「出迎えの抱擁とか労いの愛撫とかはないんですか!!!」(クソデカ大声)

酒寄家次男坊のオリ主が彩葉と紅葉の喧嘩に割って入る話。

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第1話

 

「……なんや朝綺(ともき)か、帰ってたんか。」

 

「うっわぁなにその無愛想な挨拶は!せめてちゃんとおかえりって言って!!!寂しいから!!!」

 

「はいはいおかえり、そんで部屋行ってて。今は彩葉と話してるんやから。」

 

「彩葉姉さんとは話すのに僕とは話せないってこと!!?こんなに可愛い息子が目の前にいるのに!!?」

 

「……あんなぁ朝綺、お母さん今真面目な話をしてんねん。」

 

「真(・)面(・)目(・)な(・)話(・)なのに母さんの鉄拳が飛んでるのはどういう了見?思わず彩葉姉さんのこと庇ったけど、僕の頭頂部のたんこぶを鑑みるに結構な威力じゃないこれ?本当に話し合いしようとしてる?」

 

「それは…まぁ、愛情や。」

 

「だとしたらスパルタ教育すぎだよ…んで?今度はなんで喧嘩なんかしてたわけ?」

 

「…朝綺には、関係ないやろ…。」

 

「いやつってもよ彩葉姉さん?お二人の仲裁せにゃならんのだから、無関係ではないでしょうよ。」

 

「アンタが仲裁?冷やかしの間違いやろ。」

 

「なんてこと言うの母さん。一体僕がいつ冷やかしたって言うんだっ…!僕はもう、2人のことが心配で心配で!」

 

「先週の言い争いの時に、急に実況解説つけ始めたのは誰やったやろな?」

 

「やぁだぁ…そんな人いるのぉ?朝綺、わかんなぁい!」

 

「もう一発いっとくか、朝綺?」

 

「すみません私が愚かでしたのでその拳は下ろしていただけないでしょうか…。」

 

 

 


 

 

 

「ははぁ〜ん、なるほどなるほど。彩葉姉さんが体調不良で病院に行きたいと。そんで母さんはそれを聞いて甘ちゃんすぎると。」

 

「それは一部だけ切り取りすぎやろ。私はただ…。」

 

「いやぁ一部と言っても核心部分じゃん。それ以外のこともつっつこうとするから話が拗れるんだよ母さんは。」

 

「アンタが首突っ込んで来て余計に拗れるのがオチなんやから、あんま変わらへんやろ。」

 

「わーわーきこえなーい!」

 

「都合のいいオツムやわ…。」

 

「オツム!?耳じゃなくて!?…んまぁいいや。とりあえず、母さん…一言言わせて欲しい。」

 

「改まって…何を言うつもりなん。」

 

「いや、血の繋がっている家族として言うのは、本当に心苦しいことなんだけど、心を鬼にして言わせて欲しい。」

 

「アンタ本当に何を言うつもりなん?」

 

「母さんはね…分類学上、ヒト科ヒト族ホモサピエンスに当てはめるのが失礼なくらいには人間をやめているんだ。」

 

「アンタ本当に何を言うてるん???」

 

「辛いよね…わかるよ。否定したいよね…でもね、やめてるんだ。母さんは。」

 

「やめてへんわ。ちゃんと人の股から出てきとるわ。顔あんま覚えてへんけど。」

 

「嘘だ〜絶対。4人養いながら京大合格とか人間やめてないと出来ないって…。母さんは自分ができたから言ってるのかもしれないけど、普通は無理だよそんなの。」

 

「なにも同じことをしろとは言ってないやん。」

 

「同じことをしろとは言わないけど、なんで同じ風に出来ないのかって圧かけるじゃん、母さんは。彩葉姉さんにはできないけど母さんはできることって沢山あるでしょ?期待するのは別にいいけど、押し付けるのは違うじゃん。」

 

「別に、押し付けてはいないやろ。」

 

「いいや押し付けてるね。今回に限っては間違いなく。病院行きたいっていうことに甘ちゃんだって言うのは、母さんが病院にお世話になったことほぼないからでしょ?それって押し付けなんじゃないの?」

 

「日頃から体調管理をしっかりしていれば、誰でも行く必要なくなるわ。」

 

「極論はね。母さんはその極論が達成できちゃっただけ。9割の人間は無理だしどこかで失敗するよ。その失敗を咎めるのはいくらなんでも酷だって話。」

 

「休む為の方便の可能性だってあるやろ。外から見ててそんなに体調悪そうに見えへん。」

 

「心因性の病状は表に出にくいものでしょ。じゃなきゃ鬱病とかも社会問題になってないって。あと寝れてないとかは嘘じゃないと思うよ?だって彩葉姉さんの部屋から最近寝息聞こえてこないもん。」

 

「………待って朝綺、寝息ってどういうこと?」

 

「寝息は寝息だよ、彩葉姉さん。それも分かんないくらい疲れちゃったの…?」

 

「いや違うそこじゃなくて、朝綺は今まで私の寝息ずっと聞いてたってこと?本当なら普通にちょっと気持ち悪いんだけど…。」

 

「………。それにさぁ、母さん。」

 

「えっちょっ無視?」

 

「母さんさ、僕が右(・)手(・)痛(・)い(・)って言ったらどうする?」

 

「ッ…!それはっ…病院連れてくやろ…。」

 

「じゃあ彩葉姉さんは?なんで彩葉姉さんが病院行きたいって言ったら甘ったれるなって断るの?それってちょっとおかしくない?」

 

「アンタのと彩葉のは別物やろ…。」

 

「ううん同じだよ。体の不調と心の不調。どっちも同じ、体があげてるアラートなんだから。」

 

「………。」

 

「男女差別だなんだとか言うつもりはないけどさ?家族内で対応変わるのは流石に止めようよ。それで不和を生んだら目も当てられないし、僕気まずいよめっちゃ。優遇されてる側だろうし。」

 

「……はぁ…彩葉からは、なんか言うことはないんか?」

 

「っえ?あ、いや…その…。」

 

「私へのお願いも全部朝綺に言わせる気なん?」

 

「……さ、最近…本当に全然寝れてなくて、寝不足治らなくて…体調良くないから……病院、行きたい…です。」

 

「……はぁ…………来週。」

 

「……へ?」

 

「来週、時間作るから。」

 

「…う、うん。ありがと…。」

 

「…………朝綺、そのニチャついた気味の悪い笑顔こっちに向けんといて。」

 

「あらま、母さんにも漸く人の心が芽生えたと思った矢先に!なんて心無い事を言うんだ!愛おしい笑顔だろどう見ても!」

 

「へらず口ばかりよぉ喋りはるなぁ?その口縫い合わせたろか?」

 

「いやぁたすけてぇ!虐待されるぅ!児童虐待の防止等に関する法律の第3条にある「何人も、児童に対し、児童虐待をしてはならない。」という法が犯されてしまうぅ!口を縫い合わせるのは第2条の第1号「児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。」に該当してしまうからなぁ!誰かぁ!男の人呼んできてぇ!」

 

「なんでスラスラ何も見ないで出てくるん…?はぁ…急に喧しくならんといてや、温度差で頭痛くなるわ…。」

 

「そりゃあ、あの敏腕弁護士である酒寄紅葉さんの息子ですから?六法全書の中身丸暗記なんて出来て当然ですよ!ねぇ!」

 

「…母さん、私できないんだけどそんなこと。」

 

「私もやれなんて一言も言ってへんよ…。」

 

「彩葉姉さんがはらぺこあおむしを音読してる横で六法全書を読んでいた男だ…面構えが違う。主にハンサム的な意味合いで。」

 

「それ自分で言うの?」

 

「私でも朝久さんでもない…誰に似たのかしら、本当に…。」

 

「ツラは母さん似だよ!吊り目だからね!」

 

「見た目の話ちゃうわ!」

 

 

 


 

 

 

「…はぁ。朝綺と喋ってたら、彩葉に何言おうとしてたか忘れてしもたわ。」

 

「頭の中僕のことでいっぱいってこと!!?母さん僕のこと大好きすぎぃ。ちな僕も母さんのこと好き。」

 

「頭痛の種としてならいっぱい入ってるわ…。」

 

「んもぅ…素直じゃないんだから、母さんは。」

 

「今すぐ素直になってウザいって面と向かって言ったろか?」

 

「それはもう実質言ってるのと同じでは?…まぁまぁ、喧嘩は一旦お開きでいいでしょ。頭冷やすの大事よ。」

 

「別にカッとなってるわけやあらへんけどな…。」

 

「母さん冷静な態度のままでヒートアップするタイプだからね。今も普通に見えて結構頭に血が上ってると思うよ?」

 

「……はぁ、はいはい。今日のお話はこれで終わりや…これでええんやろ?」

 

「よろしい!ついでに買い物行ってクールダウンしてきたら?牛乳と卵無くなってたし、野菜も数少なくなってたよ?」

 

「なんでアンタは冷蔵庫の中身まで把握してるんや…?」

 

「成長期だからね…つまみ食いやめらんなくて。その時にチラホラ目に入ってさ。」

 

「…鍵付き冷蔵庫、検討してもええかもな…。」

 

「その場合は、朝方になって冷蔵庫の前で倒れ伏す僕が発見されることになるけど、問題なさそ?」

 

「一晩で飢えんといて……お腹減ったら何か作ったるから私に言いなさい、今度から。」

 

「やったー!母さん大好き愛してる!」

 

「私のエコバッグどこにあるか知らん?」

 

「この前あそこの戸棚にしまってたと思う!あと母さんからの愛してるは!?」

 

「あったあった…彩葉は?何か足りないものとかあらへんの?」

 

「あ、えっと…赤のボールペンと…シャーペンの芯。もう残り少ないから…。」

 

「そう、分かった。」

 

「僕は母さんからの愛が足りてないです!!」

 

「すぐに出るから、鍵閉めてもらってもええ?」

 

「あれ?僕の声届いてない?幽霊になった?彩葉姉さん、僕透けてたりしない?」

 

「う、うん…。鍵閉めとく。」

 

「あっナチュラルに無視されてる。か、母さん!いつものスーパーより駅前の方のスーパーの方が良いかも!郵便受けにクーポン付きのチラシ入ってたし、卵安かったから!」

 

「あらそうなん…?せやったらそっち行くわ。」

 

「声聞こえてんじゃてねぇか!愛を返すのが恥ずかしいなら、代わりにデザートのプリンとか買ってきてくれてもいいk」

 

「ほな行ってくるわ。」

 

「最後まで話を聞かんかいっ!!!…ったく、母さんのツンデレには苦労させられるぜ。」

 

「………朝綺。」

 

「んー?何?………あの、背中から抱き抱えるの止めてくれません?誠に遺憾ながら僕の身長が低いせいでテディベアみたいになってるんだけど。足プランプランなんだけど。」

 

「……助けてほしいなんて、言ってない。」

 

「……。」

 

「1人でちゃんと、お母さんと話せるって……前にも言った…。」

 

「……うん、そうだね。心配性だからさ、つい割って入っちゃった。余計なお節介だったかも。」

 

「………あと、寝息聞かないで。キモいから。」

 

「あんなの母さんを言い負かす為の方便だよ。実際に聞こえるわけないじゃん。」

 

「………。」

 

「…ちょっと〜、僕の背中に顔埋めたまま泣かないでよ〜。制服汚れちゃうじゃん。せめて私服に着替えさせてよ。」

 

「……………ぃ゛や゛。」

 

「えぇ…せめて座らせて〜。」

 

「……………朝綺。」

 

「ん〜?なんですか彩葉姉さん。」

 

「……………。」

 

「え無視?嘘やん。そっちから声かけておいて?」

 

「………………ありがと。」

 

「…ふふっ、どういたしまして。」

 

 

 


 

 

 

「さて…あれから座ったはいいものの、泣き疲れて寝てしまった上に枕にされた…。」

 

「(しっかし……本当に隙があれば喧嘩ばっかだな。)」

 

「(この人、親と反りが合わないから飛び出してきたって話だけど…あれマジなんだな。)」

 

「(病院行かせてもらえないとか、映画見てる時はんなわけあるかよって思いながら見てたけど…いざ目の当たりにすると恐ろしいことこの上…。)」

 

「………ん?」

 

「(病院……甘ちゃん……紅葉さんの鉄拳……。)」

 

「(え待ってこれってもしかして………。)」

 

「いろPの上京の機会、潰しちゃったかも………?」

 

 






酒寄朝綺(さかよりともき)
・酒寄家の次男坊で彩葉の2つ下。全体的にうるさい。
・転生だの原作だのと独り言が多いので、多分厨二病。
・右手は事故によって欠損した。

酒寄彩葉
・結局家は出て行くものの、弟がお母さんとのクッションになってくれたので、幾分かはマシなメンタルで原作スタートしてる。
・兄が離れていったことへの反動を、無意識に全て弟に向けてる。

酒寄紅葉
・朝綺が意識して間に入ろうとしてくれてるのは理解している。
・朝綺に対してもう少し可愛げと落ち着きが欲しいとは思ってる。
・癪ではあるがデザートは買ってきた。

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