クソボケTS男が、ディストピアSF世界の女の子たちを曇らせる話 作:霧夢龍人
「……どんな手品を使ったのかしら」
レディオンは、モニターに映し出された少女の姿を見て首を傾げた。
先程まで輸送船を取り囲んでいた魔外者の反応は、綺麗さっぱり消失している。船体の損傷も、ナノマシンによる修復が進んでいるらしい。少なくとも、目の前の危機は脱したと見ていいだろう。
問題は、その立役者である。
宇宙空間に浮かぶエクスは、銃を手にしたまま、ぴくりとも動かなくなっていた。
まず持って、レディオンはエクスがあの状況を切り抜けられると思っていなかった。それは
正義だとか英雄だとか抜かす馬鹿は数多く見てきたが、その全てが寿命を全うすることなく死んでいく。それは、かの有名な英雄──マキナでさえもそうだった。
故に今回も、せっかく拾ったペットが死んでしまうと期待せずに眺めていたのだが。
「艦長、アイツの回収を急ぐわよ。色々と聞かなきゃいけないことがあるからね」
「わかってるよ。ボクも気になる点は幾つかあるしね」
思っていた以上に、件のペットは厄介な代物だったらしい。
レディオンはモニターに映るエクスの姿を眺めながら、指先で端末を操作した。生体反応は確認できている。少なくとも、死んではいない。だが、あの戦闘で何が起きたのかを知るには、本人から話を聞く必要があるだろう。
何しろ、百を超える魔外者を単独で殲滅したのだ。それも、STAR ARMS製の高性能武装を用いて。
ロマン砲という言葉が存在するが、STAR ARMS社の製作した武器はそれの極地に該当する。人が使うことを想定していないような威力でありながら、流通量は極めて少ない。
とはいえ、高威力による反動で、あそこまでボロボロになるはずがない。
レディオンから見て、エクスの広範囲射撃による傷の多くは自傷によるものだ。とてもじゃないが、アレがただの反動だとは片付けられない。
「それにあの再生能力……
「君が誰かをスカウトするなんて珍しいと思ったけど、これもまた星霊さまのお導き、か」
「……アイツが勝手にスカウトされに来たの」
「はいはい、そういうことにしておくよ」
微笑ましそうにレディオンを眺めるポラリスの目は暖かい。
そんな視線に辟易してか、レディオンは何もない宇宙空間を眺めていた。彼女の眼前に広がる光景は、宇宙の暗闇を照らす星々の輝きだけ。
既に撤退してたであろう民間輸送船の姿はなく、魔外者を倒せば落ちるはずのエーテルの結晶も見当たらない。
何度でも言おう。
魔外者は惑星のエネルギーを喰らう存在であり、体内にエーテルを内包している。それが強かろうと弱かろうと、必ずエーテルの結晶を落とす。
それが、今回は一つも存在しなかった。
百を超える魔外者を殲滅したにもかかわらず、エーテルの結晶が一つも落ちていない。通常の戦闘であれば、まずあり得ない現象だ。
魔外者の死骸が残らないこと自体は珍しくない。討伐時に発生するエネルギーの反応によって、肉体が崩壊する場合もあるからだ。しかし、エーテルまで消失するとなれば話は別である。
まるで、最初から何も存在していなかったかのように。
「……艦長。今の戦闘記録、全部保存しておいて。映像だけじゃなくて、周辺のエーテル濃度や生体反応の推移も含めて、ね」
「ふふ、分かったよ
君も艦長使いが荒いね」
レディオンは頬杖をつきながら、次々と表示される解析結果に目を走らせた。
聞きたいことは山ほどある。
それこそ、気絶しているエクスを叩き起したいくらいには。
だが今は──。
「あのアホペット……帰ったら説教だわ」
拾ったペットが生きていることに、胸の奥につっかえていた溜飲が下がった自分がいた。
目が覚めたら、目の前に
グラデーションがかった青色の髪と琥珀のように煌めく瞳を持った、この世のものとは思えない美しさを誇っていた。
気怠げな目元は薄く引き伸ばされ、柔らかそうな唇は硬く結ばれている。額には青筋が浮かんでいて、心做しか背後に般若の面を付けた怪物が浮かんでいるようにすら思えた。
あ、死んだわ俺。
「お、おっはようございまーす……」
「………遺言はそれでいいのかしら」
「あああの、その、えとですね、処分は如何様にも受け取りますんで!も、もうペットの如く!服従の意を示します!あ、ほら、お腹撫で──って危なっ!?」
俺の頬を掠めて銃弾が地面にめり込んだ。
避けなきゃ間違いなく死んでた。あれ、俺ちゃんと顔あるよね?回避ミスって抉れてたりしないよね?
アンパンマンの如くボコボコになった顔を想像して気持ち悪くなりながら、俺はふかふかのベッドから飛び降りて、そのままスライディング土下座をかました。
「大変っっっ、申し訳ございませんでしたァァァ!!!」
そして、床に額を擦り付ける勢いで全力の謝罪をする。
俺はこの日ほど、土下座という文化を築き上げた謝罪文化の結晶に感謝することはないだろう。あらゆる罪を許してもらえるとは限らないが、少なくとも初手で『
たぶん……。
「……はぁ、ペットのくせにあんなに身体張って……モニターから見ていたけど、あんなの特攻と変わらないじゃない。あの銃に関しても、もし通用しなかったらどうするつもりよ」
「あー、えと。そん時は銃を投げ捨てて、注意を引こうと思ってました。魔外者がエーテルに惹かれるなら、銃から発せられるエーテルの反応を利用して囮代わりになれるかなって。
まぁ、思ったより倒せちゃったんでそのまま押し切ったんすけどね!ハハ──ヒッ!?」
今度は三発飛んできた。
全部俺の顔をスレスレで通過し、背後の壁に穴を開けた。
…………。
「すみませんでした」
「よろしい。お仕置する手間が省けたようで何よりだわ」
銃口から立ち上る煙をふっ、と吹きながら、恐ろしいことを告げるレディオンさん。瞳孔ガン開きの顔で冗談とは思えない台詞を淡々と言われ、今は無きファントムぽこ〇んが縮み上がるのを感じる。
俺は誓った。
絶対にこの人に逆らってはいけないと。
「それで首輪を着けられてる……って事で間違いないかい?」
「そうっす。助けてください、艦長ぉ……」
「ごめん、ボクには無理だ。
だいたいね?キミの首輪を外したとなると、普段はクールなMrs.レディオンの怒りに油を注ぐ羽目になる。ボクなんて焼き鳥にされちゃうよ」
笑えねぇ冗談なんすけど。
自分から志願した癖に、ペットとしての自覚が足りない──そう言われて嵌められたゴツメの首輪。ドMな俺からすればギリ嬉しいが勝つが、美少女に首輪を嵌める美少女という絵面は些か倒錯的すぎる。
それに、散々質問されたし色々身体を調べられた。それはもう、余すところなく。
持っていた銃やら剣、ID等々……俺のIQが53万じゃなければ切り抜けられなかっただろう。全部、田舎出身なんで分かりませんとか言って通しただけだが。武器に至っては俺しか使えない設定になっているらしく、それに気付かなかったレディオンさんが引き金を無言で引き続けるレアな光景が見られた。
あ、もちろん日記だけは守り通した。あんなん見られたら説明のしようがないからな。
そんな肝心のレディオンさんはというと、今は自室に引きこもって調べ物をしているらしい。
「こうなるとMrs.レディオンは長いんだ。ご飯の時間になっても出てこないからね……ま、今のうちにキミに話して起きたいことがあるから、ちょうどいいんだけど」
「えと、なんの話ですか?艦長さんから船降りろって言われても、俺行き場ないですよ?」
「ふふっ、違うよ。
そもそもボクはキミを歓迎している。この話は──そうだね。ボク達が
Mrs.エクス。キミは、エーテルがどんなものか詳しく知っているかい?」
「エーテル、ですか?」
思わず聞き返した。
そりゃ知っている。
魔外者が体内に保有しているエネルギーで、討伐すると結晶として残る。そこまではレディオンさんの説明と日記による補足である程度の理解はあるはずだ。
だが、艦長が求めている答えとは違ったらしい。
「いいかい?エーテルっていうのは、言わば星のエネルギーみたいなものなんだ。生き物が暮らし、自然が育み、生と死が循環することで生み出されるシロモノ──だから、とてつもないエネルギーを誇っている」
「は、はい。そこまではなんとなく俺も把握してますけど……」
「よろしい。エーテルは、星が何らかの理由で死を迎えれば循環が停止する。本来なら惑星に蓄積されたエーテルは徐々に散逸し、宇宙へ還っていくはず──なんだけど、ごく稀に、散逸するはずのエーテルが一点へと収束する現象が発生するんだ」
艦長が端末を操作すると、モニターに青白く輝く結晶体が映し出された。
歪な球状の物体。表面には無数の亀裂が走り、その内側では星空のような光が瞬いている。まるで、結晶の中に小さな宇宙を閉じ込めたかのような光景だった。
「『星の種』──ボク達がスターシードって呼んでるソレは、膨大なエーテルが収束されているからか、所有者の願いを叶える力を持っている」
「……願いを、叶える」
つまり、簡易版ドラゴ〇ボールのようなものだろうか?
口に出してから、俺は改めてモニターを見た。青白い結晶体が、静かに光を放っている。
俺が宇宙空間に飛び込む前、レディオンさんが艦長に渡していたものと一緒だ。あの時は何か分からなかったが……願いを叶える石、か。
科学技術の発達した世界だと思っていたが、どうやら俺の認識が間違っていたようだ。宇宙船が飛び交う時代になっても、人類は神頼みを卒業できていない。
むしろ、願いを叶える石が実在するのなら、信仰の規模も相応に大きくなっているのかもしれないな。
あーあ、つくづくディストピアな世界である。怪しい新興宗教とかで使われてそうな話だ。
「ボク達の狙いはソレだ。
法で禁止されている『
その上で聞こうか。
キミは何を望む?」
艦長の問いかけに、俺は腕を組んだ。
願いを叶える──スターシードが本当にそんな力を持っているのなら、使い道なんて一つしかない。
金? 地位? 名誉?
いらん。そんなものは、欲しければくれてやる。某海賊王もそう言ってたし。俺が求めるものは、もっと身近で、もっと切実で、もっと人類の普遍的な欲望に根差したものだ。
「……美少女」
「うん?」
「美少女と出会いたいです」
「……うんうん……ん?」
艦長は、やけに神妙な面持ちで頷いた。
流石はレディオンさんの乗る船の艦長である。話がわかる上司を持てて、俺は幸せです♡
そも、宇宙の歴史がどれほど長かろうと、美少女とイチャイチャしたいという願望は時代を超えて受け継がれてきた人類の至宝である。文明が発達しようが、惑星間を自由に行き来できようが、男の根本的な欲望なんてそうそう変わるものではないのだ。
ましてや、願いを叶える石があるというのに、願わずして何が男なんだろうか。
「要するに、恋人が欲しいということかな?」
「いえ、そこに限定する必要は感じてないっすね」
「……限定しない?」
「いえね?恋人はもちろん大歓迎なんすよ。でも、まずは美少女と知り合うところから始めたい。最初は友達として仲良くなるのもいいですし、憧れのお姉さんに可愛がられるのも捨てがたいんです。
幼なじみ系の女の子とキャッキャウフフとかも、最高じゃないっすか!
あっ、クールな美女に冷たくあしらわれながら、たまに優しくされるのもイイ……嗚呼、夢が広がりますねぇ!」
「…………そ、そうか。ボクはいいと思うよ、ウン……」
「艦長もそう思うんですか!?俺の性癖に着いてこれるなんて、これはもはや、心の友……いえ、ソウルブラザーっすよ!!!」
艦長の小さな羽をブンブンと握りしめ、俺は熱い友情の握手を交わした。鳥類の羽が握手に適しているかどうかはさておき、気持ちが大事なのだ。
たぶん。
「いや、ボクはそこまでの覚悟を求められているわけじゃないんだけどね……それにボク、メスだし」
「謙遜しないでくださいよ! この広い宇宙で、俺の夢を否定せずに受け入れてくれる人間がどれほど貴重な存在か! 艦長、俺、一生ついていきます!」
俺がそう言うと何故か死んだ目になった艦長は、ゆっくりと俺の手から羽を引き抜いた。心なしか可愛らしい羽毛がシナシナになっている気がする。
まるでモップのような……いや、気のせいか。
「……うん、まぁ。キミがそういう人間だということは、よく分かったよ」
「いやぁ、照れますねぇ!」
「褒めてないんだけどなぁ……」
艦長は深々とため息を吐くと、机の上に置かれていた端末へと視線を落とした。どうやら、俺たちの熱い友情よりも優先すべき仕事があるらしい。
やだ、寂しい。
とはいえ仕方の無い話ではある。
せっかく異星で初めての理解者を得られたと思ったのに。いや、相手はペンギンのぬいぐるみなんだが、そこは些細な問題か。外見で人(鳥だけど)を判断するなと、昔から偉い人も言っていた気がする。
知らんけど。
「ところで、Mrs.エクス」
「はい! なんでしょう、艦長!」
「キミ、明日は暇かい?」
「ええ、まあ。今のところは特に予定もないっすね。アウトローの船内マップもあるんで、覚えなきゃいけないこともあんまりなさそうですし」
そもそも、予定を立てられるほどこの世界に馴染んでいない。
身分証明書の扱いも分からなければ、通貨の価値も分からない。外に出たところで、どこに行けばいいのかすら分からないのだ。強いて言うなら、可愛い女の子がいる場所を探したいところだが、そんなものは地球でも異星でも案外見つからない。
はぁ、どっかにいねぇかなぁ……ケツデカ未亡人エロフ。
「なら、ちょうどいい。キミに頼みたいことがあるんだ」
「……仕事ですか?」
「うん。まあ、仕事といえば仕事かな」
艦長は何やら考え込むように、短い羽を顎に添えた。
その仕草が妙に様になっているせいで、俺は一瞬だけ見入ってしまった。ぬいぐるみのくせに、どうしてこうも人間臭いのだろうか。中に人でも入っているんじゃないかと疑いたくなる。
……ないよな?
「実はね、ちょっと口説き落としたい美少女がいるんだけど」
「ほう」
「ああ、なかなか仲間になってくれなくてね。何度か声をかけてみたんだけど、どうにも上手くいかないんだ」
「…………なるほど」
「ってことで。新人のキミに頼むのもなんだけど、代わりにナンパしてきてくれないかい?」
「………………」
俺は無言で艦長を見つめた。
今、なんと言った?口説き落としたい美少女とか言ったよな。それはつまり、俺がその子をナンパしてこいってことで間違いないんだよな。
──俺は両手で顔を覆った。
神はいる。
間違いなくいる。
ディストピア世界だとか抜かしていた自分を殴り飛ばしたい気分だ。
ありがとう、艦長。
ありがとう、宇宙。
今なら銃弾で耳を削がれてもギリギリ文句言わないよ。
「もちろん、ただでとは言わないよ。上手くいけば報酬も出すし、キミにとっても悪い話じゃないと思う」
「お金まで貰えるんすか!?もちろんやりますよ!」
「おや、早いね」
「むしろやらせてください」
「まだ詳しい説明もしていないんだけど……」
「美少女を口説くんですよね?」
「うん、まあ……そうだね」
「ならば話は簡単です。あのレディオンさんを口説き落とした俺に、どうかお任せください!」
俺は勢いよく胸を叩いた。
前世では、大学生という肩書きを持ちながら、講義に出る以外は特にこれといった実績を残してこなかった俺だが、こと美少女との出会いに関しては並々ならぬ情熱を持っている。
そもそも、俺の夢は美少女と出会い、仲良くなり、あわよくばイチャイチャすることなのだ。そんな俺に、わざわざ美少女を口説く仕事を依頼してくれるとは。これはもう、天職と言っても過言ではないだろう。
それを分かってるなんて──かー、卑しか船長ばい!
「それで、その子はどんな美少女なんですか!? 年齢は!?性格は!?好きな食べ物は!?趣味は!?あ、あと、彼氏の有無も重要ですね!」
「ボク、Mrs.エクスがこわいよ」
「なんてこと言うんすか!相手を知ることこそ、口説き落とすための第一歩ですよ!?」
艦長は納得いってなさそうな顔で端末を操作した。
モニターに映し出されたのは、青い海と白い砂浜。それから、空に浮かぶ無数の広告ホログラムや、色鮮やかなネオンの光を放つ巨大な建造物の数々だった。
まるで、地球のリゾート地を何倍にも拡張したような光景である。
「惑星シームーン。通称、娯楽の惑星だよ」
「……娯楽の惑星?」
「そう。観光業が盛んで、銀河中から旅行客が集まる場所なんだ。カジノに劇場、遊園地に温泉施設……とにかく、娯楽に関するものなら大抵揃っている。もちろん、観光客向けの飲食店や宿泊施設も充実しているよ」
「ほほう……!」
なるほど。
つまり、遊びに行くにはうってつけの惑星というわけだ。しかも、そんな場所に美少女がいる。なんてことだ、最高じゃないか!
仕事という名目でリゾート地を訪れ美少女と出会い、上手くいけば仲間にまでなってくれる。これを僥倖と言わずして、何を僥倖と呼ぶのだろうか。
「ちなみに、その美少女っていうのは?」
「それは現地に着いてからのお楽しみ、かな」
「ええっ!? そこは教えてくださいよ!」
「事前に情報を教えすぎると、先入観が生まれるだろう? キミ自身の目で見て、話して、判断してほしいんだ」
「……なんか、それっぽいことを言って誤魔化してません?」
「はははっ。どうだろうね」
怪しい。
実に怪しい。
良く考えれば、こんなにきゃわわな艦長が何度も口説いて駄目だった相手を、初対面の俺が口説き落とせるものなのだろうか。普通に考えれば、無茶振りにもほどがある。
だが、しかし。
俺にはある。
その美少女に負けないと断言出来る顔面偏差値と、大学生活で培ってきたナンパテク。そして何より、美少女と仲良くなりたいという純粋な欲望が!
「分かりました。詳しい事情は現地で聞くとして、俺に任せてください。必ずや、その美少女を口説き落としてみせます!」
「うん。期待しているよ」
「それで、俺は誰と一緒に行けばいいんですか? レディオンさんも同行するんでしょうか?」
「いや、今回はキミ一人で行ってもらうよ」
「…………え?」
俺は目を瞬かせた。
「一人、ですか?」
「うん。シームーンは観光惑星だからね。基本的に治安もいいし、特別な危険もない。わざわざレディオンを付き添わせる必要もないだろう?」
「なるほど……」
それはちょっと寂しいな。
せっかくレディオンさんと一緒に宇宙を旅しているのだ。どうせなら、任務だって一緒にこなしたいし、観光だって一緒に楽しみたい。まあ、彼女からすれば、俺は拾ってきたペットに過ぎないのかもしれないが。
それでも、俺はレディオンさんのことが大好きなのである。
「ちなみに、旅費や滞在費は?」
「もちろん、こちらで負担するよ。必要なものも一通り用意しておくから、キミは身一つで行ってくれればいい」
「おおっ! 至れり尽くせりじゃないですか!」
「その代わり、仕事はきちんとこなしてくれたまえよ?」
「もちろんですとも! 美少女のためなら、俺はどこへだって行きます!」
「……うん。その熱意は、ぜひ別のことにも向けてほしいものだね」
艦長は苦笑した。
失礼な。俺だって、やるべきことはやる男である。美少女にうつつを抜かしてばかりではないのだ。
「それでは艦長、行ってまいります!」
「うん。頑張っておいで」
俺は敬礼をして、艦長室を後にした。
至れり尽くせり過ぎて本当に仕事か疑うレベルだが、人生は楽しんだ者勝ちである。
俺は明日から始まる夢のような任務に胸を躍らせながら、自分に割り当てられた部屋へと戻った。
待っていろ、シームーン。
この俺が、件の美少女とやら口説き落としてやるぜ!