UC0100年12月2日、地球連邦軍714部隊はペンタを出港し訓練についていた。
「ウィザード1、夏野エミ、出るよ」
「ウィザード4、リデル・アンデルソン…出ます」
714部隊旗艦”レナウン”から”RGM-178N1 ジム・カスタムMk-II“が2機発艦する。続いて三角形の形をした機体、”MSZ-006C1 ゼータプラスC1型”がカタパルトにセットされる。
「プリースト6、霧島アリス、行きます」
「プリースト8、ディアナ・マルセイユ行きまーす!」
レナウンからゼータプラスが発艦する。そしてエミ達と並び立つように飛行する。そして訓練機動を開始すると、霧島アリス中尉の機体は他の3機よりも素早く動く。アリスは2年間のゼータプラスへの搭乗により慣れているのだ。
「流石アリス…それになんだかんだついてくマルセイユ少尉もやるね」
夏野エミ大尉はそう呟く。ディアナ・マルセイユ少尉はアリスに必死についていくのが見て取れた。
「…お姉ちゃん、僕たちも…」
そう隣でリデル・アンデルソン少尉はエミに話しかける。
「だからお姉ちゃんじゃないと…まぁいい。私達もアリスについてくよ」
そう言いエミは機体を加速させる。ジム・カスタムMk-IIはゼータプラスよりも遅いながらも、エミの操縦テクニックにより華麗な動きを見せていた。
「おねえ…夏野大尉、綺麗…僕だって!」
そう言いリデルは機体を加速させる。その動きはエミのものより大胆で負荷の大きなものだった。しかし、リデルは強化人間でありその身体は負荷をものともしていなかった。
(アンデルソン少尉は無茶を…よくないね。あとで叱らないと)
そうして4機は訓練を続けていった。
着艦するとエミはリデルを呼び出した。
「あなたね…あんな無理な機動は止めなさい。無駄も多いよ」
「無駄…?うーん、夏野大尉が言うなら努力してみ…」
「エミ大尉は教え方が下手ですよ!」
アリスが隣にやってきてエミを逆に叱る。
「え?そ、そうかな?アリスは私の教えで上手くなって…」
「だからこそ教え方が下手くそって思うんですよ」
アリスのその言葉にエミは自身のこめかみを押さえる。
「クソまでつけられた…まぁ、善処するよ…」
「良かった…それはそうと、確かにリデル君の動きは改善すべき点があっ…」
「アリス中尉ー!」
ディアナがアリスに後ろから抱きつく。
「わっ、え、ディアナちゃん…!?」
「私のこと見てくれましたー?どーでしたか…!」
「あはは…えっと、いいと思うよ?」
そう答えるとディアナはさらにアリスにぎゅっと抱きつく…胸が密着していた。
「やったー!」
(…重い…私より大きいかも…?)
「…賑やかになったね」
エミはそう呟いた。
UC0100年12月17日、714部隊にジオン残党掃討任務が与えられた。714部隊はその宙域に向けて航行していた。
「…実戦か」
レナウンの格納庫でエミはそう呟く。714部隊にとって実戦は久々であった。戦力の消耗もあるが、UC0100年のジオン共和国の自治権返還により、ジオン残党の活動が一時的に沈静化していたからだ。またエミにはある懸念事項があった。それは…
「マルセイユ少尉がジオンを討てるか…ですか?」
エミの疑問にアリスが答えるように言う。
「…言ってないのにわかったの?」
「何年エミ大尉と一緒に居ると思ってるんですか。これくらいはわかりますよ」
続けてアリスは言う。
「それで…ディアナちゃんについては大丈夫だと思います」
「ニュータイプの勘…とかかな?」
「好きに思ってもらって構いませんよ。エミ大尉」
アリスはエミに微笑みかける。そしてエミも肩をすくめる。
「ふふ、最悪あなたがなんとかすればいいよ」
「はは…そろそろですね。では私は」
「そうね」
アリスはゼータプラスの方へと向かっていった。
「プリースト6、霧島アリス、行きます」
「プリースト8、ディアナ・マルセイユ行きまーす!」
2機のゼータプラスがレナウンから発艦していく。この2機は敵部隊捜索のための早期警戒機の役割を兼ねていた。また、714部隊所属の軽空母”インプラカブル”からも早期警戒機の”MSA-007E EWACネロ”が発艦していく。少し経つと、そのEWACネロから敵発見との報告が入る。714部隊司令官の白根ハルナ准将と首席参謀のオリヴァー・ヘンス中佐が話し合う。
「…敵の数が多いな」
「作戦通り、先行したプリースト6、8単独での奇襲を具申します」
作戦とは、プリースト2機による奇襲の後、別方向から714部隊本隊での襲撃を行うというものだった。そうした話し合いの後、本隊を待ってからの奇襲となった。 またレナウンのモニターには編成表が表示されていた。
レナウン ゼータプラスC1型×8
ジム・カスタムMk-II×4
インプラカブル ネロ×12
EWACネロ×2
ジム・カスタムMk-II×6
ベルファスト ジム・カスタムMk-II×6
シェフィールド ジム・カスタムMk-II×6
「ウィザード1、夏野エミ、出るよ」
「ウィザード4、リデル・アンデルソン…出ます」
レナウンからジム・カスタムMk-IIが、ゼータプラスが発艦していく。本隊到着後、714部隊は奇襲攻撃を開始する。
「ゼータプラス隊、てぇー!」
ゼータプラス隊指揮官、ネヴィル・カニンガム少佐の指揮のもと、ゼータプラスC1型のうち5機の主砲と言えるビーム・スマートガンが先制射を放つ。それはジオン残党のエンドラ級巡洋艦を貫き轟沈させた。
「…やったー!私も当てましたよ!」
「そうだね」
喜ぶディアナにアリスは静かにそう返す。そして714部隊の攻撃隊全機が敵部隊へと突撃していった。
「…来たか」
エミは迎撃に出たハイザックを狙撃、爆散させる。さらにゲルググが接近するが…
「そんな旧式…って」
「お姉ちゃんの…敵…倒す!」
ゲルググをリデルがビーム・ライフルで撃破する。
「…そうね、敵だね」
その頃、アリス達は別方向から回り込み敵母艦を攻撃していた。
「ヨシ!輸送艦も撃沈しましたね!」
「うん…来るよ、ディアナちゃん」
リック・ドムII 3機がアリス達に迫りつつあった。
「ディアナちゃんは援護を。私がやるよ」
「はーい!…アリス中尉の活躍…!」
アリスが牽制で大腿部ビーム・カノンを撃つと、ドムII達が散開する。しかし、アリスはゼータプラスを変形させ、その回避先にビーム・スマートガンを撃ち込み1機撃破した。もう1機のドムIIはジャイアント・バズをアリスに放つも軽々と回避される。
「これが…ニュータイプ!」
そう思いながらディアナはドムIIに照準を合わせる。そして撃つとあっけなくドムIIは爆散した。
「うーん、なんか物足りない…なぁ…」
(物足りない…ですって)
アリスはドムIIのジャイアント・バズを切裂き拡散ビーム砲をするりと躱しながら、ディアナの人殺しへの感触に内心悪態をついていた。ドムIIはその後、アリスにより四肢を破壊され拡散ビーム砲を潰されたうえで、投降させられた。その後、ネロ隊が最後の母艦を撃沈し戦闘は終わった。
帰還するとアリスは乗機を降りてディアナを探そうと思ったが…
「私1機やりましたよー!」
探すまでもなくディアナからやってきた。そして無邪気な彼女にアリスはついため息を吐く。
「はぁ…あなたは…」
「どうしました?」
ディアナは上目遣いでそう聞く。
「マルセイユ少尉、敵も人間ってあることを自覚を持ちなさい…こんな感覚で人を殺すのはいけないことだよ」
「…はーい」
アリスはディアナのしょんぼりとした顔を見つめる。
「まぁ次からでいいよ。意識してね、マルセイユ少尉…ディアナちゃん」
「…はい!」
その頃、エミとリデルは2人で話していた。
「…アンデルソン少尉、あなたはこれが初めての撃墜?」
「うん。ATRに居た頃はお姉ちゃんとしか戦ってないからね」
エミはあの時のことをふと思い出す。
「なるほどね…」
「お姉ちゃん、僕、偉い?」
リデルのその問にエミは答えようとするが…
「うーん、偉いと言えば偉…」
「エミ大尉、ここに居ましたか」
アリスがやってくる。
「リデル君はさ…罪の意識とかってあるのかな?」
「あるよ」
「良かった…人殺しは簡単じゃいけないことだよね」
アリスは安堵するが…
「でもお姉ちゃ…夏野大尉の敵は殺さないとだから」
「…そっか、でもあなたも相手が人ってのは絶対に忘れないでね」
「ん?…うん、わかった」
リデルは首を縦にふった。
続く