公園・・昼間
昼下がりの午後、そこは突如して砂ぼこりの舞い上がる荒れ果てた西部劇のような荒野にも似た空気が漂ってくる。
先ほどとは違う乾燥した空気、枯れ葉が舞い上がり、地面の土を巻き上げ、砂ぼこりをあげる中で、数人の人影が現れる。
「逃げずに来たようだな」
すっと砂ぼこりの向こうから、ロングコート姿の男達、一人はスカーフを首に巻いた無精髭の男、大きなテンガロンハットを被った男、更に無頼漢らしきもう一人が現れる。
「おっと、早打ちジョニーさんよ、動くじゃねえよ、これをみろよ」
鈍く光る緑色の四角い拳銃の銃口が固る女性の眉間に突き付けられて、数歩ほどで賞金稼ぎと呼ばれる長身の男のブーツと共に拍車(はくしゃ)音が止む。
「さあ、武器を捨てな、こいつは人質だぜ」
砂場を足場にして冷めた表情で賞金稼ぎの男は賞金首とその手下と人質を見据える。
風により吹き付けるロングコート姿の賞金首達に囲まれながら、賞金稼ぎは古びたポンチョから一本の白い棒付き飴を一つ咥えながら包装紙のビニールを剥ぎ取る。
一瞬の隙もなく賞金稼ぎは慣れたように拳銃のホルスターのケースのボタンを外して黄色に塗装された回転式拳銃が二丁が露になる。
「俺達を追うのをやめろ、バウンティーハンター、武器を捨てて人質と共にどっかに消え失せるなら、許してやるよ」
「ハンターさん、私に構わず、こいつらをやっつけて」
無頼漢達より格好のさっぱりした少女が涙目でハンターに訴えかける中、いきなりハンターが腰の拳銃を一丁を地面にゆっくり落とすと、無頼漢達は思わず笑みをこぼす。
「バカか、素直に人質を放すと思ったかよ」
連中が武器を抜くより早く、賞金稼ぎが咥えていた飴玉を噛み砕くと共に、利き手の右手の指を構える、まるで指鉄砲みたいに構えながら一言。
「BAN」
指鉄砲を構えた賞金稼ぎの声と共にゲスな笑いを浮かべた手下の顔が驚愕の表情が固まるとと共に数センチほど舞い上がるり、地面に倒れる。
「悪いな、こいつが答えだよ」
遅れて、連中が銃を抜く中で、更にもう一丁の左手が火を吹く。
「BAN」
テンガロンハットの手下が撃たれた為か、体を痙攣させるように地面に倒れる。
だが当時に今度はボスらしき人物が人質を放り出すと共に、背中に背負った刀らしきジャパンサーベルを抜くと、飛んでくる銃弾を切り捨てる。
「無断だ、俺の武器は刀だ、指鉄砲は刀には勝てんぞ」
「そうかい」
指鉄砲を構えると共に懐に手を突っ込んだハンターの服を貫くように一発の銃弾がボスを撃ち抜く。
「ぐっ」
断末魔の言葉と共にボスが地面に倒れる。
ハンターの銃はもう一丁あったのだ、一発装填式の古い単発銃、思わぬ不意打ちに倒れた無頼漢のボス。
「ありがと、ハンターさん、助かりましたわ」
先ほど助けた人質の女性がハンターに側にかけよってくると共に、いつの間に捨てていたハンターの拳銃が握られ銃口がハンターに向けられていた。
「驚かないようね」
冷静な表情で、男はもう一個の棒つきキャンデーを咥え直す。
「だいたい、わかっているさ、あんたが黒幕というのも、バウンティハンターを狩る凄腕一味の噂くらいな」
バウンティハンターは一味の服や靴は汚れているのに人質の衣類に傷も汚れもなく、靴もそこまで汚れていないこと、そして銃を使っている相手に手にできる指タコがあることを指摘した。
「もう、名推理ついでに答えてあげるわ、私があんたの狙う本物の賞金首よ、そしてあんたが12人目に狩るバウンティハンターよ」
余裕の笑みをお互いに向けるハンターと真のボス。
だが、一向に舞台の幕は降りず、ガチガチと銃の引き金を引いても弾が出てくる兆しはない。「悪いな、そいつは弾が抜いてあるんでな、重さも反動調整のために拳銃に重石を入れて調整済みだ」
「ちょっと、待って、待って」
カチッと撃鉄に指がかかると共に、銃口がターゲットに向けられる。
その時だった、空気を切り裂くように“ヒロシ、ご飯よー!!”
先ほどまでの西部の荒野から、どこにでもある公園の風景に戻り、夕食のカレーの匂いがどこからともなく香り、さっきまでのガンマン同士の撃ち合いも、全て公園に遊ぶ少年達の想像するゴッコ遊びだったのだ。
テンガロンの無頼漢達も、バウンティハンターも全ても全て少年達の子供特有の妄想。
「タカシ、マサルも帰ろうよ、それにしてもローハイドとかおもろいよな」
「そうだな、ヒロシ、今度また西部劇ゴッコやろうぜ」
「じゃあな、タカシ」
手を振って別れる少年達の姿が夕陽に照られて、今日のガンマンゴッコも終わる。
「そういえば、あの子、どこの子だったのかな?」
「さあな、マサルかタカシの友人じゃなかったの?」
「知らないよ」
公園が夕闇に沈む中で、先ほどまで誰も気が付かれなかった一人の少女がゆっくりと立ち上がる。
「今回も私の負けね、まあ気紛れであの子達と遊べたのは良かったわ、まあもしあの賞金稼ぎが負けていたら、お父様に頼んで世界を破壊する予定だったけど、まあ次の機会にするわ、次は50年か、それとも100年後かしらね?」
そして夕闇にすっと、少女の姿が消え去った。
遠くでキイキイと誰かの自転車の音、そしてカラスの鳴く声もする、今日も平和に一日が終わる、それは実に薄氷を踏むような微妙なバランスで世界は成り立っているのだ。
これは天使か悪魔が現世の人間を図る試練だったのか?それとも、神の気紛れだったのか?
古い書物に残る基準には神様は2つの土地を悪徳と退廃の地として燃やそうとした時に、街の人の中に十人でも正しい人間がいないのならば焼き払うと逸話もある、神様の考えは人間なんぞが理解できないのだ、もしかしたら単に遊ぶのが好きな女神だったのかしれませんね。
西部劇のゴッコ遊びと、そのゴッコの勝敗を神様が戯れというオチに終わる。