ここは夕焼けに照らされた都会の一つ、無数のビル群がちらほらと建ち並び、道には無数の人々が往来しているコンクリートジャングルの一角にある憩いの場所である小さな公園・・。
そう、公園というには、遊具はとても少なく、僅か2つしかないブランコ、大人が座れるサイズのベンチ、そして僅かに夕焼けに照らされた赤い塗装で旧通貨のみ対応の古い型の自販機、そして幾らかのゴミの詰まったゴミ箱。それでも公園内はそれなりに整えられて、綺麗に花壇に飾られた花達が咲いている。
そんな黄昏の時間である。
「こっちだ、こっち」
「こちらですね」
今日は新人を連れて夕焼けの綺麗な公園で休憩のためにやって来たのだ、この紺色の仕事着のスーツも着なれてそんなにキツイ感じはしない位には勤務している。だいたい中堅層の社員と言う立ち位置だ。
そして、もう一人は大学卒業仕立てだが、能力ある組織の幹部候補って噂なんで、上から鍛えるように言われて一緒に研修の外回り中である。
スーツを着なれていない姿は軍隊ならば、学校卒業仕立ての新任の少尉という感じで装備の扱いには慣れてない様子がまさに新人と言った感じで、その新人は慣れないネクタイの為か、はたまた別の理由かで、何故か大変険しい顔をしている。
「さて、ここにちょっと座ろうかね?君も慣れない環境で疲れだろう?ここの景色は実に良いし、それにここは割りと人に管理されて大切されている場所でな、たまに掃除もしているし、この花壇の花も綺麗に飾っているし、それに、ここから見る夕焼けは実に綺麗だ」
新人が進められたベンチに座ると共に、私は財布から小銭を取り出して古い自販機から先ほど買ったばかりの温かい缶コーヒーを2個購入し、一つをゆっくりと新人の彼に手渡した。
「まあ休憩も仕事の内だよ」
カシュと、缶コーヒーの蓋を軽く開けて私が先に飲む中で、慣れてない新人は渡された缶コーヒーの蓋の仕様の問題為か、開け方がわからず戸惑う中、同じような経験したことあるのある新人特有の初々しさに少し心の中で微笑んでしまった。
「えっ、あの」
「すまんすまん、このリングタブの缶は初めてだったか」
「えっと」
「今の令和のご時世、リングタブはちょっと力加減難しいからな」
(間違えて中身ばら蒔きそうで怖いのは私にもわかる)
「あっ、ありがとうございます、しかしここの大気は息苦しいですね」
カシュッと慣れた手つきで私が缶の蓋が開いてから新人にゆっくりと手渡すと、その独特の匂いがスーッ周りを包み込む、そして開けた蓋の奥に見えるどこまでも黒い液体に困惑している様子だ。
「非常に黒いですね」
「言っておくが毒は入ってないぞ、まあ慣れればうまいからな、今度もし君が飲む機会があれば無糖ではなく、微糖を選ぶべきだったろうな、あれは甘くて飲みやすい」
「あの、先輩」
慣れない環境、慣れない文化、慣れないこの毒のように黒い飲みも含めて、若い新人のその困惑等もあり厳しい表情になっている。
「今日の研修地は君から見て、どう思うかね?忌憚のない意見という奴だ言ってみたまえ」
そして、新人はキツイネクタイを緩ませ、体の姿勢を整えてから、色々と指摘を始める。
半年間に渡り、都会を中心に様々な仕事をこなし、都会の多くの人達を見て、この都会に住む人々の多くを観察した。
借金漬けで賭博を続けるギャンブル中毒、引きこもりの青年、他人を蹴落とす事に躊躇しない一流企業の社員、お金欲しさに何でも悪い事をする人間の黒い部分を沢山知る中で、良い部分も見る事はあるが、悪い部分も同じ程度に経験していく内に、あまりの理不尽な現実に怒って文明への介入を行おうとした新人を何度も止めて、フォローする内に研修期間は過ぎた。
「この世界の人間同士は信頼感もなく、そしてこの「スマホ」という装置を使って、年がら年中、お互いにお互いを「SNS」という仮想空間で弱者が弱者の足を引っ張り合うし、欲望まみれたおぞましい光景だけでなく、そしてあまつさえ自分の足元を崩すような環境破壊を行う社会の有り様は大変見苦しいと感じます。」
「そういう面があることは私も理解している」
「こんな世界に未来があるとは思えないですが?」
「ちょっと君は性急過ぎる、だからこそ河岸を変えるって意味で私のお気にいりの所に連れて来たんだよ」
この新人は今まで来た若手の隊員の中でも実に優秀なのはわかる。大学の座学と実技も含めて主席なだけでやなく、研修先の初めての現場でもあっという間に専門用語含めて覚える姿は、私のような年数だけは立派な窓際社員と違い、これからの星を率いる実力のある本物のホープ(期待の星)はやはりすごい。
「ならば、この世界のために、環境を破壊する人間は野放しにはできない、教科書に書かれた通り、惑星への敵対的存在は座視する訳にはいかない」
若さ故の正義感から新人は納得できず、手にした缶を地面に怒りのあまり叩きつける。
「ちょっと待ちなさい、君がその空き缶を床に捨てる行為もまた、この星でいう君が嫌う環境破壊の一環だぞ」
そして新人は、おもむろに懐から地球の文明とは明らかに違う技術で作られたペンライトのようなガジェットツールに手を触れようとしている、例えたら拳銃を抜く以上の危険行為だ。
私が制止するが、変身用のガジェットを構えながら、ベンチから跳び跳ねて、距離を取ってから構えた途端に、あのガジェットツールからは赤い光を発して戦闘モードのような様子で構える。
あの新人は本来の宇宙人としての本領を発揮する事のできるようになる装着式の変身装置の起動に成功すれば、そのまま巨大化なり、力を解放する行為は即ち、この大都市どころか世界を破壊し尽くすのは明確、それは実に困ることだ。
「言っておくが私も人類を守る為だけに君を止めた訳じゃない」
私はすっと、数十メートル先にある花壇を指差しつつ、制止するような身振り手振りを行ったのだ、この公園もそうだが、花も潰されたくなったのだ。
「私は喧嘩が弱い、そして、ここで暴れたら、街は仕方ないにしても、この公園のあの綺麗な花を踏みにじる事になる。例え人類が植えたモノでもあの生命のある花は実に尊いモノだよ」
それだけでなく、私は新人が納得するために2つの条件を示したのだ。
「目の前にあるゴミ箱の中に、持っている空き缶を一回で入れる事ができたら、人類の抹殺はともかく、テラの人類はテラを脅かす存在だと報告する。条件は簡単だが、どうかな?」
そして新人がこの失敗したら、今回の人類抹殺云々は延期するという条件。
「わかりました。ではやります」
「条件を飲んだと言う事だね、箱に入れる方法の条件は自由だけど、公園や周りを破壊する行為はNGだ、わかるな?」
新人は少々緊張した面持ちで頭を縦に振って条件を飲んだ。
「もちろんです、何をやってもいいなら、私の得意分野の、エネルギーコントロールで一発で入れてやります、アカデミーでは主席ですよ、この能力を使います」
「そうか、好きにしな、まあ私のエネルギーコントロールの能力の成績はビリからから7番目だったよ、だから苦手でね」
「それでは勝負決めさせていただきます」
そして、先ほど地面に落とした空き缶を掴むと共に目を閉じると共に掴んだ腕の先から青い光を発生し、手から離れて浮き上がると共に、缶は勢いよく宙を舞う。
本人の得意なエネルギーコントロール術による投擲、そして空き缶は素早く直線的にゴミ箱に飛ぶ。
しかし奴は得意な能力故に力み過ぎた事、そしてやや人類への憤りなどで冷静さを欠いた事、空き缶の重心の違いなどの要素が重なり、コントロールは良かったけど、エネルギーを込めた故に重さが変わり激しくゴミ箱にぶつかって、そのまま中身のゴミをばら蒔きながら派手にひっくり返す。
そして吹き飛んで公園の外に場外となりかけた空き缶を見て、私はベンチに座ったままで軽く手にエネルギーを込めて、軽く何もない空間を引っ張る感覚で空き缶を引き寄せて、その場を動かずに空き缶の軌道を変えて軽くキャッチする。
「そんな!?」
「やれやれ、では私の番だね。言っておくが超能力みたいな力はこれ以降は使わんよ、これテラの船乗りの言っていたコロンブスの卵って奴さ、能力に頼り過ぎはよくないぜ」
私はベンチから立ち上がり悠々と、手にした空き缶片手に何事もなく、ひっくり返っていた倒れたゴミ箱の本体を立たせると、ルール通りに一回でゴミ箱に空き缶を入れる。
相手はガチムチの特殊部隊隊員、そして私自身はほぼただの一般人のサラリーマン。
テレビとか言う奴で見たボクシングという試合なら1ラウンド三分以内でボコボコにされてから更に正義のヒーローが得意な光線ぶち当てられて人生も地球KO負けにされるという位だろう、だから喧嘩が弱いなら喧嘩以外の方法で戦うのがオッサンの強みだ。
「えっ!そんな、まさか!?」
「ほらっ、言ったろう?君は少しばかり性急で頭が固過ぎる、私は能力は高くないから、創意工夫とか、発想変えて能力に頼らずに生きているんでな、一応入れる条件は自由と言ったからな、これは全く不公平ではない・・そうだろう?」
「それにしても先輩、どうしてそこまで人類に肩入れするんですか?」
「まずはぶちまけたゴミを片付けるぞ、そして公園の周りもついでに綺麗にするぞ、これがテラの流儀で、これがボランティア活動というテラの人類の考えた良い行いの一つだ」
二人で公園の周りを片付けながら、私は新人に色んな話を語り始めた。
そう、自分も過去に同じ考えになった事はあって、人類抹殺は考えたけど、この綺麗な“夕暮れ”の黄昏をある公園で偶然出会った事、そしてその自然と人間との関係性等。
その地球人の女性からこの事を教わる事がなかったら、おそらく早々に君と同じようにテラを破壊していたかも知れないから。
そしてその女性から言われたよ、テラの環境を破壊する人類もまた自然から生まれた自然の一部だと言う事、だからこそ人類抹殺はもうちょい長い目で人類を見据えてから判断すべき事だと伝えた。
「そうか、あの夕焼けも人類も自然の一部か、あの夕焼けが実に素晴らしい・・」
「うむ、ボランティア活動、ご苦労様、それと君に必要なのは人生経験だよ、これから色んな人達と話して触れあって、仲良したり対立したりなんて、そんな経験が必要なんだと思うよ・・それと、帰ったら星の連中によろしく」
私はおもむろに、餞別の代わりに自販機から微糖コーヒーを手渡すと、軽く新人はそのお礼の後に先ほどのベータライトを掲げると、さっきほどの戦闘モードのような荒々しい光ではなく、落ち着いた青い光を発すると共に新人は星のように、そのまま空に飛んでいく、その姿に私は手を振って見送った。
「全く、評議会の議員の息子達はどれも扱い難い、新人の兄貴も、その下の次男、三男も、そして今回は末っ子だよ、まああの新人は磨けば光るのは確かだ、本国でそこそこのポストなら自力で行ける実力はありそうだ」
奴は宇宙を守る正義の宇宙人、一方私はこのテラの惑星に駐在員の宇宙人、やはり差は大きいのだ。
その時、私の折り畳みスマホからSNS経由でメッセージの通知音が鳴る。スマホのメッセージを確認した途端に軽くため息が出てくる。
「帰りにスーパーの値引きシールのついた総菜と大根を買ってこいか、仕方ないね」
あの後、テラで言う半年位の時間が流れ、私はもう一人の新しい新人の研修中、例の微糖コーヒーの新人は実地の研修後に本国のポストを蹴って、テラ調査の傍らで、あの公園の整備を手伝っているらしい、あの花や貴方がいなかったら私は何か大切なものを失う所だったとよ。
それでメッセージが届いたけど、なんか議会の議員たる新人の父から通信モニター経由でネチネチと小言は言われたが、奴の兄弟からはなんか本国の高い酒を何本か送ってきて感謝されたよ、まあ奴らとのコネもあるから、テラ調査延長も許されるし、それにクビにだけはならんないが、それでも窓際隊員という事実は変わらん。
そんなある日の日曜日に娘が彼氏を連れてくるって話だ、どうやら公園整備のボランティア大好きな社会人らしい、一体誰だろうな?
今日のお話は、別の調査班の一人の平隊員として頑張る新人君の活躍を祈って終わりにしたかったんだけどね、そう、ここで話が終われば皆がハッピーエンドでテラも宇宙も平和なんだよね。
だから私はこれ以上は語りたくない、なんせ妻の管理している、公園整備のボランティアにあの新人が参加して、気づいたら、妻も娘もあの新人が気に入ってそうだよ、妻も娘も「お父さんみたいに、花が好きな宇宙人だし、悪い奴じゃないしいでしょう?」とか、妻はに至っては「実家は数世代に渡る防衛組織に勤務する家庭で、彼は防衛大学相当の学校を卒業して、親は惑星議員、祖父や曾祖父も在籍しいた防衛組織に、兄弟達も組織の重要なポストに就いているとか、身元は地球惑星の駐在員のあんたよりしっかりしているよ」とか簡単に言いやがって、それにあの新人は持って帰った微糖コーヒーが気に入ったとかカッコつけて、普通に正義の宇宙人の癖に敷居を跨いで家を侵略しているじゃねえか。
それでも飛来していきなりテラを売りなさいとか言ってきた悪質な宇宙人相手に戦わずに交渉とトンチやら対話とかみたいなので相手を平和的に撤退させやがったよ、全く誰だよ、あいつを鍛えたたんだよ、ちくしょうー!!
終わり
今回のコンセプトは特撮の光の巨人と宇宙人の地球の運命を賭けた小さい賭けである。
本来は正義側のヒーローをやられる側の宇宙人が止めるというのをやってみたら面白いのでは?ってのが発端です。
ちなみにAI編集者からは誤字脱字を指摘されて頑張って直しました。