UC0099年11月、反ジオン過激派”地球正教会”のジオン共和国侵攻へ対して地球連邦=ジオン共和国連合艦隊はその阻止へとあたっていた。
”レナウン”戦闘指揮所(CIC)ではその戦況が続々と報告されていた。
「地球正教会のアレキサンドリアをオリベ戦闘中隊2群が撃沈した模様!」
「プリースト1、6。ウィザード3、5。それぞれ量産型νガンダムと交戦中…苦戦してるようです。どうしましょう?」
それに対して714部隊司令官白根ハルナ准将は答える。
「これ以上の戦力投入は難しい。無理と伝えろ」
「はっ!」
「アイリッシュ級!マゼラン改級!こちらへ来ます!」
レナウン艦長のエイレン・ユーリ大佐が命令を出す。
「来るか…メガ粒子砲!撃ちー方ーはじめー!」
有効射程外ながらもメガ粒子砲でアイリッシュ級を牽制する。
「リ・ガズィ!バーザム改!来ます!」
「残りのゼータプラス隊とジム隊で迎撃!できるかしら?」
「もちろんです!」
リ・ガズィの1機がメガ・ビーム・キャノンをレナウンに向ける…が。
「やらせるか!」
“MSZ-006C1ゼータプラスC1型”が迎撃。バックウェポンシステム(BWS)を破壊する。リ・ガズィはBWSを用いて巡航形態へと変形する半可変機であった。そしてゼータプラスがMS形態に変形し大腿部ビーム・カノンで牽制する。リ・ガズィはこれを躱してビーム・ライフルで反撃するが…
「当たるかよ!」
ゼータプラスはウェイブライダー(WR)形態へと変形、それを回避した。そしてリ・ガズィの背後に回り込んだあと、再びMS形態に変形、ビーム・ライフルでリ・ガズィを貫いた。
「はっ!このクソゴミ兵器が!ゼータプラスを舐めんじゃねぇ!!」
714部隊本隊とアイリッシュ級部隊の戦いは互角に進んでいった…
夏野エミ中尉は自らの駆る”RGM-178N1ジム・カスタムMk-II”にビーム・サーベルを構えさせ、ヨハンナ・ミュラーの駆る量産型νガンダムへ突進させる。
「甘いわ!」
ヨハンナはそれがわかってたのか悠々と躱していく。
「…さっきまでよりも動きが軽い…!」
「増加装甲を脱いだからって…!」
久保ニイナ中尉はビーム・ライフルをヨハンナへ撃つがそれも躱される。
「何かおかしいぞ」
ゼータプラスを駆るネヴィル・カニンガム少佐はヨハンナの機動に違和感を覚えていた。
「ですね、カニンガム少佐…」
ネヴィルの僚機の霧島アリス少尉もそれに気づき始めていた。
「相手はこちらの動きを”先読み”している…そうとしか思えない」
「ですね、射撃だけじゃなくエミ中尉の格闘もあんな簡単に…」
そう、相手は先読みをしているかの如く、次々と攻撃を躱してすり抜けているのだった。
「だろうな…エミ君!ニイナ君!相手は先読みしている!それを考慮しないと無理だ!」
「何ですって…ニュータイプのなんらかのシステムだったか…」
「確かにファンネルを使ってましたから…ね!」
エミがヨハンナから距離を取る。
「ハハハ!私は…やれる…!」
ヨハンナは高揚感を感じていた。そして、一度エミ達から距離を取る。
「一番ヤバいのは…あいつかぁ!!」
ヨハンナの量産型νガンダムはジグザグに、しかし高速で移動しながら…アリスのゼータプラスに向かっていった。アリスの迎撃は躱される。
「当たらない…!」
「やらせるか!」
ネヴィルが大腿部ビーム・カノンの低出力射撃でヨハンナの動きを牽制する。その射撃は予想経路に当てはまっており、ヨハンナの動きを尽く妨害していた。
「こいつぅ!」
ヨハンナは怒り、ネヴィルの機体へと接近する。しかしネヴィルは機体WR形態に変形させて距離を取る。
「…今だ!撃て!」
エミ機のビーム・ライフル、ニイナ機のビーム・ライフルとバズーカ、アリス機のビーム・スマートガンを一斉に撃つ。それがヨハンナ機へ襲い掛かり爆炎が辺りを包み込んだ。
「ぐあぁぁ!!!」
ヨハンナはその攻撃に叫びをあげる。
「当たれ!」
そしてMS形態に変形したネヴィル機が大腿部ビーム・カノンで追撃を加えた。
「トドメは俺が決める」
「「「了解」」」
ネヴィル機がビーム・ライフルからロング・ビーム・サーベルを形成し煙の中へ接近する。
「何!?」
しかし、突如として無数の破片のようなものがネヴィル機へ襲いかかった。それはヨハンナの量産型νガンダムがつけていた増加装甲であった。そして、煙の中から量産型νガンダムが飛び上がる。
「まだ動くか!」
「さっきのは…一番やったのはコイツかぁ!!」
ニイナ機へと迫っていた。それも圧倒的な直線機動にて。
「そんな機動!」
ニイナ機はビーム・ライフルでそれを迎撃するが、ビームをヒート・ロッドで切り払われてしまう。
「え…!?」
そして、ニイナ機の胴部へとヒート・ロッドが振り払われ…その胴部を切り裂いた。エミはそれを見て叫びを上げる。
「ニイナ!!!」
「…エミ、さ…ん…」
ニイナ機が爆発した。イジェクション・ポッドの射出はなかった。久保ニイナの21年の人生はここで潰えたのであった。
「…」
「ウソ…ニイナ…さん…??」
「クソ!ニイナ君が!バカな!」
3人はその事実を受け止め切れなかった。しかし、ヨハンナの攻撃は止まらない。
「次は!!ファング!!」
「…くっ!」
ヨハンナ機がフィン・ファンネルを射出、エミ機を包囲する。エミはその射撃を躱すがその動きにいつもの冷静さはなかった。
「エミ君!」
ネヴィルの援護でファンネルは下がったものの、エミへの追撃は終わらない。そして、エミはビーム・サーベルを再度抜いてヨハンナ機へ接近し斬りかかる。
「…なんで!こんな戦いを仕掛けた!!」
「接触回線だと?…ジオンを滅ぼすためだ!」
ヨハンナはその問に答える。そしてその答えは地球正教会の宣戦布告理由と一致していた。
「どうしてあなたをそうさせる!!」
「…一年戦争も禄に知らない若者がぁ!」
ヨハンナはヒート・ロッドでエミ機のシールドの上半分を斬り裂く。
「…だから!こんな戦いでジオンの若者を殺してはいけない!」
「ジオンはそう変わらんさ!そういう種なんだ!」
ヨハンナがエミ機を蹴りを加えるが、エミ機は離れない。
「がっ!!でも…!!」
「…その声…いや、心は…あの時の子供じゃないか!君こそジオンに穢されたじゃあないか!」
エミが15年以上前にジオン残党に拉致、暴行を受けたことを知られたのに驚いた。その隙にシールドを完全に破壊される。
「!?なんで…知って…そうか、あの時に居たんか…!」
「そうさ!君みたいな人間を増やさないために戦ってるのだ!私は!!」
「だからって…もう憎しみの連鎖は止めに…!」
エミは臆せずにビーム・サーベルをもう一本抜き斬りかかる。
「ちぃ!わからない奴だな!!…私には妹と弟がいた!」
「何…!まさか…!?」
「2人とも穢された末!殺された!!」
ヨハンナ機は近距離ながらファンネルを展開する。
「カール…私の夫はな!ジオンの捕虜になって嬲り殺しにされた!南極条約を無視してだ!」
「でも!」
「お前もジオンを憎んでるくせに!!私を止めるなっ!!!」
ヨハンナ機のファンネルの一斉射に、エミ機は左脚を被弾する。
「ちっ!」
「私は…もう違う!ヨミを…守るために!!」
エミ機がビーム・サーベルでヨハンナ機の左肩装甲、左側ブレードアンテナを斬り裂いた。
「ぐわあぁぁ!!なんだ!痛み…が!!貴様ぁ!!!」
「きゃっ!」
ヨハンナは怒りに任せてヒート・ロッドを振るい、エミ機の左腕部を切断した。そして、次はコックピットを…
「…させません!」
「なにい!」
ビームの奔流がヨハンナとエミの間を駆け抜ける。それはニイナの死というショックから立ち直った、アリス機のビーム・スマートガンであった。
「あとは私とカニンガム少佐がやります!エミ中尉は下がって!」
「エミ君!もう君は限界だ!」
「…了解…くっ…!」
エミが後退しようとするのをアリスが援護、そしてネヴィルがヨハンナへと斬りかかる。またヨハンナの動きは冷静さをかいており、その斬撃でビーム・ライフルを切断された。
「ちぃ!!」
(エミ君にやられてからヤツの動きがおかしいな…)
ネヴィルは追撃として頭部バルカンを撃つが、これは装甲に阻まれるものの有効打のようにネヴィルは思えた。なぜなら…
「痛、い…!なんだ…!?」
ヨハンナは謎の痛覚に苦しんでいた。
「奴はよくわからんが痛みを感じるようだ!」
「え?…だからなんなんです!?」
アリスはネヴィルの寝ぼけたような発言に困惑する。
「デブリでもなんでもいい!ぶつければダメージになるかもしれん!」
「…はい!」
アリス機は大腿部ビーム・カノンで攻撃、これは外れるも近くのデブリに命中、その破片がヨハンナ機を襲う。
「ぐ、あぁ…」
ヨハンナは明らかに弱っていた。そこにネヴィルが接近する。
「今度こそやらせてもらう!」
大腿部ビーム・カノンでネヴィルは狙うが…
「この、程度の痛みぃ!!」
「何!?」
ヨハンナ機がヒート・ロッドでネヴィル機の右腕を切断する。
「私は!ジオンを滅ぼすまではぁ!!!」
「くっ!すまない…!」
さらに大腿部ビーム・カノンをヒート・ロッドで切断され蹴り飛ばされる。ネヴィル機は駆動系を破損したのかスペース・デブリに擱座してしまう。
「あとはお前だっ!!」
アリスに対してヨハンナがフィン・ファンネルを射出しながら接近する。
「…嫌!嫌…!」
アリスは恐怖に対してのあらゆる生理的現象に襲われる。しかし…
(…よく見て、アリスちゃん)
「え…?」
アリスは幻聴らしきものを聞いた。
(あの人は憎しみに囚われてばかり…きっとあなたならそれは見切れるはず…だから)
「…そん、な…!」
幻聴に対して疑問を持つアリス。だが、アリスには確かにヒート・ロッドとファンネルの軌道が視えていた。
「…うぅっ!」
「何!?」
ファンネルとヒート・ロッドの猛攻をアリスはすり抜けるように躱した。
「はぁ!」
ビーム・スマートガンをそのまま一射放つと、これはファンネルを数機破壊した。
「奴めぇ!!」
「視える…なんで…!?」
アリスはファンネルの軌道を見切ったことに自分で驚く。
(…きっと…アリスちゃんがニュータイプだからだよ…それじゃ、私は…逝くね)
「…ニイナさん!?…待って…!」
アリスは幻聴の主がニイナであることに気づいた。しかし、彼女は待ってくれなかった…
「ニイナ…さん…!」
「このぉ…このぉぉっ!!」
アリスの感傷を消し去るようにヨハンナの猛攻は続く。
「きゃっ!」
ヨハンナがアリスに対してヒート・ロッドを振るう。アリスはそれをビーム・サーベルで受け止める。
「何故だ!何故!!私は動きを読んでるはずなのに!!」
ヨハンナはさらに蹴りを加えてアリスを激しく吹き飛ばす。アリス機は思い切りデブリへと叩きつけられ、アリスは血反吐を吐く。
「がぁっ!?…でもっ!」
「はあぁぁっ!!」
ヨハンナがアリスに接近する。だがアリス機はここで長大なビーム・スマートガンの砲身で殴りつけた。
「ごぉあぁぁあぁぁぁ!!!」
「このっ!」
アリス機はそのままビーム・スマートガンを撃つが、これはすんでのところで躱される。
「っぅ!!死ねぇ!!!」
ヨハンナがファンネルをアリス機に放つ。直撃コースであった。
「…いやっ!」
アリスはビーム・スマートガンを盾にしてそれをなんとか防いだ。そして、大腿部ビーム・カノンでファンネルを撃墜する。
「まだまだぁ!!」
「…視えてます!」
さらにファンネルが襲いかかるが、それを頭部バルカンで撃墜する。
「ちぃ!!」
「視え…っ!」
ヨハンナは怒りに任せて接近するが、アリスは先の痛みで動きが緩慢であった。そして左手でゼータプラスの顔を掴み、右手で左腿のビーム・カノンを掴みそれを引き千切る。
「死ね!死ねぇ!!」
「きゃぁっ!!」
そしてビーム・カノンでゼータプラスを殴りつける。ゼータプラスの堅牢なガンダリウムγコンポジットの装甲はそれに耐えるものの、アリスは恐怖を覚えていた。アリスは迎撃のため頭部バルカンと右腿のビーム・カノンを放つ。
「そんな!もの!!」
ヨハンナ機の左腕をビームが掠める。しかし有効打にはならず、むしろ引き千切ったビーム・カノンを叩きつけられる。そして、破損した右腿のビーム・カノンは自動的にムーバブル・フレームから排除された。
「カノンが!でも!」
アリスは痛みから回復するとともに、ヨハンナの機体を掴んで投げ飛ばす。
「バルカン…だけ…でも!」
アリスはバルカンだけでヨハンナに果敢に挑んだ。
「そんなドアノッカーがっ!」
ヨハンナ機はそれに耐えてアリスへヒート・ロッドを振るう。アリスはそれを躱すもバルカンの弾も切れ反撃できずにいた。
「何か…ないの!?」
「終わりだな!ガンダム!!!」
しかし、そこに通信が入る。
「コレを使え!ゼータ!」
それは大破したオリベ戦闘中隊のリゼルのものであった。そして、大破したリゼルが大型の筒をアリスへと投げる。
「は、はい!」
アリスはそれを掴んだ。その正体はハイパー・ビーム・サーベル。通常の50パーセント増の高出力ビーム刃を形成し、ひと振りで複数の敵MSを両断できるともされる。そしてアリス機はそれを両手で握る。まるで剣道をするかのように。
「これで決めます!!」
「舐めるなぁ!!!」
ヨハンナがヒート・ロッドを振るいながら接近する。しかし、アリス機はそれを見切る。そして…
「はあぁぁぁ!!」
アリスはハイパー・ビーム・サーベルをヨハンナ機の喉元に当たる装甲に対して突き立てた。それはヨハンナ機の機能を停止させるには十分なものであった。
「…ニュー…タイプ…か…」
「はぁ…は、ぁ…やっ…た…」
アリス機はハイパー・ビーム・サーベルをヨハンナ機から抜く。
「…復讐は…終わらされた…か」
その後、ヨハンナは投降した。そして残存する地球正教会艦隊は撤退した。
レナウン格納庫にて、アリスは機体から降りる。
「アリス、お疲れ様」
エミがふわりとやってきた。
「…エミ中尉」
「よくやったよ、アリス」
「でも…私、ニイナさんを…守れませんでした…!!」
アリスは堪えていた涙を流す。戦友が初めて戦死したのだ。それは若いアリスにとっては非常に辛いことだった。
「…うん、ニイナのために泣いてあげて、アリス」
「うわ、ぁぁ…!」
少し経ちアリスが泣き止むとエイレンとハルナが近づいてきた。まずエイレンが口を開く。
「ありがとう。アリス少尉」
「ユーリ…艦長…?」
続いてハルナが口を開いた。
「君のおかげでサイド3の若者の命は救われた…誇っていいぞ」
「…私が…子どもたちを…?」
「ああ。ミュラーを失ったからこそ奴らはサイド3侵攻を諦めた」
「ヨハンナ先輩の暴れ具合と艦隊戦力の組み合わせからして、後詰めの共和国軍では抑えきれなかっただろう…と戦況を見たハーコート大佐も言っていたわ」
エミもそれを聞きそうだったろうと頷く。
「私が…ありがとうございます!」
「ふふ、私もアリスに借りができたかな…それじゃ、シャワー行こっか」
そうしてエミとアリスはシャワールームへ向かっていった…