UC0099年3月、地球連邦軍714部隊を主体とする”α任務部隊”はある作戦に入ろうとしていた。それは翌年のUC0100年のジオン共和国自治権返還に反対する、ジオン共和国軍の一部である”ヌーベル・ジオン”を称する勢力が起こした反乱の鎮圧任務であった。同勢力には少数とはいえAEグラナダ支社からもたらされたのか、ジオン系最新鋭装備のムサカ級軽巡洋艦やギラ・ズールまでもが配備されている。
「これはやはり厄介になりそうだな」
714部隊司令官でありα任務部隊の司令官も任された白根ハルナ准将はそう呟く。
「我が方にも少なからず損害が出ますね」
714部隊旗艦”レナウン”艦長のエイレン・ユーリ大佐もそう言う。スクリーンにはα任務部隊の戦力図が表示された。
旗艦 レナウン級強襲揚陸艦”レナウン”
カウペンス級軽空母”インプラカブル”
クラップ級巡洋艦”ベルファスト”
クラップ級巡洋艦”シェフィールド”
グレイファントム級強襲揚陸艦”ワスプ”
アレキサンドリア級巡洋艦”イスマイリア”
アレキサンドリア級巡洋艦”ガウンランド”
マゼラン改級戦艦”インフレキシブル”
サラミス改級巡洋艦”モガミ”
サラミス改級巡洋艦”サルコー”
10隻と一定規模の戦力こそあるものの、多くの艦は搭載MSが旧式主体であるなど不安要素があった。
「しかし沖田大将の命令だ。我々は期待されているのだろう…ヘンス中佐、作戦は?」
「はっ。最善を尽くしたものがあります」
714部隊参謀長のロバート・ヘンス中佐はそう答える。
「そうか…助かるよ」
1時間後、レナウンのブリーフィングルームにハルナやヘンス以下幕僚や各艦の艦長やMS隊隊長が集まっていた。
「これより作戦を説明する。ヘンス中佐、あとは頼んだ」
「まず、各艦がMS発進後、可変機部隊2群が奇襲を敢行する」
可変機部隊2群とは、インプラカブルに艦載された”ギャプラス戦闘小隊”や915実験戦隊のワスプの”ライトニング中隊”で編成された計10機のモビルスーツ部隊だ。
「奇襲後の混乱に乗じてα任務部隊主力艦隊とジム部隊にて、敵主力艦隊への攻撃を敢行、敵MS隊を敵主力艦隊から誘引する」
ジム部隊は714部隊のジム・カスタムMk-IIとその他のヌーベル・ジムIII、ジムIIIで構成された部隊のことである。
「最後に、可変機部隊1群により敵主力艦隊を攻撃…以上だ。質問はあるか?」
それに対して、915実験戦隊司令兼ワスプ艦長の菊池マホ少佐が挙手をする。
「増援のβ任務部隊を待っての作戦でも問題はないのではないでしょうか?」
「そのことだが、諜報部から”敵の補給が近い”との情報があった。それと接触する前に叩きたい…ということだ。問題はないか?」
ハルナがマホを見つめる。
「…はい、白根准将」
そして、各員はブリーフィングルームから解散し配置についていった。
数時間後、敵艦隊を捕捉した各艦はモビルスーツの発艦準備を進めていた。
「こんな大規模戦、初めてです…」
霧島アリス少尉は格納庫の隅で紅茶味のチューブを飲みながら緊張していた。
「私も久しぶりだね、ここまでの戦闘は」
そう答えたのは夏野エミ中尉で、彼女はリンゴ味よチューブを飲んでいた。
「少なからず損害は出るけど…私達は死なないように頑張ろっか」
エミはアリスの肩を掴む。そのパイロットスーツ越しの疑似有機体の腕は優しく温かく感じた。
「はい!エミ中尉…!」
アリスは敬礼するとともに、自分の機体…ゼータプラスC1型へと向かっていった。エミも自分のジム・カスタムMk-IIへと向かっていった。
「モビルスーツ隊、発艦準備…健闘を祈る」
エイレンの指示のもと、レナウンからMSが発艦、他艦からも次々と機体が発艦していく。
「行くぞ!」
「ま、暴れさせてもらおうかねぇ」
可変機部隊2群はレナード・プリスガン大尉率いるギャプラス戦闘小隊の可変モビルアーマー”ギャプラス”を先頭に、米倉アスハ大尉率いる915実験戦隊MS隊のライトニングが続く。
「…敵艦隊、センサーが捕捉!」
「ったく、速さだけで先行しおってさ」
「各機、撃てっ!」
ギャプラスのビーム・ライフルが光るとともに、その閃光が敵艦に命中していく。敵艦もギャプラスの存在に気づき、対空砲火を向けようとする。
「やらせないよ。仕事なんでね」
アスハ機のビーム・キャノンが敵艦に命中する。
「タイチョーさすがなのだ!」
「私達も!やります…!」
続いてレイア・マークス中尉やリイ・楊麗少尉もビーム・キャノンを放ち、敵艦に命中させていく。
「援護、ありがたい…な!」
レナードのギャプラスがビーム・ライフルを放ちムサイ改の片側のエンジンを破壊する。そしてそれをアスハは逃さずに艦橋、主砲を破壊し撃沈した。
「こちらギャプラス1!推進剤が½を切る。後退始めるぞ!」
「ライトニング1了解」
そして、暴れた可変機達は後退していく…と同時に、メガ粒子の奔流が小破したムサイ改を貫き爆沈させる。α任務部隊主力艦隊からの一撃であった。そして、展開し始めたヌーベル・ジオンのMSにはジム・カスタムMk-IIやヌーベル・ジムIII、ジムIIIが襲いかかる。
「ウィザード3、5はあのギラ・ズール隊を頼む!」
「了解、行くよ。ニイナ少尉」
「はーい」
レナウンのジム隊隊長の久保ミツヨシ少佐の指示に従い、エミと僚機の久保ニイナ少尉が敵MS小隊へと向かう。
「おっと、センサーは向こうが有利…か」
「ですね…!」
エミ機へむけてギラ・ズールがビーム・マシンガンを連射するも、エミはそれを躱していく。ニイナ機の方はシールドでそれを防いでいた。
「ニイナ少尉がマズイね。さっさと近づいて…ヨシ」
エミのジム・カスタムMk-IIのセンサー有効範囲にギラ・ズールが入り、エミはビーム・ライフルを放ちその動きを牽制する。その間にニイナ機もギラ・ズールに近づき、その動きを十分センサーで捉えられるようになっていた。
「援護ありがとうございます!今度は私が…!」
「ありがとね、ニイナ少尉」
ニイナ機のバズーカが撃たれると、それがギラ・ズールの盾を左腕ごと爆砕した。背面の無誘導ロケット・ランチャーであるシュツルム・ファウストに引火したのだろうか。そして、そんな機体はバランスを崩しており続くバズーカの射撃で撃墜された。
(5機…これでニイナ少尉もエースパイロット…か)
エミはそんなことを思いながら、ビーム・サーベルで接近したギラ・ズールを相手にする。ビーム・アックスで斬りかかるギラ・ズールだったが、それはシールドで防がれた。そしてエミ機は突きを放ちギラ・ズールの喉元を突き刺し撃墜する。残ったギラ・ズールは後退しようとするが、ニイナ機のバズーカで脚部を破壊されたのち、エミ機のビーム・ライフルで撃墜された。
「ヨシ、これより艦隊を前進し支援射撃を行う」
ハルナの命のもと各艦が前進し始めるが、オペレーターが叫びを上げた。
「後方より高熱源体が高速で接近!…巨大モビルアーマーです!」
「なんだと!?そんなものまで…どこに向かってる!」
「…インフレキシブルです!」
「くっ!」
その頃、インフレキシブル側では…
「なんだ?あれは…?」
敵巨大MAの判別を行なっていた同艦のオペレーターが声を上げる。
「機種識別!ゼネラル・レビルをヤッたやつだ!」
その機体はネオ・ジオング…袖付きや偽装袖付きが用いた巨大MAであった。
「なんだと!?…モガミ、サルコーと共に破壊するぞ!」
各艦の主砲、ミサイルを発射するが…拡散メガ粒子砲にてミサイルを迎撃、主砲はIフィールドにて防がれた。そして…ハイメガ砲を発射、インフレキシブルに直撃する。
「くっ、総員!退艦…うわっ!」
インフレキシブルは直撃後まもなくして爆散した。
「なんてことだ…あの巨大MAが来るとは…」
「モガミ大破!サルコー…轟沈!」
オペレーターは悲痛な叫びを上げている。しかし、ハルナは冷静であった。
「我々で迎撃するぞ。各艦、ビーム攪乱膜散布」
各艦がミサイル発射管よりビーム攪乱膜弾頭を射出、それによりビームを無効化し、そして次に通常弾頭を発射した。しかし…
「…ミサイル、自壊します!」
「なるほどな、報告にあったサイコミュ兵装か」
それはサイコ・シャードと呼ばれる機能であり、搭乗者のイメージを具現化するとも言えたものであった。ジムIIIが接近するも、各部のミサイルを自爆させられてしまう…しかし希望はあった。エイレンが声を上げた。
「ミサイル発射管よりペイント弾頭射出!目標は敵のIフィールドユニットよ!」
ペイント弾…射撃練習用の兵装であった。しかしエイレンには目論見があった。ハルナはそれを理解した。
「そうか…なるほどな」
「てぇー!」
砲雷長の指示のもとミサイル発射管よりペイント弾が射出される。それはサイコ・シャードにより一定距離で自壊させられるもペイント弾の塗料はIフィールド発生装置に命中…これを無力化した。
「各艦!主砲統制射撃!撃て!」
ハルナの命でレナウン以下各艦の主砲が放たれた。それはネオ・ジオングの巨体を貫いた。なかからシナンジュが脱出するが…
「増援!間に合ったか!」
本星艦隊の増援部隊は推進剤の消費を気にせずに急いできたようだった。そのメガ粒子砲がシナンジュを追い詰める。そしてある1機の可変モビルスーツが突出していた。
「舐めんじゃねぇ!俺の方が上なんだよ!」
そうオープン回線で言ったパイロットの乗機はEx-Sガンダム…ペズンの反乱にて投入されたガンダムであった。シナンジュはビーム・ライフルを撃つもEx-Sガンダムは容易に回避、そしてビーム・サーベルでそのライフルを切断した。そして…
「死にやがれ!」
ビーム・スマートガンを発射、これは見事にシナンジュを貫き撃墜した。
「ヨッシャ!…推進剤もやべーし俺は帰還するぞ!」
そしてその機体は補給のために母艦のアーガマ級へと帰艦していった。
ヌーベル・ジオンは虎の子を破壊されたことで動揺し、MS隊をジムへの迎撃に当てていたが…
「作戦通りに戻りつつあるな…1群に打電、攻撃開始せよ」
「プリースト1、了解…行くぞ」
ゼータプラスC1型は少し戦線からは離れていたが、ネヴィル・カニンガム少佐の指揮のもと接近し始める。そして、アリス機を含めたビーム・スマートガン装備機が1列に並び始めた。
「各機!マルチ隊形!統制砲戦用意!」
MS形態に変形しビーム・スマートガンを構え始めた。
「FCS、目標敵艦隊!」
ビーム・スマートガンの砲口が光り始め…
「発射ぁ!」
放たれたビームは敵艦隊へ向かっていき、それはムサカ級3隻を貫き撃沈した。
「プリースト全機、突入せよ!」
ネヴィルの指揮のもとゼータプラスC1型が変形し突撃し始める。
「…やってやるわ!」
アリスがハイザックをビーム・スマートガンで捉える。そしてトリガーを引き撃墜する。
「やった…」
アリスは少し額に汗を流しながらも戦闘を続ける。
「アリスもやるようになったね」
そんなアリスをエミが援護し、接近してきたハイザックを撃墜した。
「ありがとうございます…!」
「どういたしまして…っと」
エミ機はビーム・サーベルで接近してきたハイザックを撃墜しながらアリスに答える。そして敵旗艦に接近していくと、新たなギラ・ズールが3機現れた。それはバックパックが重装型を基にした高機動型に変更されたエースパイロット仕様であった。
「私とニイナがやるよ、ネヴィル少佐とアリスは旗艦を頼む」
「任された」
「了解です!」
エミがビーム・ライフルを放つとギラ・ズールは散開して回避する。そのうち1機にニイナ機のバズーカが襲いかかるがそれも回避される。
「速い!やる…!」
「バズーカ、弾切れですか!」
ニイナ機がバズーカを捨てビーム・ライフルを構える。
「旗艦だけあって防御が…!」
「無理するな、霧島少尉!」
旗艦のムサカ級の対空砲火を前にアリス達も少し苦戦していた。
「運動性も高い…けど!」
エミはビーム・サーベルを抜き斬りかかり、ギラ・ズールの1機のシールドを切り裂いた。そして、蹴りを加えて体勢を崩して撃墜しようとするが…
「こいつら、やっぱやる…!」
援護のビーム・マシンガンがエミ機へと襲いかかる。それを回避する間に蹴られたギラ・ズールは体勢を立て直そうとしたが…
「ここです!」
ニイナ機がビーム・ライフルを撃ち、体勢を立て直した途端に撃破された。
「やった!…きゃっ!」
ギラ・ズール達の意識がニイナ機へ向き、ニイナ機の片脚が破壊される。しかし…
「これ以上、やらせるか」
エミが怒りビーム・サーベルでギラ・ズールの1機へ斬りかかる。回避され、逆にビーム・アックスでシールドを斬り裂かれるが…
「遅い」
エミ機が左手でビーム・アックスを持つ手を掴み、そのまま自分の機体の方へと引き込む。そしてビーム・サーベルでコックピットを貫いた。最後の1機がビーム・アックスを片手にビーム・マシンガンを乱射しながら接近する。
「まだやるつもりなの?」
それを避けながら接近、ビーム・マシンガンを持つ腕をビーム・サーベルで切り裂いた。ビーム・アックスで反撃を試みるも、それを避ける。そして…
「もらった」
ビーム・アックスを空振りしガラ空きになった胴体を真っ二つに切り裂いた。
「やるな、エミは…!霧島少尉!今だ!」
ネヴィルが囮となり敵旗艦の対空砲火を引き付けている。そして…
「はい…!」
敵旗艦の下方よりアリス機がビーム・カノンとビーム・スマートガンを斉射、それは敵旗艦を貫き爆沈した。戦闘はα任務部隊の勝利に終わった。
帰還したMSパイロット達はシャワーを浴びていった。そして更衣室にて…
「エミ中尉、お疲れ様です」
「アリスも…敵旗艦撃破、ナイスだったよ」
黒いインナー姿のエミとアリスが話していた。
「今日も…こんな戦いでも生き残れた、またヨミに会える…!」
アリスは拳をぐっと握った。
「そうね…ヨミをこれからもよろしくね」
続く