるいは……世界そのものに愛されている男か)
バランの深い眼光に、八幡という人間の底知れなさに対する静かな驚嘆が宿る。
そして、伝説の三兵具を目の前にしたロン・ベルクは、静かに拳を握り締めると、低く獰猛な笑みを口元に浮かべた。
「……ハッ!! 面白い……! 面白すぎるぞ……!! ジャンク、酒を持ってこい! この最高峰の素材と技法を融合させ、神の剣すら凌駕する『究極の剣』を打ってやる!!」
気難しかった魔界の名工ロン・ベルクの職人魂に、完全に火がついた瞬間だった。
「……おい」
一同が伝説の素材と剣に目を奪われている中、八幡は無造作にテーブルの上に転がっていた【破邪の剣】を指でツンと押し、ヒュンケルのほうへ滑らせた。
「……これ、お前が使えばいいんじゃねえのか?」
「…………は?」
ヒュンケルは自分の耳を疑ったように、ぽかんと口を開けたまま八幡を見つめる。
「なっ……! この剣を、俺にだと……!? 八幡、お前……これが何だかわかって言っているのか!? 『破邪の剣』だぞ……! 魔を打ち払い、神気すら纏う超古代の秘宝だぞ……!」
信じられないといった様子で、ヒュンケルは青筋を少し浮かべながら問い質す。アバンの使徒として、そしてかつて魔王軍の剣士として、その剣の価値の重みを誰よりも知っているからこそ、それを他人に、それも自分に譲るという八幡の感覚が理解できなかった。
だが、八幡は至って気だるげに、肩をすくめて言い放った。
「知ってるよ。だから何だっていうんだ。俺が持ってても、せいぜいペーパーナイフか、あるいは不審者避けの杖が関の山だろ。……お前の方がよっぽど剣技は確実だし、その聖なる気も乗りそうだ。普通に使いこなせるんじゃねえの?」
「……っ!」
ヒュンケルは絶句した。
伝説の秘宝を、こんなにも軽々と、しかも仲間のためにポンと譲ってしまう。その底にあるのは計算か、あるいはただの面倒くさがりか――いや、違う。それは損得勘定を抜きにした、紛れもない「信頼」だった。
「お前…! 」
ヒュンケルは苦笑を漏らしながらも、震える手で『破邪の剣』の柄にそっと手をかけた。ずっしりと伝わってくる神聖な重みが、かつて闇に生きた男の心を静かに満たしていく。
そのやり取りをそばで見ていたポップとマァムは、開いた口が塞がらなかった。
「おいおいマジかよ……伝説の破邪の剣だぜ? それをあんな『みかんでも分けるみたいに』人にあげちまうか普通……」
「本当よね……。八幡って、本当に時々スケールがデカいのか、単に欲がないだけなのか全然わからない……」
ポップが頭を抱え、マァムが呆れと感心が入り混じったような溜息を吐く。
傍らでその様子を眺めていたバランも、どこか面白そうに唇の端を持ち上げていた。
「……面白い男だ。自らの手柄に執着せず、必要な者に必要な力を迷いなく託す。王者の器とはまた違うが……侮れない男だな」
伝説の剣が新たな持ち主へと渡り、ダイの新しい武器作りの熱気と相まって、ランカークスの鍛冶場はさらなる高まりを見せていくのだった。
「ハハハハハッ! ガハハハハハッ!!」
静まり返っていた作業場に、ロン・ベルクの豪快な大爆笑が轟いた。
腹を抱えて笑い転げる魔界最高峰の鍛冶屋に、ポップやジャンクたちも呆然と目を丸くする。
ひとしきり笑い終えたロン・ベルクは、涙を指で拭いながら、ギラギラとした鋭い視線を八幡へと向けた。
「面白い! 破邪の剣という大物を手に入れながら、それに一切執着せず、仲間へあっさりと譲ってみせるか! ……おい人間、俺はお前が気に入ったぞ!」
「……は? いや、俺はただ重いし扱いづらいから渡しただけで――」
「黙って聞け!」
ロン・ベルクは八幡の言い訳を一蹴すると、腕組みをしてニヤリと不敵に口元を歪めた。
「オリハルコンはダイの剣にすべて注ぎ込む。だが……俺の手元にある『最高の素材』を使って、お前専用の剣を一本打ってやる。俺が直々に、だ!」
「……っ!? マ、マジか……!?」
八幡は思わず声が裏返り、全身にゾクゾクとした戦慄が走った。
伝説の兵装である『破邪の剣』をもらった時よりも、はるかに、圧倒的に心が跳ね踊っていた。
誰かが作った既存の伝説などよりも、異世界で出会った職人の最高峰・ロン・ベルクが自分のためだけに打ってくれる、唯一無二のオーダーメイドの刀剣――男として、ゲーマーとして、これほど琴線に触れるものがあるだろうか!
(破邪の剣も凄えけどよ……魔界最高峰の職人が『俺専用』で作ってくれる剣とか……男の浪漫が詰まりすぎてんだろ……っ!!)
あからさまに目を輝かせ、ブルブルと震えながら歓喜を噛み締める八幡。
ロン・ベルクはその八幡の表情の変化を見逃さなかった。
破邪の剣を渡された時は「粗大ゴミでも処理した」かのような顔をしていた男が、己の作刀と聞いた瞬間にこれ以上ないほど歓喜している。
「……フッ、ハハッ」
職人としての尊厳をこれ以上ない形で満たされたロン・ベルクは、思わずニヤニヤと意地悪い、しかし最高の笑みを浮かべてしまう。
「ほう……破邪の剣よりも、俺が打つ剣の方が嬉しいか。……つくづく、目の高い奴だ」
「おいおいおいマジかよ八幡!?」
ポップが羨ましさとショックで頭を抱えて叫ぶ。
「あの気難しさで有名なロンさんが、自分から『お前のために作ってやる』だなんて……! どんな奇跡を起こせばそうなるんだよ!?」
「ふふ、八幡、良かったね!」
無邪気に喜ぶダイと、破邪の剣を握り締めながら八幡の幸運(と、少し偏ったこだわり)に苦笑するヒュンケル。
神の金属オリハルコンによる【ダイの究極の剣】、そして魔界の名工が八幡のために鍛え上げる【専用の特注剣】――。
ランカークスの熱い鉄と炎の中で、二つの熱き名剣の精錬が本格的に動き出そうとしていた。
鍛冶場の外、澄み切った空気が漂うランカークスの敷地内で、ヒュンケルは静かに【破邪の剣】を構えた。
ヒュン……ッ、ヒュン……ッ!
一本、また一本と、無駄の削ぎ落とされた美しいフォームで素振りを繰り返す。
鋭く空気を引き裂く音とともに、刀身から溢れ出る聖なる気が、秋の澄んだ空気と同調して心地よい残光を描く。
「……これが、破邪の剣か」
一振りごとに手に伝わる、吸い付くような一体感と、重厚でありながらどこまでも滑らかな手応え。ヒュンケルは剣を見つめ、思わず感嘆の息を漏らした。
「確かに……次元が違う。刀身に宿る聖なる秘術が、俺の中にある気を自然と引き出し、増幅させていくのがわかる……。これならば、どこまでも高みへ登れそうだ」
かつて魔王軍の剣士として暗黒の闘気を纏い、その後アバンの使徒として光の闘気を開花させたヒュンケル。その両端を知る彼だからこそ、この剣が持つ恐ろしいまでの潜在能力と神聖なポテンシャルが手に取るように理解できた。
だが――ヒュンケルはふと手を止め、自らの拳を固く握り締めた。
「……いや。剣の性能に甘えていてはダメだ」
ヒュンケルの鋭い瞳に、強い自戒と新たなる闘志の火が灯る。
「最高の素材で作られるダイの剣、八幡のために鍛え上げられるロン・ベルクの特注品……そして、この破邪の剣。武器が進化していくなら、それを振るう俺自身もまた、それ以上の領域へと高めねば意味がない。剣に生かされるのではなく、俺自身がこの破邪の剣の力を真に引き出し切る存在にならねば……!」
八幡から託された破邪の剣を強く抱え直し、ヒュンケルは再び静かに構えを取る。
その背中からは、魔王軍との最終決戦を見据えた、限界を超えて突き進む覚悟と気迫がひしひしと漂っていた。
カン、カン、と炉の火が爆ぜる音だけが響く作業場の中で、ロン・ベルクはふと手を止め、八幡の手元をじっと見つめた。
ゴツゴツとした戦士の手でもなければ、魔道士の華奢な手でもない。ごく普通の、どこにでもいるただの青年の手。
「……お前は不思議な男だな」
ロン・ベルクの低く鋭い声が鍛冶場に落ちた。
「ただの人間であるのに、どこか命の輪郭が世界から浮いているというか……どこか超越した気配がする」
「……はぁ? なんだよ急に。俺はどこにでもいる、ごく普通の『ぼっち』の一般人だよ」
気まずそうに目を逸らす八幡に対し、ロン・ベルクはニヤリと口元を歪め、先ほどヒュンケルに渡された『破邪の剣』のあった場所を顎でしゃくった。
「お前、さっきの『破邪の剣』の本当の価値をわかって言っていたのか? あれ一本あれば、人間の世界なら城が一棟建つ。孫の代まで何一つ不自由なく遊んで暮らせるほどの金が手に入る価値があるんだぞ?」
魔界最高峰の職人らしい、生々しくも絶対的な価値の提示。だが、それに対する八幡の返答は呆れるほど拍子抜けなものだった。
「……孫なんてできる予定ねえよ」
「……あ?」
「恋人もいねえのに、孫の代の心配なんかできるかよ。宝くじが当たっても使い道がないタイプの人間なんだよ、俺は。……つーか、今の俺に必要なのは城でも金でもなく、自分の命を守るためのまともな道具なんだよ」
自虐交じりに捨て台詞を吐く八幡。
その言葉を聞いたロン・ベルクは、一瞬呆けたように目を丸くしたあと――
「……ハッ! ハハハハハッ!!」
お腹を抱えて大爆笑した。
「ガハハハハ! 恋人がいないから孫の心配はせん、か! いやはや、破邪の剣を蹴った理由がそれとはな! 面白い……実に面白い男だ!」
「笑うなよ。こっちは至って大真面目に現実的な話をしてんだからよ……」
辟易とした顔でこめかみを押さえる八幡に、ロン・ベルクは涙を拭いながら温かい視線を向けた。
「なあに、何を気にすることがある。お前はまだまだ若い。人間の寿命なんぞ一瞬だが、それだけ青ければいくらでも機会はあるさ」
「いや……俺、もう30歳なんだが?」
アラサーの切実な主張。しかし、数百年を生きる魔界の住人であり、熟練の鍛冶屋であるロン・ベルクにとって、その数字は何の重みも持たなかった。
「……クックック! 30だと!? ハハハハハッ! たったの30で老けたツラをするな! 俺たちから見れば生まれたてのヒヨコどころか、卵の殻すら破れておらんわ!!」
「魔界の寿命基準で話すのやめてもらえますかね……」
腹を抱えて笑い転げるロン・ベルクと、完全に呆れ顔の八幡。
だが、このやり取りを経て、魔界の名工とただの人間である八幡の間に、種族も世界も越えた確かな絆と信頼が芽生えていた。
「よし……決まりだ!」
ロン・ベルクは笑いを収めると、ギラリと猛々しい職人の目を光らせた。
「お前が孫の代まで語り継ぎたくなるような、最高の『相棒』を打ち上げてやる。覚悟して待っていろ、八幡!」
夜の帳が下りるまで、鍛冶場には激しい槌音が響き渡り、火花が闇を切り裂いていた。
深夜、ようやく槌を置いたロン・ベルクの元へ、八幡は静かに歩み寄ると、持ってきていた一樽のいい酒と杯を差し出した。
「……お疲れさん。飲めよ」
「……ふぅ、かたじけない」
ロン・ベルクは汗を拭い、差し出された杯を一気に煽る。激しい鍛冶作業で火照った体に、極上の酒がじんと染み渡っていく。
しばらく静寂が包む中、ロン・ベルクは杯を見つめたまま、ポツリと呟いた。
「……八幡。お前たちがここに来る少し前、俺は……ハドラーに剣を作った。オリハルコンのな」
八幡は酒を注ぎ足そうとする手を一瞬だけ止めたが、顔色一つ変えずに自分の杯にも酒を注ぎ、そのままゴクリと喉を鳴らした。
「……へえ。ハドラーに」
「……驚かないのか? 魔軍司令に最強の金属で剣を与えた男だぞ。……文句はないのか?」
ロン・ベルクはどこか試すような、しかし苦々しさの混じった鋭い視線を八幡に向けた。
だが、八幡は心底どうでもよさそうに肩をすくめ、小さくため息をついた。
「文句? あるわけねえだろ。あんたは鍛冶屋で、頼まれた仕事をプロとしてこなしただけだ。そこに良いも悪いもないだろ。職人が依頼を受けて最高のものを作る……それのどこに非難される要素があるんだよ」
八幡のあまりにも淡々とした、しかし本質を射抜いた言葉に、ロン・ベルクは一瞬呆けたように目を丸くした。
「……ハッ! フフフ……ハハハハハッ!」
ロン・ベルクは口元を押さえ、低く笑いを漏らした。
「……やはりお前な、普通の人間とは違うな。世界の存亡がかかった戦いの中で、そこまで割り切って職人の業を見られる奴などそうはおらん」
そこへ、重厚な足音が近づいてきた。
「……ロン・ベルクの言う通りだ。八幡、お前のその達観した視点は、時に我々戦士よりも真理を突いている」
姿を見せたのはバランだった。その後ろには、剣の素振りを終えたヒュンケル、巨大な身体を揺らすクロコダイル、そしてラーハルト、ジャンクとポップも酒とツマミを手に集まってくる。
「ガハハハ! 腕の良い鍛冶屋と最高の酒があるんだ、宴といこう!」
クロコダイルが豪快に笑いながらドスンと座り込み、ジャンクが「俺の秘蔵の酒も持ってきたぞ!」と樽を置く。ポップも「おいおい、ダイはもう倒れるように寝ちまったぞ」なんて言いながら、嬉しそうに車座に加わった。
かつては敵同士だった者、魔界の名工、頑固な親父、そして異世界から来た一人の男。
昼間の凄絶な鍛冶の熱気と戦いの予感が嘘のように、鍛冶場の夜は静かで温かい宴の空気へと包まれていく。
(……やれやれ。明日も早いってのに、おっさんたちの泥酔に付き合わされる羽目になるとはな)
八幡は心の中でぼやきつつも、手元の酒をもう一口口に含んだ。
(まあ……少しだけなら、良いか)
賑やかな笑い声と酒の香りが漂うランカークスの夜の中で、八幡はほんの少しだけ口元をゆるめるのだった。