『A』 STORY   作:クロカタ

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 引っ越しの関係でインターネットが出来なくなるので、今のうちに更新しておきます。

 本編は進みませんがとりあえずは、過去編だけは更新しておこうと思います。


 今回は、少しだけ飛んで県予選一回戦、アンドウ・レイの視点から始まります。



過去編~選手権~

 ガンプラバトル選手権、県予選。

 ………よくもまあ、この舞台に立てたものだと思う。去年は一人だけ。今ではコスモとノリコといった後輩が一緒に大会に出場してくれているが、一年前、俺が高校一年生の頃は、俺の所属していたガンプラ部には俺以外誰も入ってはいなかった。

 

 俺が入学した高校、茨城県立暮機坂高校のガンプラ部には、俺が入る前は部員がいたらしいが、その部員は卒業と共にいなくなってしまったらしい。翌年の新入部員は俺一人だけ。部員の人数に関しては、クラスメートに名前を貸してもらってやぶれかぶれで誤魔化して、存続させてはいるのだが……。

 

 ぶっちゃけ滅茶苦茶心細かった。

 クラスには友達はいるが、ガンプラのできる友達はいない。一時期は訓練用のハイモックが友達だった。

 

 でも、なにより辛いのは大会に出れない事。何もできない俺は、ただただニュースで流れる大会の結果、静岡県代表のガンプラ学園が6年連続の優勝という快挙を成し遂げたという話題を、黙って見送る事しかできなかった。

 

 ガンプラ学園の選手の強さに歯がゆい思いをしながらも、俺はひたすらにガンプラを組み立て、プラモ屋でガンプラバトルをするだけの高校生活を過ごしていた。部員は相変わらず俺一人、棚には今まで作ったガンプラが並ぶ。

 

 何かを変えたいとは常々思っていた。

 だが、自分が住んでいる場所はお世辞にも都会とは言えない辺鄙な場所。近くにプラモ屋があるだけでも恵まれているのだろう。

 見通しが甘かった自分が悪いのだが、どうにも自分はこの現状を良しとはしていない。

 戦いたい。

 ガンプラバトルをしたい。

 全国の猛者達。

 未だ見ぬガンプラ、強いガンプラ。

 ガンプラ学園。

 

 父から教えて貰ったガンプラの技術と腕が、どこまで通じるか試したい。そして自分の好きな機体で華麗に泥臭く、熱く、滾るような、心の底から満足するようなガンプラバトルをしたい。

 

 だが、二年生になった時、転機は訪れた。

 俺に部活での後輩ができたのだ。

 

 タカマ・ノリコとユズキ・コスモ。

 ザク使いとジム使いのガンプラファイターである彼らが、俺を後押ししてくれた。全日本ガンプラ選手権と言う戦いの舞台へ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺の戦車はァ!!』

「ガンタンクでここまでの性能とは!」

 

 県大会一回戦、那珂川学園模型部、チーム『パトリオット』と、暮機阪高校ガンプラ部、チーム『イデガンジン』とのバトル。

 敵チームの用いるガンプラは、三体のガンタンクの改修型。その中で今現在俺が相手をしているリーダー機、『ガンタンクⅣ号F2型』が曲者だ。市街地のステージという地の利がある事に加え、ガンタンク由来の強力な砲撃が脅威だ。

 

 コスモとノリコは残りの二体の相手をしてもらってはいるが、正直心配だ。彼らの機体は未だに未完成、今戦っているファイターの技量から考えると、あちらも相当の実力を持っていると見てもいいだろう。

 

「どうしたもんかな……」

 

 ガンタンクと侮るなかれ、相手の改修したガンタンクは、厚く強化された装甲で防御力の強化、スパイクの取り付けられたキャタピラによって運動性の強化が施されている。まるで『戦車』を思わせるその様相と、ガンタンクが本来持つ一対のキャノン砲により、並のガンタンクとは一線を画す性能を誇っている。

 

「流石大洗……ッ!戦車主義もここまでくれば……」

『落ちろって言うんだよぉ!!』

 

 放たれたキャノンを反転して躱しながら、GNビームライフルを撃つ。放たれたビームはガンタンクⅣ号の装甲に直撃するも、まるで弾かれるように拡散してしまう。

 

「ビームコーティングか……つくづく戦車を思わせる堅牢さだ」

 

 ビーム系統の武装は効果が薄いと判断してもいいかもしれない。

 ならば、俺のランスで行く。

 

 右腕に装備されている、普通のGNランスよりもやや小ぶりなランスを構える。既存のジンクスⅢのGNランスとは違うのは、ビームガンとランスを完全に一体化し、刺突武器と遠距離武器を合わせた形になっているということだ。

 加えて、ランスで言う『柄』の部分が無く、極めて刺突に最適な腕とランスの一体化を目指した武装。名付けるならば『GNガンランス』。

 ……どこのモンハンだ……全く。

 

「これでっ!」

 

 GN粒子を一気に放出し、小刻みな機動を取りながらガンタンクⅣ号への接近を試みる。これならビームコーティングと堅牢な装甲を突破できるはず。

 砲撃を全て回避し、一気にガンタンクへ肉薄、そのままランスを突き出す。

 

『くっ、分離!!』

「なにッ」

 

 しかし、ガンタンクⅣ号もそう易々とはやられはしなかった。なんと目前で上半身と下半身が分離したのだ。だが俺もファイターの端くれ、即座に分離した上半身に狙いを変え、刺し貫く。

 

 一瞬のスパークの後、機能停止に陥られるガンタンクⅣ号。

 だが、何故かこれで終わりとは思えない。確証はないが、漠然とした違和感が俺に警鐘を鳴らしていた。

 

『かかったなぁ!!』

 

 聞こえた声は下から。すぐに下に視線を移すと、そこにはキャタピラだけになったガンタンクがこちらに、恐らく上半身に内蔵されていたであろう、やや大きめの砲台を向けている光景だった。

 コアファイターの部分を丸ごと取り除いて砲台を隠していたのか……ッ。

 

『そんなごじゃっぺな武装で俺の、俺達の戦車が倒せるかぁ!!』

「くっ……!」

 

 回避は不可能に近い。ただでさえ一撃必殺の威力を持っていたあの砲弾を食らうのは危険すぎる。しかも俺のジンクスのシールドは既に破壊されてしまっている。

 

『発破ァ!』

「そう易々とやらせるか!」

 

 思いきり後方へ退避しながら腰からサーベルを引き抜き、身体の中心に沿って斬り降ろすようにサーベルを振り降ろす。瞬間、一瞬の手応えと共に、後方に真っ二つになった砲弾が通り過ぎ、爆発。

 偶然とはいえ危ない……間一髪だった。

 

「信じたくなったよ……まぐれというものを!!」

『出鱈目な!……第二射―――』

「遅い!」

 

 後方からの爆風に狙いを乱されぬよう、スラスターでバランスを取りながら即座にガンランスをガンタンクⅣ型に向け、引き金を引く。引き金を引くと同時に、ランスの付け根部分に火花が散り、小規模な炸裂音と共に、ランスの先端が高速回転しながら射出される。

 

『な、なんなんだよそれぇ!?』

「ランスだ!」

 

 実はショットランサーの機構も内蔵してある優れもの。ショットランサーの機構は、円錐型のランスをいくつもの層によって成るミルフィーユのように重ねる事で、最大5発、ランスを射出することができる。

 

 回転しながら飛んで行ったランスの先端は、キャタピラを回転させ回避しようとしたガンタンクⅣ型の中心を捉え、串刺しにする。

 もう動かない、はずだ。

 

「………ノリコ達は?」

 

 敵のリーダーは倒した、後は二人の援護に行かなくては。二人の実力を疑っている訳じゃないが、ガンプラバトルは何があるか分からない。さっきのように敵ガンプラにどのようなギミックが施されているのか分からないのだ。

 動かなくなったガンキャノンⅣ号を再度確認してから、急いで彼女達の方へ飛んで行こうとすると、途端にフィールドの上からプラフスキー粒子によって形作られた世界が解除される。

 

【BATTLE!END!!】

『第一回戦の結果は、チーム『イデガンジン』の勝利です!』

 

「終わったのか……」

 

 バトルシステム全てが解除されると、操縦空間から、会場内へと景色が移り変わる。緊張が解け、軽く息を吐く。

 決して相手は弱くなかった。ガンタンクの特性を最大限に生かした改造、そしてキャタピラ運動を完全に理解していたあの挙動。間違いなく強敵だった。

 

「強化が必要だな……」

 

 ジンクスⅢじゃ力不足だ。トランザム……いや、それ以上の機能を付けなければならない。まずはどういう基準で作るべきか。ツインドライブを内蔵したバックパック?いや、出力を上げても安定性がなければ荷物にしかならない。AGEⅡダークハウンドのキットからドッズランサーを改造して装備させるか?これも駄目だ、主武装の発展案は決めているんだ。

 クリアパーツ……これならプラフスキー粒子の粒子流動率も上がるから、これを使えば……。

 

「先輩!」

「うん?」

「もしかしてガンプラに何か不具合でも?」

 

 考えに耽っていたのか、バトルシステムの前でボーっとしていた俺の前に、コスモとノリコが心配そうな表情で近づいてきていた。

 そうか、俺達は皆で勝ったんだな。感慨深くなりながらも、フィールドにあるジンクスを拾い上げた後、二人に心配いらないとばかりに手を挙げる。

 

「大丈夫。とりあえず次の試合が始まるから、移動しよう」

「分かりましたっ」

 

 とりあえずはその場から離れ、会場の外へ移動する。ふと、後ろを振り返ると、先程戦っていたチームが悔しげに自身のガンプラを見つめていた。

 

「………そうだよな、悔しいよな」

 

 でも、ここで俺達が掛ける言葉は何もない。もしここで彼らに慰めの言葉を掛けても、侮辱にしかならないから。

 

 そんな言葉を投げかけても、何の意味もない。受け方によればバカにしていると思われるかもしれないし、いらない禍根を残すかもしれない。だから俺達にできる事は、この先のバトルで勝ち進むことだけ。細かい事は分からない、だがそれが敗者にできる勝者としての役割だと、俺は思っている。

 

「勝つぞ、次も」

 

 それから会場を出るまで俺は、一度も後ろを振り向くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホーミングレーザーはどうやって撃つかだって?」

 

 大会一日目の日程が終了したあと、俺達ガンプラ部は二回戦の為にファミレスでミーティングをしていた。学生と言えばやっぱりファミレスだなぁ、と何故か感動していた俺に、ノリコが質問したことがそれだった。

 

「はい、ホーミングレーザーです。できますか?」

「……そりゃあ、ビームを操作することはできなくはないけど」

 

 00に出ているモビルアーマー、レグナントは劇中でビームを曲げたりしていたけど、あれは一度だけ曲がる感じのものだ。ノリコが言っているホーミングレーザーとは、恐らく目標までミサイルの如く相手を追尾するビームと言う訳だ。

 

「……ビームを曲げたりするのは可能だ。ガンダム00ではGNフィールドの応用でビームの軌道を操作する事ができた。………それをプラフスキー粒子で代用すればなんら難しい事はない」

「それなら!」

「問題はその指向性だ。ノリコ、君はどのようにしてホーミングレーザーを撃ち出したいんだ?」

「え?一応は、手からババーンって撃ち出したいんですけど……」

 

 両手からレーザーを出して、相手を捉えるという感じか。成程、レーザーを手から発することで、手持ち武装が相手の攻撃によって損なう危険性を予防できるというのか。

 だが、複数同時のレーザーを戦闘中に操作しきれるのか?例え制御できたとしても、かなり難しいぞ。

 

「確かノリコはファンネル系統の武装は苦手なんじゃないのか?」

「それは、最終的に相手のいる方向へ目指すようにすれば……ロックオンする感じで」

「成程、じゃあ、次は粒子操作だな……GNドライブを内蔵すれば、粒子を操作する事が可能だから……行けるかもしれない。でも純正GNドライブは出力が強すぎるかもしれない……まずは粒子タンクで代用……OO系列の機体ならうちの部室にあるから……」

 

 確かエクシアと、ジンクス、それに00粒子タンク版があったはず。今から時間を切り詰めれば次の戦いには間に合わないだろうけど、三回戦までには余裕だろう。

 

「GNドライブ……じゃ、じゃあ私、それを私のザクの肩にいれてみたいんですけど!!」

「……肩?それって00みたいに?」

「違います!肩パッドみたいにです!!」

「……ま、まあ、お前がそれで良ければ……止めはしないんだが……」

 

 最近の女子高生の感性は分からないよ……。

 でも彼女のザクも最初と比べると大分様変わりした。全体を黒く塗っているのは彼女の使うガンプラの特徴だが、今回の彼女のザクは黒より明るい藍色だ。それに、装甲の隙間に黒いゴム製のラバーが取り付けられている。柔軟な素材のラバーで関節を守るのが目的だろうが、他ではあまり見ないやり方だ。

 

「すいません、先輩」

「どうした?」

「自分にもアドバイスを貰いたいのですが、構わないですか?」

 

 可愛い後輩達の相談ならいくらでも答えるに決まっている。コスモの使っているジムも、部活に入った当初より強化されていたな。全体的に一回り大きくなったが、それに合わせた強化かな?

 

「無限大のビームサーベルってどうやって出すんですか?」

「………」

 

 予想の斜め上を行った……。

 無限大?のビームサーベル……。今の所、理論的には不可能……だと思う。

 ……いや、ここで適当な答えを言っては、俺を信じて頼ってくれたコスモに申し訳ない。とりあえず考えてみよう、無限大のビームサーベルとは、極大的に解釈すると、すごく長くて振り回せる剣だ。つまり、様々なガンダム作品でそれに近く、また準ずる武装を探し、参考にすればいいのではないか。

 

 まずは、ZガンダムとZZのハイパービームサーベル。あれは、オカルト的な部分がその大部分を占める。ならZのパーツを使えばいいのではないか?と思えるが、生憎Zはバイオセンサーという、どの部分か分からないシステムが使われている。

 

 次にV2ガンダムの光の翼。あれはミノフスキードライブの出力上昇と共に、推力に変換できなかった余剰エネルギーが翼のように現れる現象。これも強力なものだが、サーベルと言う定義に当てはまると思えない。

 

 次にガンダムエピオン、これがある意味で一番再現しやすいが、これはビームソードだ。コスモの言う無限大には及ばないだろう。なにより、徒手空拳を使っている彼のガンプラには合わないだろう。

 

 最有力なのは、00ライザーのライザーソード。これがコスモの言う無限大に最も近く、それでもって強力な兵器。だが、コスモだってバカじゃない、ライザーソードという案を考えない訳がない。

 

 ………ここまで考えて、良い案が浮かばないということは……。

 

「コスモ、残念ながらそのビームサーベルを作る方法は俺は知らない」

「……そうですか」

 

 しかし、既存の作品を参考にしても分からない場合、俺にできることは一つしかない。

 

「でも、模索することはできる。プラフスキー粒子には未開の可能性が広がっている。それを模索し、応用するのが俺達ガンプラファイターだ。コスモ、まず手始めに試せる事から始めよう」

「……やっぱり、貴方についてきて正解でした。……だれもこんなバカな事取り合ってくれませんでしたから……」

「俺達はチームだ。そしてノリコもお前も俺の後輩だ、バカにするはずがない」

 

 それに父からもプラフスキー粒子の応用の広さは教わっている。その応用の最たる例が、第7回ガンプラバトル世界大会優勝者、イオリ・セイさんとレイジさんの使ったガンプラ、スタービルドストライクガンダム。彼らのガンプラのシステムは、まさにプラフスキー粒子を有用に扱った最高峰のものだった。

 

 だからどんなに無理だと思っても、ちゃんと筋道が通れば可能なものに変わる。

 

 だからガンプラバトルは面白いんだ。

 初めてガンプラを完成させた達成感。素組のまま完成させたガンプラを動かせる感動に打ち震え、次に塗装とかスミ入れとかガンプラを通して学んで、そして自分だけのガンプラを作って、友達と遊び、競い合う。

 

 それがガンプラ、そしてガンプラバトルなのだ。

 

「………先輩!もう一つ聞きたいことがあるんですけど!!」

「待てノリコ、まだ俺が――」

「じゃあ、皆で聞いて考えよう!!今度は私も考えるから!」

 

「ははは、そうだな……」

 

 皆で楽しむのもガンプラの醍醐味だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コスモとノリコとガンプラについての改修案に論じる事、1時間。ようやく一段落ついたあたりで、ノリコが携帯を開き、しまったとばかりに声を上げた。

 

「あ、……そろそろ帰らなくちゃ」

 

 時間は既に7時を超えていた。夏にさしあたったあたりだからか、僅かに外が白んではいるが、結構遅い時間帯だろう。

 

「先輩、俺もそろそろ帰ります。先輩は?」

「……ああ、俺はもうちょっとだけここにいるよ」

「そうですか、じゃあお金ここに置いておきます」

「あ、私も私もー」

 

 っ!それぐらい先輩として奢らなければいけない!そう思い、咄嗟にコスモとノリコのお金を出す手を止めようと口を開こうとすると、コスモはそれを予想してと言わんばかりに『先輩にこれ以上負担を掛けさせるわけにはいきません』と言い、ノリコと共に千円札を出した。

 

「今日はありがとうございました!二回戦、頑張りましょうっ」

「俺も、ありがとうございます……本当に」

「………全く……また明日な」

 

 二人に手を振り、姿が見えなくなると軽く背伸びしながら椅子に背を預ける。

 

「茨城県、代表か……」

 

 決勝にまで勝ち上がるには、後3回勝ち上がらなければならない。決勝で当たるのは恐らく、前回全国大会に出場した『青嵐学園』。

 去年の県の代表、今日の予選を見た限りではその実力は、圧倒的の一言に尽きた。

 なにより、あのリーダー格の白色のバンシィガンダム、『バンシィ・ネガ』の強さが際立っていた。ユニコーンではない白色のバンシィ、それに『バンシィ・ネガ』を中心に連携を取っている二体のジェスタも厄介だ。

 恐らく決勝に勝ち進めば当たるだろう、青嵐学園とのバトルでは、今日のような個人戦ではなく、チーム戦が重要になってくるだろう。

 心して掛からなければならない。

 

 

 

「お客様、相席、構わないでしょうか?」

 

 

 

「ん?」

 

 テーブルに置いてあるジンクスⅢを見つめていると、不意に自分に声が掛かって来る。鈴のように跳ねるような声だ。声のする方向に目を向けると、そこには自分に声を掛けた店員と、ノリコのような黒色の髪をセミショートにした少女がそこにいた。

 

「あ、ええ。構わないですよ」

「はい!それじゃあ、どうぞ」

 

 了解を得ると、俺と向かい合わせの位置に座る少女。

 その視線は俺の手元、ジンクスⅢに向いている。

 

「すまないね、少し混んでいて席がなかったんだ」

「……あ、ああ……」

 

 なんだろうか、ガンプラに向けられている視線に少しばかりの悪意を感じる。何かしようという悪意ではなく、もっと純粋な、なんというか、綺麗な悪意だ。

 駄目だ、何を考えているんだ俺は、初対面の人に対して。ニュータイプじゃあるまいし。

 

「良いガンプラだね。私も好きだよ、ジンクス」

「ありがとう」

 

 唐突に褒められる。少しばかり照れながらもそう返すと、彼女は口角を僅かに上げる。

 

「……でも流石チーム『イデガンジン』のリーダー。アンドウ・レイ君のガンプラだよ」

「!………まさか、君は選手権の関係者か何かか?」

「関係者と言うよりは選手さ。……あ、えと、別に狙ってここに来たわけじゃないよ。本当の本当に偶然さ。だから勘違いしないでくれ。別にスパイとかそう言う意図があった訳じゃないんだ」

 

 軽く両手を上にあげる彼女に、少しばかり戸惑う。別に怒ってはいないんだけど、彼女が自分達を知っていた事の方が驚きだった。

 自分たちは有名なチームではない今年初出場の新米チームだ。それにこの大会に出ている人たちだって相当居る筈だ、その中で俺達のチームを覚えていることに驚いている。

 

「いや、怒ってはいないんだけど、何で俺達の事を?」

「そりゃあ、君達が県予選で私達が警戒しているチームの最有力候補だからさ」

「青嵐学園がいるだろう?アレと比べれば俺達なんて……」

「いいや、君達の方が警戒に値する。私は自分の目で見て、感じた事しか信じない……。今日の試合、君のジンクスとガンタンクの試合、見させてもらったよ」

 

 何時の間にか手に持ったメニューを開き頼むものを決めながら、こちらに向かって話している。

 

「見てすぐに分かったよ。君と君達のチームは私達の大きな壁になるってね」

「………」

「そして、君の後輩の創りだそうとしているガンプラが、まだ完成に至っていない事も分かる」

「完成かどうかはアイツらが決める事だ」

「ああ、それもそうだ。不躾なこと言ってごめんね」

 

 そう謝ると、彼女は呼び出しボタンを押し、店員を呼ぶ。

 しかし、ここまで話して分かったが、彼女は本当に偶然ここに来てしまったようだ。まあ、ここが混んでいるのはしょうがないか。

 とりあえず相手だけが自分の名前を知っているというのは変な感じがするので、名前だけは聞いておこう。

 

「君の名前は?」

「八極学園、高等部二年、チーム『冥王』リーダー、キリハラ・ミサキ。そして……」

 

 彼女はゆっくりとこちらを見ると、楽しそうに笑った。

 笑った彼女、ミサキの姿を見て、俺は彼女から感じていた純粋な悪意の正体をなんとなく理解できた。

 

「使用ガンプラは『ジ・0』」

 

 俺のジンクスを見てからだ……それで俺は彼女の闘争心を呼び起こしてしまった。だから、わざわざ公平を規す為に自分のガンプラについて明かしてくれるし、自らの所属チームも教えた。

 

 俺が思うに、この子は……。

 

 

 

「名前は【冥・0】……決勝で会おう。レイ君」

 

 

 

 強いファイターとのバトルに飢えている……。

 

 

 




ガンタンク、結構好きです。
キャタピラとかすごく好きです。
そして下半身だけになると普通に戦車に見えるから不思議です。



今後の主要のオリジナルキャラはミサキだけです。

それにしても、県予選一回戦目から既にカオスな事になってしまいました。
茨城県の大洗で戦車って……。

でも魔境ではありませんから、大丈夫ですね(錯乱)



それと……一応過去編だけは更新していくので短編から長編に変えました。


これで後書きは終わりです。
冥王計画ゼオライマー見直してきます。




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