『A』 STORY   作:クロカタ

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もう一度BFTの最終話のバトルロワイヤルを見て思った事があります。
これは……下手をすれば大参事スーパーロボット大戦が勃発するのではないかもしれない……と(戦慄)

しかもほとんどが本編の改修型ですから、レイがこれまでバトルしてきた大会出場者のガンプラが、もう一段階強化されることになって―――。



全国編~悪手~

「拳法家同士のバトル、ね」

「合宿でも彼は不思議な拳法を用いていたが、まさか同門のファイターと当たるとは……しかもその相手は様々な武術を会得しているときている……」

 

 三回戦でのガンプラの修理をようやく終えた俺達は、キリハラ姉妹達と共に左ブロックの三回戦のバトルを観戦していた。チーム『トライファイターズ』とチーム『タイタン』のバトル。

 チーム『タイタン』は個人の戦闘を優先させ過ぎたのか、三機の内二機は落とされてしまったが、残りの一機が桁違いの強さでセカイ君のトライバーニングガンダムを圧倒している。

 

「うっわえっぐ、アイムレイト相手に急所攻撃に首絞めとか……」

「卑怯ではないな。アシムレイトは出力を上げるがその分ダメージが操縦者に返って来る……セカイ君はそれを理解しているか上で使用しているんだ。それであのファイターを責めるのはお門違いだろう」

 

 これが生身で行うボクシングだったら非難を浴びせていただろうが、アシムレイトという恩恵に預かっているからにはそのリスクは自己責任だ。

 

『ぐ、ああ……ッ』

 

「でも、アシムレイトの事を理解している上で嬲るような攻撃を食らわしているとしたら……それはファイターとしてあるまじき行為だ」

 

 紫色の粒子の髪?でトライバーニングの首を絞めているガンダムタイプのガンプラを鋭く睨み付ける。

 今回のバトルでセカイ君の認識が少し変わった。彼は強情で無理をしがちな性格のようだ。チームメイトはそれを尊重して彼に一対一のバトルを任せているようだが……。

 

「いや………これは俺が言って良い事じゃないな」

 

 あくまで彼らはエースであるセカイ君を信じているから手を出さないのだ。俺のように安定を目指すような子達じゃない。

 

 悩ましげに唸りながらモニターに視線を戻す。

 そこにはボロボロのトライバーニングが眩い輝きと共に立ち上がっている所が映っている。胸部の粒子を貯蔵する部分に何かが見える。コアに何か細工を施しているのか。

 どちらにしろ見当もつかない技術だ。

 

「……いや、待てよ。俺はアレを知っている」

 

 輝きこそ違うが、その方向性は何時しか見た、というより記憶に深く刻まれている。第7回世界選手権優勝者、イオリ・セイ、レイジ組のガンプラ、スタービルドストライクガンダムのRGシステムの光―――。

 

「なんだろ、アレ念体かな?ミサト、どう見える?」

「プラフスキー粒子がガンプラの形になって攻撃してる。それくらいしか分からない」

 

 5体の分身体で技を繰り出してゆくトライバーニングを見ていると、思わず笑みがこみあげて来る。合宿の時から微かには疑問に思っていたのだ。ガンプラの知識が乏しいセカイ君のビルドバーニングを誰が作ったのか―――あの完成度からして普通のビルダーでない事は分かっていたのだが……。

 

「……イオリ・セイさんのガンプラだったのか……」

 

 彼等の通う学校は聖鳳学園。イオリ・セイさんの母校だ。

 なにかしらの理由で彼のガンプラを使っていても不思議じゃない。

 

 セカイ君が相手のガンプラの腹部に平手を添え、粒子砲を放ちフィールドを震わせる。そこまでは見て立ち上がり、真剣な表情でバトルを見ていたコスモとノリコに声を投げかける。

 

「ノリコ、コスモ。そろそろ行くか」

「え、あ、はい!」

「分かりました」

「三人とも、頑張ってねー」

 

 ミサキとミサトに軽く手を振りながら、一応の戦術を頭の中で反芻させる。恐らく考えた作戦は今日のバトルでは役には立たないだろう。

 ヨーロッパジュニアチャンプ、ルーカス・ネメシス、使用機体クロスボーンガンダムX1フルクロス。

 

 一筋縄じゃいかない相手であることは確かだった。

 

 

 

 

 

 控室に入り、バトルに用いるガンプラの点検を行う。

 コスモは新しく作り直したイデオンガン、ノリコはガンバスター全体を見ており、俺はブースターに装備されている武装を見ていた。

 

 ―――前回のバトルでややブースターの性能に引っ張られがちだったが、今回のバトルではそれが無いように調整を施しておいた。軽量化を図るためにGNバスターソードは細くする形で縮小させ、ブースターの側面にGNダガーを6本取り付けて置いた。GNダガーならビームコンフューズに使えるし、いざという時に投げつける事ができる。

 

「フルクロスにはこれぐらい警戒しておいた方がちょうど良いな」

「凄かったですもんねぇ、あんな粒子ばんばん使って戦えるかって思いましたよ」

「事実、数分ほどで相手チームのガンプラは圧倒されていました」

 

 ―――確かにバトル中のフルクロスの動きは異常だった。あまりにも粒子をふんだんに使いすぎている、あんな調子じゃ5分と持たないうちに貯蔵分の粒子を使い切ってしまうだろう。

 その前に勝負をつけるつもりなのか……。

 

「可能性があるとしたら……」

 

 あの仲間が、補給ユニットとしての役割を担っているか……。

 ミサキとのバトルの時と同じ対応を頭の隅に置いておきながら、取り外したブースターを取り付けジンクスⅣを断たせ、暫し注視する。

 

「………よしっ」

 

 大丈夫、これでいつでもバトルが出来るな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 右ブロックの4回戦が始まる直前に迫った一方で、会場外では一人の男が憑き物が落ちたような顔で帰路を歩いていた。

 その男の名はイノセ・ジュンヤ。

 先程、チーム『トライファイターズ』と戦っていたチーム『タイタン』のメンバーの一人であり、セカイを追い詰めたディナイアルガンダムのファイターである。

 

「……鍛え直しだな……」

 

 力に固執していた己の考えを、セカイが真っ向から否定した。最後に出したあの力がどのような力か理解は及ばないが、セカイは兄弟子である自分を超えて勝利を得たのだ。

 負けた筈なのだが、清々しい気分のまま会場の敷地から出ようとすると、目の前で車に乗った男と、車の横で立って談笑している強面の男の姿が見える。

 

「随分と顔つきが違うじゃないの」

「へっ、お前も負けちまったか」

 

「スガ……それにナガレじゃないか」

 

 二年前の大会で死闘を繰り広げた二人のファイターがジュンヤの前に現れた。というより、スガとナガレが知り合いだったことに素で驚きながらも彼らに近づくと、ナガレは二年前と変わらない凶暴な笑みでジュンヤの背を思い切り叩く。

 

「いってぇ!?何すんだこのバカ力が!」

「お前も随分と丸くなっちまったなぁおい!なあ、お前もそう思うだろスガァ!!」

「カハハ、お前は尖り過ぎるんだよナガレ。カナコちゃんが苦労しているのが目に見えてるよ」

 

 苛々しげにナガレの腕を弾いたジュンヤは、ジト目でナガレを睨む。

 

「何でお前がまだここにいんだよ。テメェは三回戦で敗退していただろうが」

「監督が太っ腹でよ、決勝まで滞在してもオッケーだとよ。んでもって、今からレイのバトルを見に行こうとホテルから出たら、久しぶりにスガにあったっつー話だよ」

 

 車のハンドルに手をかけているスガに指を向けたナガレは、会場を楽しそうに見ながらジュンヤにそう言った。レイ、アンドウ・レイか、ジュンヤにとって凶暴な獣という印象があるこの男を下したチームに少なからず興味はあったが、今の気持ちを考えると見る気は起きない。

 

「俺はお前と違って暇じゃないんでね、帰るとするわ」

「おう、帰れ帰れ、そして次会った時バトルしろ」

「はぁ?何でお前とバトルしなくちゃいけねぇんだよ」

「バトルするのに理由なんていらねぇだろ。好きな時にガンプラバトルして楽しむのがソレだろうが」

 

 実はジュンヤ自身ナガレとのバトルは願ったり叶ったりだったりする。暴力で相手を粉砕するナガレであるが、意外と技巧派なのでジュンヤでも手を焼く動きをする。

 

「はっ、上等じゃねぇか。次会った時、受けてやるよそのバトル」

「はーい、なら俺ともバトルしようぜっ」

 

 ここぞとばかりにスガが手を挙げる。

 

「……お前は前、俺とは二度とご免だって……」

「あの時のお前とはご免だって意味だよ。今のお前となら……楽しいバトルができそうじゃん」

 

 ニカッと人の良い笑顔を浮かべるスガに、一瞬呆けた表情を浮かべるジュンヤだが直ぐに笑みを浮かべ、何かを噛み締める様にしながらポケットに両手を入れる。

 

「そろそろ始まっちまうから俺は行くぜ。じゃあな」

「ああ……」

「カナコちゃんをあまり困らせるなよー」

 

 時間を見て会場の方へ走っていくナガレを見送ったジュンヤは、会場ホール全体を見据える。もう一度、ここへ来てみるのも悪くないかもしれない、そんな事を思いながら感傷に浸っていると……。

 

「あ、ジュンヤ、車乗ってけよ」

「はぁ……」

 

 相変わらずこいつは陽気な奴だ……二年前から変わらないこの男に嘆息しながらジュンヤは車へと近き、そのドアに手を掛けるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これより、暮機坂高校チーム『イデガンジン』とグラナダ学園チーム『フォンブラウン』の4回戦を始めたいと思います』

 

 バトルシステムの作動と共にBASEとガンプラを置き、生成された球体に手を置く。相手はヨーロッパジュニアチャンプ、個の力はこの大会最強クラス。

 

「チーム『イデガンジン』!行くぞ!」

「「はい!!」」

 

 だとしても、負けるわけにはいかない。操縦桿を押し込みジンクスⅣを発進させ、フィールドへ飛び込ませると同時に停滞させ、周囲を覗う。

 

「………コロニーの内部?」

 

 出てきたのは、上が傘のように覆う装甲のようなもので守られた空間。下には西方風の街並みが広がっている。ここがコロニーだと仮定すると、外は宇宙空間になっていると考えるのが自然だ。

 俺達が戦いやすい場所を選ぶなら、今すぐにここを抜け出すことが先決か。

 

「ここじゃ迂闊にイデオンガンは使えませんよ」

「分かってる」

 

 俺の姿を見つけて近づいて来たコスモのイデオンとノリコのガンバスターをの方に機体を向け、ステージに合わせた戦術を言い渡―――っ。

 

「単騎で来たか……」

 

 コロニーの物資搬入口から凄まじい加速でこちらに近づいてくる大柄な機体。髑髏を背負うガンダム、クロスボーンガンダムX1フルクロス。それがこちらに、ビーム砲を連ねた大砲『ビーコックスマッシャー』を向ける。

 

「コスモ、イデオンガンの準備を。発射準備完了次第撃て。ただし出力はあまり上げるな。すぐに動けるように抑えてな」

「了解」

 

 イデオンがその手に持つ大砲『イデオンガン』を胸部のコネクタに接続し、粒子を圧縮しているのを横目で見ながら、クリアランスと縮小されたGNバスターソードを両手に持ち、ノリコのガンバスターと共に前方へ飛び出した。

 

『向かってくるね……っ!』

「ノリコ、俺の後ろにつけ!」

 

 ガンバスターが後ろへ並んだ瞬間に、ブースターのシールドジェネレーターを作動させGNフィールドを展開する。ビーコック・スマッシャーが同時に放たれ、指向性を持ったビームの嵐がジンクスのシールドへと殺到する。

 

 衝撃で機体がぐらつくが構わず、GNフィールドの解除と同時にクリアランスを振るって煙を吹き飛ばし、クリアランスからのビームを放つ。

 

「ノリコ!」

「はぁぁぁぁぁい!」

 

 I・フィールドでビームを防いでいるフルクロスに、背後から飛び出したガンバスターが四肢の側面からビームを放射させながら、フルクロス目掛け拳を繰り出す。

 

『くっ……流石の迫力ッ』

 

 ビームを受け止める姿勢から、一気に上昇し射線から逃れたフルクロスはムラマサ・ブラスターでガンバスターの拳を受け止め反動で吹き飛ぶと同時に、脚の裏に展開させたダガーをガンバスターの肩に突き刺す。

 防御と同時に攻撃を行ったか、流石はヨーロッパジュニアチャンプ……伊達じゃない。

 

 ムラマサブラスターから全てのビーム刃を発動させ、怯んだガンバスターに振り下ろそうとしている所に、加速と共に接近しクリアランスで突きを繰り出す。

 個の力でやるのは勝手だろうが……これはチーム戦だぞ。ルーカス・ネメシス!

 

「それ以上はやらせないぞ……!」

『そう簡単にはいかないか……』

 

 繰り出したクリアランスと振り返りざまに薙ぐように振られたムラマサ・ブラスターが激突し大きな火花を散らす。―――やはり、こいつは飛ばし過ぎている。

 こんなオーバーペースで粒子を放出しつづけてどうなるか、分からない相手ではない筈。

 

 押し込まれるムラマサ・ブラスターに舌打ちしつつ、腰のショットランサーを二発発射しムラサメ・ブラスターを斜めに逸らす。

 

「はああああああああ!!」

『!……回復が早い!?』

 

 肩にダガーを叩きこまれたガンバスターが俺へ向けてきたビーコックスマッシャーを蹴りで破壊した。

 

『準備完了しました』

 

 通信から聞こえたその声を聴くと同時に、ガンバスターの腕を掴みその場から急いで飛び去る。フルクロスは追撃しようとこちらへ接近を試みようとするが―――

 

「撃て!コスモ!!」

『分かりました!イデオンガンッ発射ぁ!!』

 

『……こんな狭い場所で―――!』

 

 遠方に見えるイデオンガンから、小規模の竜巻が放たれ、建物を蹂躙しながらとぐろを巻くようにフルクロス目掛けて放たれる。出力を絞っているとはいえ、イデオンガンの威力は底が知れないものがある。コロニーの内面を剥がし、形あるものを瓦礫に変えて突き進む―――。

 

「ノリコ、ここから出るぞ!!コスモも射撃後はコロニーから脱出!」

 

 ガンバスターの手を引いたまま俺はコロニーの外壁目掛けクリアランスから光弾を放ち、コロニーの壁面に穴を空けそこに飛び込み、イデオンガンによって破壊されつくされるであろうコロニーから脱出する。

 

 直撃したかはどうかは分からないが……。相手チームの一人くらい脱落させれば御の字か。

 ……一応、保険は掛けておくか。

 

「コスモ……は、粒子の問題があるか、ならノリコ―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんてことしやがるんだアイツら!!MAP兵器じゃねぇんだぞ!!」

「やはり凄まじいですね……チーム『イデガンジン』」

 

 イデオンガンから放たれた砲撃をギリギリ回避する事に成功したフルクロスは、コロニーの搬入口の入り口付近に隠れていた、アイバとトミタの乗る青と赤のギラドーガと共に宇宙空間へと逃れていた。

 

「もうちょっと待っててくれ……でもこんな早く使い切っちまうもんなのか?」

「それほど全力で臨まないとマズい程の相手ということです。あの黒いザクの迫力は凄まじく、赤いジムの放つ砲撃は恐ろしく、ジンクスⅣのファイターの判断能力は侮れない……」

 

 アイバの乗る青いギラドーガの肩のタンクから延びたコードがフルクロスの背に接続され、粒子エネルギーが補充されていく。

 束の間の休息の中で、ルーカスは自分の手が震えていることに気付く。恐怖でもなく武者震いでもなく―――歓喜からくる震え。短い戦闘の中でも戦慄の連続だった。

 

「ふ……」

「おいおい、どうしたんだよ。まさか諦めたんじゃねーよな」

「まさか、ただ―――」

 

 茶化すように話しかけてきたトミタの言葉に苦笑しながら、チーム『イデガンジン』が居るであろう宙域に視線を向け、再び笑う。

 

「―――本気になって戦えると思うと楽しい気持ちになっちゃって」

「………ははは、頼もしいなぁおい」

「―――しっ!満タン!思う存分戦ってこい、俺達のエース様!!」

「ありがとうアイバ君!君達はこの後、それぞれの補給ポイントで待っていてくれ。まだ彼等にはばれていないだろうけど、細心の注意を払う様に!」

「ああ!」

「分かってるって!」

 

 二機のギラドーガがコロニーの残骸に隠れて飛んで行くのを見送ったルーカスは、フルクロスの状態を一通り見まわし、深呼吸をし―――

 

「行きますか……」

 

 その目を鋭いものへと変え飛び出した。

 粒子を出し惜しみせず常に最高の状態のポテンシャルで活動できるフルクロスは、あっと言う間にその視界にチーム『イデガンジン』の敵機を捉える。

 

 ジンクスⅣと赤いジム―――しかし一機足りない。

 

『来たか……』

「―――黒いザクがいない……?」

 

 どういうことだ、思考しようとしたその時、ジンクスⅣがその手のクリアランスを腰に戻し、ブースターから切り離された二つのGNガンランスを掴み取り、フルクロスに迫る。

 

『考えている場合じゃないか……I・フィールド!!』

 

 肩からパージされたスカルヘッドを両腕に装備させると同時にジェネレーターを起動、拳にI・フィールドを纏わせ、ジンクスⅣが突き出した二つのランスと激突させる。

 

『―――この出力……ッ』

「はああああああああああ!!」

 

 雄叫びと共に、機体を下がらせビームマシンガンを放つレイのジンクスⅣに追撃すべく、アンカーに接続したムラマサ・ブラスターを投擲する。

 

「その距離は僕の―――』

『やらせない!イデオンソード!』

 

 瞬間、ジンクスの後方から伸びた白い光の剣がムラサメ・ブラスターを弾き飛ばし、遙か遠方まで伸びたサーベルは、フルクロスを切り裂かんばかりにそのまま振り下ろされた。I・フィールドで防ごうとするも、あまりの長大且つ巨大な刃の為か、ふんぎりがつかずIフィールドバリアごと叩き斬られそうになる。

 

「防げない……?!クッ……」

 

 I・フィールドが突破される前になんとか回避し、刃の奔流にフルクロスの外装甲が焼け焦がされるような感覚を感じながら、すぐさま両腕のブラインドマーカーのビームダガーを展開させ、追撃を仕掛けてきたジンクスⅣと殴り合いに似た応酬を交わす。

 

『強い……なによりチームワークが厄介だ……』

「こっちも受け流さなきゃこっちの腕が破壊されそうだ!―――でも、そのカラクリは分かっている!!」

『ッ!』

 

 カラクリ―――まさかこんな早く気付かれたのか?いや、三回戦で補給する場面はみせてはいない筈だ。

 ハッタリ?……それもあり得るだろうが、と困惑しつつも突き出されたGNガンランスをビームダガーを合わせ弾き飛ばす。

 粒子量の差でパワーで圧倒されつつも衝撃を受け流したジンクスⅣに乗るレイは、先程のルーカスの反応を見て確信に至ったのか―――

 

「補給ユニットの方に向かえ!!恐らくフルクロスが出てきた方向―――コロニーの残骸付近に居る筈だ!!」

 

 ―――とだけ、言い放った。

 瞬間、ルーカスの頭の中は真っ白になった。どうやって勘付かれた。いや、それより……目の前の彼は誰にその命令を下した?目の前のイデオンは動いてはいない。

 

『―――ルーカス!こっちに黒いザクが来たぞ!!』

「……っ!アイバ君……そこから離れるんだ!!」

 

 通信から焦燥の籠ったトミタの声が聞こえる。

 

『さあ、ここからだ』

「は、ははは」

 

 乾いた笑いを浮かべ、ジンクスとイデオンを見たルーカスは背に冷たいものが走ると共に、ヨーロッパ大会で何度か体験した、ビリビリとした焦燥感を抱くのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルーカス・ネメシスは確かにヨーロッパジュニアチャンプとしての強さは持っている。だが―――」

「補給ユニットによる粒子の補給という戦術はアンドウ・レイにとっては悪手だった……ってことかしら」

 

 これでバトルの様相は五分に変わった。

 粒子の消費が激しいが、イデオンとジンクスを圧倒していたルーカス。

 苦戦しながらもフルクロスの攻撃を捌ききったレイと、彼が撃墜されかけた場合にサポートに徹するコスモ。

 メイジンは、懐から取り出した一つのバトルを記録したデータディスクを見てニヤリと笑みを浮かべる。

 

「キリハラ・ミサキとミサトと言ったか、このバトルを見ていなかったならば驚愕していた所だ」

 

 先日、メイジンとレディはユウマが不良たちに襲われた後に、遭遇したレイ達の中に居た少女、キリハラ姉妹の事が頭から離れず、彼女の事について簡単にだが調べ、そしてバトルの映像と音声を記録したデータを入手することに成功した。

 

「―――クリア・ファンネルにタイムストップ作戦……見るのも懐かしい名前が出ていたが―――」

「サイサリスを補給ユニットにし、予備のファンネルを持ち歩く……そしてルーカス・ネメシスの粒子供給の補給ユニット。フフフ、すごい偶然ね……」

「人は似たような事態には機敏だ……衰えを見せない粒子量、姿を見せない仲間……レイ君にとってそれだけで確信に値する要素に成りえるだろう。だが……逆を言うならば本当の戦いはここからともいえる」

 

 粒子の回復が無くなったともいえるこの状況はまさに五分と言っても良い。補給ユニット二機に襲い掛かるガンバスターとフルクロスに相対するジンクスとイデオン。

 

「私の目には……フルクロスの姿が、魔王を前にした勇者に見えるわ」

「意外にメルヘンだな、君も」

 

 確かにルーカスの作戦を看破したジンクスの後ろに控えるイデオンの姿を目の前にすれば、そう思うのも無理はないだろうが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――見つけた!』

 

 コロニーの残骸の影で待機していたアイバは、近くまで迫っていたガンバスターに恐怖していた。この青いギラドーガは戦闘する為のガンプラではなく、あくまで補給用のガンプラであり、装備もビームライフルとサーベルくらいしかない。

 

「くっ……なんて奴等だ……く、うおおおおおおおおおおおお!!」

 

 威圧感を放ち襲ってくるガンバスターにビームライフルを連射するも、動揺と焦燥が相まってかガンバスターには当たらず、その背後へビームが素通りしていく。

 

 駄目だ、相対できる気がしない。すぐさま反転し身を隠すべく逃走という手段を選ぶ。

 しかし―――

 

『悪いけど見逃せない……ッホォォミングッッレェェェザァァァァ!!』

 

 圧倒的数の追尾式のビームがガンバスターから放たれ、アイバのギラドーガへと殺到する。慌てて近くのコロニーの残骸を盾にするも、数発のレーザーを右半身に食らってしまい、ライフルを持つ右腕が根元から消え失せる。

 

「……畜生……こんな簡単に終われるか……」

『大丈夫かアイバ!!』

 

 近くで待機しているトミタが先程のホーミングレーザーの光と破壊音に気付き通信を送って来る。……トミタはまだ補給用の粒子を使っていない―――この場で最も重要なのはアイバ自身の生存ではなく、一人で戦ってくれているルーカスへの助けになれるトミタを無傷で送ってやること……。

 

『待ってろ!今援護に―――』

「来るんじゃねぇ!!俺のことは良いからルーカスの所に行け!!」

『はぁ!?お前何言ってんだよ!!』

「カッコつけさせろよ……つーか、分かるだろ。相手はあのガンバスターだぜ?宇宙怪獣相手にたった一機で戦った最強のロボットの一角、そんな相手に今から一泡吹かせようと思ってんだから……行けよ」

『……分かった』

 

 通信が切れると同時に残り粒子量と補給用タンクに貯蔵された分を見て、決心し立ち上がる。

 

「一泡吹かすって大きな事言っちまった手前だけど……やるしかねぇ……ッ」

 

 決心が鈍らない内に残骸から飛び出し、警戒しながら近づいていたガンバスター目掛けて突進を仕掛ける。ライフルも何も残っていない状態で何かできる訳でもない。案の定、ガンバスターが放ったビームで半壊状態にまで追い込まれてしまうが、それでもアイバは加速をやめない。これ以上の負荷はガンプラが駄目になってしまう。

 

 ファイターとして、ビルダーとしてそれは辛いが、だが同時に―――これはガンプラバトルだ。命のかからない勝負―――――それならば!

 

「捨て身の攻撃ができるってことよォ!!」

『突貫!?いや、まさか―――』

 

 貯蔵、残量粒子をオーバーロードさせて青い機体を赤く発光させたギラドーガは、そのままガンバスターへ体当たりを仕掛けた。同時にガンバスターの拳がギラドーガの胸部を貫く。が、ギラドーガは自身の胸部を貫くガンバスターの腕を無事な方の左腕で抑え込み、容易に抜けないように固定してしまった。

 

「へっ、俺の悪あがきは普通じゃねぇぞ!!ガンバスター!!」

『この距離は……しょうがない!右腕をパージ!!』

 

 バキンと右腕と胴体が切り離された瞬間、アイバのギラドーガは近くに居たガンバスターを巻き込み爆発した。ギリギリパージが間に合ったガンバスターだが、近くで爆発を喰らったためか凄まじい衝撃にさらされ、センサーに誤作動が生じ一時モニターが真っ暗になる。

 

 しばらくすると、爆発の余波も収まりセンサーも元に戻る。

 ガンバスターの外見は煤焦げた様に汚れ、所々の装甲が剥がれていた。あれほどの爆発でこれほどの損傷で済んだのはノリコのビルダーとしての腕と、右椀部をパージするという判断のおかげなのだが……。彼女はしばらくギラドーガが自爆した宙域を見てふと言葉を漏らした。

 

『……執念、ってやつね……でも』

 

 ―――私達も負けられない―――

 そう小さく呟き、彼女は後一体居るであろう補給ユニットを探すべく、隻腕のままコロニーの残骸へと進むのだった。




フルクロス(勇者)VSジンクス(魔王)+ジム(神)+ザク(神)

文字にすると………えぇ……。


今回は、セカイとジュンヤのバトル、ジュンヤとスガ、ナガレのバトル後のやり取り、そしてルーカス・ネメシス編でした。
チームワークを重視して書いてみたのは良いですが、同じ毛色の戦闘にならないようにするのがとても骨が折れました……。




余談ですが、主人公であるレイのBGMとはなんだろうと、思うこの頃。
後輩達とか他スパロボファイターは元ネタがあるのでイメージBGMとか分かりやすいのですが……。

ガンプラバトルverBGMだと、00の挿入歌。
スパロボバトルverBGM…………VIOLENT BATTLE……?


次回で四回戦は決着です。





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