機動戦士ガンダム714部隊    作:くぼさん少佐

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第16話

 UC0099年6月、地球連邦軍714部隊を中核としたζ任務部隊はある任務を受けて暗礁宙域前を航行していた。そして、旗艦の”レナウン”のブリーフィングルームには多くの士官が集まっていた。参謀長のオリヴァー・ヘンス中佐が口を開く。

「それでは我々に課せられた任務を再確認する。我々の任は離反したATR部隊の討伐にある」

ATR部隊は地球連邦軍の実験部隊のひとつであった。彼らはティターンズのTR計画の研究を目的に作られた部隊であった。

「ATR部隊は秘密裏に強化人間をも保有しており、その戦力は非常に厄介と言える。」

強化人間とは、臓器の改造や人工的なニュータイプ素養を付与した人間であり、それらは戦闘に特化した人間と言えた。また、ATR部隊は研究中のRX-124”ガンダムTR-6”をはじめとしたTRシリーズ複数機を保有しており、それらは強力なビーム兵器を複数装備している。

「そして、彼らが最後に見られた宙域に我々は偵察MSを先行させる。捕捉次第主力MS部隊による奇襲、敵戦力を十分疲弊させた後に艦砲射撃を加える…以上だ。質問のあるものは…いないか。以上、解散とする」

 作戦開始時間となり、レナウンの戦闘指揮所(以下CIC)がにわかに騒がしくなる。714部隊司令官兼ζ任務部隊司令官の白根ハルナ准将が命令を下す。

「72偵察戦隊、発艦せよ」

ζ任務部隊のクラップ級よりウェイブライダー形態のRGZ-95”リゼル”及び、その背部に乗ったRGM-89DEW”EWACジェガン”が発艦していく。CICではそこからの報告を待っていた。やがて…

「722よりトレボーへ、ATR部隊を捕捉とのことです」

「数は?」

オペレーターの声にハルナが返す。

「アレキサンドリア級2、コロンブス改級1…ガンダムTR-6[インレ]1です」

その報告にCICはどよめく。”ガンダムTR-6[インレ]”は

「そうか、あの戦略兵器を完成させていたか…が、変わらない。作戦通り、MS隊を展開せよ」

その命令の下、レナウン艦長のエイレン・ユーリ大佐は従う。

「はっ。MS隊発艦せよ。繰り返す。MS隊発艦せよ」

レナウン格納庫にて、コールサイン”プリースト”を持つ隊がカタパルトへと向かっていく。その中には新米少尉の霧島アリス少尉も居た。搭乗機のMSZ-006C1”ゼータプラスC1型”のコックピット内で彼女は口を漏らす。

「敵は戦略兵器も完成済み…緊張します」

「大丈夫だ。それを叩くための部隊も編成済み。俺たちはやれることをやろう」

ゼータプラス隊隊長兼僚機パイロットのネヴィル・カニンガム少佐がそう返す。

「…ま、帰って夏野と仲良くするんだぞ」

「そんなかんけ…な、なんでもありません!!」

ゼータプラスがカタパルトへとセットされる。

「プリースト1、出るぞ!」

「ふぅ…プリースト6、霧島アリス、行きまーす!」

2機のゼータプラスがカタパルトから加速、離れると共に熱核ロケットエンジンを吹かしていった。ゼータプラスの発艦が終わると続いてコールサイン”ウィザード”を持つ隊が発艦へと移った。

「敵戦略兵器ではなく、それを叩く隊の露払いがメインだよ。いい、ニイナ少尉?」

「わかってます、エミさんこそ無茶せずにってやつですよ」

RGM-179N-1“ジム・カスタムMk-II”を駆る夏野エミ中尉は僚機の久保ニイナ少尉へとそう伝えるが、ニイナから反論を食らう。

「大丈夫だよ、私も命令違反して戦略兵器を撃墜スコアに入れたりなんてしないよ」

「はは、それはそれで面白そうですね」

ジム・カスタムMk-IIがカタパルトにセットされる。

「ウィザード3、出るよ」

「ウィザード5、出ます!」

ゼータプラスの後を追うようにジム・カスタムMk-IIが射出されていった。

「MS隊、プリーストはアレキサンドリアを1隻潰せ」

「了解」

ハルナの命令の下ゼータプラス隊のうち、アリス機を含めたビーム・スマートガン装備機がアレキサンドリア級へとその機首の長大なビーム・スマートガンを向ける。そして、それをほんの少しのチャージの後それを放った。

「敵襲!?」

「艦砲射撃か!?うわっ!!」

アレキサンドリア級のブリッジから機関部にかけて3条のビームが貫通、その艦体は歪み始め、やがて爆沈した。射撃のあった方向に向けて警戒態勢にあったMSが殺到し始める。その機体はRX-121-3C”ガンダムTR-1[ハイゼンスレイ]”、ジム・クゥエルから発展したRX-121”ガンダムTR-1[ヘイズル]”の最終進化形とも言える機体であった。それがゼータプラスの方向へ向けビームを牽制として撃ち始める。

「当たるもんか…!」

アリスはそれらを冷静に対処しつつ、ハイゼンスレイの1機へビーム・スマートガンを放つ。それは回避されたものの、別の機体が撃ったビーム・スマートガンが命中しその機体は四肢が弾け飛んだ。続いてもう1射アリスは撃つが、それはハイゼンスレイの手に持ったコンポジット・シールド・ブースターの内蔵するIフィールド・ジェネレーターにより防がれる。

「ダメなの!?…くっ!」

「いや!Iフィールドも無限ではない!」

ネヴィルの機体がハイゼンスレイへ接近し大腿部ビーム・カノンを放つと、今度はIフィールドは使えずにそのままシールドの装甲で防ぐ。そして運動性と機動性の差で回り込むと背部からビーム・サーベルでその機体を貫いた。

「こいつは何処まで行っても中はジムだ、運動性の差で翻弄すればいけるぞ!」

「はっ!」

ハイゼンスレイを1機アリスが捉えると、ビーム・スマートガンを1射、2射と撃つ。1射目こそIフィールドで防がれるも、2射目はそうとはいかず、右腕をコンポジット・シールド・ブースターごと吹き飛ばされた。そしてそれをネヴィルがビーム・ライフルで撃墜した。敵の迎撃機第一陣は壊滅していった。

「デカブツ、来ます!」

そんなゼータプラス隊にインレが迫りつつあった。そして、巨大なビーム砲であるビグウィグ・キャノンIIでネヴィルの機体を狙う。

「あ、た、る、か…!」

ネヴィルはそれを回避し大腿部ビーム・カノンで反撃するも、それは巨大なIフィールド・ジェネレーターに防がれる。

「やっぱダメか…俺たちは一度下がるぞ!」

「了解です!」

ゼータプラス隊は一時後退していった。

インレはなおもゼータプラス隊を追撃しようとするが…

「間に合ったか!」

そこにRGM-89S”スターク・ジェガン”とリゼルが乱入する。インレも応戦のため、懸架する”ガンダムTR-6[キハールII]”を発進した。

「俺たちも行くぞ!」

ウィザード隊の隊長久保ミツヨシ少佐の命令の下、艦隊にはジム・カスタムMk-IIが向かう。迎撃機…”ガンダムTR-6[ハイゼンスレイII・ラー]”及びキハールIIが展開する。その一部は後退してゼータプラス隊へも向かっていた。

「ウィザード1よりプリーストへ。そちらへも迎撃機が上がった」

「プリースト1了解、対処する」

ハイゼンスレイII・ラーが手始めとばかりにビームをジム・カスタムMk-IIへと浴びせかける。それを散開して回避、反撃としてバズーカを発射、それを拡散ビーム砲で防ぐといった応酬ののち、近距離戦へと移行する。

「デカい割にはよく動く」

エミはハイゼンスレイII・ラーと交戦、ビーム・ライフルを撃つが軽々と躱される。そしてハイゼンスレイII・ラーがインコムと強化型ウィンチ・キャノンを射出、これによるオールレンジ攻撃をエミへと見舞う。

「オールレンジ…でも!」 

インコムの起動へビーム・ライフルを撃ちそれを破壊し、さらにウィンチ・キャノンの強力なビームをすんでのところで躱す。

「エミさんはやらせませんよ!…ぐぅ…!」

ニイナが援護に来た。しかし別のハイゼンスレイII・ラーが乱入してきて、そちらと鍔迫り合いをする。

 アリスとネヴィルもハイゼンスレイII・ラーそれぞれ2機と交戦していた。

「Iフィールドが2基なんて!相手しづらい…!」

ハイゼンスレイでは1基だったコンポジット・シールド・ブースターが2基のため、その相手は実弾武装に欠けるゼータプラスにとっては相性が悪いと言えた。そして多数のビーム砲の攻撃もアリスには隙を与えないように見えていた。

「臆するな!霧島少尉!」

ネヴィルはウェイブライダー形態に変形させた機体でハイゼンスレイII・ラーの裏を取ると共に大腿部ビーム・カノンを連射、コンポジット・シールド・ブースターのIフィールドのカバー外から命中弾を与えた。しかし、すぐさま振り向きネヴィルへとハイメガ砲を発射、ネヴィルはそれをギリギリで躱すが機体表面の一部が融解する。

「少佐!!」 

「これ、くらい!霧島!今だ!」

ハイメガ砲を放った機体は息切れするようにパワーダウンしていた。

「はい!」

アリスはビーム・カノンを連射、パワーダウンしていた機体はその背部に被弾し強化ユニットの一部を損壊した。そして追撃とばかりにネヴィルがビーム・サーベルで斬りかかるが、それは搭乗する強化人間の反応速度の速さで防がれた。

 インレとキハールIIを相手にしたスターク・ジェガンとリゼルはビグウィグ・キャノンIIや拡散メガ粒子砲、そして護衛機のキハールIIと交戦していた。しかし、彼らはインレを撃破するためにζ任務部隊に呼ばれた中隊であり、それらの攻撃を見事に躱しながらキハールIIを撃墜していく。

 エミはジム・カスタムMk-IIに右手にビーム・ライフル、左手にバズーカを装備させる。

「同じタイミング、なら…」

ビーム・ライフルとバズーカを発射、敵はビーム・ライフルを防ごうとIフィールドを展開しながらコンポジット・シールド・ブースターを構えるが…

「かかった」

バズーカの弾頭が拡散、それがIフィールド・ジェネレーターを破損させた。

「ニイナ、今だよ」

「はい!エミさん!」

ビーム・ライフルをニイナ機が放つとそれが敵機の左肩へと命中、左腕を吹き飛ばした。

「やった…!きゃっ」

僚機を傷つけられた怒りかもう1機がニイナ機を猛追するが…

「素直なんだから」

エミがビーム・ライフルでそれを狙撃、右腕と胸部の増加ユニットを破壊し撃墜した。

「もう1機も…!はあぁぁ!」

エミがビーム・サーベルで片腕のハイゼンスレイII・ラーへと猛追する。そして鍔迫り合いになるが…

「ちっ!」

鍔迫り合いになった直後、ハイゼンスレイII・ラーが脚のクローを展開、エミ機のシールドとバズーカを掴んだ。エミはシールドとバズーカを潔くパージして上昇し捕まるのを防いだ。そして、敵機は虚空へ肩部のメガ粒子砲を放った。

「あぶなっ…今度こそもらったよ」

エミは右手でビーム・サーベルを再度振り被りながら、左手にもビーム・サーベルを握らせる。そして、右手のサーベルでヒートブレードを受け止めながら、左手のサーベルでハイゼンスレイII・ラーの肩を破壊した。そして、頭部バルカンを連射して頭部、胸部を蜂の巣にして機体を大破させた。 

「ふぅ…アリスは大丈夫…そうね」

 アリスは無傷のハイゼンスレイII・ラーへとビーム・スマートガンを放ち、その動きを牽制する。そしてネヴィルが傷ついたのもう1機を仕留めまいとしていた。

「こいつは…まだやれるのか!…はっ、もらったな!」

傷つきながらも強化型ウィンチ・キャノンやインコムコンポジット・シールド・ブースターを射出しネヴィル機を狙う。ネヴィルはこれを避け、逆にコンポジット・シールド・ブースターの誘導用のワイヤーを切り裂いた。さらにネヴィルはIフィールドのないガラ空きの本体へビーム・ライフルと大腿部ビーム・カノンを発射、これをまともに食らったハイゼンスレイII・ラーは爆散する。

「凄い…わたし、だって…!」

アリスは一度ハイゼンスレイII・ラーから離れた後にビーム・スマートガンを発射、これはハイゼンスレイII・ラーに軽々と避けられるが…

「やった!」

コロンブス改級へとそれが命中、コロンブスを炎上させる。 

「これで…嘘!」

ハイゼンスレイII・ラーは炎上する味方を気にせずに吶喊、アリスへと迫る。アリスは大腿部ビーム・カノンでそれを牽制するがIフィールドで防がれる。

「やばっ、隊長は…遠い!やられ…!?」

敵機がヒートブレードで斬りかかるが…その時、アリスは敵機の軌道を予測できた機がした。 

「い、やっ!」

そのヒートブレードをアリスは躱した。そして、至近距離でビーム・スマートガンを機体へハイゼンスレイII・ラーの胴体へ押し当てた。そして、ゼロ距離で発射してその機体の胴体を消し飛ばした…

「はぁ…は、ぁ…やった…の…?」

アリスにとっては4機目の撃墜スコアであったが、その実感は薄いようだった。 

 キハールIIを全滅させたリゼルとスターク・ジェガンは再度インレへと接近する。スターク・ジェガンはミサイルを発射、インレは迎撃用に拡散メガ粒子砲の付いた有線アームを伸ばす。しかし、ミサイルは散弾でありメガ粒子砲発射前に拡散、インレの2基の巨大なIフィールド・ジェネレーターへと飛び込んでいった。Iフィールド・ジェネレーターがそれをもろに吸い込み炎上する。Iフィールドの機能を失った。そしてレナウンや僚艦の”ベルファスト”、”シェフィールド”が前進し始める。

「よくやった…711は後退…いや、中身を撃滅せよ」

ハルナの命令のもと、スターク・ジェガンとリゼルはインレから離れていく。インレは追撃しようとするが…

「目標インレ、撃ちー方ー始め」

「トラックナンバー28-21、撃ちー方ー始め」

エイレンの命令の下レナウンが、そして僚艦も艦砲射撃を始めた。それはインレを貫き破壊していった…そして、中からハイゼンスレイII・ラーが脱出するが、それをスターク・ジェガンが狙撃し1機を破壊。もう1機もリゼル隊の連携により四肢を破壊され、戦闘不能とされた。そして、残りのアレキサンドリア級とコロンブスも艦砲射撃を浴び撃沈、この戦闘はζ任務部隊の勝利で終わった。

 エミは大破させたハイゼンスレイII・ラーを回収し、レナウンへと帰った。エミは中の強化人間を助けようと考えていた。

「いやだ!こんな空を落とす奴らの捕虜になるくらいなら死ぬんだ!」

コックピットを開けると、強化人間の少年が騒ぎ立てていた。

「はぁ…面倒なことになったなぁ…」

それを見る整備班らはため息をついていた。しかしエミは優しく語りかける。

「大丈夫、私達はそんなことしないよ」

「嘘だ嘘だ!お前らなんか!こ、の…!」

強化人間はホルスターから拳銃を抜き、それを自らの頭へと向けようとするが…

「ダメ…!」

エミがそれを素早く手で払い除けた。

「…なんで、助ける」

「私が助けたいと思ったから…だから、貴方ももう少し生きて欲しいかな…」

「…うぅ、うわぁぁ!!!」

強化人間はエミの胸元へ飛び込み、そして泣いた…

 

 

 

続く

 

 

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