『A』 STORY   作:クロカタ

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今週のビルドファイターズでJ・〇ークっぽい奴が出てましね。

後、Cパートのジュンヤのガンプラがどう見てもヤル〇バオトに見えて仕方がない……。

もうBFTのスタッフは本気でスパロボ時空を作り出そうとしているようにしか思えなく
なってしまいました。


過去編~ニールセン・ラボ3~

【BATTLE!START!!】

 

 トレーニングルーム、バトルシステム、演習モード。

 プラフスキー粒子によって構成された宇宙の中で俺のイデオン・ジムとノリコのザクが、バトルシステムによって作り出されたあるMAと対峙していた。

 

 劇場版ガンダムOO登場MAガデラーザ。

 全長約300メートルの巨大MAである。7基の疑似GNドライブの出力はOO世界の機動兵器の中で随一の威力を誇り、また機体に内蔵された大量のファングは全ての敵を切り裂き撃ち落とす。

 無人の敵として俺達の前に出現した巨大MA、MAの中で随一の性能を誇る機体……相手にとって不足はない。

 

 

 大出力で放たれたビームを回避しながら、ガデラーザからファングが射出されたのを確認し、イデオン・ジムの全身に内蔵されているミサイルを発射する体制に移る。

 ファングは残しておくと厄介だ。最初から全火力で破壊させて貰う。

 

「ノリコッ合わせろ!!一気にファングを撃ち落とす!!」

「オッケー!!」

 

 少し離れた所でチャージを済ませたノリコが両手を弓のように引き絞り、俺のミサイルの発射と同時に腕を前に突き出した。

 

「今だ!!」

「ホォォミング!!レェェザァ――――――!!」

 

 イデオン・ジムの胴体と四肢から大量のミサイル、ノリコのザクの掌からはレーザーが発射され、大型ファングと、射出された小型ファングに殺到し、星の光さながらに爆発していく。

 

 だがガデラーザのファングは普通の量ではない。討ち損じたファング達が続々とこちらへ迫って来る。

 

「よーっし!!コスモ、ファングは私に任せて!!」

 

 何故か野球のバットに似ている棒を持っているノリコのザクに疑問を抱きつつ、彼女の言葉に従いイデオン・ジムを先行させる。このまま本体のガデラーザを叩く。

 

「全方位だ!!」

 

 ビームを放ってくる小型ファンネルをミサイルで撃墜しながら、凄まじい速度で移動しているガデラーザを追跡する。だがガデラーザはELS相手にたった一機で優勢に戦った、異常な性能を持つトンデモMA。主武装である複数の大型ファングが、GNフィールドを鋸のように展開させながら襲い掛かって来る。

 

「しゃらくさい……ッ」

 

 イデオン・ジムを切り裂こうとする大型ファングを回避すると同時に一つを横から蹴り飛ばし、脚部側方のミサイルを撃ち込む。……だがGNフィールドを展開させたファング相手には効果は大きくない、何事もなかったかのようにこちらへ再び襲い掛かって来る。

 

「バスタァァァァ!!ホォゥムランッ!!」

 

 イデオン・ソードで対処しようとした瞬間、ノリコのいる後方からもう一基の大型ファングが凄まじい速度でこちらの大型ファングに直撃し、まとめて爆発する。唖然としながら背後を見ると、バッドを振り切った紺色のザクの姿。

 まさか大型ファングをこちらへ野球のように打ったのか、いやそれよりも……。

 

「本当にバットだったのか!?」

 

 なんていう予想外の武器を使っているんだ。しかも戦闘に役に立つとは……ガンプラバトルは本当に分からない。でも、さっきの一撃で大型ビットは全て堕ちた。

 

「後は大本を叩く!!」

 

 脚部と背部のスラスターの出力を全開にさせ、ガデラーザに迫る。

 当然の如く迎撃するためにあり余るほどのミサイルとビームを一斉に放ってくるが、こちらは両腕のサーベルのジェネレーターを同時に発動させ、巨大なサーベル……イデオンソードを形成させる。

 まさかソードだけで突破できるとは思ってはいない。だが、俺は一人で戦っているんじゃない。

 

「コスモ、援護するよ!!」

 

 直撃するであろう弾幕をミサイルと、後方からノリコが放ってくれたホーミングレーザーで相殺し、スピードを落とさずに両の手を振り切る様に構え一気に突撃する。

 だが相手も伊達に強力な機体が登場する劇場版の上位に位置する強さを持つMAではない。ガデラーザはソードを構え突撃するこちらに対して、巨大なビーム砲を開き放つ態勢に移る。

 このまま直撃すれば、いくら強度に優れたイデオン・ジムといえどもただでは済まない。

 

「出力全開!!」

 

 後方に構えたイデオンソードの出力をさらに上げ、その放出の勢いでさらにスピードを上げ、一気にガデラーザをソードの射程圏内に捉える。

 

「捉えた!!イデオンソォ―――ド!!」

 

 射程に入ると同時にビームを放たれるが、こちらの方が早い。両腕で発動させたことにより、ガデラーサさえも容易に分断できる大きさとなったイデオンソードを、スピードと力任せに振り切る。

 長大に伸びた光の剣はガデラーザの砲身から後部まで、綺麗に真っ二つに切り裂いた。

 

「……よし」

 

 後方で爆発が起きたのを確認しイデオン・ジムを止める。

 ノリコも俺も無傷……取り敢えずは改修の成果が出たって事かな……。

 

【BATTLE!END!!】

 

 バトルが終了し、システムが解除される。

 深呼吸しながら確かな手応えを感じつつも、まだまだ物足りないという感情に苛まれる。

 

「まだ、俺は足手まといだ……」

 

 ガンプラ学園の生徒と先輩のバトル。自分はそれなりに戦えるとは思っていたが、まだ実力が足りない事を痛感させられるものだった。このままでは俺とノリコは先輩の枷になってしまう。

 ある程度同等の相手ならばまだ大丈夫だろう。でもそれ以上の相手と戦う事になったら自分達は機能しなくなると言ってもいい。それだけは死んでも嫌だ。

 

「及第点、と言っておこうか」

 

 バトルが終わっても無言な俺達に先輩のお父さんが声を掛けてくる。

 

「現役を離れた私が、君達のバトルを見て、色々アドバイスできる所は見つかった、が……まず言わせてくれ。君達は一体年はいくつだ……そのガンプラのモデルは私が子供の時の作品だぞ?」

 

「「………」」

 

 そういえばノリコのガンバスターも、俺のイデオンもすごく前にやっていたアニメだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 聖鳳学園の赤髪の少年、セカイ君の見舞いをした後に、アドウとのファイトで損傷したジンクスの修理と改修の為に工作ルームへ訪れた。 

 一つの作業机に座り、その上にジンクスⅣと一緒に持ってきたジンクスⅢ用の予備パーツを置く。幸い人がいない時間帯なのか、静かに作業を進める事が出来る。

 

「流石、ガンプラの為の研究所」

 

 改修に必要な道具は全て揃っている。これなら道具に困ることはなさそうだ。

 ……取り敢えず傷ついた脚部とか表面を直していきながら、ジンクスⅣの改修案を考えよう。

 

「さて、どうするか……」

 

 アドウのガンプラの性能は凄まじいの一言に尽きる。

 あのガンプラに対抗するためにはジンクスⅣを作り上げるだけでは足りない。通常時のクリアランスも今一決め手に欠ける。ロングライフルやサーベルは通常装備として常備するとして、これからの改修案は、チーム戦に特化したタイプか個人戦に特化したタイプ……またはその両方を担うことができるタイプに分かれる。

 

「リーダーとしてはどっちも、だな……」

 

 コスモとノリコの使うガンプラは拳や蹴りを用いた接近戦を主としている。しかもノリコは飛び蹴りを使う攻撃が得意だ。

 俺も合わせて蹴り技ができるように改造すれば……。

 ふと先程のバトルを思い出す。炎を纏った赤いガンプラ、確か次元覇王流といったか。外から見た感じでは武装は全てオミットされ、その攻撃方法は拳と足を用いた格闘のみ。そしてあのガンプラの両手足の各部には僅かだがクリアパーツが露出していた。

 

 前々から自分のガンプラにはユニークな部分が不足していると思っていたんだ。これを気に色々改造してみるのもいいかもしれない。

 幸い選手権まで結構日はある。

 

「……悪くない」

 

 できるだけジンクスⅣの外形を崩さずに内側の部分を改修していきたいな……。姿を変えてはジンクスⅣを作ってみようという目的が違ってしまうからな。

 取り敢えず今修理している右足に試作的に仕込んでみるとする。道具もクリアパーツもある事だし。

 

 次はランスの改修案。

 候補としてはこのままクリアランスを中心として強化していくか、父にとっつきのギミックを教えて貰ってそれを組み込むか。 

 悩むが、今の最高攻撃力を持つクリアランスは手放し難い。さっきのバトルではまだジンクスⅣがまだ未完成だったせいでトランザムが使えなかったが、クリアランスは本来トランザムと併用して使う武装だ。

 

 純粋な利便性を求めるか?

 ミサキのI・フィールドや一回戦で戦ったガンタンクのビームコーティングの事も考えて、タクティカルアームズのようにビームと実弾を選べるようにするとかもアリかもしれない。

 

「……まずはここでできる作業だけやっていくか……」

 

 鞄から予備パーツを取り出しながら作業机の上のジンクスと向き合い、作業に取り掛かる。

 ……少し時間が掛かりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

 修理を開始してから二時間はかかったかな?外も何時の間にか暗くなってきたせいで、建物内も微妙に暗く感じる。

 

「右足は大体出来上がったか……」

 

 集中的に右足を修理していたからか意外と早く作業が終わったので、アドウとの戦いでジンクスⅣを操った感覚を元に部分的な改修をして、大分ジンクスⅣに近づける事が出来た。ついでに右足に特別なギミックも入れる事もできた。……まあ、加工したクリアパーツを入れてみただけなんだけど……。

 後は火力不足を補う改修をできれば……。

 

 

 

 

 

 

「綺麗ね、貴方のガンプラ」

 

 

「!?」

 

 

 

 

 突然、真後ろから声がした。思わず椅子から転げそうになりながらも、何事かと思い咄嗟に振り返る。

 そこには見慣れぬ白髪の少女が居た。月の光が差し込む工作ルームの中で、その少女の存在はどこか神秘的に見えたせいか……。

 

「乙女だ……」

 

 訳の分からない事を呟いてしまった。

 

「?」

「……いや違う」

 

 何を言っているんだ俺は、まるでメイジンにでもなったつもりか。

 とりあえず心を落ち着かせながら椅子に座り直し、不思議そうに首を傾げている少女に視線を向ける。

 

 ……それで、この子は何者なのだろうか。見た目の年齢からして、さっき病室で会った子と同じ中学生に見える。そうだとしたら大会に出場する子かもしれない。いや、もしかしたらここの研究所に所属している方の娘さんかもしれないな。

 

「どうしたの?」

「……少し驚いてね。君はいつからそこに?」

「ついさっきよ」

 

 作業に夢中で気づかなかったのか。まあ、他校の生徒にも別に見られても構わないが本当にビックリした。少女は少し横に移動し、ジンクスをジッと見つめている。

 

「ジンクスね?劇場版に出た」

「あ、ああ。良ければ見るか?」

 

 何だか興味深々なので席をずらしてジンクスⅣを見せる。邪気とかそういうのは無いと感じたからこその判断だが、こうすると地元の模型店の子供達を思い出す。

 模型店を訪れる子供達もガンプラバトルやガンプラを作っている所を見て、見せて貰おうとせがんで来る。この状況も地元の模型店の子達の時とよく似ている。

 

「貴方の名前は?」

「……アンドウ・レイ」

 

 上機嫌に俺のガンプラを眺めながらそう聞いてくる少女。

 ……相当なガンプラ好きと見た。

 

「私はシアよ。もう少しここで見て良い?」

「それは、別に構わないが……」

 

 この後する事なんて俺以外は特に面白くもないんだけど……。

 だが、こちらの困惑を余所にやや嬉しそうな笑みを浮かべた少女、シアは隣の作業台の椅子に座る。

 

「ふふ……」

「………まあいいか」

 

 何かよく分からないが、上機嫌だし別にいいか。さあ、作業の続きをしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コスモ、先輩は工作ルームにいるんだっけ?」

「その筈だな」

 

 一通りの練習を終えた私達は、先輩がガンプラを修理している工作ルームへ足を運んでいた。先輩のお父さんは、夕食の席を取ってくれているそうなので、先輩を呼びに行くのは私達に任されたという訳だ。

 

「………?」

「どうしたの?」

 

 コスモが何かを見つけたのか、横切った通路の先を注視している。

 私も気になってコスモの視線の先を見ると、そこには異様な光景が広がっていた。

 

『貴方と会う事ができて光栄です!!ニルス・ニールセン殿ッ!!』

『い、いや、ここで土下座させられても困るんだけど……』

 

 白衣を纏ったドレッドヘアーの男性が、白髪の大柄な男性に土下座させられている光景が視界に広がっていた。

 

『失礼ッ今はヤジマ・ニルス殿とお呼びするべきでしたッ!』

『……あ、えーと。今は少し忙しいから、話は後でいいかな?一段落したら時間もとれるから……』

『お時間取らせて申し訳ありません!!』

 

 土下座のままでそう返した男性にドン引きしながらもにこやかな笑みを浮かべた男性は、このまま目の前の男性を土下座させるわけにはいかないと思ったのか、背後を気にしながらその場から離れていく。

 

 その光景に呆気にとられていた私達だが、土下座していた男性がバッと起き上がったのを見て直ぐに我に返る。

 

「ね、ねえコスモ。どうしよう?」

「どうしようって言ったって。俺達にはどうしようもないじゃないか……見ろ、あの人」

 

『感激だ。まさかあの戦圀アストレイを扱っていたニルス殿と合間見えるとは露程も思ってはいなかった。これは迷子になったナガレに感謝せねばならないな……』

 

「男泣きしてる……」

「う、うん」

 

 身長が190近い白髪の大男が男泣きしている光景に正直ドン引きせざる得ない。どう対処したらいいのだろうか、いやここは対処する必要はないのではないか?むしろこのままそっとしておく方向でこのまま先輩のいる工作ルームへ行った方がいいのではないか?

 

『其処の二人組!』

「……絶対私達だよね」

「ああ、俺達だな」

 

 私達にはその選択を選ぶ暇はなかったようだ。

 バッと大仰に私達の方を向き、ズンズンと足音が聞こえそうなくらいの勢いで歩み寄って来た大男。

 近くで見るとより大きく感じる。年は……20代前半ぐらいだろうか。

 

「すまない、チームメイトを探しているんだ」

「チームメイト?」

「見るからに危なそうな奴だ。知らないか?ナガレというのだが……」

 

 それはまず警備員に聞いた方がいいのじゃないかな。

 コスモも同じような事を思ったのか、表情が引きつっているのが横目で見える。

 

「チームメイトって事は、貴方は選手権に出場するチームの監督なんですか?」

「……?ハッハッハッハッ、面白い事を言う。私はまだ17歳だ」

 

 嘘だ、なんて本当に冗談だと思って快活に笑う彼の前で言えるはずがなかった。本当にこの人は自分と同じ高校生なのか?しかも先輩と同じ年だし、色々違いすぎて一瞬耳を疑ってしまった。

 

「私は佐賀県代表、チーム『大黒刃』のセンガだ。君達も県の代表チームだろう」

「え、ええ、私達は茨城県代表のチーム『イデガンジン』です」

「自分はユズキ・コスモ、こっちはタカマ・ノリコです」

「茨城県の……ふむ、選手権では敵同士だが、ここでは合宿を共にする同士だ」

「は、はあ……」

 

 悪い人ではないようだが、身長が大きいせいか少し怖い。

 

「貴方は一人なんですか?」

「……実はもう一人の仲間もいつの間にかいなくなってしまってな……全く、誰もが好き勝手に行動しおって……手間が掛かる奴等だ」

「………」

「………」

 

 さっき土下座している姿を見てからじゃあ、貴方の方が迷子になっているように見えるのは気のせいだろうか。無言の私達を怪訝に思ったのか、首を傾げたセンガさんだが、すぐに気まずい表情を浮かべる。

 

「すまない……。君達はチームメイトを迎えに行くのだったな、時間を取らせて済まない」

「あ……そちらも頑張ってください……探すの」

「気遣い感謝する」

 

 そう言ったセンガさんは、片手を上げて私達とは逆の方へ歩いていく。

 ………色々豪快な人だったけど、悪い人ではなかった。大会では彼はどんなガンプラを使うのだろうか。すごく気になる。

 

「先輩の所、行こうか」

「……ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

「………」

 

 かれこれ三十分、ずっと作業している俺のガンプラを眺めているぞこの子。すごい忍耐力だ、やはりこの子は生粋のガンプラ好きというのは正しい認識かもしれない。

 

「……ジンクス、好きなの?」

 

 静寂の中での突然の問いに、ジンクスⅣを磨いていた手が止まる。

 ジンクスが何故好きか、か。そういう事を聞いてきたのは、ある意味初めてかもしれないな。

 

「いきなりどうしたんだ?」

「貴方がガンプラに触れている時ってとても楽しそうなんですもの」

「……楽しいに決まっているさ、作って遊んで戦って……それがガンプラだからな」

 

 ゆっくりと手に持ったジンクスを机に置きながら思い出す。

 小学生の頃、父に何も言われずに差し出された箱を貰った時に、初めてガンプラという遊びに触れた。最初は箱の中に詰め込んである、沢山の四角い枠に収められた玩具のような部品の数々に戸惑った覚えがある。

 そして、その箱に描かれていたのは灰色のロボットだった。

 

「……初めて作ったガンプラがGN-Xだ」

「初めて?」

「そう、初めて、のだ。7歳の誕生日プレゼントに父がくれた物だ……まあ、出来上がりは最悪だった。子供の作ったもの、と言えば言い訳が効くが、余分なプラスチック部分が残っているわ、はめ込みは甘いわ……散々だったよ」

「一人で作ったの?」

「いいや、父が一緒に作ってくれた。でも父は最低限の事しかしてくれなかった。ほとんど俺に作らせた」

 

 最初はすごくつまらなかった。色々教えてくれる父に何故全部作ってくれないんだと何度も愚痴をこねた。でも、父に言われるままパーツを組立てシールを張り付ける。

 最初に脚が完成し、腕、胸部、腰、頭、どんどん出来上がっていく灰色のロボット……。

 

「優しいお父様ね」

「ああ、今でも尊敬してるよ」

 

 作っていくうちに不思議な感覚に陥ったのを今でもしっかりと覚えている。夢中、ではなく……もっとあやふやな感覚、そう……ワクワクしていたんだろうな。元々作られている玩具とは違う、自分だけで作り上げるガンプラという存在にただひたすらに心を躍らせていた。

 

「あの時の感覚があるからこそ……今までも、これからもずっと……俺はガンプラを楽しもうと思える」

「ふふ……貴方の事が少しだけ分かったわ」

 

 にっこりと笑みを浮かべる彼女、その笑みは俺とジンクスに向けられている気がする。

 

 少し語り過ぎたかな?自分より年下の子に自分語りとか、ドン引きされていないか心配だ。内心気にしながらもシアの方に視線を向けようとしたその時、工作ルームに一つの影が駆け足で入ってくるのを見かける。

 特徴的な赤髪……あれは――。

 

「目を覚ましたのか……」

 

 チームトライファイターズのセカイ君。もう大丈夫そうだが、一応声を掛けておこうか。

 ジンクスⅣをホルダーに入れ、作業机のある場所にまで降りてきた彼の方にまで足を運ぶ。

 

「具合は大丈夫か?」

「え?アンタは……」

「昼間、ガンプラ学園の生徒とバトルしていた一人だ……えーと、このガンプラを見れば分かるか?」

「……ああ!ユウマが戦う前に戦ってた!!」

 

 ジンクスⅣを見せると、セカイ君は納得が行ったように声を上げる。分かってくれたか、とりあえずお互いに自己紹介をしながら、彼がどうしてここに来たのかを尋ねる。

 

「セカイ君、でいいか……君はどうしてここに?ガンプラを直しに?」

「ああ!ビルドバーニングを直しに来たんだ!」

 

 そう言いこちらに今まで握っていたであろう赤いガンダムを見せてくる。見た所、肩が壊れ装甲が所々傷ついている。

 ……それにしても、スゴイ出来のガンプラだな。

 傷ついた装甲の隙間から見える内部にクリアパーツが施されているところを見ても、相当手が込んでいる。まるでメイジンのガンプラと同等の出来と言っても差し支えないぞ……。

 

「綺麗なガンプラ……」

「おっと……」

 

 何時の間にか背後から近づいていたシアが、覗き込むようにセカイ君のビルドバーニングを見ていた。セカイ君も驚いたように慄いていたが、すぐに我に返ると急ぐように近くの作業机に座り、ビルドバーニングの修理に取り掛かる。

 

「……あの!ここ使わせて貰う!!」

「どうぞ……と言っても、ここの使用は自由だから好きに作業しても構わないよ」

「ああ!」

 

 元気にそう返しながら自身のガンプラと向き合うセカイ君。……うん、どうやら本当に大丈夫なようだ。バトルによる疲労も抜けているようだし。

 そろそろ俺も切り上げてノリコとコスモの所に行こうかな、これ以上作業すると遅くなりそうだし。

 

「ガンプラが痛がっている」

「?」

 

 自分の作業机の方を片づける為にそちらへ行こうとすると、突然シアがそんな言葉を背後にいるセカイ君に向けた。彼女の声に振り向くと、セカイ君が無理やりガンプラの関節を嵌め込もうとするのが見えた。

 

「もっと優しくゆっくり嵌めて。声を出せないガンプラの気持ち、分かってあげないと駄目」

「え?えーと、こうか?」

 

 彼女の言葉に従い、先程とは違う軽い手つきで腕部のパーツを嵌め込む。するとスッと簡単に嵌め込まれるパーツを見て喜ぶセカイ君。まるで初めてガンプラを組み立てたとばかりの反応に、先程シアに話したような小学生の時の自分と重なって少し感慨深くなる。

 

「そのガンプラ、バトルで負けたの?」

「……直球だな」

 

 ズバズバ切り込んで来る彼女に少し戦慄しながらも、昼間のバトルを思い出す。乱入に乱入を重ねたバトル、セカイ君とアドウのバトルは……アドウの勝ちだろう。SDガンダムのパーツを巨大な拳として装備し、その拳で次元覇王流……という拳法の技を繰り出すが、アドウのデッドエンドフィンガーに敗れた。

 負けるのは悔しい。稀に負けを認めないような人もいるが、セカイ君はどうだろうか。

 

「ああ、こてんぱんにやられた。すげぇ強い奴だった」

「その割には、嬉しそうだな……セカイ君」

「負けたら悔しいに決まってるさ。でも、俺の師匠が言っていた。勝負は勝ち負けより、その勝負に納得できたかどうかが大事だって……。今度あいつと戦う時、俺はできるだけ準備したい。勝つにせよ、負けるにせよ……納得して戦いたいんだ」

「そうか……」

 

 この子をバーニングな少年と言ったメイジンの気持ちがよく分かった。まさしく清々しい程に正直な少年であり、ガンプラバトルを勝ち負け関係なく楽しんでいる。

 

「……普段のノリコを見ているようだな……」

 

 同じとは言わない。正直な所とか、真っ直ぐな所とか色々な所をひっくるめて似ているだけだ。

 セカイ君は、いずれ選手権で戦うかもしれない相手。だけど、何だか応援したい気持ちに駆られてしまう。ガンプラに触れた頃の自分を見ているようで、頼もしい後輩に似ているようで……。

 

「レイ」

「どうした?」

 

 声をかけてきた彼女の方を向く。シアはセカイ君とこちらを見て、ニッコリと笑みを浮かべる。こちらを見る彼女が何を言いたいのかをなんとなくだが察して頷いた俺は、ガンプラの修理をしているセカイ君の隣にある作業机の椅子に座る。

 案の定、彼は戸惑った表情を浮かべる。

 

「手伝うよ」

「え?何で……」

「理由は、俺もよく分からない」

 

 自分が初めてガンプラを作った頃の事を思い出したからか、純粋にこの少年を応援したくなったからか……それとも、敵味方関係なしにこの子にガンプラの楽しさを知って欲しかったからかもしれない。

 

「……教えてくれるならありがたい!!」

 

 あくまで俺は手を出さないでアドバイスするだけだ。小学生の時、自分自身の手で作り上げる楽しさを教えてくれた、父がそうしてくれたように……。

 

 戸惑いながらも返事をしたセカイ君を見て、彼女は―――。

 

「ガンプラ、直そ?」

 

 そう嬉しそうに言葉にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ようやく工作ルームに到着した……。何回か先輩のいる工作ルームとは別の所と間違えてしまったが、今度こそちゃんと係員の人に聞いたから大丈夫な筈。

 なんとか辿り着いた工作ルームの中は人気がなく、先輩が居るかどうかも分からない。

 

「せんぱーい、いますかー?」

「ノリコ、静かにしろ……」

 

 コスモに注意されながらも工作ルームを見回せる所から絶対を見渡すと……三人くらいの人が集まっているのを見つける。

 

「あ、見つけた」

「なら行こう」

 

 コスモと共に下の階にまで降りる。降りた所には先輩と見覚えのない少女と、昼間のバトルで倒れた赤い髪の子がガンプラを直していた。

 

「先輩、迎えに来ました!……あ、お取り込み中でしたか?」

「……すまない、連絡しておけば良かったな……こっちから行こうと思っていたんだけど、どうにも夢中になっていたようだ」

「レイのチームの人?」

 

 白髪の少女が先輩にそう問いかけた。

 ……すごい可愛い子だ。年下に見えるから中学生かな?

 

「そうだ、セカイ君、俺はそろそろ戻る。後はシアと一緒に」

「ありがとう、すげぇ助かったよ!!」

「そう言ってくれるとありがたい」

 

 しかし、無茶苦茶子供に慕われているなぁ……しかもこの短時間で……流石、地元の模型屋に行くと瞬く間に子供に囲まれる人だ。

 そんな呑気な事を考えている内に、先輩は別の作業机の上に置いてあったパーツや道具等を片づけてからこちらへ歩み寄って来た。

 

「じゃあ行こうか」

「はい!」

 

 先輩のお父さんも結構待たせているから早くいかないとね。

 それにしても、先輩のジンクスも直ったのかな?意外とちゃっかりとしている先輩の事だからちゃんと改修くらいまで終らせていると思うけど……。

 

「レイ!!」

 

 赤髪の子が突然立ち上がり、先輩に声をかける。彼に対しゆっくりと振り返った先輩に対し、赤髪の子は挑戦的な笑みを浮かべた。

 

「戦う時は、全力で!!」

「……ああ」

 

 そう一言だけ返し、先輩はこちらへ振り返る。私もコスモも先輩の後ろをついていく。工作ルームを出て食堂までに歩くまでの道のりの最中、今まで無言だった先輩が私達の名を呼んだ。

 

「ノリコ、コスモ」

「?」

「はい?」

「選手権、頑張ろう」

 

 今の先輩の心境は私にもコスモにも分からない。

 だが、その言葉に対し私達が返せる言葉は一つしかない。

 

「勿論です。貴方は私達の先輩で、リーダーなんですから」

「俺もノリコと同じです」

 

 私達の言葉に先輩は照れくさそうに歩を速める。なんだか新鮮な反応だなぁーと思いつつも再び歩を進める。先輩のお父さんが席を取ってくれているという食堂は先輩の居た工作ルームからそう遠くない場所にあるので、意外と早く到着した。

 

「父さんは?」

「待ってくれていると思うんですが」

 

 もう夜の8時を回っているからかあまり食堂には人はいなかった。ちらほらと私達と同じ年くらいの人達もいたが、その人達は既に夕食も食べ終わっているからか雑談に興じているようだった。

 

「……あ」

 

 その中で私は一際目立つ白髪の大男の姿を見つけた。センガさんだ、迷子になったというチームメイトの人達は見つけられたのだろうか?

 

『む!?』

 

 センガさんも私達が食堂に入ったのに気付いたのか、こちらへ手を挙げながら近づいてくる。そこで私は気付く。凄く目つきが悪い人がセンガさんの後ろからついてきている事に……。

 

 その人はこちら……というより先輩の視界に捉えるなり、その目を獰猛なものに変えて、早足でセンガさんを追い抜き、先輩の前まで近づいてきた。一瞬頭の中をよぎったのは選手権の大会規定……暴力沙汰を起こしたら出場停止という項目だった。

 

 

 

 

 

 

 

「アンドウ・レイ、で合ってるよな?」

 

 誰だろうかこの人は。突然大柄な人と一緒にこちらに近づいてきて、いきなり話しかけられた。父を待たせている身としてはできるだけ用件は手短にしてほしいのだけど……。

 

「俺は、佐賀県代表のチーム『大黒刃』ナガレ・リョウヤ。今日のバトル見させてもらったぜ。ガンプラ学園に喧嘩売ろうとする奴なんざ、久しぶりに見たからな。面白れぇってのなんの」

「いや、あれは喧嘩しようとしたわけじゃ……」

 

 バトルを止めようとしただけだが、傍から見れば喧嘩を売っているように見えていたのか。まあ、結局は俺も応戦してしまったのだ、そう言う風に受け止められてもしょうがない。

 

「バトルが終わった後、ずっとお前を探していたんだ……」

「俺を?」

「いずれ選手権で戦う相手だ、挨拶しておきたくてよぉ」

 

 ずっと、というと今の時間を考えると結構探していたのか。会えなかったのは俺のせいじゃないが、何だか申し訳ない気持ちになって来る。

 

「おいナガレ、またお前勝手に……すまない、こいつが何か無礼な事をしなかっただろうか?」

 

 今度は白髪の大男がナガレの隣に歩み寄って来た。現れた大男にナガレは呆れたようにため息を吐きながら、食い掛かる様に彼を睨みつけた。

 

「おい……センガ、俺が毎回も迷惑かけているとは限らねぇだろ?」

「毎回ではなくいつもだ。君達もすまなかったな、直ぐに連れて行く」

「待て、まだ俺の話は―――」

 

 センガと呼ばれた大男に腕を掴まれながらも、連れて行かれまいと抵抗しているナガレ。ノリコとコスモは白髪の彼とは知り合いのようだが、そのどちらについても良く知らない俺はどうすればいいのか。

 

 人数が少ないとは食堂は人が集まる場所、徐々に人の視線も集まってくる。深いため息をつきながら止めようと足を踏み出そうとしたその時、俺達の後ろから誰かが掛けてくる音が聞こえる。

 

「貴方達~~!!」

 

 風を思わせる速さで俺達の前へ飛び出した人影は、センガとナガレの頭部をシューズで勢いよくバシーンとはたく。かなり痛そうなのだが、叩かれた二人は少し顔をしかめて頭を抑えているだけ……大丈夫なのか?

 

「……っ!カナコではないか!?今までどこにいた!!」

「どこにいた?どこにいたかって?」

 

 よく見れば現れた人影は、ノリコよりやや背が低い茶色がかった髪色の少女だった。ナガレたちと一緒に居る所を見れば俺達と同じ高校生に見えるだろうが、彼女一人だけでは絶対中学生と間違ってしまう程に小柄だ。

 

「よくそんな台詞が言えたな!!何で合宿に来たら皆直ぐに迷子になるの!?合宿だよ!?練習しなきゃいけないんだよ!?今9時前だよ!!」

「あぁ?それじゃあ飯食った後に練習すればいいじゃねーか」

「うむ」

 

 地団太を踏みながら怒りを目の前の二人にぶつける少女だが、その様相に分からないとばかりに首を傾げている目の前の二人を見て、諦めたようなため息を吐きバッとこちらへ向き直る。その表情は何処か鬼気迫っていた。

 

「すいません!すいません!すいません!、このおバカ達にはきっちりリーダーである私が言い聞かせておくのでどうか問題にはしないでください!!」

「いや、問題にするつもりなんて……」

「すいません!!じゃっ私達はこれで!!」

 

 深く下げた頭を上げると同時に、背後にいる大柄な男の腕を掴み、瞬く間に食堂から出て行ってしまった。

 残された俺は目の前からいなくなった三人組に対し少し呆然とした後、さっきまで空腹だったことに気付く。

 

「ご飯、食べようか」

「「……はい」」

 

 嵐が過ぎ去った気分というのはこういう感じなのだろうか……。

 

 

 




 佐賀県代表チーム『大黒刃』
 ナガレ、センガ、カナコで揃いました。

 カナコはイデガンジンでのアンドウと同じような立ち位置にいるキャラです。ガンプラもアンドウと同じ普通(?)です。

 そしてもう一人のセンガの扱うガンプラは親分の機体です。
 パワードレッド……150ガーベラ……斬艦刀?



 今週のBFTを見て、もう自重しなくていいのではないか?と危険な思考に陥ってしまった……。

∀を髭つながりでマスタッシュマンにしたり―――セラフィムをニンジャにしてそのニンジャをセラヴィ―と神魂合体して、そのセラヴィ―INニンジャをセラヴィ―Ⅱとで超獣合神してマックスゴッドにして―――

あれ?後半セラヴィ―ばっかりな気が……。)



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