悪役魔法少女は負けず嫌い   作:勘違い大好き侍

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悪の幹部っていいよね


悪役魔法少女は負けず嫌い

 

【魔法少女】

 

この言葉を聞いた時、どんなものを思い浮かべるだろう。

 

きっと多くの人が、フリルを身にまとった可愛い少女のことを思い浮かべると思う。

もしくは正義のために、皆の笑顔のために戦うヒロイン。そんな彼女たちを思い浮かべるだろう。

 

だが、魔法少女はそれだけではない。何事にも例外が存在する。

 

 

 

 

そう、私である。

 

 

 

私は悪の魔法少女だ。

悪の組織「クラガリ団」の幹部であり、唯一の魔法少女、名をピュアブラック。

そして現在お仕事中。

 

 

「今日こそ勝たせてもらうよ、ピュアカラーズ!」

「っ!また現れたね、ピュアブラック!」

 

 

私は黒く染まったマジカルステッキを目の前の魔法少女たちへと向ける。

私の後ろには人間の暗い心から生まれた怪人「クラガリーン」が立っている。

 

魔法少女ピュアカラーズは私の宿敵だ。

我々クラガリ団の目的である、世界を黒に染めることを妨害してくる目障りなやつらである。現在、連敗記録達成中でもある(7敗)

 

 

「あなたも魔法少女なのにどうして!どうしてクラガリ団にいるの!?」

「そんなのあなた達には関係ない!私にはここが居場所なんだ!行け、クラガリーン!」

「くらくらりーん!」

「っ……!?」

「ピンク!」

 

何故か必死の形相でピュアピンクの言葉を無視して手下の怪人に命令を出す。

何やら辛そうだが、気にする余裕なんてない。今回こそ勝たないと本当にまずいんだよ!ノルマ的に!給料引かれちゃう!

あっ、攻撃がイエローに防がれた。

 

「ありがとうイエロー!」

「えへへ、大丈夫だよ!」

 

ピュアイエローはピュアピンクに向かって、にぱっと笑顔を浮かべる。

うんうん、仲良しで何より。  

そのまま二人で仲良く帰ってくれないかな。私、今日こそ勝ちたいんだけど。

 

「ブルー! 今だよ!」

「了解!」

 

ピュアピンクの声に応じて、ピュアブルーが動く。  

右手に持ったステッキを掲げると、先端に青い魔力が集中していく。

まずい!

 

「クラガリーン! ブルーを止めろ!」

「くらくらりーん!」

 

私の命令を受け、クラガリーンがピュアブルーへと突進する。

よし、いいぞ!  そのまま体当たりして、ステッキをへし折ってしまえ!

 

「させないよ!」

 

ピュアピンクがクラガリーンの前に飛び出した。

ピンク色の光が弾け、巨大なハート型の障壁が出現する。

 

 

「マジカルハートシールド!」

「くらっ!?」

 

 

クラガリーンの突進が障壁に阻まれた。

……は?

いや、待て待て待て。

今の、そんな技じゃなかっただろ。  

先週まで普通の防御魔法しか使ってなかったじゃん。

なんで急にそんな便利な技を!?

 

 

「ふふっ、驚いた? この前の特訓で新しい力を身につけたんだ!」

「そうそう! ピンク、すっごく頑張ってたんだから!」

「イエロー、ありがとう!」

 

 

互いに見つめ合い、笑顔を交わす二人。

……ああ、そうですか。  

特訓ですか。頑張ったんですか。偉いですね。

こっちは今月のノルマが達成できなかったら給料が減るんですけどね。

 

「ブルー!」

「任せて!」

 

ピュアブルーのステッキから、無数の氷の矢が放たれた。

 

 

「くらくらくらーっ!?」

「クラガリーン!?」

 

 

私の可愛い部下が、あっという間に氷漬けにされてしまった。

くっ……!

このままじゃ、また負ける。

いや、まだだ。

まだ私は負けていない。

敵の技が増えたなら、それを上回る力でねじ伏せればいい。

私はステッキを握り直し、魔力を集中させる。

 

「闇よ、集え!」

 

黒い魔力が渦巻き、私の周囲に集まっていく。

 

「な、何あの魔力!?」

「ピンク、気をつけて! あれは今までと違う……!」

 

よし!

その反応だ!

ようやく私の本気を見せる時が来たようだな!

 

 

「これが私の新たなる力……! ブラック・ノワール・インパクト!!」

 

 

黒い閃光が戦場を駆け抜けた。

地面を砕き、瓦礫を吹き飛ばし、ピュアカラーズの三人をまとめて飲み込んでいく。

 

「きゃあああっ!?」

「うわあああっ!」

「みんなーっ!?」

 

……

…………

……よし。

今度こそ、決まった。

私はゆっくりとステッキを下ろした。

煙が晴れていく。

砕けた地面。  倒れた怪人。  そして、膝をつく三人の魔法少女。

勝った。

勝ったぞ!

七連敗からの脱出だ!

これで今月の給料は守られた!  帰ったら冷蔵庫にあるプリンを食べよう。いや、今日は二個食べても許されるはずだ。

 

「まだだよ……!」

 

ピュアピンクが、ふらふらと立ち上がった。

……は?

 

「みんなの力を合わせれば、きっと……!」

 

ピンク色の光が、三人を包み込む。

嫌な予感がした。

いや、ちょっと待って。

その光、何?

なんか見たことあるんだけど。

 

「私たちの想いを、ひとつに!」

「うん!」

「もちろん!」

 

ピュアピンク、ピュアブルー、ピュアイエロー。

三人のステッキが輝き、空中に巨大な魔法陣が浮かび上がった。

その中央に現れたのは、見覚えのない宝石だった。

いや、見覚えがないというか。

明らかに新しいアイテムだった。

おい。

おいおいおい。

 

「これが……私たちの新しい力!」

「みんなの絆が、奇跡を起こしたんだ!」

「うん! 絶対に負けない!あなたを救うまで!」

 

ふざけんな。

ふざけんなよ!?

なんで毎回そうなるんだよ!

こっちは必死に修行して、魔力を練り上げて、三週間もかけて新技を開発して、ようやく勝ち筋が見えたと思ったら!

絆! 奇跡! 新アイテム!

そんなもん、こっちにだってくれよ!

 

「三人の心をひとつに! 輝け、ピュアカラーズ!」

 

眩い光が戦場を覆い尽くす。

私は咄嗟に防御魔法を展開した。

だが、遅かった。

 

 

「トリニティ・レインボー・エターナル!!」

「ぎゃああああああああああああっ!?」

 

 

光に飲み込まれた私は、数十メートル先まで吹き飛ばされた。

背中から地面に叩きつけられ、肺の空気が全部抜ける。

 

痛い。

めちゃくちゃ痛い。

 

あの技、絶対に前より威力が上がっている。

なんでだよ。

先週は三人がかりでも私の防御魔法を破れなかったじゃん。

新アイテム一個で性能が変わりすぎだろ。

 

「やったーっ!」

「私たち、勝ったんだね!」

「うん! これもみんなのおかげだよ!」

 

ピュアカラーズが抱き合って喜んでいる。

その光景を、私は地面に転がりながら眺めていた。

……帰りたい。

もう帰って寝たい。

できれば明日は有給を取りたい。

そんなことを考えていると、ピュアピンクがこちらに駆け寄ってきた。

 

「ピュアブラック!」

 

ピュアピンクが駆け寄ってくる。

 

「大丈夫!? しっかりして!」

「うるさい……こっちは今、敗北の味を噛み締めてるんだ……」

「どうして……」

 

ピュアピンクが、悲しそうに私を見つめた。

 

「あなたも魔法少女なのに、どうして! どうしてクラガリ団にいるの!?」

「……あなたたちには分からないよ」

「えっ……?」

「私には、ここしかないんだ。あの御方に拾われて、居場所をもらって……今さら普通の生活に戻れるわけないだろ!」

「そんな……!」

 

 

ピュアピンクが息を呑んだ。

 

いや、別に嘘は言っていない。

私は親に捨てられ、路頭に迷っていたところをボスに拾われた、衣食住も保証してもらっている。

魔法少女としての力を見込まれて幹部にまでしてもらったのだから、恩義だって感じている。

 

なんなら本当のお父さんのように思ってる、たまにご飯連れてってくれるし。

 

 

「だから、邪魔をしないでくれ! 今日こそは絶対に成功させなきゃいけなかったのに!」

「……そうだったんだ」

 

 

ピュアピンクは、ぎゅっと拳を握りしめた。

 

「あなたがそこまでして戦わなきゃいけない理由……私たちには、まだ分からないのかもしれない」

 

おっ、ようやく理解してくれたか?

 

「でも、これだけは約束する。…………私たちは絶対にあなたを見捨てないから!」

「なんでそうなるんだよ!?」

 

 

ダメだ、話が通じない。私は隙を見て逃げ出した。

 

 

 

 

 

――その日の夜。

 

 

「ピュアブラック。報告を聞こうか」

 

 

クラガリ団の本部。

玉座に腰掛けたボスが、重々しい声で告げた。

 

「……はい」

「今回の作戦は?」

「……失敗しました」

「戦闘結果は?」

「七連敗から……八連敗に記録を更新しました」

「そうか」

 

ボスは静かに頷いた。

そして、懐から一枚の紙を取り出す。

 

「さて、今月の給与査定だ」

「待ってください」

「査定結果は――」

「待ってくださいってば!!」

 

私は身を乗り出した。

 

「今回は違うんです! あと一歩だったんです! 新技も決まったし、相手も追い詰めたんです! なのに、急に新アイテムが出てきて……!」

「うむ」

「それに、あの技、絶対に威力がおかしいんですよ! 事前の情報ではあんな能力なかったんです! 反則ですよ、反則!」

「うむ」

「聞いてます!?」

「聞いているとも。つまり、お前は今回も負けたのだな」

「ぐっ……!」

 

くそぅ!正論が痛い!

 

「……いいか、ピュアブラック」

 

ボスは立ち上がると、私の肩に手を置いた。

 

「お前を拾った時から、私はお前の負けず嫌いな性格を知っている」

「……はい」

「勝てない相手に何度も挑み、何度倒されても立ち上がる。その執念こそ、お前の強さだ」

「ボス……!」

 

さすがボス!

やっぱり分かってくれている!

 

「だからこそ、次の作戦は成功させろ」

「はい!」

「失敗した場合、来月の給料をさらに減額する」

「鬼ぃぃぃぃぃっ!!」

 

こうして私は、八度目の敗北を胸に刻みながら、次なる戦いへと向かうことになった。

 

次こそ勝つ。

 

絶対に勝つ。

 

絆だか奇跡だか知らないが、そんなものに負けてたまるか。

 

私は悪の魔法少女、ピュアブラック。

今日も今日とて、世界を黒に染めるため。

そして何より、あの憎き正義の魔法少女どもに勝つために。

私は拳を握りしめた。

 

 

「……ところで、ボス」

「なんだ?」

「今月の給料、いくら減るんですか?」

「三割だ」

「ぎゃああああああああああああっ!!」

 

 

私の悲鳴が、クラガリ団本部に響き渡った。

 

 

 

 




ピュアブラック
本名:黒沢 メグミ 13歳

幼い頃、借金をした両親に売られたところをクラガリ団に拾われる。
ボスのことを本当の父のようにしたっており、ここまで育ててもらった恩返しをしたいと思っている。

負けず嫌いな性格でピュアカラーズを目の敵にしている。

好きな花はたんぽぽ、理由はギリ食べれるから
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