今回はスピンオフ?のようなものです。
キョウスケメインの話で……選手権では出せない再現機体を数体出したいと思います。
レイ達の三回戦のバトルの直ぐ後の話です。
………全国編では出ないと言いましたが、これは閑話だからセーフ(震え声)
「順調に勝ち上がっているな、レイは」
「ああ、今日のバトルなんて鳥肌もんだぜ」
トーナメント表左のブロックの三回戦が全て終わりを迎えた。現在はマサキと共に会場の外で暇を潰している所だが、数日滞在しているからか特に見るものがなく、近くのベンチに座りながら先程の試合に対しての考察をしていた。
やはり三回戦にまで残るファイター達の腕は相当なもので、それらの試合を見た俺もマサキも得るものが多少なりともあった。
それにしても大会のバトルを見た時は驚いた……。
「この大会はスーパーロボット型のガンプラが多いようだ」
「モデルが有った方が再現しやすいだろうし、どうせなら好きなロボットで戦うのがいいだろ?」
「確かにな……」
レイのチームは只者ではないとは思ってはいたが、まさか俺達と同じようにガンプラを基盤にしたロボットを作っているとは思わなかった。原典には性能は劣るとしても、ガンプラバトルでは圧倒的な出力と工夫により強力な機体となっている。
「俺もあと一押しといった所か」
大会を見ていて分かる。今のアルトアイゼンKのステークではあと一歩及ばない。あのトライオン3もそうだが、基本的に勝ち上がるガンプラの多くは堅牢。いかにアルトといえど圧倒的な装甲の前ではかなりキツイものがある。
「あ、見てみろよキョウスケ!!」
「なんだ?」
マサキが会場近くの出店を指さす。そちらに目を向けると、設置型のバトルシステムと人だかりが見える。見たところ誰かがバトルしているようだが……立て看板を見る限り、小規模のガンプラの大会が行われているようだ。
「なあ、見てみようぜ」
「暇潰しには丁度良いかもしれないな」
ああいう大会にはあまり出ることはないのだが、もしかしたら選手権で敗退してしまった選手が参加しているかもしれない。
早足で行くマサキの背を追う様についていくと、現在バトルシステム内で行われているバトルが見える。
『な、なんだそのガンプラは!?』
『このガンプラは私についてきてくれる!!』
「うわぁ……何かすげぇガンプラでバトルしてんな~」
脚部についたローラーのようなもので地上を滑るように移動する真紅のガンプラが、バスターガンダムから放たれるビームを回転するように躱し、バスターの砲身に二又のダガーを突き刺しそのまま蹴り飛ばしていた。
「ゼイドラ……だよな?あれ」
「ガンダムAGEに登場したヴェイガンのMSだ」
ゼイドラをモデルにした改修機、首回り背部のユニットには黄色の着色が施され、脚部には地上を移動する為のローラーが増設されている。全体的にはゼイドラの刺々しさを軽減させたようなものだが、それほど違和感を感じさせないデザインとなっている。
そして特に目を引くのは鈍色に輝く右腕の爪。アンバランスさが感じられる巨大な腕だが、鋭利な爪も相まって異様さすら感じられる。
「紅蓮か」
コードギアス反逆のルルーシュで登場したロボット。地上を縦横無尽に駆け敵を破砕する、黒の騎士団のエースが用いる機体。
そのモデルと変わらない機動で市街地で生成されたフィールドを飛び回り、後退するバスターガンダムを胸部のアンカーを用いて追いかけ、その右腕で掴み握り潰すように捕縛し―――
『消し飛べ!』
右腕から放たれた高エネルギーがバスターガンダムへ注がれるように放たれる。紅蓮型のゼイドラによりエネルギーを注がれたバスターガンダムは、一瞬のその動きを止めた末に爆発、それでバトルは終了した。
俺のステークとは違い、あちらは内部から相手を破壊するのか。
『選手権記念バトルはカレンさんの優勝でーす!!優勝したカレンさんにはここからお好きなガンプラを三つ送らせて貰いまーす!!』
「やった――!」
「よくやったぞカレン!」
「やったね」
喜びの声を上げるカレンと呼ばれた中学生ほどの少女と、彼女に駆け寄る黒髪と茶髪の二人の男子を見ていると、マサキが俺の肩を叩く。
「なあなあ、この大会って今日何度もやっているらしいんだよ」
「本当か?」
『それでは今日4度目の大会の受付を行いまーす!』
司会を行っていた女性がマイクを持って受付に立っている。其処には既に金髪の少女が受付を行っている。アメリカ系だろうか、やけに上機嫌に署名を済ませた少女は、俺の視線に気付くとウィンクした後に、バトルシステムの方に歩いて行ってしまった。
「なあ、聞いてんのか?」
「あ、ああ……出よう」
「そう来なくっちゃ!!」
あの少女には面を喰らったが、取り合えず出てみるのも面白い。説明を見る限りでは、一回の大会での参加人数は8人まで、4つのバトルシステムで行われる。優勝したものには三つのガンプラを貰える、というものだ。
ガンプラを三つ貰えるのは嬉しい。旅をしているおかげで正直余裕がなかったのだ。マサキか俺が優勝できれば、無料でガンプラ三つが手に入る。戦意を滾らせながらマサキと共に受付の前に立ち、参加の手続きを行おうとすると、受付の人は俺とマサキを見て申し訳なさげに頭を下げてきた。
「申し訳ありません、後一人しか参加できないのですが……」
既に7人分の枠は埋まってしまったらしい。
同時にマサキと目を合わす。
「マサキ、諦めろ」
「へへへ、こっちの台詞だぜ、キョウスケ」
「………」
「………」
「こういう時は」
「ああ……ッ」
一緒に旅をしている上で喧嘩することは何度かあった。
そんなときの解決方法は―――。
「「ジャンケン!!」」
『倒すッ!』
「さあ、来い!!」
大会一回戦目、並行して4つのバトルが行われるその中で、俺のアルトアイゼンKは市街地を走り、敵機とバトルを繰り広げていた。この大会ではステージは市街地で固定されたままのようで、バトルの度にステージは変更されない。
地に脚がついているほうが性に合っている俺としてはなんら問題はないが……。
「速いな……」
相手のガンプラが速い、恐らくガンダムXに登場したコルレルというMSだろうが、その速さを生かせるような改修が施されている。
『はあッ!!』
「同じことを何度も!」
背後から飛んでくる機関砲を反転して受けながらもマシンキャノンを放つが、相手はその場で飛び上がり、ビルに四肢で張り付き、こちらへ飛びかかって来る。
「アレクサンダ……またコードギアスか……!」
コルレルの改修機、恐らくアレクサンダを元にしたものだろう。コルレルのあのスピードとあの柔軟性に特化した仕様は間違いなく厄介、加えてこのステージは相手にとって有利。あの四肢で走る形態はアルトのスピードに匹敵するかもしれない。
コルレルの腕から展開されたトンファーをステークで受け止めマシンキャノンを構えるも、密接した状態で蹴り上げられ、あらぬ方向に向く。
これまでの戦い方では駄目、だがこちらには―――。
「いくら動こうとも!クレイモア!!」
『……っ!?』
胴体を蹴り飛ばして後方に下がったコルレルが、凄まじい挙動で建物の壁を蹴りクレイモアを避けた。三次元戦闘、とでも言うのか。
壁を飛び回り、手首から刃を展開させたコルレルが、クレイモアを撃ち尽くしたアルトへ複雑な機動を描き特攻を仕掛ける。
「ここで仕掛けるにはあまりにも早計だぞ!」
向かってくる刃に対してこちらも突撃を仕掛ける。装甲に刃が突き立てられるが、不快な金属音と共に中ほどから折れる。そのまま体当たりで吹き飛ばされるコルレルに、スピードを落とさずに右腕を引き絞る。
ステークを危険でないと判断したのはミスだ!
「撃ち貫く!」
『う、うおおおおお!?』
コルレルにステークが撃ち込まれ、バンカーが炸裂―――たった一度の衝撃でコルレルが砕け散る。そのまま腕を振り切り、ブレーキをかけて一息つくと試合終了のアナウンスが流れる。
『はーい、これで一回戦全てのバトルが終わりました―!一回戦を勝ち抜いたのはキョウスケさん、エクセさん、謎の食通さん、エンデュミオンの鷹さんでしたー。それでは次の試合の準備をお願いしまーす』
……後半は名前ではないだろう、むしろ異名だ。
謎の食通に当たる人物を見ると、サングラスをかけた金髪の成人男性が見える。持っているガンプラは……黒いアストレイ?図体が大きいという事は、アウセンザイターか?まるでレイのチームがバトルしたダイゼンガーに似た形状だが、もしかしたら関係者かもしれないな……。
「……次のバトルに取り掛かるか」
次のバトル開始はすぐだ。相手はあの金髪の少女、エクセ。愛称かどうかは定かではないが、それなりの腕を持ったファイターであることは分かる。
「よろしくね~!」
バトルシステムを挟んでこちらににこやかに挨拶してくる彼女に困惑しながら会釈した後、BASEとアルトアイゼンKを置き、起動させる。
「アルトアイゼンK、出るぞ!!」
プラフスキー粒子で構成された世界にアルトが飛び出す。着地と同時に市街地の間を駆ける。変わらず同じステージだが、今回は何か違う感じがする。
索敵しつつアルトを走らせていると、眼前からビーム特有の桃色の光がこちらへ向かってくるのが見える。機体を横にずらしビームを避け、ビームが発射されたであろう空を見上げる。
『ジムスナイパーフライトちゃん、いっきまーす!』
「空か……」
エールストライカーのようなバックパックを取り付けたジムスナイパーがこちらへロングレンジ・ビーム・ライフルの砲身を向ける。長距離特化か、俺の苦手なタイプの相手だ!
だが、俺のアルトとてそんな相手と戦わなかった訳ではない。
ジムスナイパーから放たれたビームをヒートホーンで弾き、そのまま突っ込む。
『わぁお!すっごい装甲ね!でもやりようはあるわよぉ!』
続けて放たれるビーム、だが今度は何だ、連射して放たれている?
危険を感じ、受けずに回避するも、クレイモアを撃ち出す肩の端にビームが連続して直撃し装甲の一部がくりぬかれたように破損してしまった。
同じ箇所を集中して狙ったのか。ケンプファーとジムスナイパーとの対決とだけで皮肉を思わせているのに、空を飛んで遠距離射撃とは……まるでヴァイスリッターのようではないか。
「フ……望むところだ」
加速と共に直撃の危険度が増す。そこで深刻な一撃を喰らいさえすれば一気に勝利はあちらへ傾く。だが距離を詰めなくてはこちらは圧倒的に不利。
「分の悪い賭けは嫌いじゃない……ッ」
雨の如く降り注ぐビームを掻い潜る。ホーンで弾き、ビームを受け止め、それでも尚加速を続ける。圧倒的な加速を見せるアルトに驚くような声を漏らした少女は、空中で制止させたジムスナイパーを動かし、ビームを放ちながらの突撃へと戦法を転じる。
『赤いケンプファーなんて、運命的ねぇ!!』
「……っ、攻勢に転じたかッ」
明かな異常なローリングでビームを乱射してくるのを見てから、すぐさまマシンキャノンを放ち牽制と同時にビームを撃ち落とす。正確すぎるなら不得手な射撃でも防ぐ事は容易ッ。
そして相手は自ら突っ込んで来た―――これでこちらの!!
「この距離なら!ブースト!!」
『来たわねぇ!』
反動をつけてジャンプしたアルト、それを予期していたのか迷わずこちらへ照準を合わせてきたことには感服せざるを得ないが―――。
「やらせて貰う!」
『簡単にはやらせないわよぉ!』
引き絞った右腕がジムスナイパーに向けられると同時に突き出される。相手も照準に指が掛かっているのを見ても、ここで求められるのがどちらが早いかということであるのは明確。
「撃ち貫く!」
『うわぁ!?とっつき~!?』
突き出されたステークに放たれたビームが直撃し、ステークの着弾点がずれ、ジムスナイパーの頭部を浅く削っただけで、そのまま地上へ落ちていく。
咄嗟にスラスターを噴かし、ビルの上に着地しジムスナイパーを見据える。
こちらは機体の至る所に損傷はあるが、あちらはメインカメラの損傷のみ、状況はあちらの方が優勢だが、まだクレイモアもステークもある。まだまだ戦える。
『メイジン杯の為にちょっとだけ早く来たのは間違いじゃなかったってわけね』
「メイジン杯の参加者だったか……」
それならこのジムスナイパーの機動性に納得がいく。背部のエールストライカーもよく見れば縮小化され、小回りが利く様にスラスターが可動できるように改造が施されている。そして全体的な白い着色と青色のラインに、アルトとの対比的なものを感じざるを得ない。
『やっぱり日本はいいわね~流石ガンプラ発祥の地。バンダイバンザーイって感じ~!』
「……口が過ぎるぞ、バトル中だ」
何故か分からないが、この少女からは版権的にヤバイ発言をする気が……いや、何を考えているんだ俺は。
『そうね、私が勝ってから話の続きをしましょうね』
「抜かせ、勝つのは俺だ」
くるん、とロングレンジ・ビーム・ライフルを回転させ照準を向けたジムスナイパーを見据え、こちらもマシンキャノンを突き出し、ステークを引き絞る。
さあ、バトル再開だ!
「良いバトルしてんなぁ……羨ましいぜ」
あそこでパーだったなら今頃俺はあそこでバトルしていたはずなんだけどな……。まあ、負けたのはしょうがない、次に出場すればいい話か。
『ビームはお嫌いかしら~!』
キョウスケがバトルしているやけにテンションの高い少女は、楽しむようにバトルしている。一方のキョウスケも仏頂面だが僅かに声に昂ぶりが感じられるから、楽しんでいる。
「んで、もう一方のバトルは、と」
キョウスケのバトルから隣で行われているバトルに目を向ける。確か謎の食通とエンデュミオンの鷹のバトルだ。あちらにも人が集まっているから、それなりにいいバトルをしているのだろう。
『ガンダムアストレイトロンべだ』
『おいおいそんなアストレイいたっけな……というよりあんた、さっきアウセンザイターっって―――』
「トロンべっておい」
完全に謎の食通じゃねぇか。
頭を抱えながらバトルを見ると、ソードストライクの周囲を旋回するようにホバー移動している黒いマントに包まれたアストレイが、長大な銃身のハンドガンを連射しているのが見えた。
マントから見える感じアストレイ系列の機体だろうが、黒く彩られている事に加え、頭部からモヤモヤとしたビームのようなものが流れ出ている。
大きく改修された両足に両肩、肩に装備された円形の装備が、既存のアストレイとはかけ離れた外見を形作っている。
「ありゃあ……変形しそうだな」
胸部に浮き出る様に取り付けられた折りたたまれた馬の頭を見て冷や汗を流しつつ、アストレイと何を合わせたのかを考察する。
「なんのアストレイ使ってんだアレ……?」
「ミラージュフレームでしょうね」
「はあ?」
突然の声に横を見ると、白い制服を着た紫色の髪の同い年くらいの少年が横に居る事に気付く。誰だろうか、いやその前にミラージュフレームと言ったのか?ミラージュフレームなら、複雑な変形も可能だろうだが……。
「でもミラージュフレームって……」
「ええ、ミラージュフレームはMGでしか発売されていません。恐らくあれはあの方が作り上げたオリジナルのアストレイでしょう。加えて、あれには風雲再起のガンプラの部品が用いられているようですね」
「成程なぁ、あのハンドガンも風雲再起の脚かぁ」
風雲再起なら納得がいったぜ。マスターガンダムに付随しているものを使ったのだろう。足と頭部の部分を可変可能なアストレイと組ませたのがあれって訳か。
「ありがとな、教えてくれて」
「いえ、私も暇だったものですから」
表情を変えずにそう言った男に若干の不信感を抱く。あのガンプラの正体を見抜く技能は並じゃねぇ、それに馬に変形することも理解していたし、なによりコイツの感じは何だ。
多分、すげぇ強いぞコイツ。
「アンタもこの大会に参加しようとしてんのか?」
「既に参加しましたよ」
俺と反対側にある手を上げ、紙袋の中に入っているガンプラをこちらへ見せて来る。僅かに見えたガンプラは……HGのヴァーチェとクアンタ……?優勝したのか、組み合わせがどうか分からないが凄いな。
「名前聞かせて貰ってもいいか?俺はマサキだ」
「シュウです」
シュウ、か。なんだか凄い因縁を感じる名前だ。でも、それから一言二言言葉を交わしてみるが、どうやら悪い奴ではなさそうだ。俺とキョウスケが来年の大会の為に関東を回っている、と言ったら驚くように目を見開いていたので鉄面皮と言う訳でもないし、さっきから気になっていたその変な口調も自然になってしまうらしい。
「……それなら私の居る所にもいつかは来そうですね」
「関東に住んでいるのか」
「ええ、群馬県の方に」
「へぇ……お前は選手権とかは?」
「生憎、私以外の部員が全員辞めてしまったので今年は諦めました」
俺達と同じ理由で大会出場を断念したのか。少しだけ親近感が沸いた。
「……どうやら、あちらの方は勝負がついたようですね」
「え!?」
『トロンべよ!駆け抜けろ!!ランチェ・カノーネ!!』
『そりゃぁないでしょ!?くッおおおお!?』
シュウの声にバトルシステムの方を向くと、黒いアストレイが両の手に持つ長大な銃を連射し、ソードストライクを蜂の巣にして戦闘不能に陥らせている場面がモニターに映し出されていた。
「……それでは私はこのあたりで帰らせて貰いましょう。マサキ、貴方との会話は楽しかったですよ」
「え、ああ……またな!」
俺の言葉にフッと笑ったシュウは、薄ら笑いと共に街のある方向に消えて行った。そういえばどこの学校かは聞いていなかったな。……来年の大会には上がってきそうだな。
「ま、そんなことよりも……キョウスケのバトルはどうなってるかな」
シュウの姿を見失うと同時にキョウスケのバトルへと目を向ける。まだバトルは続いているようだが、どちらも損傷を受けているあたり、今の所は互角のようだ。
ケンプファーとジムスナイパーのバトル、原典ではジムスナイパーの方に軍配は上がったが……。
「これはどうなるか、だな!」
バトル開始から十数分が経った。大会規定なら後少しでバトルが終了してしまうが、こちらも相手もまだまだ余力を残しており、互角の戦闘を繰り広げていた。
「捉えたぞ!!」
『しま……なーんてね!』
飛び上がったアルトを待ち受けていたとばかり腰に装備されていたハンドグレネードを投擲し、ビームで打ち抜かれ爆風が生じる。それをノーガードで受けながら構わず、下がろうとするジムスナイパーを追随する。
「ここで決める!」
『うっそ!?』
ハンドキャノンを連射しながら接近するも、放たれたビームにより限界に近づいていた左腕が破裂する。だがそれでも怯まずに、両肩のクレイモアを開き、一気に放つ。
『そんなのってあり~?!』
今までクレイモアの存在を知らずにいたジムスナイパーは、咄嗟にライフルを防御するように構えクレイモアを受け止める。致命的な損傷は防がれてしまったが、まだ俺の手は尽きてはいないぞ……ッ。
『あ、あれ、まさかコンボ中?』
至る所をスパークさせ煙を上げるジムスナイパーに赤熱させたヒートホーンでの体当たりを直撃させ、ライフルごと右腕を切り離し、同時に引き絞っていた右腕を一気に穿つ!
「遠慮するな!全弾持って行け!!」
ステークが胸部に深々と突き刺さると同時にバンカーを全弾打ち込む。加速の勢いと相まってジムスナイパーが瓦解し始めるが、構わず全弾打ち込むと右腕を振り切る。
ボロボロのジムスナイパーはビルに叩き付けられ、そのまま機能を停止する。
『二回戦、終了いたしました―。二回戦の勝利者はキョウスケさんと謎の食通さんでーす!』
「……なんとか、勝てたか」
プラフスキー粒子が解除されると、損傷を追っていたアルトが元の状態に戻る。
なんともいい経験になった。遠距離特化であそこまで強いファイターと戦うのは初めてかもしれない。後少し、アルトの装甲が柔らかかったら、遠距離から嬲り殺しにされていた可能性もあった……。
「負けちゃったけど、楽しいバトルだったわよ」
「あ、ああ」
外国人のノリという奴なのか、フレンドリーに握手を求めて来るエクセ?に対して、こちらも手を差し出す。何が嬉しいのか、うんうんと頷いた彼女は自分を指さす。
「?」
「私は、エクセレン。メイジン杯に出場するためにアメリカから留学してきた花の16歳よ」
「あ、ああ……キョウスケだ。千葉県から来た、同い年だな」
いきなりの自己紹介に驚くが、なにより名前に驚く。偶然だろうがなんとも変な気分になる。
「うっそ!チバシティ!?私が留学する学校がある場所も其処なのよー」
「そうなのか」
『二回戦が終わったようなので決勝戦を始めまーす。キョウスケさん、謎の食通さん。バトルシステムの方にお願いしまーす』
「……取り敢えず、話は後にしてくれ」
「はーい」
どう反応していいか困っていた所で丁度良くアナウンスが入ってくれた。さりげなくエクセレンをマサキに押し付けながら、決勝が行われるバトルシステムの上に立つ。
……だが謎の食通が上がってこない。
疑問に思い、バトルシステムから降りて下を見ると……。
「監督、あんた何やっているんですか!?大人げないですよぉ!!」
「むッ!?離せカナコ!それに私は監督ではない!!レーツェルッ……レーツェル・ファインシュメッカーだ!!」
「トロンべトロンべ言ってる大人はあんただけしか見た事ないよ!!てかアンタ、謎の食通で出場してただろ?!どんな翻訳機使ったら謎の食通で登録されるんですか!?」
「くっ……」
佐賀県の代表、アスハ・カナコがバトルシステムへ行こうとしている謎の食通を食い止めている。困惑しながらも、彼らの近くに歩み寄ると、俺に気付いたカナコはぎこちない笑みを浮かべ、必死に頭を下げ始めた。
「すいませんすいませんキョウスケさん!この人大人げないので直ぐに連れて行きますね!この人私達の監督なんでやってもらわなくちゃいけない事が沢山あるんですよ!!」
「あ、ああ」
凄まじい勢いで頭を下げながらこの場から離れたカナコと謎の食通。周囲は無言になるがいち早く状況を理解した司会の女性は、やや上擦った声でアナウンスを始める。
『え、えーと。謎の食通さんは出場を辞退?……したようなので大会優勝はキョウスケさんでーす!』
「………納得できん……」
あんまりな優勝に思わずそんな言葉が漏れてしまったが、この場に居る誰もが同じことを思っただろう。マサキもエクセレンも苦笑いしている所を見ると、どうやら同じことを思っていた様だ。
その後、若干肩を落としながら、マサキと共にバトルシステムがある場所から出ていくと、何故かエクセレンがついてきている事に気付く。
「何で来てる?」
「え、だってー」
「いいじゃねーか。俺は大会受けて来るから、エクセレンにはキョウスケの話相手になってくれって頼んだんだよ。お前、一人になると無口になるからな!」
「余計なお世話だ」
『じゃ、受付いってくるぜー』と言い駆けて行ったマサキの背を見てため息を吐きながら、ベンチに座り選んで来た三つのガンプラを確認する。
……確認するのはいいが、興味深そうにこちらを覗き込んでいるエクセレンはどうしたらいいんだ。あまり邪険に扱えないので、尚更どう扱っていいか分からない。
「……見るか?」
「ええ!!」
取り敢えず貰って来たガンプラを見せると、食いつく様な笑顔を見せた。メイジン杯に参加する程のビルダーならガンプラに食いつくと思ったが……どうやら正解だったらしい。
箱を見回し、空け、喜び勇んでいる彼女を横目に見ながら、どうしてこうなったとばかりに小さなため息を零しながら、もう一つのキットに手を伸ばすのだった……。
群馬のGは~グランゾンのG~!(白目)
今回はキョウスケ編をやりました。
このままだと主人公ばっかりのバトルになりそうなので、一息がてら別のバトルをさせてみました。
今回の登場ロボについて。
ゼイドラ(AGE)→紅蓮二式。
コードギアス反逆のルルーシュの機体。
コルレル(X)→アレクサンダ
コードギアス亡国のアキトの機体。
アストレイトr……ミラージュフレーム(SEED)→アウセンザイター
アストレイミラージュフレームと風雲再起を合わせたガンプラ。
構造上変形機構は同じではありません。
もうGバウンサーがR-1にしか見えない私はもう駄目かもしれないです。
次回、本編に戻ります。