UC0099年2月、714部隊旗艦の強襲揚陸艦”レナウン”は訓練を終えてモビルスーツが帰艦した。格納庫では整備班が慌ただしくがMSに張り付いていた。そんななか、夏野エミ中尉は愛機のジム・カスタムMk-IIから降りて1人の女性の肩に触れた。
「お疲れ様、アリス」
「エミ中尉こそお疲れ様です!」
彼女は霧島アリス少尉、同部隊のゼータプラスC1型に搭乗するパイロットだ。そして…
「シャワー浴びたらヨミについてまた色々聞きたいです!」
「ふふ、構わないよ…そろそろ休暇だしね」
エミの妹のヨミと交際している女性であった。714部隊は数日後に休暇に入ることになっており、エミとアリスはそれで地球に行くつもりである。
「にしても…ん、ホント貴方のその髪って綺麗よね、嫉妬しちゃうかも」
アリスのそのブロンドの髪をエミは見つめる。
「あはは…そうだ、エミ中尉は伸ばさないんですか?きっとヨミみたいなポニーテールとか似合いますよ!」
それを聞くエミは少し固まった。そして、少し間を置いたのちにアリスの耳元にて囁く。
「昔、ジオンに捕まったとき、髪を…色々されて、伸ばしたくないの、ごめんね」
アリスはそれを聞き顔を青ざめてしまう。
「え?…い、いえ!!私こそ辛いこと聞いちゃってごめんなさい!!」
「いいの、知らなかったし仕方ないよ」
エミは優しく微笑んでくれているが、アリスはトラウマを刺激した申し訳なさでいっぱいであった。
「大丈夫、大丈夫だから…ね?」
そう柔らかく言うエミだが、アリスには彼女の内なる過去への恐怖心が見えてしまっているようだった。
「でもエミ中尉、怖そうにしてるじゃないですか」
「…ま、こんな話はともかくとりあえずシャワー行こっか」
そうして2人はシャワーを浴びた。
その後、アリスはエミの部屋へと向かっていった。
「やっぱりエミ中尉は怖がってた…絶対そうだった」
アリスはエミの部屋のインターホンを押す。少し間を開け、エミがその扉を開ける。
「いらっしゃい、アリス」
「…さっきはごめんなさい、エミ中尉」
アリスが深々と頭を下げる。エミはそんなアリスを抱き寄せ頭を抱えるように抱き、そして扉を閉めた。
「…そうだね、ホントはまだ怖いよ。あいつらの欲望、加虐心…そういうのを思い出すと…」
エミは本音を漏らす。また、隠していた感情も曝け出しているからか、声も震えていた。そしてそれを打ち消さんとばかりにアリスという人肌を求めていた。
「ホントにごめんなさい…」
「だから、ギュッてさせて」
「…もうしてるじゃないですか」
そうして少しの時間が過ぎる。
「ふぅ。それじゃ、ヨミについて話そっか?」
「…はい!」
エミがアリスを放し、そしてベッドに腰掛けた。そして、2人は楽しくヨミについて話し合った。
休暇になったエミとアリスは2人で地球に降り、そしてヨミに会いに行った。いつも通り道場に居るだろうヨミの元を訪れた。2人は道場の2階から1階を見渡す。
「問題、ヨミはどこでしょ〜」
「…居た、あの長い髪は…!」
アリスの見つめる先には稽古に励むヨミの姿があった。
「ヨミだね、ま、夏野って垂れにも書いてあるし」
「あ…あはは…そう言うのもアリでしたか」
少しして稽古が終わると、ヨミが2人に気づいた。そして満面の笑みを彼女は向けたので、アリスはそれについ赤面してしまう。
「かわいい…かわいい…」
「はは、やっぱ面白いな、アリスは」
ヨミは片付けを済ますと足早に2人の元にやってきた。
「久しぶり!お姉ちゃん!アリスちゃん!」
「ええ、ヨミ」
エミにヨミが抱き着いた。体格差的にエミが少し後ろに押されるものの、軍人故かすぐにエミが立て直す。ヨミは愛しい姉に頬擦りしていた。
「…仲いいなぁ。ヨミ、久しぶりだね」
「アリスさんも!ぎゅー!」
エミから離れたヨミがアリスに抱き着く…ヨミの稽古後の臭いがアリスの嗅覚にツンとついた。
「…好き、ヨミ」
「…まさか…臭いで…?」
ヨミが赤面して離れようとするが、離さまいとアリスがヨミの背中に手を回す。
「ちょ、放してー!くーさーいから!」
「やだ、もうちょっと…」
アリスはクンクンと臭いを嗅ぎながらヨミの頭頂部に顔を埋める。
「いーやー!」
そうしてアリスはヨミの匂いを堪能した…
3人はエミ、ヨミ、アリスの順で並び夏野家へ向けて歩き出していた。
「もー!ホントにアリスちゃんは…!」
「うう…ゴメンナサイ…」
謝るアリスに対してヨミはそっぽを向いていた。エミはそんな2人を微笑ましそうに見つめる。
「その…好きな食べ物明日奢るから…」
「…アリスちゃんってそれ何か知ってます?」
ヨミがアリスをじっと見つめる。
「パンケーキ…ってエミ中尉が言ってた」
「ふふ、正解だよ」
「へぇ、お姉ちゃんと結構仲良いんだね…良かった」
ヨミは少し満足気に笑い、エミを見つめる。
「ま、お姉ちゃんとの仲は私が一番ですけど」
ヨミがエミにぎゅっと抱きつく。アリスはエミに嫉妬しエミを恨めしそうに見つめる。
「ふふ、ヨミ。アリスにも抱きついてあげて」
「やだ、少しお姉ちゃんと抱きついてたい」
ヨミが一瞬アリスを悪戯っ気に見る。
「ぐぬぬ…」
「あはは…かわいいよ、アリスちゃん」
「あっ…」
ヨミがエミを放しアリスに抱きついた。アリスはその急反転に驚き固まってしまう。
「…好き、ヨミ」
「ふふん、ありがと、アリスちゃん」
夏野家についた3人は、ゲームをし、夕食を食べ、風呂に入った…そして…
「この前はこの空き部屋に布団があったけど…アレ?ないな」
アリスは自分の布団が用意されていないことに困惑していた。この前はエミが準備をしてくれていたようだが…
「一緒に寝ましょ!アリスちゃん!」
「寝る!?!?」
アリスは鼻血を出してしまう。ヨミはそれをジトッと見つめる。
「…いや、何考えてるのかな、アリスちゃんは…」
「…だよね、ごめん」
「やっぱアリスちゃんって変態さんなんだね。でもそういうところも面白いよ」
ヨミはアリスの手を掴むと自分の部屋へと連れていく。そして、部屋には2人分の布団が敷いてあった。
「それじゃ、アリスちゃんも布団に入ろっか」
「う、うん」
ヨミが電気を消し、2人は布団に入ると見つめ合った…
「あの…ヨミ」
「んー、アリスちゃんどうしたの?」
アリスの顔は少し不安そうで、声は少し震えていた。
「私…付き合ってほしいって言ったけど、ホントに良かったのかな…私の一目惚れで…対して会ってないのに…」
「大丈夫だっ」
ヨミの言葉を遮るようにアリスは続ける。
「ヨミが…ホントに好きな人居たら、全然会えない恋人なんかで満足できなかったら…とか考えると…申し訳ないし…こ、怖くて…」
アリスの目は潤んでいた。しかし…
「大丈夫、大丈夫だよ…アリスちゃんへの恋心はまだ不安定かもだけど、私は貴方みたいなかわいいし面白い人と付き合えて嬉しい。きっと貴方をもっと好きになるから…これからもよろしくね」
ヨミはアリスへと近づき、その手を強く握ってあげた。
「うん…私、頑張るよ。ヨミ…!」
アリスはさらにヨミに近づきぎゅっと抱きつく。
「あはは、頑張って」
少し抱きつき続けたアリスが小さくボソッと呟いた。
「キス、したい」
「…いいよ、アリスちゃん」
2人は一度距離を取ったあと、その唇を合わせた。幸せな味がアリスを包んだ…
続く