UC0099年1月末、地球連邦軍714部隊は戦闘態勢へと移りつつあった。旗艦”レナウン”の格納庫では整備兵達が慌ただしく機体のチェックを進めていた。
「発艦準備急げ!」
「ゼータの部品はすべて問題ありません!」
「ヨシ!ゼータを発艦させつつジムの最終チェックに入れ!」
整備兵達の喧騒の中、霧島アリス少尉は自らのゼータプラスC1型のコックピットに座り込む。
「…初めてだなぁ…これは」
「私もあまり経験はないね」
そう通信で話すのは夏野エミ中尉、コックピットに座りながら自らの機体であるジム・カスタムMk-IIの調整をしている。
「ふふ、アリスならやれるよ」
「…はい!」
少し時が遡る…2時間ほど前…
レナウンに向け低軌道連絡ステーションペンタからある要請が入った。
『サイド2 5バンチにてティターンズ残党が港湾ブロックを占拠する事態が起きた。駐留軍による鎮圧は失敗した…というわけで、714部隊は直ちに転進、サイド2 5バンチへと向かわれたし』
「了解しました」
714部隊司令官白根ハルナ准将はそれに従い部隊を動かし始める。そしてミーティングルームへはMS隊員達が集まり始める。また、レーザー通信にて僚艦ともミーティングを共有している。まずはハルナが口を開く
「敵はティターンズ残党軍とされる。敵はメインの港湾ブロックに輸送艦を乗り込ませて占拠、居住区上空に巡洋艦を侵入させてコロニー住民を人質にしている」
続けて参謀長のヘンス中佐が口を開く。
「確認できた敵戦力はコロンブス級輸送艦1隻、サラミス改級巡洋艦1隻、モビルスーツ13機だ。歩兵戦力は退却した駐留軍曰く極少数、インプラカブルの陸戦隊で対処可能だ…今回はコロニー内のためビーム兵器の使用は低出力に抑えたもののみとなる。ビーム・スマートガンも装備こそすれど、索敵装備としての活用に留め発砲は控えろ…以上だ」
そしてハルナが作戦を説明しだした…
そして現在に時は戻る…
レナウンのカタパルトからゼータプラスが発艦していく。また、それに続いてインプラカブルからの陸戦隊を乗せたランチが続く。ゼータプラスは敵の占拠したメインの港湾ブロックとは反対に位置する、サブの港湾ブロックを目指していく。続いてジム・カスタムMk-IIが発艦、こちらはメインの港湾ブロックへと向かっていく。そして、メインの港湾ブロックに近づいたジム隊へ向けてビームが放たれる。MS隊はその弾幕を前に一時的にデブリ群へと退避する。
「こちらウィザード1、敵は迎撃用ビーム砲台を占拠した模様、砲撃支援を要請する」
それに対してレナウン艦長のエイレン・ユーリ大佐が答える。
「了解、主砲、狙えるか?」
「少し遠くて…もう少し接近すれば確実にやれます」
「よし、レナウン前進、MS隊からの諸元入力も急げ」
レナウンと僚艦のベルファスト、シェフィールドがデブリ群に紛れつつ前進する。そしてハルナが口を開く。
「よし、統制射撃後にジム隊は突っ込ませる」
「はっ、了解しました」
そして主砲の有効射程内に十分捉え、エイレンが命ずる。
「主砲、撃ち方始め!」
主砲の砲撃が辺りを明るくするとともに、敵砲台が爆ぜていく。そしてそれに乗じてジム隊が全速力でメイン港湾ブロックへと突撃を開始した。
「敵モビルスーツ、捕捉」
エミが敵MSを捕捉するとともにビーム・ライフルを向けて発砲、その片腕を吹き飛ばした。さらに僚機の久保ニイナ少尉の機体の援護によりその機体はコックピットを貫かれて爆発する。
「ヨシ、ありがとう。ニイナ少尉」
「いえ!エミさんこそ…!」
マラサイ1機がエミ機へと接近、ビーム・サーベルを抜く。
「私と…やろうっていうのかな…」
エミもビーム・サーベルを抜き、それで斬りかかる。しかし、マラサイはそれを上昇し回避、そしてビーム・サーベルを逆手持ちしてエミ機を突き刺そうとする。
「やる…!でも」
エミはそれをするりと機体をくねらせて避ける。マラサイはさらにビーム・サーベルをずらして刺そうとするが、エミはそれすらも回避した。
「こいつ、強い…ニイナ少尉…は別と交戦中か」
エミは一旦マラサイと距離を取った。
「次で決める」
エミはスラスターを吹かしてマラサイへと接近、マラサイもエミ機へと向かいビーム・サーベルで斬りかかる。
「来た…!もらったよ」
エミはそのビーム・サーベルを後方へ下がって回避、そしてビーム・サーベルを空振りしたマラサイに対して突きを放った。
「…よし、ニイナ少尉の援護へ行こう」
マラサイは突きをコックピットへ食らい、その機能を停止してモノアイを消灯させた。
ゼータプラス隊はサブ港湾ブロックに取り付くまえに、コロニーの採光窓から敵の情報を収集していた。コロニーの各所へ敵モビルスーツが分散配置しており、サブ港湾ブロック入り口にも取り付いている機体を確認できた。
「プリースト2より各機へ。敵はサブ港湾ブロックも占拠している模様」
「プリースト1了解…作戦をプランCへと変更することを具申する」
ネヴィルの意見に対してハルナはそれを聞き少し考える。
「…了解、プランCに変更する。プリースト各機はエアロックより侵入せよ」
「プリースト1了解。プリースト3、4は作業へと取り掛かれ」
2機のゼータプラスとランチがコロニー隔壁にある扉に取り付く。ランチから降りた隊員が端末を使いコロニー隔壁を司るシステムに侵入する。
「よし、システムを無力化。開けろ」
2機のゼータプラスが指を使いネジのようなツマミを回し、それにより扉…隔壁を解放した。次々とコロニー内へと兵士が侵入していく。数秒で普段ならコロニー公社のシステムがエアロック解放を検知するはずだが、そのシステムは端末により無力化されているのだった。
「よし、2機ずつ侵入していこう」
コロニー内に侵入していったゼータプラスは通路へと入っていく。取り回しの悪いビーム・スマートガン装備機を後方へ据えている。また、さらに進んでコロニー内へと侵入した陸戦隊により巡洋艦の情報などを収集していく。
「プリースト2、5,6は陸戦隊より送られた諸元を入力、スマートガンのセンサーと連携して敵艦ブリッジを潰す。そしたら混乱に乗じて各砲座を潰せ。以上だ」
「「「了解」」」
ゼータプラスが通路からコロニー内壁に姿を現すとともに、ビーム・ライフルでサラミスのブリッジを破壊する。コロニー内でのMS戦が始まった。敵は混乱しつつもビームの発射源に集まろうとするが、それは別のゼータプラスにより妨害される。
「プリースト1、3、4はこのままモビルスーツを殲滅するぞ!」
モビルスーツ同士の戦闘が始まると、コロニー内各所で多少の爆発が起きる。ゼータプラス側は武装を制限してるのに対し、ティターンズ残党はコロニーでもお構いなしにビーム・ライフルを乱射する。
「この…ドアホどもが!」
ネヴィルは怒りつつ、冷静にハイザックやバーザムを撃ち抜いていった。その頃、巡洋艦の残りの武装をアリス達は潰していた。
「このまま、次は副砲」
「了解です!」
アリスはビーム・ライフルを発射、それはサラミス側面のメガ粒子砲を破壊する。順調かと思われたが、ネヴィルの次の言葉でそうでないと気づく、
「サラミスめ!操艦手が下手か思ったよりもバランスを崩してやがる!」
「それじゃ、コロニーに…!」
サラミスはどんどんバランスを崩してコロニー内壁…それも市街地の方へと流されつつあった。その下には民間人がいるのだった。
「そんなこと…!させないわ…!」
「プリースト6、なにを…!?」
アリス機がウェイブライダー形態に変形して、コロニー上空へと進んでいきサラミスと正対した。
「この位置なら居住区には当たらないはず…!」
ビーム・スマートガンを発砲。その船体をメガ粒子の奔流が貫いていく。それを何射かしていくと、サラミスが融解していきやがて空中で爆散する。
「はぁ…はぁ…これで…!」
サラミスは細かな残骸へとその姿を変え、その細かな破片は市街地への被害は軽微なもので済んだ。
「なるほどな、よくやった。プリースト6」
「はい…!」
その頃、ジム隊及びはメイン港湾ブロックの制圧を完了、戦闘は714部隊の勝利で終わった。
レナウンにはMS隊が帰艦していき、格納庫はまた慌ただしくなっていた。
「よし!MSの冷却急げ!」
「破損のチェックも済ませ!」
アリスはそんななか着艦し機体から降りた。
「初のコロニー内戦闘、お疲れ様」
そんなアリスにエミが話しかける。そう、アリスにとっては初のコロニー内という民間人がいる環境下での戦いだったのだ。
「はい…少しでも、私が被害を抑えられてればいいですね…」
「ふふ、謙遜してるね…あなたはサラミスを空中で爆破した、それだけでも十分だよ」
エミがアリスの肩を叩きながらさらに続ける。
「私は初のコロニー内戦闘の時はこう上手くはできなかったよ…だから、よくやった。偉い」
エミが背伸びしてアリスの頭を撫でた。
「…えへへ、ありがとうございますエミ中尉!エミ中尉こそ、ニイナさんから聞きましたけど格闘戦がやっぱりすごいんですね…!」
「あはは、剣道で少しは鍛えられてたのもあるかもね…それじゃ、シャワー行こっか」
「…はい、エミ中尉」
そして2人はシャワーへと向かっていった…
続く