『A』 STORY   作:クロカタ

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エピローグですが……一万字じゃ足りなかったのは予想外でした。
よって上下構成になったので、とりあえず上だけ完成したので更新します。



エピローグ上

 俺達、チーム『イデガンジン』の全国ガンプラバトル選手権は終わりを迎えた。だが大会は続き、ガンプラ学園とのバトルの二日後に決勝が行われた。

 

 決勝に上がったのは俺達に勝利したガンプラ学園と、天大寺学園に勝利した聖鳳学園チーム『トライファイターズ』。中高生全国一を決める最後のバトル。

 勿論、俺達も観戦した……まず見て驚いたのは、アドウのガンプラが様変わりしていた事だった。

 

 巨大なクローはさらに鋭利なものへと変わり、指の先に空いていたファングの射出機構が完全にオミットされている。貫通力と破壊力を極限にまで高めたもの―――恐らく、あの右手の怪我に負担を掛けないように、尚且つそれが重荷にならないような改修といった所だが……。

 あのクローの厄介さを身を以て味わった俺としては、厄介極まりない武装に変貌したとしか思えない。

 

 デスサイズのように鋭利な造形、明らかに近接戦を想定したビームサイズ、ジエンドよりも禍々しい姿へと進化したそのガンプラは見る者全てを畏怖させる素晴らしい出来だった。

 

 彼は『ガンダムジエンド・ビギニング』と呼んでいた。

 終わりを意味するガンダムから、終わりと始まりを意味するガンダムの名を冠した機体へと変わった彼のガンプラのバトルは、ガンダムデスサイズヘルをモチーフにした造形とは裏腹に、クローとビームサイズを主軸にした真正面からの超攻撃的な戦法だった。

 

 勿論、シアも後方で援護していたが、試合終盤になってから流石のアドウも右手を負傷していたからか動きが鈍り、その隙に活路を見出したユウマ君とフミナちゃんが意地を見せ、なんとか相討ちにまで持ち込んだ。

 

 そこから先は異例の異例。

 両チームから残った一機だけでの延長戦。

 

 トランジェントガンダムとトライバーニングのバトルだ。

 

 どちらも筆舌しがたいバトルを見せてくれた。

 チーム全員のパーツを用いての……チームの全てがつぎ込まれたガンプラ。形は歪なれど、俺はそのガンプラはどんな精巧に作られたガンプラよりも綺麗で、強いものだと分かった。

 

 結果、優勝はチーム『トライファイターズ』。

 何も言う事は無い、俺はただ彼らに惜しみない拍手を送った。

 彼らは本当に強かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おー、レイ君、これは凄いね」

「流石メイジン杯、色々な作品があるな……」

 

 

 選手権が終わりその二週間後、俺達はビルダーの夢の舞台、メイジン杯の展覧会へと赴いていた。周りには大会で見知った連中がちらほらと見られ、その中にはキョウスケとマサキ、そして見覚えの無い金髪の少女の姿が見られた。

 かくいう俺も、後輩達とキリハラ姉妹と共に来ているのだが、ここは本当に最高峰のガンプラが集まっている所だということを再認識させられる。後輩達とキリハラ妹が先に会場へ行っているので、今はミサキと共にぶらぶらと出品物を眺めている所なのだが……。

 

「むむ、このラフレシア……メイジン杯の規定サイズからオーバーしてるね……」

「凄いのは凄いんだけどなぁ……なんというか残念だな」

 

 中には腰ほどにまでもあるガンプラもある。

 一体、誰が作ったのだろうか、ラフレシアなんて超大型MA。

 

「大会が終わってどう?何か変わった?」

 

 不意にミサキがそんなことを訊いてくる。

 変わったか、日常的な意味では全く変わってないな。心情的には少し別だが。

 

「強いて言うならば、もっとガンプラバトルがしたくなった、だな」

「君らしいね。やっぱり」

 

 ガンプラ学園とのバトルは本当に充実したものだった。苛烈だけど、それ以上に楽しくバトルできたあの興奮は、何度味わってもいいものとさえ思える。

 俺は一生ガンプラと付き合っていくんだなぁとさえ思えてくるほどに。

 

「そろそろ行くか、最優秀賞の結果発表は見逃せないからな」

「そうだね、じゃ、行こっか」

 

 携帯の時計を見てから会場の方へ足を進める。

 メイジン杯、最優秀作品は誰になるのだろうか。ユウマ君かサカイ君か、はたまた別の人か。気になる所だ。

 

「ちょっと待ってレイ君」

 

 ピタッと突然近くのケースを見て立ち止まった彼女は表情を硬直させて、近くにあった二つのケースに視線を釘付けにさせる。

 一体、どうしたというのだ。

 ミサキが硬直するほどの出来のガンプラがあるのか?

 

「どうした?……ん?」

 

『デンドロ・シュバリアー』

『ブラスタM』

『ラゼンガン』

 

 スゴイな……デンドロビウムをここまで改修させて尚且つ、このクオリティ。刺々しい外観も相まって、中心に乗り込んでいるガンダムが騎馬のように見える。しかも大きさも大会規定ギリギリではあるもののクリアしている。

 

 ブラスタMというガンプラも……Mは、改修元のモンテーロのMだろうか。横に大きく広がれた黒色の翼が似通っているのであながち間違いではなさそうだ。

 

 ラゼンガン……顔が二つある事から、恐らく全体的に丸みを帯びさせたセラフィムに黒色の塗装を上塗りして艶を入れて生き物然とした質感を施したのか、可動域が尋常じゃない程に広い事に加え出来がとてつもなく良い。

 

「流石メイジン杯に出展するガンプラだ……なっミサキ。他にも……バンシィ・アッシュ、ラピズリーモック……まだまだ沢山あるな……」

「大会の影響かなぁ……こういうガンプラが増えてるの……」

 

 何を黄昏ているんだ。

 その二機の隣にも、マントを纏い大剣を携えたバンシィや緑色のハイモックを陸戦仕様に改修したようなもの、様々な創意工夫を凝らされた作品が多く並んでいる。……もう少し見てみたい気持ちに駆られるも、もう受賞作品の発表は始まっている筈なので、ミサキを急かし会場へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レイとミサキが来る数分前―――。

 ノリコは沢山の人が集まっている会場の中で、メイジン・カワグチがメイジン杯最優秀賞作品を読み上げるのを今か今かと待ち続けていた。

 

「先輩、遅いなぁ……」

「姉さんが迷惑を掛けてなければいいのだけど……」

「先輩とミサキさんなら大丈夫だと思うぞ?」

 

 この場に居ないレイとミサキの姿を探すも見つからない。

 そうこうしている内に壇上にいる女性が、小学生の部の賞の発表を終えてしまう。

 

『続きまして、オープンコースの発表です!プレゼンターのメイジン・カワグチさんお願いします!』

『うむ』

 

「あ、始まっちゃう」

 

 選手権でもレポーターを務めた女性、カミキ・ミライがメイジンに最優秀作品の発表を促す。メイジン・カワグチは一歩前に踏み出し、懐から用紙を取り出し会場に居る人々へと目を向ける。

 

『メイジン杯ッオープンコースのチャンピオンは……』

 

 メイジンの声にざわついていた会場が静寂に包まれる。

 誰がチャンピオンになるのか、待ち焦がれる様にメイジンに視線が集まる。

 

『―――エントリーナンバー……9』

 

『よっしゃ―――!!9やぁ―――!!ワイの勝ちy――――』

 

『むッ、失礼、逆だった……本当はエントリーナンバー6番!コウサカ・ユウマ!ライトニングゼータガンダム!!』

 

 モニターにコウサカ・ユウマくんの名前と彼のガンプラが映される。今年の優勝はコウサカ君のガンプラだったかぁ、ま、サカイ君のあのガンプラじゃ、評価はされても賞は貰えないよね。

 

「済まない、遅くなった」

「あー、もう発表しちゃったみたいだね……へぇ、コウサカ・ユウマ君のガンプラがそうなのかぁ」

 

 背後からの声、振り向くと先輩とミサキさんが感心したように壇上に上がるコウサカ君を見ていた。

 

「もう遅いですよ、先輩」

「む、悪い。ちょっと寄り道しててな。……サカイ・ミナト君がメイジン・カワグチに食って掛かっているな……」

「悔しいだろうね。まあ、彼ほどのビルダーなら結構良い所まで行っているんじゃないかな?」

「へ、先輩知らないんですか?」

「何が?」

 

 と、そこでノリコは躊躇する。感受性の強いレイにこの事実を伝えて良いのか、と。サカイ・ミサトの作ったガンプラの特色に関心し、彼もあのようなガンプラを作ってしまうのではないだろうか。

 

『なら見せたるわ!!ワイの心に従がった―――最高傑作をォ――――!!』

 

 そんなノリコの葛藤をあざ笑うかのように壇上で喚いていたミサトが己のガンプラの姿を晒す。同様に悩んでいたコスモとミサトもバッと壇上に視線を向ける。会場全体が輝かせながら、その全容が露わになったガンプラ。それはレイの予想を大きく上回るガンプラだった―――。

 

 

 

 

 

 

 スーパーふみな。

 ガンプラと定義していいか分からないガンプラ。サカイ・ミナトの持つ技術、ガンプラ心形流の全てを注ぎ込み完成させた異端の中の異端と言っても差し支えのないガンプラ。

 その様相を一言で表すならば『フィギュア』。

 チーム『トライファイターズ』ホシノ・フミナの姿を完全に再現し、尚且つガンプラバトルとしての性能を高めたもの。無駄に凄い技術、無駄に凄い造形、無駄に可愛いの三拍子が揃っているというのが特徴である。

 

 

 

 レイは衝撃を受けていた。

 ガンプラ心形流の、サカイ・ミサトのガンプラに対する自由な発想に。

 

 色々な方面で疎い彼でもフィギュアくらいは知っている。だからこそ、それをガンプラで再現しようなどと思う行為に衝撃を受けていた。まさにガンプラ心形流の名に恥じないガンプラ。ビルダー最高峰の流派。

 

「それを抜きにしても、あれはないな」

 

 流石にこれはない。

 結構寛容な彼でさえそう断言した。その言葉に安堵の息を吐いた後輩二人。そんな二人の隣でミサトはスーパーふみなを見て大爆笑しているミサキを諌めている。

 

『サカイ君。ガンプラは自由だ……無限の可能性がある。……確かに君のガンプラは素晴らしい……だが、君は大きな間違いを犯している!!』

 

『な、なんやてっ。わ、ワイがどんな間違いを犯したっちゅーんや!!』

 

 スーパーふみなの登場でざわめく会場。その中で静かに口を開いたメイジンの言葉に、サカイは動揺するように詰め寄った。

 

『君の間違いそれは…………本人の許可を取っていない事!!そしてッ、君のガンプラは別部門だ!!』

『な、なんやてぇ―――!?オープンコンテストなら何でもええんちゃいますの?!』

『それは去年までだ!!今年から特別部門、ガンダムッ娘コンテストが開催されているのだ!!』

『う、嘘やろ!?が、ガンダムッ娘ォォォォォォ!?』

 

 サカイは怒髪天を突きながら背後から迫っているフミナの姿に気付かず、慄き膝をつく。

 昨今のビルダーはガンダムッ娘という新しいジャンルを開拓したせいか、昨年の大会でフィギュア然としたガンプラ作品が急増し、これを問題視した運営はこれを別部門としてのコンテストとして開催することで、オープンコンテストとの差別化を図った。

 

「ミサキ……ガンダムッ娘って……」

「確か……今年の優勝はヴィクトリーンガンダムって奴だよね。リーンホースjrとVガンダムのガンダムッ娘で評価されてた。いやぁ、ああいうのがアレ?艦娘っていうの?」

「いや、俺に言われても分からないんだけど」

 

 カラカラと笑いながらそう補足するミサキに困惑しながらも、再度ため息を吐くと『しかしッ結果が気に入らないのならばッバトルで己の意地を通すが良い!!』と叫んだメイジン・カワグチとレディ・カワグチさんがバトルシステムを発動させ、事態はサカイとユウマのバトルへと発展。

 

 メイジン杯のガンプラの戦う姿を一目見ようとレイが前へ進もうとすると、背後から誰かに肩を掴まれる。振り向くと、見知った顔。

 

「選手権以来だな」

「キョウスケか、それに……」

「はぁい!キョウスケのお友達かしらん。私、エクセレン!」

 

 やけにテンションの高い少女だ、と若干たじろぎながらも自己紹介をし、キョウスケの方を向く。レイの前に居たミサキもキョウスケとエクセレンに気付いたのか、後ろを振り返り軽く手を振る。

 

 社交性が高い少女なのか、エクセレンという少女は物怖じせずにミサキと後輩達の方に走り寄りフランクに挨拶をし始めた。

 

「はぁ、遠慮というものを知らないのか……アイツは……」

「マサキは一緒じゃないのか?」

「……大方迷子になっているんだろう。少しすればひょっこり出て来るさ。……それより選手権、良いバトルを見せて貰った」

「これ以上ない程に楽しいバトルだったよ」

「だろうな」

 

 腕を組み、僅かに微笑を漏らすキョウスケ。

 選手権という舞台で戦うレイの姿はガンプラバトルを心の限り楽しんでいた。来年こそは、次こそはとその思いを燃やし、決意を固めた彼は隣のレイの目を真っ直ぐ見て、宣戦布告するように言い放つ。

 

「来年は俺も出場する。勿論優勝を目指してだ」

「そうか……でも俺達は……まずは県代表になることが目標だな。うちはそう簡単に勝たせてくれない奴がいるからな」

 

 キョウスケの言葉を受けたレイの視線は彼から、前方に居るミサキへと向けられる。本来は彼女が県代表になってもおかしくは無かった。あの冥・Oはそれほどの出来と性能を持ったガンプラだったし、キリハラ姉妹の二人での操縦技量は他を圧倒するレベルだった。

 キョウスケもミサキとレイのバトルを見た。だが、それでも彼にここまで言わせるほど危険な相手なのか。

 

「それほどなのか……?」

「少なくとも……俺一人では勝てないな」

「一人では……か」

 

 そう、一人では勝てないからこそのチーム戦。

 どんな強いガンプラでも、協力して戦えば勝てる。

 それをこの選手権で……ノリコとコスモと一緒に戦ってきて理解したことだった。

 

「会場の面々がバトルシステムに集まってきているな」

「……これは……」

 

 キョウスケとの話に没頭している間に、バトルシステム内はかなり混沌した状況になっていた。スーパーふみなとウィ二ングガンダム、ライトニングZガンダム……それに、トライバーニングに似た刀を持ったガンプラを中心に、会場に集まったファイターが続々とバトルシステムに己のガンプラを乗せている。

 

 その中には白銀のガンプラ、サイバスターの姿もある。キョウスケは露骨に額を抑えると、腰のホルダーからアルトアイゼンKを取り出しバトルシステムの方へ進む。

 

『オラオラぁ!!俺のサイバスターに挑む奴はいねぇかぁ!!』

 

「あのお調子者………しょうがない、俺も参加してくるか」

「苦労しているな」

「全くだ」

「あ!キョウスケも参加する!?メイジン杯特別賞のヴァイスちゃんの力を見せてあげるわよぉー!」

「少しは静かにしてくれ……頭が痛くなる」

 

 キョウスケとそれに着いて行くエクセレンの背中を苦笑いを浮かべながら見送った後に、バトルシステムの方に目を向ける。

 あれだけ大規模なバトルシステムなら百人くらい参加しても全然大丈夫そうだな。頃合いを見て参加しようか。

 

「俺とノリコは行こうと思うんですけど先輩も行きますか!」

「……いや、俺はもう少ししたら参加するよ。俺に構わず楽しんでこい」

「はい!」

 

 新たに改修したガンプラを携え、ノリコとコスモもバトルシステムの一角へ行く。もっと近くで見ようか、そう思い人ごみをかき分け前の方へ歩いていくと、見知った少女の前に出てきた。

 彼女は一瞬、レイを驚いたように見ていたが、すぐに笑みを浮かべて声を掛ける。

 

「レイ」

「……シアじゃないか」

 

 ガンプラ学園の生徒であり、キジマ・ウィルフリッドの妹。

 彼女もバトルに参加しようとしていた所なのか、その手にGポータントを持っていた。

 

「久しぶりだな、アドウは元気にしてるか?」

「早くレイとバトルしたいから手首の治療に専念してるわ……あんなに大人しいアドウさんを見るのは初めてよ」

「そ、それは楽しみだな……」

 

 何時かミサキとの再戦を誓った時のような悪寒を感じた。バトルするのは構わないが、毎回あんな全力を尽くしたバトルでは身がもたない。程々にしてほしいと思いつつ目前に迫ったフィールド内を見る。

 

「綺麗でしょ、セカイのガンプラ」

「あれはやっぱりセカイ君のガンプラか……君が教えたのか?」

「ええ、選手権が終わってからずっと教えていたの。彼凄く物覚えがいいから私も楽しくなっちゃって」

 

 トライバーニングを彷彿とさせるデザインと格闘を用いるという点から彼のガンプラだと予想していたが―――シアがガンプラ作りを教えたのならば、あの出来は納得だ。彼女はレイよりもずっと教え方が巧い事に加え、セカイ自身も非常に飲み込みが良い。

 

「ガンプラは良いな……やっぱり、こんなにも人を楽しくさせる」

「そうね、私もノリコさんとのガンプラバトルで綺麗にして……優しくすることだけがガンプラじゃない事をようやく知る事が出来た。今なら私も心の底から楽しんでガンプラバトルができる」

「それは重畳だけど……ノリコさん?……俺にさん付けはしないのか?」

「レイはレイよ。それ以上でもそれ以下でもないわ」

「なんだそれ……」

 

 項垂れるレイをクスクスと笑ったシアは「じゃあ、私も行くわ」とだけ言って、バトルシステムにGポータントを乗せる。フィールドに新たなガンプラがまた一つ、また一つ増える。それらはまるで星の様に瞬き、光と共に消える。

 

―――そろそろ参加させて貰うか。

 

 ホルダーから”新しい”ジンクスを取り出し、空いているバトルシステムの前に移動―――しようとするも、背後から追って来たミサキによりその挙動は中止される。

 

「もう!先に行くなんて酷くない!?」

「姉さんがバトルに熱中しているのがいけないんじゃ……」

「そうだ、ミサトの言うとおりだぞ」

「私に対してなんか辛辣じゃないかな……レイ君?」

 

 あの場に置いて行ってしまったキリハラ姉妹がレイを見つけ、隣に並ぶ。数秒ほど無言で隣でバトルを見ていたが、ふと何を思ったのか、バッグから取り出したやや大きめのケースを取り出し、それをレイに見せる。

 

「完成したよ。私達の【冥・O】が」

「……なら……これ以上の言葉はいらないな」

「そうだね、後は―――」

 

 ―――バトルで語ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メイジン杯の最中に行われた大規模バトルロワイアル。

 会場に居た少女、アスハ・カナコは、自身の新しいガンダム【アクシオンガンダム】を駆り、バトルロワイアルへ参加していた。

 

 アクシオンガンダム。

 大会で損傷したヴァンセイバーの次に彼女が作り出した可変機体。

 元にしたガンプラはイージスガンダム。改修を施したそのガンプラは赤色から白色へと変わり、その戦闘スタイルも大幅に変え、MA形態のスピードとアルミューレ・リュミエールによる突撃と防御を主軸にした高速戦闘特化。

 MS形態の四肢に内蔵したサーベルとビームガンによる白兵戦を主軸として、ほぼ全ての距離を補える万能型へと強化された。

 

「あのバカ共が~!!」

 

 イージス特有のMA形態でフィールド内を飛び回り、部員仲間二人、顧問一人、計三人のガンプラバカ三人を探す。実は彼女、本来はこのバトルロワイアルに参加するつもりは無かった。

 カナコ以外の三人がガンプラバトルを目の前にして大人しくして居る筈がない。そんなこと分かり切っていた筈なのに、彼女は動けなかったのだ。せめて大人げないバカ顧問だけは止めようと乗り込んだ彼女だが一向に見つからない。

 

『あれ、貴方は先輩とバトルした!?』

「誰!?」

 

 向かってくるファイターの攻撃を躱しながら宙域を飛んでいると、黒いガンプラがモニターに映る。

 ……学ランのようなものをなびかせたサザビーだった。

 

「はぁ!?割と本気で誰なの?!」

『チーム『イデガンジン』ガンバスターのファイター、タカマ・ノリコです!今回はサザビーこと【ディスヌフ】でバトルしていますっ!』

 

 ディスヌフって新トップをねらえに登場したバスターマシン19号?

 確かにバトルで見た彼女の戦い方を見ればディスヌフも合っているだろう。

 サザビーにディスヌフの学ランは映えるだろう。でもさ、たまには普通のガンプラが見たいんだよ!!そう内心、阿鼻叫喚の如く落ち込んでいると、モニターの端からディスヌフとは違う黒色のガンプラが猛スピードで近づいてくるのがちらりと映る。

 

 その黒いガンプラ、全体的により元の機体に近づけたその機体――否、ナガレ・リョウヤはネオ・Gマスターの剛腕をぐるぐると回しながら、ノリコのディスヌフへ接近し、声を上げる。

 

『そこのディスヌフ!!俺と勝負しろやぁぁぁぁぁ!!』

『貴方はGマスターの!?』

『あァ!?テメェガンバスターの……ッつーことはレイもここにいるっつーことかァ!!こりゃ面白くなってきたぜぇ!!』

 

 『例え先輩が居たとしても、貴方を先輩の所にはいかせない!』何故かネオ・Gマスターの前に立ちはだかったディスヌフはその手をネオ・Gマスターに向け、叫び声と間違うほどの大声と共に指からキャノン砲を発射させる。

 

『唸れッ!!バスタァァァキャノンッ!!』

『はっ、三回戦の借りを返してやるぜぇぇぇぇl!』

 

 

「え、ええ……」

 

 あっという間に割り込めない程の激闘を繰り広げだすノリコとナガレ。その様子を見てげんなりしつつ、巻き添えを喰らわない為にその場から離れるカナコ―――視界内に、常軌を逸した長さのサーベルが宇宙を飛ぶガンプラを消滅させまくっている光景が見えるけど今はスルーだ。

 あんなものを見ていて正気を保てる自信がない。

 

 何度目か分からない大きなため息を吐いたその瞬間、猛スピードでこちらに近づく機影が見えた。一旦冷静になり、MA形態のまま突き進むと敵機の姿が鮮明になる。

 

「今度はブラスタか!?」

『どこの世界に飛ばされても俺は借金地獄からは逃れられねぇ……ッ』

 

 急接近してきた白色のガンプラ(?)、ブラスタM。

 メイジン杯に参加していたガンプラの一つだった筈なのだが―――。

 

『MVPは逃しちまったが……せっかくの催しだッデータくらいは持ち帰らせて貰うぜ!!お金の為に!!』

「何言ってるのお前!?」

『こっちの話だ!!さぁてお嬢ちゃん少し俺と付き合ってもらうぜ!』

 

 やけにキャラになりきった人が、その手にあるイーグルショットを放ってくる。しかも狙いが正確だ、高速戦闘しているアクシオンガンダムについてくるのも驚きだし、何より技量がずば抜けている。

 

「クッソ……やるしかないかぁ!!」

『なんかアンタ、俺と同じ苦労人臭がするな……』

「お、おおおお前と一緒にするなし!!」

 

 実際、滅茶苦茶苦労しているのだが、認めたくないので敢えて言わない。だが状況としては油断できない追随を見せるブラスタを引き剥がせない時点で、中々にピンチだ。

 

「アクシオンなら!!」

 

 側方のスラスターを噴出させると同時に方向を転換し、銃を向けるブラスタの方を向く。

 

 イージスガンダム最大のビーム砲撃、スキュラ―――だがアンドウ・レイとのバトルで火力不足を自覚した彼女は、対スーパーロボット線の為にさらに威力を高めるべく改修を施した。

 

「アクシオンキャノン!シュート!!」

『ッ!……それを喰らうのは流石に御免被るぜ!』

 

 MA形態―――スキュラのように足を広げず、砲塔のような形状を取ったアクシオンガンダムから強烈な粒子砲撃が放たれる。

 まるでこれまでの苦労を吐き出すように放たれた黒色の粒子砲は回避したブラスタの後方、射線上のガンプラを巻き込みながら突き進み、強烈な破壊を生み出した。

 

「見たか!これが対スパロボガンプラへの対抗策!これがあればどんな装甲だって撃ち貫ける!!」

『おいおい、こりゃ居候先に良いデータを渡せるぜ……』

 

 かなりご満悦な彼女だが、周囲の反応は全く違っていた。

 

『あそこにもスパロボ機体が居るぞ……』

『やべぇ、近づきたくねぇ……』

『R-GUNじゃない?リヴァ―レじゃないみたいだけど……』

『フフフ……』

 

 カナコ自身自覚していなかった。

 破壊力と効率を重視して作ったアクシオンガンダムが、そんな感想を抱かれている事に―――。そんな反応を「ビビってる」と判断したカナコは、ようやくMA状態からMSへと変形し、両腕と一体化したビームガンをブラスタへ向ける。

 

「食らえ!」

『へっ、食い扶持の為にはなぁ!』

 

 ブラスタMとの銃撃戦が始まろうとしたその瞬間、巨大な飛行物体が彼女達の間を横切る。

 

「ッ今度は何!?」

『このデカブツは……ッ!』

『さっきの砲撃はここからか……っ』

 

 新たな介入者、青い巨大なMAを操る騎手―――ブラスタMと同じメイジン杯参加者のガンプラ、【デンドロ・シュバリアー】。

 スパロボDの主人公機、『ジェアン・シュバリアー』。

 如何なる地形にも対応できる大型機動兵器であり、刺々しい外見、巨大な刃、アンカー、スラスターが特徴的なデンドロビウムと近しい外見をしているスーパーロボット。

 

『不躾だが、俺も混ぜて貰おうか!』

『飛び入り参加か……!上等だぜ……ッ!!』

「あー、もう滅茶苦茶だよ!!」

 

 三つ巴の戦いに発展する―――筈だったのだが、武器を構えた彼らをさらなる第三者、否、物体が襲い掛かる。

 

「なっ」

『うぉっ!?』

『ッ!撃ち落とせブレードビッド!!』

 

 デンドロ・シュヴァリアーから放たれたブレードビットが、近づいて来た無線兵器―――バグを切り裂く。近づいてくるバグを全て撃ち落とし、それらが飛んできた方向を見ると―――とんでもない大きさのMA、ラフレシアが悠然と宇宙を飛んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『人が便秘で苦しんでいる間に表彰式が終わり…………しかも、俺がチャンピオンになっていないのは……どぉーいうことだァ――――!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ……」

 

 ドン引きした。

 なんて迷惑過ぎる八つ当たりだ、とも思った。宇宙を遊泳するように飛ぶラフレシアは、大量のバグとテンタクラーロッドを展開し、周囲のガンプラを襲い始めた。

 

『―――カナコォ!あいつを何とかするぞぉ!!』

「ちょ、ナガレ!またそんな勝手に!?」

『でも放っておけないですよ!』

 

 ネオ・Gマスター、ディスヌフがラフレシアへと突っ込んでいく。何でそんな無鉄砲な所が似ているの……とげんなりしながら、周りを見ると既にブラスタMとデンドロ・シュヴァリアーもさっきいた場所から消え、バグとテンタクラーロッドの破壊へと向かっていた。

 

「せめてこんな時でも……普通のガンプラバトルをさせてよ――――!!」

 

 若干半泣きしながら、ラフレシアへと飛んだカナコは、腕部のビームガンと脚部に展開させたサーベルでテンタクラーロッドを切り飛ばす。

 

 周囲に居るファイターもラフレシアの迎撃へ向かったのか、次々とバグを破壊しているが肝心のラフレシア本体には攻撃は当たらない。まあ、それも時間の問題だろう。この場には選手権を勝ち抜いたファイターも沢山いるし、それを抜いても尋常じゃない実力を持つファイターだっている。

 まだ会っていない、監督がそのいい例だ。

 

 

『はっ、はははは!!落ちろぉ!!落ちろぉ!!ヒャ―――ッハッハッハッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『じゃ、まず最初に君が落ちてちょうだい』

 

 

 

『ハへぇ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 オープン回線でそんな声が響くと同時に、今まで攻撃が通らなかったラフレシアに強烈な爆発が起こる。それも連続しての爆発、正確に各部スラスターだけを狙い炸裂したその攻撃は、一瞬でラフレシアの機動力を削ぐに至った。

 

『な、ナニィ!?』

『済まないが……そのガンプラはここでバトルするには少し大きすぎる』

 

 不可視の爆発で機動力が削がれたラフレシアを赤色の粒子ビームが貫いた。だがビームと思われたそれはまるでイデオンソードの様に上方へ動き、半壊状態のラフレシアを容易く両断させた。

 

『う、嘘だぁろぉぉぉぉぉぉぉ!?』

 

 花火の様に巨大な爆発と共に散るラフレシア。

 フィールドにいるほとんどのファイターは現れた【二機】のガンプラを見た。

 片やガンプラ学園と互角以上のバトルを繰り広げたチームのリーダーの機体。

 もう一機は最強のロボットを決める時、必ず候補に挙がる最強クラスのスーパーロボット。

 

『―――【真・冥・O】これが私の新しい冥・Oだよ。さあレイ君!ガンプラバトルをしよう!今すぐしよう!!』

 

 【グレート・ゼオライマー】

 最強最悪の性能を誇るスーパーロボットが降臨し―――。

 

『分かった分かった……まあ、せっかくの新しいジンクスのお披露目だ』

 

 GNーXⅣ type”K”『騎士(ナイト)ジンクス』。

 ジンクスⅣオリジン時に装備されていたブースターをオミット。

 その代わりに肩の背部スラスターから延びるビームの帯をマントのように翻し、騎士然としたその姿を強調させ、装備には長大化したクリアランス、加えて腰に装備された鞘に収められた実体剣を携えた、新たに生まれかわったジンクスの姿。

 ラフレシアが完全に沈黙した事を確認した彼はフィールド全体を見渡した末に傍らにいる冥・Oから少しだけ距離を取り―――。

 

 

 

 

『全力でやり合おう』

 

 

 

 

 そう言い放った。

 




ブラスタMの操縦者さんの台詞はご想像にお任せいたします。


今回は遠慮なく行かせて貰いました。
取り敢えず新しく登場した機体をまとめます。

ブラスタM(モンテーロ)
元ネタ、ブラスタ

デンドロ・シュヴァリアー(デンドロビウム)
元ネタ、ジェアン・シュヴァリアー

ディスヌフ(サザビー)
元ネタ、ディスヌフ

ネオ・Gマスター(マスターガンダム)
元ネタ、真・ゲッターロボ

真・冥・O(ジ・O)
元ネタ、グレートゼオライマー

オリジナル枠

アクシオンガンダム(イージスガンダム)
元ネタ、RーGUN

GN-XⅣtype”K” (ジンクスⅣ)
元ネタ、騎士ガンダム、ヴァイサーガ


 グレート冥・Oとグレート雷門って似てるので、真・冥・Oにしました。
 アクシオンガンダムについてはカナコが無意識に作り上げてしまったものです。つまり、知らぬうちに毒されている事に……。



※素でKnightとNightのスペル間違えていたので修正致しました。
 GN-X type”K”が正しい名前です。

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