UC0083年11月12日、地球連邦軍はジオン残党組織”デラーズ・フリート”によるコロニー落とし作戦の阻止に当たっていた。そんな中、地球連邦軍モビルスーツパイロットのヨハンナ・ミュラー少佐は、コロニーを破壊するための”ソーラ・システムII”の護衛にあたるため、母艦”タイコンデロガ”から発進した。彼女は乗機の”RGM-79N ジム・カスタム”を駆り、ミュラー戦闘小隊として部下を率い戦場へ向かう。
「いいか、コロニーは二度と落とさせるな!惨事を繰り返さないため、このソーラ・システムを守るんだ!」
「「了解!」」
ヨハンナの言葉を部下達が復唱する。ソーラ・システムIIは、一年戦争末期のチェンバロ作戦にて使用された戦略兵器である”ソーラ・システム”の改良型にあたるものだ。原理としては”大量の反射鏡で太陽光を集め目標物に照射する”という単純なものだ。
「敵…来るぞ!」
接近する3機のザクIIF2を、ヨハンナのジム・カスタムのセンサーが捕捉した。ヨハンナの射撃で先頭の1機を撃墜、さらに部下の射撃によりもう1機も撃墜した。
「はあぁぁ!!!」
ヨハンナは残りの1機へ接近、近距離から射撃を浴びせこれを撃墜した。
「…次!速いな!」
高速で接近するモビルスーツ…それは”MS-21C ドラッツェ”という、デラーズ・フリートが独自に作り上げたMSだった。しかし…
「それだけでは…予測しやすい!」
ヨハンナは接近するドラッツェの予想移動経路へ射撃、直撃したドラッツェは相対速度も相まりバラバラに分解された。そして別のドラッツェがヨハンナの機体へと接近する。
「来るか!」
ヨハンナは射撃を避けながらバルカンで牽制。しかしそれでも突っ込むドラッツェはビーム・サーベルで斬りかかった。
「ビーム・サーベルを持っていたとは…やる!しかしな!」
ビーム・サーベルの一閃を回避、ドラッツェは脚部にあたるスラスターを前へと向け急減速し、ヨハンナに再度斬りかかる。
「遅い!」
しなやかな動きでヨハンナはこれを躱し、ビーム・サーベルをドラッツェの胸部へ突き立てた。別のドラッツェも部下達が撃墜していった。
「ふっ!ジム・カスタムと私を前に!ジオン残党ども!これ以上は通さんぞ!」
ヨハンナは強気に叫ぶ。そんなヨハンナ達に高速で接近するものがあった。
「…モビルアーマー!アナベル・ガトーか…!」
そのモビルアーマー…ノイエ・ジールは小惑星帯のジオン残党”アクシズ”からもたらされたものだった。
「この私が相手になってやる!」
ヨハンナは接近するが…
「何!?」
ノイエ・ジールは圧倒的な速度でヨハンナを無視して別のところへ向かっていった。ヨハンナは射撃をするもそれも高速機動には全く追いついていなかった。
「抜けられた!?…マズイ!照射が始まる!」
ソーラ・システムIIは出力が100%には至らないものの照射を開始するようで、ヨハンナの小隊は退避を始めた。
「あのモビルアーマー…照射に巻き込まれて木っ端微塵になろう…」
ヨハンナはそう思っていた…いや、思いたかったが、ヨハンナは嫌な予感とでも言うべきものを感じていた。照射が始まりコロニーを護衛するムサイ級軽巡洋艦やデラーズ・フリート旗艦のグワデンが轟沈した。そしてコロニーの外装も溶けていった。作戦は成功に思えた。しかし…
「…何!?照射が終わった!?どういう…」
そのソーラ・システムIIの照射が止まってしまった。そう、アナベル・ガトーの駆るノイエ・ジールが間一髪とも言えるタイミングでソーラ・システムIIのコントロール艦を破壊していたのだ…そしてコロニーはソーラ・システムIIによる破壊を免れ、地球への落着が確定的となった。
「そん…な…私達は…また…」
その後、地球連邦軍の奮戦虚しくコロニーは地球、北米の穀倉地帯へと落着した。民間人も多くが巻き込まれたその大量虐殺をヨハンナ達は防げなかった。戦闘終了後、ヨハンナのジム・カスタムは母艦であるタイコンデロガに収容された。ヨハンナ機は激戦により外装の各所が破損していた。ヨハンナは格納庫の一角にて項垂れていた。
「お疲れ様でした、ミュラー少佐」
そう声をかけるのは同じタイコンデロガ所属のユーリ戦闘小隊の隊長、エイレン・ユーリ大尉であった。
「…私達、やれることはやりました。だからそう落ち込まずに…」
そう言うエイレンも悔しさが滲んでいるような表情をしていた。そしてヨハンナは…
「ジオン…やはり奴らは敵だ…」
ジオン残党…いや、ジオン全体への恨みを募らせていっていた…
後日、コロニー落着はテロではなくて”移送中の事故”として扱われる報道がなされた。しかし、ヨハンナはこれに反発していた。そして上官の高級将校へと食ってかかる。
「これはジオンによるテロだ!何故それを隠す!」
「我々の失態をみすみす公表するわけにはいかんのだよ、ミュラー君」
高級将校は気だるけにそう返す。
「しかし!そのためのティターンズも作られました!これを機にこのテロの責任を取らせるためにジオン共和国を武力を持って解体し…!」
「はぁ…ミュラー君、君はいささか危険が過ぎるよ…」
UC0084年1月、ティターンズに入隊していたヨハンナ・ミュラーは訓練中、機体の爆発により負傷し搬送先にて死亡した…そう、されていたのだった。しかし…
UC0099年5月、地球連邦軍某基地、地下深くにて…
「…ここ、は…」
女はある装置から目を覚ました。
「お目覚めですか。ミュラー様」
ミュラーと呼ばれた女性は辺りを見回す。そして自分が全裸であり、異常に寒気をする装置の中にいた事に気づいた…
「…これは…?」
「コールドスリープです」
技術士官らしき男がそう答える。コールドスリープとは、肉体を低温にして老化を防ぐ装置であり、その女は長期間そこで睡眠していたということだった。
「コールド…スリープ…ああ、何故私がそんなものに?」
技術士官は表情を固くする。
「貴方は危険分子として自己を装い殺害されました…表上は」
女は状況を理解し始めた。
「…しかし生きていた」
「はい。そして我々は貴方を匿い、来たるべき時に備えました」
「…ジオンの殲滅か?」
技術士官の男は口元を緩ませる。
「はい。その準備が整いつつあります。ヨハンナ・ミュラー様」
「そうか…それは楽しみだ…ははは…!」
女…ヨハンナは高らかに笑った…
続く