『A』 STORY   作:クロカタ

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ファフナーってやっぱり面白いですね(虚ろ目)
あれでまだ7話なんですから、もっとすごい事が起きるに違いありません。

……どうせみんな(ry



ニールセン・ラボ4、更新致します。




過去編~ニールセン・ラボ4~

 ニールセン・ラボでの合宿一日目が終了した。

 思えば合宿の一日目でジンクスが破損してしまったのは結構な時間のロスだったかもしれない。

 ……だがトライファイターズのセカイ君、ホシノ・フミナ、そしてガンプラ学園のアドウ・サガ、大黒刃といった、全国大会で戦うであろう猛者達との出会いを果たすことができたのは僥倖だったのかもしれない。

 修理に時間を掛けたおかげでジンクスも修理できた事だし、合宿二日目はどんどん練習していこう。

 

「先輩、食べないんですかー。朝ごはんは食べないと力がでませんよー」

「あまり食べ過ぎるのはよくないけどな」

「ちょっとコスモ、それどういうこと?」

 

 合宿二日目の朝、俺達は食堂で朝食を摂っていた。昨日の夕食後もジンクスの改修をしていたわけだが、結局完成はしなかった。……いや、一応ジンクスⅣ単体としては完成はしたのだろうが、機能的な部分での完成はしていないと言った方が正しいかもしれない。

 まあ、それは選手権までに仕上げていけばいい話、とりあえず合宿中はスタンダードなタイプのジンクスⅣで練習することになる。

 

「レイ、今日は忙しいから昨日のように見てはいられないぞ?」

「分かってるよ、今日は俺も参加できるし、三人で練習する」

 

 父も予定があるという事は事前に聞いておいたので、そこらへんはちゃんと理解している。よってこの後はノリコとコスモ、そして俺との三人で練習する。

 

「二人とも、バトルモードはもうやったんだろう、どうだった?」

「……やっぱり、粒子研究の為に用いられるバトルシステムだけあって、出てくる機体も強力なタイプばかりです。でも、やっぱり人が操ってないからですかね……動きがどこか機械的に見えます」

「私もそれ思いました。なんていうか……分かりやすい動きしているんです!」

「……成程」

 

 コスモとノリコの言っている事がなんとなく分かった。最高峰の研究所でのバトルモードといえど出てくるのは性能の良いAIだけ、どれだけ優れていたとしても、考えて思考する人間には決して及ばない。

 

「機械的な動きをする相手に強くなっても意味がないからな……。できれば、他のチームと模擬戦のようなものをしてみたい所なんだけど、それは無理だろう」

「確かに……」

 

 できるだけ手の内を明かしたくないと思っているチームもあるだろうしな。

 

「だから二対一でローテーションしながらバトル、バトルモードを利用してバトルロイヤルも良い。それで互いに見つけた欠点や癖、それを後から話し合おう」

 

 効率は良いとは言えないが、他人から見た自分の姿というのは、かなり重要なものだ。ガンプラバトルは少しの隙が命取りになる。その隙と成り得る欠点や弱点を理解しておくことも、勝つ為にできる事の一つ。

 

「ちゃんと先輩をやっているな」

「茶化さないでくれよ、父さん」

 

 俺も結構考えているんだ。

 後輩たちの前でカッコ悪い姿を見せないようにね。

 

 

 

 

 

 昼食を終えた俺達は父とその場で別れて、昨日俺がバトルしたトレーニングルームへと足を進める。一日経つと大分建物の構造を把握することができたのか、なんとなくだが方向が分かる。時間的にはトレーニングルームは解放しているから、すぐに使用することができる。日本最高峰のバトルシステム、昨日使えなかった分、しっかり堪能させて貰おう。

 トレーニングルームと記された電光掲示板が見え、其処に入る。

 

「……あれ?先輩、何だか揉めてますよ?」

 

 手を覗き込むように額に当てたノリコが、そう訝しげに言葉にする。自分もトレーニングルームに入ると、確かに騒がしい、というより特定の人物が何やら中々の大声で話しているようだ。

 

「セカイ君じゃないか。どうしたんだ?」

 

 昨日、ガンプラの修理を手伝った少年であるセカイ君とラル大尉、そしてロングヘアーの、俺達と同じ年ぐらいの男が対立するようにしていた。

 

「はぁ、昨日みたいな事にはなっていないだろうな……」

「そ、それはないですよ……多分」

「二度ある事は……」

 

 コスモ、それから先は言わなくていい。知っている顔がいない分は我関せず……ということもできるだろうが、見知った人物を無視するほど薄情じゃないつもりだ。とりあえず、近くにいるラル大尉に話を聞いておこう。

 

 一応、彼を見知っている俺を先頭にして、トレーニングルームの入り口から、彼らの方に移動する。その際に、セカイ君の前に立っていたロングヘアーの男性がこちらに気付く。こちらを見て満面の笑みを浮かべるその男にどこか引きながらも、セカイ君達の近くに辿り着く。

 

「おぉ?もっと、うってつけの相手がきたじゃあないか……」

「………?」

 

 何がうってつけなのだろうか。ガンプラバトルの相手としてか?それなら拒みはしないけど、やるならやるで理由を聞きたいんだが。

 近くにいる、大尉に状況を聞いてみる。

 

「これは一体どういうことです……?」

「いや、セカイ君がバトルを申し込まれてな……」

「バトル……?」

 

 ただバトルを申し込まれてこんなギスギスした空気になるはずがない。何かあるのかと思いつつ、ロングヘアーの男性の方に体を向ける。

 

「神奈川県代表の本牧学園のカリマ・ケイだ。アンドウ・レイ、やろうぜガンプラバトル」

 

 ……挑まれた勝負、突然だが俺にとっては日常茶飯事だ。よし、なんだかよく分からないが受けよう。

 でも俺一人じゃノリコとコスモの為にはならないな……相手は神奈川県代表って言うのだからチームメイトもいるだろう。三体三でバトルしてもらえるようにまずは交渉しなくては―――。

 

「いいだ―――」

「この人は関係ないだろ!!」

「……」

 

 俺の言葉を遮ると同時に、セカイ君が俺の前に立つ。

 ……何か事情でもあるのだろうか?もしかしてカリマ・ケイは、先にセカイ君にバトルを申し込んでいたのだろうか。それなら悪い事をした、年上として恥ずかしい。

 

「すまな―――」

「いいやあるね、俺は見ていたぜ。昨日のお前のバトルをよぉ……あのバトルでメイジンを除いてコイツだけがガンプラ学園と渡り合っていたのさ」

「なんだって!?」

 

 雲行きが怪しくなってきた……というより、自分だけ一向に事態を把握できていない。どういうことだ、昨日のアドウとのバトルが関係しているのか?

 

「先輩、先輩ー」

 

 背後からノリコが声をかけてくる。

 背後に意識を向け、ノリコの声に耳を傾けながら前の問答を見る。

 

「先輩、こんなバトル受ける必要ありませんよ!」

「……何で?」

「先輩はガンプラ学園の実力を測るダシにされちゃうからです!」

 

 ………成程そういうことか、全然気づかなかった。駄目だな、バトルを挑まれたらどんな時でも受けてしまう悪い癖が出てしまった。こういう時に冷静な後輩達がとても頼もしく思える。

 

「あんたは、俺達を通してガンプラ学園と戦おうとしているのか」

「そうでなくては君達と戦う意味がない」

 

 全国大会においてガンプラ学園は大きすぎる障害だ。六連覇という称号は伊達じゃないし、その称号に相応しい強さを持っている。一部では大会の優勝ではなく、全国大会に出る事を目的としているチームもあると聞く。

 ……そう考えれば、どんな手を使ってもガンプラ学園に勝ちに行こうとするカリマ・ケイの気持ちも分かる。

 

 だが、自分とのバトルを前座扱いされて黙っているほど俺はお人好しじゃあない。

 

「そのバトル受け―――」

 

 

 

『そんなに私たちの実力が知りたいなら直接バトルを申し込めばいい』

 

 

 自分達以外の第三者の声。全員がそちらに視線を向けると、そこには金髪の長身の男が、鋭い目つきでカリマ・ケイを睨みつけていた。彼の後ろにはアラン・アダムスさんまでいる。

 それに……アドウと同じガンプラ学園の制服、ということはこの男もガンプラ学園のレギュラーメンバーと言う事か。

 

「……ッまさか、願ってもない……まさかガンプラ学園様が直々にきてくれるとはなぁ」

 

「キジマ!」

「相手を侮辱するようなバトルをする輩を私は許しません。3代目メイジンでも同じことを言うはず」

 

 アランさんがキジマ、と呼ばれた男を止めようとするが、彼は相当カリマ・ケイに腹を立てているのか全く引こうとはしない。このままカリマ・ケイとガンプラ学園とのバトルが始まるのか。

 その場合、俺達やトライファイターズはどうすればいいいのだろうか……色々変わって来るぞ。

 

「随分と面白い事になっているじゃないか、俺達も混ざて貰おう」

「チーム我梅学園……!?」

 

 今度は先日のバトルでアドウと最初に戦っていたチーム我梅学園の生徒が割って入って来た。ガンプラ学園が相手と聞いて、昨日の意趣返しに来たのか……?

 だとしてもこの状況で来られてもすごく困る。ここには既に、トライファイターズ、ガンプラ学園、本牧高校と俺達の4つの選手権の出場チームがいるんだぞ。

 

「……これじゃあ、昨日の二の舞じゃないか……」

 

 しかも今度は乱入によるバトルロイヤルではなく、最初からバトルロイヤルの混戦になってしまうぞ。今度はアラン・アダムスさんが居るだろうから、ダメージレベルがCだと思うが……。

 

「大尉、なんとかできませんか……?」

「すまない、ここまで来るともう……」

 

 大尉でも無理か。

 ……しょうがない。少々汚いが、学校同士の問題に発展する可能性があるから、ここは身を引いておくべきか。些細な事で選手権の出場停止もあり得るからな。

 

 

 

 

 

 

【GANPURABattle……Combat・StartUp!】

 

 

 

 

『!?』

 

 突然作動するバトルシステム。粒子を放出しステージを形成するバトルシステムに、全員の視線が向けられる。そこには、あまりにも見覚えがあり過ぎるスーツ姿の男性。

 

 

『メイジン・カワグチ!!?』

「話は聞いた!この勝負!!三代目名人である私が仕切らせて貰おう!!」

 

 バッと腕を振りぬいたメイジンは俺達を見回した後、一呼吸入れてからバトルの説明をし始める。

 

「行うのは……全国大会出場チームその代表者によるバトルロワイヤルッ!制限時間は大会通りに15分、機体ダメージはCに設定ッ!最後まで生き残った者が……勝者だ!!」

 

 代表者によるバトルロワイヤル!?流石メイジン、瞬く間に場を収めると同時に代替案まで設けるとは……。だが代表者、それならばノリコかコスモに任せたいな。

 全国大会出場者と戦うチャンスが出来たんだ。この機会を活かして二人のどちらかに戦わせてあげたい。

 

「俺達に気を遣わなくても大丈夫ですよ」

「……何で分かった?」

 

 何故か言葉にする前に釘を刺されてしまった。ニュータイプ張りの予知に慄きつつも、苦笑いしているコスモとノリコに戸惑いの視線を向ける。

 

「分かりますよ、そんなに悩んでいれば……私達は昨日しっかり練習しましたから、私達のリーダーとしてカッコいい姿を見せてくださいね!」

「……生意気な」

 

 本当に生意気……だがこれが信頼というものなのか。先輩と後輩の距離が近づいてる感じがして、内心すごく嬉しくなってくる。後輩たちに背中を後押しされ、一歩前に出る。

 各チームの代表は、セカイ君と、キジマと呼ばれていたガンプラ学園の生徒、カリマ・ケイに、我梅学園の生徒、そして俺の5人で行われる。混戦必須のバトルロワイヤル、やるのは初めてではないが、ここまで実力者が集中した場合は初めてだ。

 

「おい!!メイジン!!」

「む!!」

 

 バトルに臨もうとしたその時、さらなる第三者の大きな声がトレーニングルームに響く。声と同時に入り口から男が一人、凄まじい迫力と共に走って来る。そして彼の後ろからは大柄な白髪の男とやや小柄な少女の二人が、血相変えて先に走っていった男を追いかけてくる。

 

「飛び入り参加はどうだぁ!!」

「構わん!!」

「おっしゃあ!」

 

 流石メイジン返しも三倍速い……ではなくて、今やってきたのは確かナガレ・リョウヤだったな。そして彼の後ろにいるのは彼のチームメイトだろう。その内の一人が、走りながらシューズを脱ぐや思い切り振りかぶり―――

 

「おっしゃあ!じゃないでしょ!?何でそう無鉄砲なの!?何でそんなに私の話を聞かないの!?皆さんすいません!!本当にすいません!!」

 

 昨夜の如く、ナガレの頭をシューズで殴りつけた少女は、流れるように彼の頭を掴みそのまま周りへ下げさせる。その様子に微妙な表情を浮かべる面々だが、一人だけは違っていた。

 

「ナガレ……やはり君も来ていたか……」

「よぉ、久しぶりじゃねぇか。随分と面白いことをしているから飛び込んで来ちまったぜ……」

 

 少女の手を振り払ったナガレが獰猛な笑みを浮かべてキジマを睨む。

 まさしく猛獣のような迫力がある。

 

「今年は随分と食い甲斐のある奴らがいるからなぁ」

 

 言葉と共にギロリとこちらに視線を向けるナガレにビビりつつも、チームを背負ったリーダーとして、視線を逸らさぬように努める。それが可笑しかったのだろうか、彼は獰猛な笑みをさらに深め、背後であわあわと周囲に頭を下げている少女へと向き直る。

 

「俺が出る。センガ、カナコ。お前らはすっこんでろ」

「何も言う事はない、最初に言い出したのはお前だからな……ここで観戦させて貰う。行くぞカナコ」

「ちょ……待って、勝手に……私リーダーなのにぃ……」

 

 ヒョイと片手で少女を掴み上げた大男はトレーニングルームの壁際まで移動していった。……随分、我の強いチームに思えるが、彼等も選手権を勝ち上がって来たチームの一つ。彼等も相当強いに決まっている。

 ……でも、まずは目の前のバトルだ。

 

「……これで準備は整った!!それでは代表諸君ッ、バトルシステムへ!!」

 

 メイジンに促されそれぞれがバトルシステムへ移動し、ガンプラを所定の位置に置く。完成した状態での初のバトルがこんな密度とは思わなかったが、相手は全国から集められた猛者達……不足はない。

 

「ジンクス……新しく生まれ変わったお前の力、試させてもらう」

 

 

 

 

 

 

 

 

【BATTLE!START!!】

 

 バトル開始の合図と共に一気にステージへ飛び出す。飛び出した先は建物がひしめき合う市街地、加えて周囲が暗い事も考えると夜だろうか。頼りになる光が空から差し込む月の光だけというのは些か心許ないが……。

 

「なるようにするしかないか。……っ!」

 

 レーダーに反応、その反応に機体を向ける。月を背にビルの上に佇む白いガンプラ、GN粒子特有の粒子放出エフェクトと、クリア素材を用いた槍に似た武器を持っている。

 

『まさか最初に会うのが君とは……面白いッ!!』

「ガンプラ学園の……」

 

 00系のガンプラの改修型、類似する形は、エクシアか!建物の間を飛ぶこちらを見下ろすようにように佇んでいる白いガンプラは、その手に持った槍を大きく振るうと光弾のようなものを生成、射出する。

 その数5つ、こちらを追尾するように放たれた光弾。

 

「伊達にこの場で戦ってはいない!」

 

 こちらに迫ってきた光弾を上昇して回避し、スラスターを急制動させそのまま下方へ向きを変える。下から迫って来る光弾をGNロングライフルを放つ。

 

 放たれたビームは三つ、それらは五つの光弾の内三つを撃ち落とす。残りの二発をランスで薙ぎ払って爆発させる。白煙がジンクスを包み込むが、再度ランスを振るいそれを掻き消し、白いガンプラに体を向ける。

 

『やはり超えて来たか!!』

「超えるさ!超えて行かなければ意味がない!!」

 

 あの光弾は厄介だ、ライフルで撃ち落とすのは難しくはないが決定打には欠ける。それならば接近戦で一気に叩く、駄目ならその時だ。

 粒子を上昇させ、白いガンプラ目掛け近接戦闘を仕掛けるべく接近を試みる。

 

『槍と槍……その勝負受けて立つ!!』

「貫くッ!」

 

 白いガンプラも槍を突き出すべく腕を引き絞るのが見える。こちらもGNガンランスを構え、速度を落とさずに突撃する。しかし、それと同時に別方向から、ミサイルとビームが俺と白いガンプラに殺到する。

 

 ……そうだ、これはバトルロワイヤルだ。相手はガンプラ学園だけじゃあない。迫って来たミサイルをサーベルで切り落とし、GNガンランスのガンモードでこちらに狙いを定めるファンネルを撃ち落とす。

 

『どちらも只では落ちないか!!』

「我梅学園か……」

 

 先日見た時は半壊状態だったが、成程……仲間のパーツを組み合わせて一体のガンプラを作り上げたのか。そうだとしたら撃ち落としたファンネルは彼らのものか。

 

「見えるファンネルは俺には効かん!!」

 

 サーベルを引き抜き投擲と同時にビームを連射、回転するサーベルにより拡散されたビームが、数機のファンネルを撃ち落とす。

 

『……ッ!!アンドウ・レイ!!昨日のバトルの乱入……理由はどうあれ感謝はしている!だが、手を抜くつもりなど毛頭ない!!』

 

 さらに追加されたファンネルと腕部のインコムが俺と白いガンプラ目掛け、続けて飛んでくる。恩を感じてバトルしてもらう方がよっぽどこちらにとっては嬉しくない、むしろ全力でぶつかってくれる方が嬉しい。

 GNガンランスからGNバスターソードを装備、迫りくるファンネルをくるりと反転しながら回避し、そのままライフルの照準を我梅学園のガンプラへ向ける。

 

「―――落とす!」

『トマホォォォゥクッブゥゥメランッ!!』

「ッ!」

 

 雄叫びと共に凄まじい勢いで飛んで来た斧がロングライフルを切り飛ばした。舌打ちしつつも火花が散るライフルを捨てると、何時の間にか至近距離にまで近づいて来た黒いガンダムが拳を繰り出していた。

 

『おぅらぁ!!』

「まだいるかぁ!!」

 

 反射的にバスターソードを前面に押し出し、盾にして直撃を防ごうとはするが、予想より一撃が重い。こんな威力を何度も食らったらソードが保たない。バスターソードを斜めにして拳を受け流す。

 

『思った通りだぜ……』

「……っ!ナガレか!!」

 

 黒いガンダムが自身の黒いマントを振り回すとその姿が露わになる。荒々しい様相だがその姿は格闘主体のガンプラ。その鋭利な角……マスターガンダムの改修機か。

 

『今からテメェと戦うって事だよォ!!』

 

 マフラーのように靡いた黒いマントをその手に持ち、マスタークロスのように操りこちらへ振るう。それを機体を反転させて回避するが、すぐ後ろに位置していた建物を真っ二つに切り裂いた。

 

『ゲッタァァァックロォゥス!!』

 

 ビームじゃない、ただ力任せに振るっただけの一撃。背後で崩れ落ちる建物から敵機に意識を集中し、残ったサーベルで連続で繰り出されてくる黒いマスタークロスを弾きながら、胸部のバルカンで牽制する。

 だがマスターガンダムは回避する姿勢を見せず、バルカンをその身に受けながら問答無用で接近してくる。しかも無傷、凄まじい硬さの装甲だ。

 

 腰にマウントされていた二つの斧を引き抜いたマスターガンダムに対し、バスターソードを構える。しかし相手はマスターガンダムだけではない、緑色のビットがいつの間にかこちらへ接近していた。

 

『俺を忘れて貰っては困るなぁ!!』

「カリマ・ケイか!」

 

 建物の影から姿を現したケルディムガンダムがGNビームピストルと共にライフルビットを放つが、マスターガンダムが斧を無造作に投げつけた。ただの斧を投げつけて何をするつもりだ、とナガレの行動に困惑するも、それも一瞬、投擲された斧はブーメランのように円を描く様に回転し、ビットを破壊していく。

 

『なぁっ……!?ぐあぁ!?』

『うるせぇ邪魔すんな!!』

 

 驚愕のあまり動きを止めたカリマ・ケイへマスタークロスを叩きつけたマスターガンダムは、再度こちらへ突撃を仕掛けてくる。

 

『キジマァ!!コイツは俺が貰っていくぜぇ!!』

『なに!?ナガレッ、貴様!!』

 

 当然応戦しようとするが、接近してきたマスターガンダムは俺が振り下ろしたバスターソードを両手で押さえつけるように掴み、そのまま凄まじい力で押し込んできたのだ。

 この勢い……、この場から離脱させて一体一に持ち込むつもりか!!

 

「これが目的か!」

『おうよ!!キジマとは何回かバトルしてるからなぁ!!』

 

 逆噴射を掛けてマスターガンダムを振りほどくと同時に、腹部を蹴り飛ばし距離を取る。先程戦闘があった場所から少し離れてしまった。だが、戦う事には変わりはない。

 これはバトルロワイヤル、最後に残った一機のみが勝利を手にすることができる。

 

『お前のバトルを見てずっと思ってた、戦ってみてぇってなぁ!』

「やることは変わらない、俺はいつも通りにガンプラバトルをするだけだ」

『俺のGマスターとお前のジンクス……どっちがつえぇか決めようじゃねぇか!!』

 

 Gマスター……見た目からしてグランドマスターじゃないが、どうにも既存のマスターガンダムとかけ離れている外見をしている。口元を隠すように取り付けられた銀色のフェイスプレートのようなもの、マスターガンダム特有の背部ユニットをオミットされている。それに両拳にはスパイクのような物が取り付けられ、左腕部には鋭利なカッターが取り付けられている。

 武装は俺のライフルを破壊した斧が二つ。

 

 ……近接特化ということは、遠距離攻撃に耐えうる装甲を備えている。まあ、Gガン機体だから近距離戦を得意としているのは簡単に分かるだろうが……相手はガンプラ学園の生徒と対等に話していたファイターだ。

 

『来ねぇなら、こっちから行くぜぇ!!』

 

 黒いマントをはためかせながら、右手に持つ斧で斬りかかってくるGマスター。

 生半可なパワーでいったら力負けする。こちらもGNバスターソードを両手で握りしめ、全力を以て迎え撃つ。

 

「うおおおおおおおおおお!!」

『うおぉりゃあああああ!!』

 

 リョウヤと俺、互いに雄叫びを上げ繰り出した一撃は、大きな火花と共に激突し、暗い市街地を一瞬だけ明るく照らす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先日、アドウ・サガとバトルしていたジンクスⅣが、マントをなびかせたマスターガンダムによってどこかへ連れて行かれてしまった。その後も状況はめまぐるしく動き、バトルに参加していた我梅学園のザク、そしてケルディムガンダムがガンプラ学園の00タイプのガンプラに撃墜され、現在は二つの代表の脱落により、フィールド内では二つのバトルが繰り広げられることとなっていた。

 

 セカイのビルドバーニングガンダムと、ガンプラ学園のガンプラとのバトル。

 ジンクスⅣとマスターガンダムとのバトル。

 

『次元覇王流!!波動裂帛拳!!』

 

 ビルドバーニングが地を殴ると、火山の如く地面が吹き上がる。今までなかった技、それだけセカイが成長しているということなのか。

 ……あいつはバカで向こう見ずに突っ走るけど、何時も真っ直ぐな気持ちで戦っていた。先日の僕は目先のバトルにばかり囚われて何も見えなくなっていた。それが昨日までの僕とセカイとの違い。

 

「ユウ君!あっちを見て!」

「!」

 

 先輩の声に慌ててセカイ達のバトルから視点を別のモニターに変える、そこではセカイ達に負けず劣らずの、凄まじい近接戦闘を繰り広げている二機の姿がモニターに映りこんでいた。

 

『どぉッりゃぁ!!』

 

 マスターガンダムの改修型と思えるガンプラが、ジンクスのGNバスターソードの峰に当たる部分に斧を叩きつけ、ソードを砕き割った。

 

『……ッ!!たかが武器一つ!』

 

 武装を破壊されたジンクスだが、マスターガンダムが続いて胴体目掛け横薙ぎに振るった斧を引き抜いたサーベルで切り払うと同時に、下から斧を持つ手を蹴り上げ、斧を弾き落とす。そのまま中ほどから砕け散ったGNバスターソードを投げ捨て、肩にマウントしていたランスを新たに装備し、それをマスターガンダムの胴体に殴りつける。

 

 僅かに装甲が弾け飛ぶがそれも束の間、すぐに体勢を整えたマスターガンダムは、前のめりになりながら、ランスを携えたジンクスを睨みつけた。 

 

『やるじゃねぇか!!』

 

 常軌を逸した削り合いだ。よく格闘主体のマスターガンダムに自ら進んで格闘戦を行えるものだ。あれを僕とセカイに例えるなら、遠中距離型のライトニングが、セカイのビルドバーニング相手に近距離戦を行うのと同じだぞ。

 

「加えてあの……」

 

 丸腰のはずのマスターガンダム。持っている武装もさっきの蹴りで失い、あるのは拳のスパイクと左椀部のカッターだけ……だが、それでも闘気は未だに衰えない。

 Gガンダムの機体は確かに格闘向けだ。だがあのマスターガンダムは、Gガンダムの利点を全く活かす気がない。セカイなら次元覇王流という拳法を用いて戦うだろう。それとは違い、あのファイターはそういうのを全く頼らずに、暴力のみで戦っている。

 

『それじゃぁ……こいつはどうだぁ!!』

 

 突如方向を変え、一際巨大な建物に近づいて行ったマスターガンダムは、突然その建物を左腕のカッターで叩き割る様に切り裂き、ビルを中程まで両断する。

 

「何をするつもりなんだ……あのガンプラ……」

 

 そして驚くべき光景が視界に映りこむ。巨大な建物をマスターガンダムが持ち上げている光景が画面一杯に広がったのだ。あまりにも信じがたい光景に思わず眼鏡を外してしまったが、もう一回かけ直しても一体のガンプラが身の丈以上の大きな建物を担ぎ上げている光景は変わらない。

 

『食らってみろ!!』

『その程度!』

 

 戦っている相手も只者ではない。右手に装備したランスの突起部分を根元からパージし、クリアパーツのランスへと変える。それを振り上げ、雄叫びと共に上段から振り下ろした。

 

『トランザムッ!!』

 

 真っ赤な粒子がジンクスの体色を染め上げると同時に、クリアパーツのランスから赤色の巨大なサーベルを生成させ、投げ飛ばされた建物を縦一文字に切り裂いた。

 

「で、出鱈目な……」

 

 あれだけの質量を一気に切り裂けるサーベルを形成するなんて……。トランザムを併用したって普通はできない。

 

『隙有りィ!!』

『……ッ!!』

 

 ぶん投げた建物の後ろに潜んでいたマスターガンダムが、そのままスパイクを延長させた拳をクリアパーツのランスに打ち込み破壊してしまった。これでジンクスの方は武装はほぼなくなってしまった。

 だがそれでもジンクスのファイターは諦めない、追撃を与えようとするマスターガンダムへ膝蹴りを与え、そのまま地上へ叩きつけるようにスラスターを用いての蹴りを放つ。

 

『ぐッ……か、ははははは!!』

『ここは本当に強いファイターが沢山いる……』

 

 ……気のせいだろうか、トランザム中のジンクスⅣの粒子放出量が突然上がった気がしたような。いや、むしろ右脚部の装甲の隙間から、赤色の帯のようなものが漏れ出しているようにも見える。

 

『―――こいつを使うのはやぶさかじゃあない!!』

『来るか!隠し玉っつーもんがよぉ!!』

 

 両の手の拳を握りしめたジンクスⅣが更に上昇し、そのままトランザムのスピードを乗せてマスターガンダム目掛け飛び蹴りを仕掛けた。まるでセカイのように繰り出されたその蹴りは、トランザムの赤い軌跡を残し一直線に地上へと向かっていく。

 

『正面から打ち破る……ッ』

 

 蹴りが用いられている右足の装甲から漏れ出している赤色の粒子の帯が、ジンクスⅣの身体を覆うように螺旋状に巻き付いていくのが見えた。

 明かに尋常じゃない粒子を放出し、それを身に纏わせ突撃してくるジンクスⅣに対し、対戦者のマスターガンダムは何かしらの危険を察知したのか、素早い機動で横に大きく回避する。

 だが放たれた蹴りは止まらない、対象者がなくなったとしても未だ減速しないまま地上へ突き進み―――。

 

 

『はぁぁぁぁりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

「ッ!セカイ?!」

 

 同時にセカイとガンプラ学園が戦っているモニターから赤い光が輝く、一瞬だけ視線をそちらへ向けた時、ステージの上空には巨大な炎鳥が空へと昇り、地上では大きな地響きがフィールド全体を揺らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ObjectCrash……StageChange】

 

「ここまで燃え上がるとは……ッ!」

 

 素晴らしい、二人のアシムレイトが極限にまで高まった力。それが今まさに私の目の前に結果となってステージに刻み込まれている。

 

 セカイ君が放った巨大な炎の鳥は、天空に位置する月を割り、粉々に砕いた。

 

 アンドウ君が繰り出した蹴りは、地を抉る赤い流星となって、周囲に並び立つ建造物をその余波で瓦礫に変えた。

 

 どちらも技は回避されてしまったようだが、これは彼らにとっての始まりに過ぎない。

 カミキ・セカイ、熱い心を燃え滾らせるバーニングな少年。

 アンドウ・レイ、内に秘める熱い思いを爆発させるボルケーノな少年。

 

「ああ、そうさ!!君達の決着の場はここではないッここで良いはずがない!!」

 

 地形が大きく変更されてバトルが強制的に終了してしまったが、それも良し。結果的にはここに居る全てのファイターに大きな成長を促すことができた。見ている彼等も、実際に戦っていた彼等にもだ。

 

「敢えてここで言わせて貰おう!!これが、これこそがガンプラバトルだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バトルが終わった。

 ……今でも自分が何をしたのかはよく分かってはいない。ただ、右足に激痛が走るのが、最後の一撃と関係しているのはよく分かる。右足から漏れ出した赤い光の帯、あれは鍵だ。俺のジンクスが次の段階へ行くための鍵。

 ただのジンクスⅣから、俺だけのジンクスへと作り上げるために必要なもの。

 

 帰ってからやる事が沢山できてしまった……。

 

「おう」

「……ナガレか……」

 

 先程まで戦っていたナガレが、幾分か友好的な笑みを浮かべて話しかけてきた。ナガレは本当に強かった、あの近接戦闘の恐怖はミサキも上回っている事に加え、なまじ特異な機能無しで戦ってくるので、小手先の技が通用しない。

 相手の策略を真っ向から潰すタイプのファイターだ。

 

「最後の一撃、ありゃあ大した威力だ。だが―――」

「分かってる。お前との決着は大会でだ。その時までに俺ももっと強くなっておく」

「ははは!言うじゃねぇか、俺とやりあってそんな事言った奴今までいなかったぜ」

 

 上機嫌なナガレに背中を叩かれバランスを崩しそうになりながらも、バトルシステムに手をつきなんとか倒れずにすむ。……これはいよいよ父に話を聞くしかないな。

 

「脚怪我してんのか?」

「大したことない、と思う。前にもあったことだからな」

「……しょうがねぇ」

 

 右腕をいきなり掴まれ、ナガレの首に回される。これは、支えてくれているのだろうか?こちらとしてはありがたいが、バトル中の事を考えると、少し怖い気持ちもある。

 

「後味悪ィからな」

「見た目に反して親切だな……」

「見た目は余計だ」

 

 軽口を呟きながらバトルシステムのある場所から降りる。するとノリコとコスモがナガレに肩を貸してもらっている俺に駆け寄って来る。

 

「先輩、さっきのキックはなんですか!!」

「バカ!それより怪我だろ!!」

 

 頬を赤くさせながらこちらへ詰め寄って来るノリコ、そんなにあの蹴りが衝撃的だったか。あれはノリコとコスモの為の連携用の攻撃だったんだが……自分にも訳が分からない武装に変わってしまった。

 

「ナガレ、もういい」

「お前のチームメイトは変わってんな」

「……お前には言われたくない」

 

 ナガレの肩から腕を離し、コスモに肩を貸しても貰う。ノリコは自分もーとばかりに肩を貸すように訴えているが、流石に女子から肩を借りるのは少し気が引ける。

 ゆっくりと歩を進めながらトレーニングルームを出ようとしていると、今度はナガレのチームメイトの少女が血相を変えてこちらへ駆け寄って来る。

 

「ま、まさかナガレがついに傷害事件を……?」

「いや、そう言う訳じゃ……」

 

 ついにって何だ、ついにって。

 

「すいません、せめて警察に突き出すのは大会の後にしてくれませんか!」

「この足の怪我はナガレのせいじゃないから、少し落ち着いてくれ……」

「あ、そうなんですか……」

 

 落ち着きを取り戻したのか、安堵するように胸を撫で下ろした少女。その後ろから白髪の大男とナガレが大きなため息を吐きながら歩み寄って来る。

 

「カナコ、だから言っただろう。ナガレはそんなに短慮ではないぞ」

「そうだ、全く……俺も信頼ねぇな」

「どの口が言うか……こいつら……」

 

 わなわなと震えていたが、そうしている事も無駄と悟ったのかすぐにこちらへ向き直り、軽く頭を下げた。

 

「えと、私から改めて自己紹介します。佐賀県、鏑木学園代表のアスハ・カナコです。後、後ろの大きいのはセンガ」

「茨城県代表のアンドウ・レイだ。なんというか、大変そうだな……」

「初めて常識人に会えた気がする……」

 

 ジーンとどこか感動しているカナコに慄きつつも、そこで別れを告げトレーニング室から出ていく。ナガレといい、センガと呼ばれる男と良い、少々濃いメンバーのようだ。

 だが相応に強い。少なくともナガレは、アドウにも引けを取らない強さを有していた。

 

「先輩……どうしました?まさか、脚が……?」

「や、そっちはとりあえず大丈夫だ」

 

 まだ痛いけど我慢できない程じゃない。

 

「そうですか……なら、先輩!あれ、あの技です!」

「あれか」

「どうやったんですか?」

「よく分からない。強いて言うなら気合いだな」

「……成程、気合いですか」

 

 そんなに真面目に悩まないで、今のジョークだから。

 ……しかし、本当になんだろうな、アレ。どうやったら出来たのだろうか、でも出来るにせよ出来ないにしろ全体的な強度を上げないといけない。あのキックに耐えられるような強化―――いや、その強化パーツを作って見るか。

 

「……あれもいわば槍、となるとスパイラルランスと言った所か」

「確かに回ってましたからね。しかもギューンって脚から伸びてグルグルーってなんというかバーッて彗星みたいでしたよ!」

「……ノリコ、無意識かもしれないがそれは色々とマズイ」

「え、何で?」

 

 彗星、そういえば昔、父がレイズナーというプラモデルをどこかに飾っていたな。確か蒼き流星……だったか、かなり古いガンプラに思えたが……父曰くあれはガンプラではなくプラモデルだそうだが、ガンダムにそっくりだったって言う印象が強かった。

 

「流星、か」

 

 後でもう一度見せてもらおうかな。

 




アンドウのジンクスが意図せずレッドパワーに目覚めてしまった……。



今日のBFTを見て―――

 我梅学園が何をしたって言うんや……。
 きっとグラナダ相手に善戦してくれるのかなぁ、と思った結果が戦闘カットとか……。。
 こんなんじゃぁ満足できませんよ……。

……あ、フルクロスカッコ良かったです。



今回登場したナガレのGマスターは冥・Oとは違い、超力技で戦います。

名前の由来はゲッターマスターのゲッターのイニシャルのGからGマスターとしました。グランドマスターではありません。
ゲッターガンダムにすると、普通にGガンダムになってしまうので変更いたしました。


今回で恐らくニールセン・ラボ編はは終了です。
次話は大会までの繋ぎの話を入れていきたいと思います。

イデオンとガンバスターの改修とか、ミサキとのタッグバトルを予定しております。

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